今月の法話(平成29年4月分)
 
 
良い方へ考えましょう
 
 仏教の世界では、6つの世界があると言われています。
 地獄の世界、餓鬼の世界、畜生の世界、修羅の世界、そして人間の世界、その上に天上界と6つの世界です。
 
 地獄の世界は苦しみだけの世界。
 餓鬼の世界はいつも飢え、渇きに苦しむ世界。
 畜生の世界は欲望のままに生きる世界。
 修羅の世界は争いばかりの世界。
 人間の世界はいろんな心を持つ世界。
 天上の世界は喜び、楽しみがあるが、長続きしない世界。
 
 その中で、人間の世界は、苦楽があるから、いろいろな心が存在すると言われています。人間として、「苦」と「楽」をどういうふうに考えるかによってその人の一生が変わってきます。
 
 明治の時代に次のようなお話があります。あるお寺の門前に一人の老婦が住んでいました。この老婦は寝てもさめても、天を見上げては始終泣いていることから、「泣き婆」と呼ばれていました。ある日のこと、泣き婆の噂を聞き、和尚さんが哀れに思い、その家をたずねました。「あなたは毎日泣いているというが、何がそんなに悲しいのか?」と和尚さんが尋ねますと、老婦は「はい、私には二人の娘がおります。その娘の一人が傘屋に嫁ぎました。天気が良い日は傘が売れずつらい思いをしているだろうと考えるだけで、涙があふれてくるのです。もう一人の娘は下駄 屋に嫁ぎました。雨の日が来ると下駄が売れずつらいだろうとまた涙が出てくくるのです。」話終わるとまた「ワーッ」と泣き出す始末。和尚さんは微笑んで、こう諭しました。「あなたの考え方は反対だ。晴れたら、下駄 屋の娘が喜んでいると笑い、雨が降ったら傘屋の娘が喜んでいると考えればどれだけ楽なことか。」それを聞いてから老婦はニコニコと笑顔で有名になったということです。
 
 私達は数多くの困難にぶつかります。そんな時、仏さまの智恵によって違う角度から光を当てていただき、生かしていただいているのです。「私達を楽に生かす」それが仏さまの教えだと思います。 
 
合  掌
                実相寺住職 松永直樹
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