![]() |
五.船長とチョッパーと危険な薬 |
「おれ、今日おやつねぇんだ。」 「そ、・・そうなのか?」 勢いよくドアが開いたかと思うと、真剣な顔で横に座ってルフィはそう言った。 「バナナ食っただけで、飯抜きだってサンジがなーー。」 原薬の塊をつぶしながら、突然の珍客に「そ、・・そうなのか」と同じ返事を返してしまう。ルフィはそう言ったコックの顔を思い出したのか、ブーと頬を膨らませていた。 「んで、チョッパー。何してんだ??」 「おーいチョッパー、おやつだってよ〜〜。」 本を読んで試してみたい調合があったんだと、効能についてルフィに説明していたらウソップが入ってきた。ルフィを見るなり、ハッと口をふさぐ。 「・・あ〜〜、あ・・〜〜。ルフィ。まあ、今日一日、いやおやつ一回ぐらい我慢しろ。な。」 「ルフィ。おれの半分持ってきてあげるよ!!」 ウソップに続いてそう言ったオレに、めずらしく「食ったら夕飯まで抜きになっちまうから、いいや」と先ほどの愚痴はどこへ言ったのか、あっさりとルフィはオレ達を見送った。 「あいつでもちょっとは反省してんじゃねーのかー?毎日サンジに蹴られてんだしよ。」 ドアを閉めて、にひひ、とそういうウソップの後を「それもそうだな」と納得しつつ俺はついていった。「ちっとは大人になったんだよ」なんてウソップの軽口を聞きながら。 「不思議薬か〜〜〜。んん〜色も不思議色だな〜〜〜。」 ルフィがにんまり顔でつぶやいたのも知らないで。 「あら、ルフィは?」 「ルフィなら倉庫で大人しく我慢してたぞっ!!」 まるで自分のことのようにエッヘンと言ってやると、 「へ〜ぇ。めずらしいもんだぜ。何か企んでんじゃねぇーだろうな。」 そう言いながらも、サンジが「後で持って言ってくれ」とおぼんをさしだした。嬉しくなって自分のおやつも口に詰め込み、と、急いで倉庫へかけてゆく。 「ルフィ!!サンジがこれ持っていけって!!」 このままではドアが開けれないので、いったん床に置いてから、それでも待ちきれずドアの反対側から言ったオレの言葉に返事がない。いつもなら、遠くからにおいがしただけで、何か何かと目をきらめかせて突っ込んでくるのに。不思議に思いながらドアを開け、おぼんをもって入ると中央に立っているルフィが見えた。 「ルフィ?ルフィの分もってきたぞ!!」 なんだいるんじゃないか、と思いながら再度言った言葉にも返事はない。おかしいぞ、こんなおいしそうな匂いがしてんのに。 「ルフィ?」 何か見てんのか?と、前に回りこもうとした瞬間、やっとオレは空になったビーカーと様子のおかしいルフィに気づいた。 「ぎ・・ぎゃーーー!!ルフィ!!飲んだのか!!?これ飲んだのか!!?」 オレの叫びにはじかれたように、ルフィは顔を上げる。 「ルフィ!!?」 でも、言葉として感じ取っていない表情でこっちを見たかと思うと、うががとうなって一気にかけてきた。 「ひぃーーー!!」 横をすりぬけ、倉庫のドアを一蹴りする。もろくもベキバキに倒れたドアを踏み越え、ルフィは一気に外へと駆けていった。しばらく呆然としていると、そこかしこで大きな音が聞こえてくる。 「わーー!!わーー!!どうしようどうしよう!!!!」 「なんなのよっ!!アイツは一体!!」 「オラっクソゴム!!寝ぼけてんじゃねぇぞ!!」 「・・・オレ知ってるんだ・・。いきなり我を忘れて凶暴化する大猿の話・・・。 ハッ!!サンジ!!シッポだ!!シッポをつかめっっ!!」 「んアホかっ!!!シッポがあるかっ!!!!」 「あらあら、困ったわね。」 「ちょっとゾロ!!この非常時に寝てんじゃないわよっ!!こら、アイツを止めろ−−−っ!!」 オレが、甲板に出たときには、ルフィに手をかけられたマストがミシミシと悲惨な悲鳴を上げていた。 「ガーーーーッ!!ルフィ!!!」 「・・・んだ。アイツ、おやつ抜きで暴動か?」 「「「「悠長に言ってないで、さっさと止めろーーーーっ!!!!」」」」 その後、文句をいいながら応戦したゾロに押さえ込まれ、更にロビンのハナハナの能力によってゾロごと拘束されて、ルフィはやっと大人しくなった。 「って、なんでオレごと抑えてんだよ!!」 「あら、わたしの能力のみじゃ船長さんを抑えるのは無理よ。ふふっ。」 「寝こけてた罰よ!!罰!!」 食に関してルフィをあなどることなかれ。いつきれるか分からない効能に船内は頭を悩ますのだった。 |