パンドラ


パンドラの箱

「おまえムカつくやつぁいるか?」
「そりゃあいるさ。人間なら誰にでもいるんじゃないのか?」
「そうだよな。いわゆる憎しみってヤツだ。誰にでもあらぁな。
 でもな。遙か昔はそんなもんなかったそうだ。」
「へぇ!なかったのか!じゃ、いつから憎しみは生まれたんだよ?」
「知りたいか?」
「ああ、知りたいな。」
「あのな。開けちゃあなんねぇ箱があったそうだ。」
「へぇ。開けちゃいけない箱ねぇ。そういわれると開けたくなるもんだよなぁ。」
「そうなんだよ。人の業ってやつだぁな。」
「やれやれ、まったく人間ってやつぁ。」
「で、結局開けちまったわけだよ。」
「やっぱりな。」
「そんでな。開けちまったらさぁ大変。
 憎悪とか、嫉妬とか、いわゆる負の感情が飛び出してきたんだと。
 それで人はそういう感情をもっちまったんだと。
 つまりその箱に負の感情を封じ込めてたわけだな。」
「ほー。そりゃファンタジーな話だぁな。でもさ。
 負の感情がないのに、開けちゃなんねぇもんを開けるなんて
 悪ぃことをすんだよ?」
「それは純粋な好奇心だったからだそうだ。」
「へぇ……純粋な好奇心ねぇ。」
「でよ。この話はこれで終わらないんだよ。」
「なんでよ?
 開けちゃなんねぇ箱を開けたらから人は負の感情を持つようになった。
 それで終わりじゃないんか?」
「ああ、なんでもな。その箱の中身は全部飛び出したと思ったんだが、
 一つだけ残ってたもんがあったんだとよ。」
「何だ?何が残ってたんだ?」
「なんでもな。『希望』だそうだ。」
「うわっ、なんつーかいきなりイイ話になったな。
 負の感情が解放されちまっても希望は残ってるってぇことだな。」
「いや、違うな。」
「じゃあどういうことだよ。」
「負の感情は勝手に飛びでちまうけど、
 希望だけは自分の手じゃないと取り出せないっつーことだ。」
「結局イイ話かよ。」
「別にいいだろ。」
「まぁ悪かぁないな。」


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