今月の法話 (平成30 年5月)
神様からのメッセージ
以前、大野勝彦さんという方の話を読んだことがあります。大野さんは平成元年、農業機械で両手を切断してしまいましたが、今では義手で素晴らしい絵や詩を書き、充実の日々を送っています。大野さんは両手を切断した時、神様からのメッセージを聞き、次のような詩にしました。
神様からのメッセージ
それでも生きるんじゃ。 それだから生きるんじゃ。 何だ偉そうに「格好悪い。ああ人生はおしまいだ」なんて、一人前の口を叩くな。
あのな、お前が手を切って悲劇の主人公みたいな顔してベッドでうなっていた時なー家族みんな、誰も一言も声が出なかったんだぞ。ご飯な、食卓に並べるのは並べるけど、箸をつけるものはだぁれもいなかったんだぞ。
これまで一度も、神様に手なんか合わせたことがない三人の子供らナ、毎晩じいさんと一緒に、正座して神棚に手を合わせたんだぞ(中略)
腰の曲がった親の後ろ姿 よー見てみい。親孝行せにゃーとお前が本気で思ったらそれは両手を切ったお陰じゃないか…今度の事故な、あの老いた二人にはこたえとるわい。親父な、無口な親父な七キロもやせたんだぞ
「ありがとう」の一言も言うてみい。涙流して喜ぶぞ、それが出来て初めて人ってもんだ。
子供達に、お前これまで何してやった。作りっぱなし、自分の気持ちでドナリッパナシ、思うようにならんと、子育てに失敗した、子育てに失敗した…あたり前じゃ、お前は、子育ての前に自分づくりに失敗しているじゃなか。
あの三人は、いじらしいじゃないか、病室に入ってくる時ニコニコしとったろが。本当はな、病室の前で、涙を拭いて「お父さんの前では楽しか話ばっかりするとよ」と確認して三人で頭でうなずき合ってからドアを開けたんだぞ。(中略)
もう一遍言うぞ。
大切な人の喜ぶことをするのが人生ぞ
時間がなかぞ… 時間がなかぞ…
大野さんの詩を読んで、これこそ人間の生き方かなと思いました。
大津山 実相寺住職 松永直樹
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