19:00開演 22:30終演(カーテンコール含む)
ケラリーノ・サンドロヴィッチの外部キャストによるプロデュース公演の第3弾。
ケラのナンセンスでクールで即物的な世界観が好きなのですが、さらに、筒井道隆のぼんやり加減も好きだったりするので、この公演は絶対に!!と心を決めておりました。
で、筒井君はどんな芝居でもやっぱり筒井君でした。筒井君としかいいようのない役。
一 緒に見に行ってくれたわるだくみのスーパー新進女優chi嬢は「いてもいなくても同じじゃん!」と評価していました。その通り。なんにも演じていないよう に見える、ところが私は好きなので、chi嬢の言い分はまったくその通りであり、そうでなくちゃーいけないねえ!と思っています。
以下ネタばれ。
さて、芝居全体の感想です。
日本人旅行客を多く乗せた飛行機が墜落し、不時着した南の島。そこは内戦のまっただなか。
スチュワーデス、自称グラフィックデザイナー、お笑いコンビ、不倫カップルなど有象無象の乗客たちは、現地人にかくまわれ、かろうじて生きながらえている。
なかなか日本からの救援が来ずにいらだちが募る、それもそのはず、日本では大地震が起こり壊滅状態、さらに第3次世界大戦がこの島からひろがっていた・・・。
言葉の通じない南の島に残され、かえる目処も立たない人たちの不毛なやりとり、を描いている。
今回のキーワードは「生と死の境目」みたいな。「死ぬことと、殺すこと」とか。
人間、死ぬ時は死んでしまう。生き抜くために、あるいは刹那の快楽を求めるために、さまざまな思いが錯綜している彼らも、墜落事故から奇跡的に生き残った者たちであり、彼らは即死体も目の当たりにしている。
不倫カップルの男性は片腕をなくしているし、裕福なマダムは頭の打ち所が悪くて2日に1度くらいしか正気に戻らない。クロ焦げの焼死体になったお笑いコンビの相方の「死」を認められずに毎晩探し回ってみたり。
筒井くん演じる「自称グラフィックデザイナー・クニモト」は、実は殺人を犯している。彼は一度海外逃亡したが、やはり帰国して自首しようとした矢先に墜落。
その筒井くんの目の前で、愛憎劇が繰り広げられて、殺しあっていく。
とてもくだらない理由で。あるいは、自ら命を絶って。巻き添えを食ったりして、死んでいく。
ラストシーンで、生き残ったクニモトが、スチュワーデス消崎(常盤貴子)に「自分は人を殺したことがある」と、死体の前で告白するシーンが静かながらも圧巻でした。
みんな傍から見ればどうでもいい理由で死んでるし、生きてるし。
だけど、当人にとっては切実。そういうものなんだな〜。
3時間15分、相変わらずの長丁場ですが笑いも見せ場もたっぷりあって、とにかく楽しめました。
筒井くんの話が長くなっちゃったけど、他のキャストもすばらしい!パーフェクトなアンサンブルと 思います。特に良かったのは不倫カップル猫背椿と赤堀雅秋、その間にわってはいる西尾まり。赤堀の乾いた笑いと暴力は空恐ろしい。それから、狂った貴婦人 の池谷のぶえ。太っているけど穏やかで美しく、上品な狂いっぷりに拍手。渡辺いっけいは、敬語がこすっからい。キレた演技◎。温水洋一はとにかくおいしい 突っ込みぶり(設定ではボケ担当漫才師だけど)。