フォローアップ   (平成18年4月26日、山日新聞から)
 
 日本三大桜のひとつ、北杜市武川町山高の神代桜は、樹齢約2000年といわれるエドヒガンザクラ。老齢化により枯死の危険性も指摘されていたが、4年計画で行ってきた土壌改良や枝のせん定などの樹勢回復作業が今年3月に終了。根や枝が成長するなど効果が表れ、4月上旬には鮮やかな花を咲かせた。関係者は3年間の”治療”に一定の評価をしながら、今後も引き続き保護活動に取り組んでいく考えだ。<高野芳宏>
 神代桜の樹勢回復、開花
 
 「昨年よりも花の数が多くなった。作業の効果があった証し。」神代桜がある実相寺の松永直樹住職(53)は、ホームページ上に掲載している、自ら撮影した過去の写真と見比べながら話した。
 神代桜は高さ約13m、枝張りは東西に27m、南北に31mの大きさを誇り1922年に桜として全国で初めて国指定の天然記念物に指定された。しかし毎年訪れる多数の見物客によって木周辺の土が踏み固められたり、盛り土をして根を圧迫したことなどから、衰えが見られるようになった。
 
 4年間の”治療”成果
 
 このため、武川村(当時)は、2002年度、大学農学部教授や樹木医らでつくるプロジェクトチームを結成。03年から、周辺の土を掘り起こし、たい肥などを混ぜた培養土に入れ替える作業を繰り返した。06年3月には乾燥を防ぐための腐葉土も入れた。
 20年以上神代桜の治療にかかわってきた北杜市小淵沢町の樹木医小林稔蔵さん(59)によると、作業開始前と現在を比較すると、木を正面から見て西側の枝が70Cmほど成長したほか、寄生虫に侵されていたこぶだらけだった根から、新たな根が250Cmも伸びるなど目に見える効果が表れているという。
 今年は今月1日に開花し、6日頃に満開となり、県内外から訪れた多くの観光客らを魅了した。小林さんも「根が伸びたことで木がしっかりと栄養を取り、花も色濃くなった感じがした。」と喜んでいる。
 
  乾燥防止へ腐葉土/観測は継続
 
 一方で小林さんは、「これですべてが終わったわけではない。木の上部には弱った部分が残っている。今後も観測を続け、フォローしていかなければならない。」と指摘。プロジェクトチームは解散せず、定期的に会議を開いて対応を話し合っていくという。
 武川村は02年、村道山高黒沢線(当時)の迂回路を整備し、桜の横を通っていた旧道(村道)を車両通行禁止にしていた。北杜市は本年度当初予算に同所の市道整備事業など約2000万円を計上し、この旧道を整備。今秋以降、約120mにわたり通常のアスファルトを水の通しやすい特別製に変え、根が水分を吸収しやすくする予定。通行止めは継続する。
 開花状況などを紹介する松永住職のホームページのアクセスは、見ごろの時期には1日に2000件を超え、最終版を迎えた現在でも平均1000件。県外から訪れた観光客に「桜が元気になってよかった。」と声を掛けられることも多いという。
 松永住職は、「多くの人に愛される神代桜を今後もみんなと協力して守っていきたい。」と話している。