STRANGE, EXOTICA ROOTS


 ■ STRANGE, EXOTICA ROOTS

  2009年8月4日(火)



Harmonica Blues Yazoo / エアーメイル

AIRAC-1325

「ハーモニカ・ブルース」

V.A.
 ロック・アルバムだけを聴き続けることにこだわり、特定のジャンルにこだわったりすると、「素晴らしい音楽」との出会うチャンスを失ってしまう。これは音楽ファンとしては見逃せない事実だ。最近、ロック・ライターの書く文章が妙につまらなく感じることが多い。この種のライターから素晴らしい出会いは期待できない。本盤は、戦前の南部黒人&白人音楽シーンを沸かせたハーモニカ(ブルース・ファンは、「マウスハープ」と表現する)の巨人たちに足跡を編集したものだ。きっとロック系音楽ライターは、この素敵なアルバムを一生聴くことがないだろう。淋しい限りだ。アルバム表紙のデザインは、かのロバート・クラムが描いている。これだけでも本盤は、持っていて損がないアルバム。「Railroad Blues」は、夜汽車の擬音効果が素晴らしい。録音は、1929年だそうだ。フリーマン・スワーズという黒人が吹いている。こうしたハモニカ芸は、ボブ・ディランが惚れこんだサニー・テリーに継承された。このオムニバス盤には、白人カントリー・シーンで大受けしたハーモニカ芸人、デ・フォード・ベイリー「Davidson Country Blues」が収録されている。録音は1928年。そうそう、白人ハーモニカの演奏も収録されている。アシュレー&フォード「Bay Rum Blues」(1933年録音)も、捨て難い魅力を放っている。戦前のブルースは、黒人・白人たちの共有文化(コモンストック)だったことも忘れないで欲しい。



KAPAKAHI Jug Band バッファロー

BUF-127

「カパカヒ・ジャグ・バンド」

カパカヒ・ジャグ・バンド
 アメリカ南部で戦前に流行った黒人音楽。いまでも聴くことが多い。ブルースの親戚筋にあたるジャグ・バンド・ミュージックには、人肌に似た温もりが感じられてよくターンテーブルの上に乗っかる。ジャグ・バンドは、1960年代のフォーク・リヴァイヴァルで脚光を浴びたことがあった。シカゴ〜ケンブリッチ・フォーク・サーキットから誕生したジム・クウェスキン・ジャグ・バンドは、ジャグ・バンドで成功を収めたグループ。ヴァンガードやリプリーズ・レコードなどに傑作を残している。こうしたストレンジなアメリカン・ミュージックは、日常的な道具を楽器代わりにすることで、世界的な流行となった。つまり洗濯桶を改造したウォッシュボード・ベース、大きな瓶の口を吹いてチューバ代わりとしたジャグ、洗濯板をパーカツション代わりにしたものなど、微笑ましい楽器使用が世界中の若者の心をとらえたのだ。ジム・クウェスキン・ジャグ・バンドから発信された「ジャグ・バンド」は、こともあろうにハワイの若者にも注目された。本盤は、1981年自主制作盤として発売された。畏友の山内雄喜氏は、「僕が長い間、人知れずこっそり聴いてはニヤニヤしてきたアルバム」と語っている。聴きどころは「Ukulele Lady」「Any Old Time」。前者には、のこぎりが登場。のどかなジャグ・バンドを演出してくれる。後者は、マリア・マルダーのカヴァーを参考にしたようだが、こちらの方がハワイアン的で気持ちよい。





 
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