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LOVE WORD

 戯れ言のタイトルにあまりアルファベットを使わないのは、日本語を心底愛しているワケではなく、英語の授業が心底嫌いだったからです。

 皆さんこんにちは。

 昨日電車の壁に妙な落書きを見つけました。
 こんなところに落書きをするなんてけしからんと思いつつも、思わず凝視してしまう破壊力のあったその落書き。



 大根LOVE



「そうか……」
 と言う一言と共に、肩にポンと手を置きたくなるそんな落書き。
 そして、色々と想像力が働いてしまうそんな言葉でもあります。

 例えばその落書きをしてしまった動機。

想像1.大根が死ぬほど好きだ

 もう大根が好きで好きでたまらない。家に帰るとまずは大根おろしの汁でうがいをし、飯の代わりもモチロン大根おろし。大根のステーキ、大根のみそ汁などの大根フルコースを毎日食すほどの大根好き。
 もはや中毒症状を起こしており、3時間に一回は大根を食さなければ禁断症状が出てきてしまう。

 そしてまさに、この落書きをしたのは「大根切れ症状」の真っ最中だった。

「大根食べたい!大根食べたい!」

 電車の中でリフレインするその言葉。
 しかし携帯していた大根はすべて食べ尽くしており、電車内で大根が見つかろうハズもない。

「大根!好きだ!好きなんだ!こんなに好きなのに!なんで!?愛してる!だからオレの元へ!オレの元へ!!」

 すでに意識も朦朧としている中、気が付くとペンを手にしていることに気が付く。
 モラルがないワケではない。しかし、その想いは彼にペンを走らせた。

『大根LOVE』

 遠のく意識の中、その文字は彼に一時の安息を与えた。


想像2.大根足の彼女へのメッセージ

 どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。
 涙を浮かべて俺を睨み付け、出て行った彼女。

 売り言葉に買い言葉。
「最近太ってきたね」
 なんておまえが言うから……。思わず言ってしまったんだ。
「おまえみたいな大根足女に言われたかねぇよ!」
 あんなに傷つくとは思わなかったんだ。
 あんなに気にしてるとは思わなかったんだ。
 俺は気にしてないから。おまえの足が太かろうが細かろうが愛しているのにはかわりはない。

 そうなんだ。
 俺はおまえを愛している。愛しているんだ。

 電話もかからない。メールも届かない。
 どうにかしておまえに伝えたい。どうにかして……。

 俺は届かないと思いつつも、頼りない光を放つ希望に賭け、電車の壁に言葉を刻んだ。

『大根LOVE』


想像3.LOVEという落書きに対し、
    隠れ芸人が書き足したいわゆるネタ。


 よくあるLOVEという落書きを見つけた。クラスでは「寡黙でシャイ」と言われている少年。
 どこにでもあるそのありふれた落書きに、少年の心はなぜか奮える。

 試されている!俺は試されている!
 笑いの神に、俺が芸人の子かどうかを試されているっ!

 LOVEという言葉の前。少年の脳がフル可動する。
 目を閉じ、精神統一。
 様々な言葉をLOVEという言葉と組み合わせ、ベストだと思われるその答えを探す。

(見えたっ!!!!)

 目を見開き、ペンを回転させる。そしてペン先をLOVEの横へと運ぶと、二つの文字を魂を込めて書き込む。

『大根LOVE』

 少年は完成したその言葉を見ると、満足げな息を漏らした。




 ………………。

 なんてことを電車内で考える私。
 ヨシ。まだまだ妄想力は衰えちゃいない!!