今月の法話(平成20年7月分)
 
 
 四苦について
人間は、死んだら終わりだとよく言われます。
 
 「生・老・病・死」は人生の骨組みになっていますが、仏教では、この「生・老・病・死」を「四苦」と呼んでおります。「生まれる苦しみ、老いる苦しみ、病む苦しみ、死ぬ苦しみ」です。
 
 「生まれる苦しみ」というのは分かりにくいかもしれません。私たちは「産みの苦しみ」とは言っても、「生まれる苦しみ」とは言いませんからね。ですが、「生まれる」ということは「いずれ死なねばならない」ということでもあります。「生まれる」というのは、「死ぬ」ことが約束されているということです。ですから、死ぬことが苦しみである限り、生まれてくることも苦しみなのです。
 
 また、「老いる苦しみ」というのは、ただ歳をとるのが苦しいという意味ではありませんね。たとえば、二十歳の者が25歳になっても、別に、苦しくはないでしょう。そうではなくて、「老いる苦しみ」というのは、「死ぬときが近づいてきたと思う苦しみ」「死ぬことへの予感を持つ苦しみ」ですね。
 
 「病む苦しみ」と申しましても、鼻風邪ひとつ引いたくらいで、深刻に苦しむ人もいないでしょう。そうではなくて、大病を患ったときに、「ひょっとしたら、これで終わりかもしれない」と思う苦しみがある。それが、「病む苦しみ」ですね。ですから、「病む苦しみ」というのも、「死への予感を持つ苦しみ」なのですね。
 
 では、「死ぬ苦しみ」とは何か。私たちはよく、「死ぬほどの苦しみ」とか「死ぬより辛い」というようなことを申しますが、かつて死んだという経験を憶えているわけではありませんね。私たちの経験から言えば、死ぬということが、苦しいことなのかどうか、実は、よく分からないのです。かつて死んだときのことを思い出せたら、「死ぬ苦しみ」というのは無いのかもしれませんが、まあ、そういうことは、まずありません。では、「死ぬ苦しみ」とは何かと言えば、それは「死ぬことへの不安」なのですね。
 
合  掌
                実相寺住職 松永直樹
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