東京芝居行脚第2弾は扉座「アゲイン〜怪人20面相の優しい夜〜」。
実は今回の芝居行脚、あらかじめチケットを確保していたのは「半神」だけ。あとは東京に着いてから「ぴあ」を片手になに見よっかな〜状態で。
とにかく、たくさん見たかったのと、3日の夜は大人計画を、と決めていて。で、マチネで見られるもの、と言う条件にかなったのがこのお芝居。と言うわけ。
な、なんて理由で。ファンの人ごめんなさい。でも、扉座(というか横内謙介)には個人的に縁がある。
以前、学生時代にいたサークルでのエピソード。
善人会議時代の戯曲「まほうつかいのでし」をやろう!という話になっていたのだが、人材不足の劇団で、なんとわたしが演出に決まってしまった。ンで、この戯曲、演出的には装置的仕掛けが多く、役者だけでは到底見せられない、だってスタッフ不足してるんだもんと一方的に演目を変えさせた、そういう経緯で。わははあ、もっとシンプルな、役者の力量でなんとかなる戯曲にしたかったのだよ。
(そこで変更したのが高橋いさおの「ボクサア」なのだったが、それはまた別の話。)
でも、「まほうつかいのでし」の話自体が好みでなかった訳じゃない。
メルヘンを装った、破壊的、絶望的な物語。ご本家はどういう芝居を作ってるんだろう。そういう興味はあったのでした。
話は戻って。
当日券ということで、少し早めに(午前11時)会場へ。サザン・シアターは再開発中の新宿南口紀伊国屋の6階。エレベーターおりると、すぐに劇場入口。廊下がやけに狭い。この時点でだれも並んでいないので、安心して少し暇をつぶす。新宿南口、ホントに変わったよな〜と、近辺をぶらぶら散歩。噂のスターバックスカフェでお茶したり。
(ラテが絶品!早く全国展開してくれることを切に願う。っていうか新潟に作れ。)で、ほどなく時間が来たので戻ってみると、狭い廊下にひしめく当日券組。失敗した!?と、思ったら、よく見ると並んでいるのは20人足らず。狭いので、ごちゃついて見えるだけであった。
しかし、エレベーターをふさぐように並んでいて、これはちょっと…な光景。発売5分前に制作らしき人が来て、受付が少し遅れるとのお話。でも、さらに人数の増えたエレベーター前の整理はしない。非常階段開けて、そこに並ばせれば…。とか思うけど。よけいなお世話?どっちかって言うと、こんな狭いフロアに無理矢理劇場作ってる紀伊国屋にも問題あり?な感じ。まあ、いずれにしても当日券組ですから。開場して中にはいると、受付にはチンドン屋さんが盛大なお出迎え。ロビーではいかにもな駄菓子を販売中。怪人20面相だけに、ノスタルジックに迫っているのかな?
それらを含め、会場係の若者たちのやけにそら明るいこと。「ようこそ、扉座へ!」と連呼。そうだな、例えるなら学祭のノリ。
その横でにこにこ、横内謙介。後ろには今回の目玉である怪人20面相役の「近藤正臣様へ」の花がたくさん。客席は舞台下手寄り、最後方。客席が2つの通路にはさまれて上手、中央、下手と3つのゾーンに分けられているんだけど、サザン・シアターの狭さを感じたのが、両脇に通路がないこと。これ、意外と不便。遅れてきた客がやけに目について、集中途切れるよ。わがまま言いたい放題。
開演。さっきのチンドン屋夫婦が前節を。遅れて入ってきたお客さんを誘導したり、アドリブで。でも、ちぐはぐな感じ。まだ慣れてないのかな。「今日は小林少年役の故郷青森からバスツアーで団体様がお越しです」とか。
そうこうしていると、怪しげな黒コートの男(いかにも江戸川乱歩?な感じ)、チンドン屋に手紙を渡す。そう、この二人、20面相の手下でした、という設定。
チンドン屋が舞台に上がると、そこはかつての悪の花、20面相の屋敷。しかし、20面相は現代の若者たちに見向きもされなくなったこと憂いてすっかりもうろく。そこで、20面相に仕えるネコ婦人、「あの美しくけなげな少年探偵団をさらってくるのです」とチンドン屋夫婦に依頼。この二人、かつては人さらいとして全国の少年たちを恐怖に陥れていた、らしい。(すみません江戸川乱歩に疎いのでパンフに書いてあったのをそのまま)
で、さらわれてきた少年探偵団、20面相にかつてのパワーをよみがえらせることができるのか?といっても、少年探偵団も人の子、立派なずるがしこい大人に成り下がっていましたと。そこから今回の物語が展開していく。なにしろこの大人の少年探偵団が汚くてよし。明日のゴルフが、かみさんが、いきつけのバーのねいちゃんが、と、世俗のまみれぶり、不似合いな半ズボンに相まっていい線行ってます。
この3人が現実背負っていてナイス!な反面、20面相の手下たちがやたらチープ。動く大仏とか、石像アドニスとか。こてこてなんだけど、20面相知らないからなんだかわかんなかったり。知っている人にはたまらないんだろうが。予備知識なしの私の率直なところは「とりあえずメンツそろえました」な感じ。なんて言うか、キャラがたってない印象。前半見ていてちょっと辛し。しかし、なぜか登場する明智くんや小林少年の登場でやおら舞台は盛り上がりを見せた。というのは、明智くんの登場でやっとこさ20面相に火がついたから。ここからは20面相、近藤正臣の独壇場と言っていい。
「ふはは」な笑い声、黒マントとシルクハットの着こなし。これはかなりかっこいい!さすがは芸能人!見せ方知ってるなあ、の印象。
このあたりから怪人20面相の悪の美学がてんこ盛り。素直に大笑い。圧巻はインド舞踊団の登場で、あの「ムトゥ」のインストにのって出るわ出るわ、総勢20名。なるほど、横内謙介はやっぱり大仕掛けが好きなのかな?
はてはアジアな虎の舞(本業か?と思うほど、表情の作りなんかもうまい)まで見せてくれて、そのベタベタぶりには降参。この際、インド舞踊団のアンサンブルがなってないなんてのは置いておこう。チープなエンターテイメント。このチープなエンターテイメントが怪人20面相の世界そのものなんだろうなあ。と納得。パンフレットに「アナログの犯罪美学」などとあったが、まさしく。西岸良平の「夕焼けの歌」「蜃気郎」を愛する私、中盤の派手な演出、楽しませてもらいました。
が、このあとの展開はお決まりでちょっとがっかり。オヤジ少年探偵団がかつての純粋な情熱を取り戻したり。なんだかこの芝居、対象年齢高いよな印象。
どっちかって言うと、現代の少年の象徴として出てきたチンドン屋夫婦の息子にもっとスポット当てても…と思った。20面相をノスタルジックに終わらせず、徹底的に現代と対峙させたらどうなるんだろう。とか。もっとも、どうやら勝ち目はないかな、というのでロマンティックなエンディングなのかな。と芝居の構成にあれこれいうのもはばかられるくらい、正直言ってこの芝居、近藤正臣の独壇場だったのだから。明智くん、少年探偵団などかろうじて気を吐いてはいたけど、見終わって、「近藤正臣かっこええ〜」とただ一言。
要するに、どこら辺が扉座らしいのかがよくわからなかったのだ。「扉座ファンはなにを見に来るのか」が読めないと言うか。近藤正臣の陰に隠れてしまった座付きの役者たちがかすんでしまっていたからかな?
もっとも、役者じゃなくて、横内謙介の書く物語を見に来ているのかも、と考え直した。客を楽しませようと言う姿勢はとても良く現れていたから。別に、お目当ての役者がいるから見に行くだけが演劇の楽しみ方じゃないしね。
こういう考え方になったのは、客席にどう見ても近藤正臣がお目当て、な感じのお嬢さん方(BYみのもんた)がちらほらいたり、近藤正臣の座長公演(コマ劇場ライク)かと錯覚するところがあったからで。次回は「扉座とは?」をきちんと見極めるために、扉座の役者がメインのお芝居も見てみたいなあ。
役者(近藤正臣以外で)。明智くん、小林少年、20面相に負けじと江戸川ワールドにはまっていてグー。特に明智くんのニヒルさと直線形な動きに、にやにや。