山の手事情社EX公演「ひかりごけ」

2006年4月29日(土)19:00-20:00
目黒「無月」
2006GWの1発目は、99年の野外劇でお世話になった山の手事情社の女優・倉品淳子さん出演のおしばい観劇。

今回は同じく野外劇メイトであるHRさんとご一緒しました。

交通手段も合わせていければ…と思ったのですがGWラッシュのため高速バスの予約がかなわず。

仕事もオセオセだったために、夕方に合流させてもらいました。
翌日の「お楽しみ」のため、上野泊が決まっていたので、待ち合わせも上野で。
上野駅はとってもきれいになっていました。ショッピングモールが広く見やすくなっていた…へぇ。

学生サークルやなんやかやで込み合う中央改札口でなんとかHRさんとめぐりあい、いったんホテルに寄ってから目黒に向かいました。

今回の会場は居酒屋さん。大きなテーブルが目を引く店内で、倉品さんが言うには「この大テーブルがステージになるからね、テーブルの周りが一等席だよ」と。

テーブルの上に屋根?が設置されていてさほど天井に高さがない。
ここでどうやって芝居するのか。好奇心でわくわくします。

そして役者陣。倉品さん以外の3人の女優は、みなさん60〜70代という熟女ばかり。

山の手事情社が5年ほど前に埼玉県越谷市で行った市民向けのワークショップに参加した、孫もいるほどのお母さんたちが、倉品さんに見初められて、その後3年の歳月をかけて生み出したのが今回の「ひかりごけ」だそうだ。

そういった舞台裏の後日談に非常に感銘を受けました。
いままで、芝居作りといったら、長くて3ヶ月、短ければ1ヶ月弱、という制作期間で作るものだと思っていたし、そうした芝居にしかかかわっていなかった。

「このお芝居はね、1ヶ月に1度の稽古で作ったの。だから5カ年計画。1年目はいろいろなテキストを読んだわ。2年目に何を上演するか決めてせりふを覚えて、3年目に動きをつけて。
最初、3人のお母さんたちは「セリフを覚えられるか不安だ」といったの。なら、覚える時間をちゃんと用意しますから、って。そうやってできたのが「ひかりごけ」なの」
と、倉品さんが最初のあいさつで経緯を話してくださって、それを聞いて、価値観が変わりましたね。

ああ、そうか。長くじっくりと時間を掛けて、いい作品を作っていってもいいんだな、と。
それを教えてもらったのが、すごくうれしい。
制作期間が長くていいなら、仕事との両立ができるんでないかなあ?とね。

人肉を喰らう話なのに元気が出たのはそのせいなのかな?

というわけで、物語は凄惨なのです。戦前に実際にあった「人肉食」を題材にした戯曲。もともとは日本兵の物語だが、4人の女優がそれを演じる。

年を重ね、女性らしさを残しながら、人生の機微を感じさせるたたずまいの女優が演じる「食うか、食われるか」の心理的攻防が、「居酒屋」という娯楽的飲食空間のテーブルに載せられて。

ワンドリンク付の公演で、手にもつワインを折に触れて口に運びながら、「ああ、生きるために仲間を食っちまった人の話してんのにワインのんでんなぁ」とか、「自分の置かれたシチュエーションの不条理さ」までが演出されていて、「してやられた〜!」という感じです。

演劇の世界では、年を重ねることはデメリットでもコンプレックスでもない。「老い」が才能になるんだと。

ふだん、「二の腕の太さ」や「顔のしわの数」に一喜一憂してるけど、舞台の上では、そういうのも武器なんだよな〜〜〜。

すっげえ、ポジティブな気持ちになりました。人肉食ってんのに。不思議ですね。