今月の法話       (平成31年3月)
 
 耐え忍ぶ(忍辱)
 
 
 
 
 
 お釈迦様の教えの中には、六波羅蜜と言って6つの生き方が説かれています。法華経の中にも、六波羅蜜が説かれており、菩薩仏教、大乗仏教の基本となるものであります。
 施しの心、戒めの心、耐え忍ぶこと、精進すること、一心になること(禅定)そして智慧をもつことの6つの生き方です。
 そのお釈迦様の6つの教えの中で、忍耐の心、耐え忍ぶということについて、お話しします。
 
 法華経の第20番目にあるお経が、常不軽菩薩品ですが、この常不軽菩薩という方は、どんな人に対しても手を合わせ、軽蔑するようなことはなかったのでございます。
 私は、あなた方を軽く見ることはありません。あなた方は、最勝の悟りを求めて修行するものであります。と言って、人々からいろいろな悪口をいわれ、石を投げつけられても、その石が届かないところまでさがって、人々に手を合わすようなお方であったのでございます。
 
 お釈迦様がお弟子を連れて、法をひろめて歩かれている時、傘のように張った大樹の木陰をみて、お釈迦様は「しばしの休息をしてゆこう。」と、お弟子と共に歩み入られました。燃えるような暑さも木陰に入ると、河面を渡る涼しい風に汗もひき、一同ホッとする思いでした。
 その時、お釈迦様はすぐ近くの川に架かっている橋をジッと御覧になっておられましたが、ややあって何を感じられたか、かたわらのお弟子達をかえりみると、「あの橋を見よ。」と、指さされました。
 そうして言われた言葉が、「忍ぶこと、まさに橋のごとくなるべし。橋は、人に踏まれて人を渡せり、橋は人に踏まれて、ひとを渡せり。」
         というお教えでございます。
 
 忍ぶこと、こらえること、我慢することは、難しいことですが、私たちの日常生活においては、忍ばなければならないこと、こらえなければならないことが実に多いのです。
 
 そこでお釈迦様は「忍ぶこと」については、くり返し平生も強く戒められ、6つの教え、生き方の中に、この忍ぶことを加えられているのであります。
 橋は、靴や下駄で踏みつけられながら、踏みつけるその人を向こう岸へ渡してやっているように、忍ぶこと、こらえることも、まさに橋の如くであれというお教えでございます。
           合掌 実相寺住職 松永直樹
       
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