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天上界と地獄(智慧)
 
 
 
 仏教の中には、六つの世界があるといわれています。地獄の世界、餓鬼の世界、畜生の世界、修羅の世界、そして私たちの住む人間の世界、その上に天上界があります。

 こんな話があります。生死をさまよっている人が、地獄の世界を見たくて、お釈迦様にお願いし、地獄へ行ってみました。そこには、美しい花が咲き乱れ、ごちそうがたくさんあり、地獄の環境ではない様な素晴らしい場所だったそうですが、そこにいる人たちは、やせ細って「腹が減った、腹が減った。」と言っていたそうでございます。

  というのは、たくさんのごちそうを目の前に、一メートルもある箸で、ごちそうを食べさせられていたそうでございます。ごちそうはつかめても、口に入れることは出来ず、苦しんでいたそうでございます。

  「これが地獄の世界か」とわかったこの人は、またお釈迦様にお願いし、今度は天上界へ行ってみました。やはり天上界でも、美しい花が咲き乱れ、ごちそうがたくさんありました。そして地獄の世界と同じように、一メートルの長さの箸を持ってごちそうを食べさせられていました。しかしここにいる人は、みんなにこやかな顔をして、「おいしい。おいしい。」と言って食べていたそうでございます。

  というのは、長い箸でつかんだごちそうを自分の前にいる人の口に入れてやり、自分も前の人から食べさせてもらっていたとのことです。

 地獄と天上界に行く人の違いを教えてくれる話ですが、人間というのはお互いに助け合いながら生きていく事が特に大切であると考えます。この話は勿論作り話ではありましょうが、私達の日常生活を反省させる良い話だと思います。仏教では「智恵」ということを説きますが、この極楽の住人はまさにその智恵を持っていると言えるでしょう。