美奈神が書きたい放題書くところ
北海道旅行、八日目の朝。
本日は美瑛の丘めぐりをする予定です。
……自転車でな。
自転車といっても今回は電動自転車。先日のマウンテンバイクと同様、初の試みです。
しかし、アレです。激しい筋肉痛です。ですが電動自転車なら大丈夫だよねってことで汽車に乗って美馬牛駅へ。
------------------
ここでちょっと解説しておきますと、美瑛の丘めぐりには二つ有名な道があります。
それがパッチワークの路とパノラマロードです。
パッチワークの路は美瑛駅からまわるのが適しており、パノラマロードは美馬牛駅から回るほうが適しています。
今日のプランは、美馬牛駅で電動自転車を借り、美瑛駅へ。パッチワークの路を巡り、そのままパノラマロードを巡って美馬牛駅に戻ってくるというものです。相当な距離があり登り坂も多いみたいですが、電動自転車の性能を信じてレッツトライです。
美馬牛駅到着が8時前。ゆっくり回る予定でしたので、早起きしちゃいました。
美馬牛駅ね。
すごいです。
なんかもうね……。
無人です。というか回りに建物ほとんど無いです。
山の中にポツンとある感じです。
21世紀にこんな駅が存在するとは思わなかったと思うぐらい。
まぁそれには理由があって、美馬牛駅は設立当時の形をそのまま残しているそうなんですよ。
……だからってトイレットペーパー置き場すら無い非水洗トイレには驚きましたが。
想像の遥か上を行く田舎っぷりにビビりつつも、大自然の中で軽い準備運動を開始。
電動自転車を貸してもらう「ガイドの山小屋」さんは、八時に開店ですので……。
そうこうしている間にガイドの山小屋さんが開きました。電動自転車の説明していただき、マップを貰います。しかもマップに、オススメ経路まで書き込んでくれる親切ぶり。
お礼を言い、いざ出発。
しかしアレですね。電動自転車。
バッテリーが重い。
そして4時間しかもたないらしく予備のバッテリーも持たされたので重さニ倍。
しかも……、なんかこぎはじめ以外はそれほど恩恵を感じないのですが(^^;
で、走り始めたわけですが……。
なんだこの上り坂の多さは……。
いや、丘めぐりなのだから当然かもしれませんが……。
そして、電動自転車のペダルが重い……。らくらく上り坂〜♪なイメージを持っていた私にとって衝撃の事実。もう半べそかきながら走りはじめます。
で、辿りつきました。
見知らぬ駐車場に。
教えてもらった経路には駐車場なんてありません。駐車場を管理をしているっぽいおじさんに道を聞いたところ、コースからかなり外れてしまっていたようです。
「兄ちゃん方向音痴か?」
そんな生暖かい声援に送られつつ再び走り始めますが。
もうね。もう……。
のぼり坂多すぎでね。歩く走るの繰り返し。
確かに景色は良かったですが、そんなのどうでもよくなるぐらいの疲労が。ていうか筋肉痛でこののぼり坂は地獄ですわ。
しかし、しかしですよ。
のぼりがあればくだりもあるわけですよ。
くだりは気持ちよかったぁ〜。
風になる感覚再び。かつて感じたことのないスピードが出ていたような気がします。
で、辿り着きました。
見渡す限り田んぼ。平地です。
って、ココどこですか?
どう考えても経路から外れています。しかもひらけすぎていてろくに建物もネェ。
不安になりながらも、キョロキョロとあたりを見回すと、観光名所っぽい看板を発見。
「フォトギャラリー風景館」
でも、なんというか……普通の民家です。しかし、現在地がどこかもわからないこの状況をなんとかするために入ってみます。
えー、入りましたが普通の民家でした。
「いらっしゃいませー」
そして普通のおじさんが出てきました。
めちゃくちゃ普段着です。
「今、電気つけますからねー」
入った時は真っ暗でした。
なんでも民家の一部を改装して、フォト・ギャラリーとして開放しているそうなのです。
写真はどれも感動的な景色を写していましたが、どうみても民家そのもの(ry。
「ねーねー。いいもの見せてあげようか」
写真を見ていると、声をかけてくるのは……普通の子供でした。
小学生ぐらいの男の子と女の子。男の子がしきりに私に何か見せて来ようとするのです。
ちょっと戸惑いましたが、笑顔を浮かべて、「何かな?」とこたえると、男の子は石を持ってきました。
色々な石を私に見せ、自慢げに解説してくれます。その中でもっともお気に入りだと見せてくれたのは正八面体の透明な石でした。
「この石。なんて名前かわかる?」
……………………。
「ラミエル!」
と、第5使徒の名前を言いそうになりましたが、グッとこらえ「正八面体だよね? うーんわからないなぁ」というと、男の子は「ダブルピラミッドって言うんだよ。この石には不思議な……」とまたまた解説モード。
子供の頃ってこういうことしたくなるんですよね。まわりに民家が少ない場所に住んでいるならなおさらなのかもしれません。私のような旅行者とも話したくてしょうがないのでしょう。
邪険にする気もないので、しばらく男の子の話につきあいます。
それからしばらくするとおじさんの声が。
「○○(男の子の名前)。お客さんは○○の石を見に来たんじゃなくて、写真を見にきたんだから邪魔しちゃダメだぞー」
……写真を見に来たワケでもなく、現在地を教えてもらいに来たのですが……とも言えません。でも写真もどれもよく撮れていて楽しめました。
写真を楽しんだあと、いよいよ。本題へ。
さて、私が向かおうとしていたのは美瑛駅で、下の地図で言うと赤い経路です。
これがガイドの山小屋の人が親切丁寧に教えてくれた道なのです。
……えーと。
で、ですね。
現在地が地図の青い部分。
一言で表すなら……アレです。
あさっての方向。
見事な方向音痴っぷりにおじさんと笑いあいながら、美瑛に向かって再び走り出すことに。
おじさんからは丘に登ったほうが景色がいい。とアドバイスされましたが、すっかりヘタレた私は、国道を通って美瑛に向かうことにしました。
国道なら一本道。迷ういようがありません。
んでもって美瑛に到着。美瑛駅周辺は、美馬牛駅とは比べ物にならないほど栄えており、やっと生き返った気分に。
……つくづく自分が都会人だということを感じてちょっとブルーでした。
ここで、腹ごしらえのため、目に付いた、いかにも「地域密着型のパン屋」に入ります。
そこでいかにも手作りです!というパンを購入。
なんだか妙に癒されました(笑)。他にも遭難した時のためのかぼちゃアンパンを購入し、美瑛駅に到着。
美瑛駅は観光客も多く、賑わっております。そして、見逃せない「カレーうどん」の看板。
もちろん食します。
美瑛の新名物として売り出し中の、珍しいカレールゥを絡めて食べるタイプのカレーうどんです。うどんは美瑛で育てた小麦を使っているそうで……。
コシがあり、香りもよいうどんに舌鼓をうって、やる気充電。
というか、ここからが本番ですから!
美瑛のパッチワークの路に出発です。
相変わらず電動自転車のよさを理解できないまま、息切れしつつセブンスターの木に到着。
名所だけあり景色はかなり良かったです。360度山、緑。空気もウマイ。
何より迷わず辿りつけたことが私のテンションを上げます。
次に向かうのはマイルドセブンの丘です。地図に従い、かつ国道を利用してわかりやすい道を利用してたどり着きました!
イヤー長かった。
のぼり坂も多かった。
でもたどり着いたんですよ。
マイルドセブンの丘……
……では無く、セブンスターの木に。
えーと。
なんというか。
私の進んでいたつもりの経路が下の図。
で、ですね。
えーとですね……。
実際に進んだと思われる経路が下の図になります。
……そこで私は理解しました。この丘をウロウロしていたらそのうち私は遭難します。間違いないです。
ということで、どうしても見たい場所に絞って慎重に進むことにしました。
どうしても見たいのは「クリスマスツリーの木」。もみの木じゃないんですが、畑に一本ポツリと立つ姿がクリスマスツリーに見えるとのこと。
妙に惹かれるものがあったので、ココだけはたどり着こうと決意しました。
美瑛近くの国道のセブンイレブンで飲み物を買い、買っておいたパンでエネルギー補給。
とりあえず国道をまっすぐ進み、曲がるところさえ間違えなければ、それほど苦労せず辿りつけるはず。
今度は小さな目印も逃すことなく、慎重に……。
いざ行かんクリスマスツリーの木へ。
回りの様子を見逃さないため、ゆっくり目にペダルをこぐと、なんだかものすごくペダルが軽いことに気がつきます。
アレ?と思いましたが、のぼり坂でも随分とペダルが軽い。
もしやこれは、スピードを出そうとすると電動アシストが得られないとかそういうことなのか?
あとで調べてわかりましたが、電動アシストは時速23kmと法律で決められているそうです。ですから23km以上のスピードだとアシストを得られないわけです。
つまり、坂道で立ちこぎ!
なんてのは電動自転車ではご法度名わけで。
……僕は今まで何をしていたんだろうか。
それでも目的地までは随分距離があったので、最後まで気がつかないよりは全然マシです。
ゆっくりじっくり確実にペダルをこぎ、たどり着きましたよクリスマスツリーの木!
……って、アレ?
なんというか。
「ちょこーん」という効果音が似合いそうな佇まい。
でも雪が降っていたり、夕焼け空ならまた違うんだろうなと思いました。
曇り空では魅力が半減なのでしょう。
このときはまだ午後の2時ぐらいでしたが、このまま美馬牛駅へ向かうことに。
迷うこともしっかり計算に入れないといけませんから。
美馬牛駅へと進む途中、工事をしているおじさんに「道があっているか」聞いてしまい、工事を10分程度中断させてしまったりしたりしなかったりして、ようやく美馬牛駅へと帰還。
もうヘトヘトだったので予定より随分と早いですが、本日の宿泊場所である札幌へ向かうことに。
ですが、ここで思わぬサプライズ!
鉄道マニア垂涎の、トロッコ電車、ノロッコ号に乗ることができました。
「ポーッ!」という汽笛とともにゆっくりと進む車窓から見る景色。車内アナウンスで観光案内までしてくれます。
素晴らしい。
美瑛駅で普通の汽車に乗り換え、旭川でさらに乗り換え。そしても戻ってまいりました札幌に。
なんというかね。
「懐かしい」って思えたんですよ。
「ただいま」って思えたんですよ。
札幌から知床、稚内、美瑛へ旅行していたような気分でしょうか。
一日目で歩きまくったせいか道をしっかり覚えていたのもその感覚を引き起こす原因となったのでしょう。
とりあえず宿に向かい、チェックイン。今日から二日泊まるホテルは、札幌駅すぐそばのちょっといいビジネスホテルです。
セミダブルのベッド、広めのバスルーム。ゆっくり休めそうです。
しかしまだまだ夜はこれから。
ということで、夜の札幌を歩くことにしました。
1日目と同じ場所ですが、なんとなく雰囲気が違って感じます。雨が降っていなかったのも大きいですが、何より最初より「観光気分」が薄れていたのが原因でしょう。
そうなると時計台もなかなか味わい深かったですよ。
大通公園を抜け、狸小路を歩いていると、ストリートミュージシャンやダンサーの姿がありました。
なんだか妙に関心しながら見ていると、背中に衝撃が走ります。
「あ、すいません」
と反射的に謝りますが、ジーンズを引っ張られる感覚で何が起こったが気がつきました。
ぶつかった相手はまだ若い女の子だったのですが、手に私の財布を持ってます。
財布にはチェーンをつけていたので、引っ張られたワケですね。
なんでしょう。
えーと。なんというか。
アレですね。
スリの現行犯。
財布を手放して逃げる女の子。どうすべきか判断に困り、すぐに追いかけられませんでしたが、その必要はありませんでした。
こけました。
それも盛大に。
ズベシャアッ!っと。
ゆっくりと近付くと、かなり痛がっています。
そのとき、「スリの現行犯」という存在が、「盛大にこけた女の子」という存在に変わったのでしょう。
「あの? 大丈夫?」
思わずそんな風に声をかけてしまいました。女の子は焦っていましたが、足が痛くて動けない様子。
膝が擦りむけて血が出ており、なんとも痛そうでした。
こうなってしまってはとりあえず怪我の手当てが先です。
「警察に突き出したりしないから、あそこのベンチで手当てしよう」
と言うとスンナリ従ってくれました。
旅行の時には常備している救急セットが役に立つ時が来るとは……。
消毒をし、傷テープで応急処置。足はくじいているようですが、走れないだけで歩けるようなので、捻挫や骨折はしていない様子です。
服の汚れだけはどうしようもなかったですけど。
「……あなた変わってるね。
泥棒の手当てするなんて」
「泥棒だろうが、血が出てたら痛いでしょ」
そういうと女の子はくすくすと笑い出しました。
「やっぱり悪いことはできないんだねー」
そして自嘲じみた表情に。
というか完全に自白してます。状況証拠もバッチリ。頭はあまりよくないようです。
「食べるお金もなくてフラフラしてるときに、無防備に、後ろのポケットから財布が出てるんだもんなぁ」
聞いてもいないのに事情まで話し出します。なんでも貧乏学生をやっているらしいです。
「いやぁ〜。人間お腹がすくと見境がなくなるってことがよくわかったよー」
……間違いなく何か訴えてます。
「それはご馳走して欲しいという遠まわしな要求?」
こくりと頷く女の子。
コイツ、いい根性してやがる。
なんだかその根性が気に入ったので、食事をおごってあげることにしました。連れて行ったのは吉野家ですが、ものすっごい大喜び。
本気でお腹が空いていたんだと思える食いっぷり。遠慮しなくていいと言ったら、特盛、たまご、味噌汁、サラダとフルコースを頼む図太さ。
見事としかいいようがありません。
「あ、なんかやらしい下心があっても応えられないんで。
それぐらいだったらススキノで働いてますから」
そしてこのキッパリとしたところ。怒りを通り越して気持ちよくなってきました。
しかし「まぁ、応えられるお礼ならしますけど」というところが妙にかわいく感じます。じゃあ、私生活や学校のこと、オススメの美味しい店などの話を聞かせてくれとせがむことにしました。
……んなわきゃない。
こんなギャルゲ的な出会いが現実で起こってたまるかって感じですよね。もちろん、スリになんかあっておりませんし、吉野家にも行っておりません。
この日はふらつきまくって、職場の後輩から是非食べてきてくれとせがまれた、ココイチの北海道限定メニューである海鮮スープカレーを食して帰りました。
味は……どこでも同じですね……。
とりあえず具が豪華なぐらいしか違いはありませんでした。
その味に少しだけ東京を思い出しながら、八日目の夜も更けていきましたとさ。