勇者妻あとがき

 まず初めに、終わり方がお気に召さない人がいるかと思います。
 伝説の剣も出てきていない、魔王も倒していない、勇者も誕生していない。
 「全然完結していない」なんて思う人もいるかもしれませんね。
 魔女の飼い方を読破している人は、「美奈神の野郎、またやりやがった。」と思うかも知れません。
 ですが、勇者妻は伝説の剣で魔王を倒す勇者の物語ではありません。
 あくまでユリアという女性の生き様を描いた作品で、テーマは『夢』でした。
 ですから、書き始めた時から、ユリアが自分の夢を見つめ直すまでの物語にしようと決めていました。だからこれで紛れもなく勇者妻は完結なんですよ。ユリアが伝説の剣で魔王を倒すみたいな話があるとしたらそれはまた別の作品なんです。

 ところで、この勇者妻という作品は、私が初めてテーマを決めて書いた小説でもあります。今まではそんなことをしなかった私がなぜそうしたかというと、この作品をどこかに投稿しようと思ったからです。何とか大賞とかなんとかグランプリですね。投稿する小説ってだいたいテーマがきちんとしてるよなぁ。ってそんな軽い気持ちでした。
 書き始めは順調だったんですよ。まぁそれはあのノリを読んでいただければわかるかもしれませんが。でも中盤に差し掛かったところで、一度先が書けなくなってしまいました。1年くらいブランクがあったのかもしれません。丁度ユリアがヒイロへの想いと、夢への想いの狭間で揺れていたあたりで全然先が書けなくなってしまいました。ラストは決まっていたのに、どうしてもそこまで辿り着けなかったんです。
 そのころの私は、二年制の専門学校に通っていまして、その当時は二年目に突入しており、就職活動をしていました。
 簡単にいうと悩んでいたんです。就職なんてしていいものかと。私の夢はシナリオ書き。それなのにふつうの情報処理系会社に勤めるため、多大な労力を消費する。それこそ小説を書くことさえ億劫になってしまうくらい。フリーターでもして小銭を稼ぎながら小説を書いていた方が夢に近づけるんじゃないかとか。でも、そんな思いきりは自分にはできなくて、結局普通に就職してしまって。そんな自分が『夢』をテーマにした作品を書き上げるなんて滑稽だと思ってしまったんです。
 もうこの時点でどこかに投稿しようという気はなくしていました。
 もう一度書く気が起きたのは、ネットで小説を公開し始めたからでしょう。やっぱり人に読んでもらうのは楽しい。作中の言葉を借りれば、夢の原点を見たような気になったんです。
 思えば、私が一番最初に本当になりたいと思ったのは漫画家でした。ですが、画力の低さゆえ、絵で自分の表現したいものをしっかりと表現できず、断念したんです。それで、絵を書かなくてもよい小説に流れてきました。最初から小説に情熱を注いでいた人にとっては腹立たしい話なのかもしれません。ですが、私にとって漫画も小説も大差がなかったりするんです。なぜなら、私の夢の原点が「自分のおもしろいと思える自分の空想世界を、他の人にも楽しんでもらう」というものというものだからです。小説でも漫画でも、その条件は満たせます。だから私にとってはどっちでもいい訳ですね。まぁ今は小説を書く方が楽しいし、こっちのフィールドで夢を叶えたいと思ってます。
 そんなわけでネットに公開するという形で再び書き始めたのですが、やはりゴールにたどり着くまではなかなか時間がかかってしまいました。社会人だから、仕事が忙しいからともっともらしいいいわけに逃げ込んでしまったんです。
 そんな自分に鞭をうつために、サイトの手首に剃刀を突きつけることでなんとか書き上げました。そのくらいのことをしてやらないとやらない自分の意志の弱さに嘆きつつ、それでも書き上げられて良かったと思っています。

 他にもキャラクターについてとか、世界観についてとか、もっといろんなことをこのあとがきで書きたいと思っていたのですが、かなり長くなりそうなのでこのぐらいにしておきます。
 最後にひとつ。勇者妻を通して自分の『夢』に対する考えを書いたつもりです。それに対してみなさんがどう思ったのかなど教えていただけるととても嬉しいです。


2001年8月30日 美奈神秀


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