「はあ・・・
見つからないなぁ」

いけない、いけない。
つい口に出ちゃった。
それにしても、ココにきて2週間も経つけど全く見つからないんじゃ、愚痴も言いたくなるわよ。

今回はかなり特殊なの。
まず、アンケート場所は極秘。
それもメインはある人物を探しているの。
それはいつもの編集長が決めるアンケート場所の打ち合わせの時なんだけど・・・

 

『今回のアンケート調査はかなり例外だ』

『例外・・・ですか?』

『ああ・・・
まず、調査場所の名前は載せない』

『どうしてですか?』

『話しは最後まで聞け。
次にアンケート調査は建前である人物を探してほしい。
写真だ、ほれ』

『女の子?』

『名前は一ノ瀬ことみ。
不慮な事故で亡くなった有名な学者夫婦の娘で、
後見人がいるが、現在一人暮らし』

『・・・・・・』

『その後、見人が色々根回ししてマスコミや科学者も近づけないらしい。
住んでいる町でさえ調べるのにかなり苦労したようだ』

『・・・・・・』

『だが、あくまで『偶然的』なアンケートをやっている俺達にお鉢が回ってきた。
うまく彼女に接近してほしい』

『どうしてウチにまわってきたんですか?
それだけの理由なら他の所にも出来ると思います』

『少しは勘が良くなったな。
だがな、ウチ・・・というよりオマエは雪村雪之丞の取材に成功させている。
あの全てのインタビューや取材を断っている彼が、
唯一OKしたオマエに白羽の矢が立った。
そういうことらしい』

『・・・・・・』

『分かったな?』

『編集長・・・
私、今回のアンケート調査は降ろさせてもらいます』

『・・・・・・』

『私たちのアンケート調査は恋人の女の子向けの雑誌です。
そんな何所からも知らないプライバシーを無視した仕事は受けたくありません』

『・・・だろうな。
俺も気に食わない』

『え?』

『今の話は依頼上の建前の内容だ。
見つけなくてもいいし、もし見つけても取材するかはオマエの自由。
もし、やっても内容は公開しない』

『編集長・・・』

『俺があんな依頼をまともに受けると思ったのか?
そこまで腐ってはいないぞ。
まあ、断ることこそ出来なかったが結果は決まっている。
「依頼は失敗。
一ノ瀬ことみとは接触できなかった」とな。
実際、向こうもそれほど期待していない。
一応、報告に記載する為に行動だけしてほしいだけだ』

『・・・・・・』

『もちろん、責任は全て俺が持つ。
どうってことはない。
オマエはいつも通りのアンケート調査をしてくれたらいい。
引き受けてくれるな?』

『・・・はい!!』

 

ということがあったの。
初めは編集長に失望したけど、やっぱりココを選んでよかった。
ほとんどの記者は口では何と言っても、相手のプライバシーなんて考えていない。
でも、中には私たちみたいな所もあってもいいと思う。
あっ!
言っておくけど最初の『見つからない』というのは、カップルがいないということよ。

でも、この町で唯一の商店街にいるのにいまだ成果はゼロ(汗
町には学園もあるのにどうして見つからないのよー!!(絶叫
しょうがない・・・
ひとまずお昼ご飯にしよう。
さっき『古河パン』という店で、パンを3つほど買ったのよ。
でも、そこの主人が

『よう、姉ちゃん。
このパンを買っていけ。
こいつは最凶だぜ』

なにがどう『再凶』何か知りたかったけど、その前に・・・

『私のパンは殺村凶子並だったんですねー!!』

と、奥さんが外へ走り出して・・・

『なら俺はピロであぅでうぐぅだー!!』

とか意味不明なことを言いながら(そのパンを口に詰めてよく喋れるわね)追いかけていった(汗
幸い娘さんが出てきて勘定をしてくれて助かったけど・・・
なに、あれ?

それは置いておいて、商店街の入り口付近で立ち食いは行儀が悪いけど、
いただきまー・・・

「っ!!」

パン片手に半開きの口のまま、こちらへ向かってくる一組の男女から目が離せなかった。
女の子は髪がとても長くヘアバンドしていて、とても可愛く幸せそうに腕を組んでいる。
男の子は正直な所、並より多少良いくらいだけど、それ以上に内面からの魅力を感じる。
これほどなのは、雪之丞君や舞人君以来。
これは見逃せない(ニヤ
慌ててパンをしまって、身だしなみを整えて近づいた二人に声を掛ける。

「すみませーん!
ちょっといいですか?」

「ん?」

「何だ?」

 


2004 Key 『CLANNAD』

「突撃レポーター! 悠が行く!!」
 (幸せは手の中に編)


 

「・・・というわけなんです」

「はあ、話は分かりましたが・・・
どうする、智代?
・・・って、聞けよ!!」

女の子―智代ちゃんというらしい―は、私が持ってきた雑誌を真剣に読んでいるわ。
少し赤くなっている所を見ると純情なのね。
桜塚市からの教訓で、私たちの雑誌を読んでいない人もいる(考えれば当たり前)
雪之丞君にも少し疑われたし、実際に私たちの雑誌を数冊持ち歩くことにしたのよ。

「ん?
呼んだか、朋也?」

「ああ、呼んだよ。
この人の話を聞いていたか?」

「すまない・・・
思わず真剣に読んでしまって、聞いていなかった」

男の子は朋也君ね。
うーん、社会人か学生か判断に迷う所ね。

「だから・・・
おまえが真剣に読んでいるそのアンケートを、俺たちもやってほしいらしい」

「ほう、そうか・・・
って、何!?
私と朋也がこのアンケートを!?
そんな恥ずかしいことが出来るか!!
いや、朋也が恋人じゃないというわけじゃない!
本当は、思わず雑誌の質問に私ならこうだと考えていたが・・・
なに恥ずかしいことを言っているのだ、わたしは!!」

この子、少し自爆属性があるのかしら?
あっ、朋也君が溜息を一つ。

「で、どうする?
プライバシーなどは守ってくれるらしいけど」

「・・・受けたい。
だが、朋也はいいのか?
こういうのは嫌がりそうだが・・・」

やっぱりね。
見た目、朋也君は興味がないはず。
でも、ここは黙って見届ける所ね。

「そりゃ、こんなものは性に合わないけど。
今日は智代に世話になっているお礼なんだから、これくらいはするぞ」

『と言っても、今日だけの特別サービスだぞ』と、そっぽを向きながら言う朋也君。
普段、そんなセリフは言わないのね。

「そうか、ありがとう朋也。
あの・・・」

「あっ、すみません。
これ、名刺です」

「・・・宮下さん、そ、そのアンケート、受けさせてほしい」

「はい!
こちらこそよろしくお願いします」

珍しくこちらからの説得もなしに受けてもらうのは久しぶりね。
2週間も当たりがなかっただけに、嬉しさ倍増ね。

「それでは、これをどうぞ」

木の下の段になっている所に腰掛けてもらって用紙とペンを2人に渡す。
あら、智代ちゃんは眼が悪いのね。
眼鏡を取り出したわ。

 

「俺は出来たぞ」

「わ、私も」

朋也君は平然としているけど、智代ちゃんの顔は赤い。
最後の質問が聞いたかしら?

「お疲れ様です。
宜しければコピーを取りましょうか?」

「頼む」

「はい。
少し待ってくださいね」

近くのコンビニに行ってコピーを取る(2週間もあれば何所に何があるなんて調べられるわ)
ついでにコーヒーを二缶買って戻る。

「はい、どうぞ。
それとこれも」

「すみません」

「ありがとう」

晶子ちゃんの時とは違って、お礼を言ってくれてから飲んでくれる。
正直、こっちの方がありがたい。

「発表は来月号ですから、良かったら読んでくださいね」

「もちろんだ。
いまから楽しみだ」

「あのな・・・」(汗

「クスクス・・・」

本当に微笑ましいわね。
私も恋人がほしいわ(泣

「あっ!
後、カップル名があるんですけど、希望の名前とかありますか?」

「・・・朋也はなにかあるか?」

「俺がそんなこと思いつくはずがないだろ」

「それもそうだな・・・」

智代ちゃんが考えること数秒・・・

「なら『雪桜(ゆきさくら)』で頼む」

「智代・・・」

2人とも、その名に思い入れがあるのか真剣な表情。
雪と桜・・・
この2つはそれぞれ別の意味があるように感じた。

「『雪桜』・・・ですね。
分かりました!」

とは言っても、私が立ち入っていい問題じゃない。
いつも通り、明るくアンケートを楽しんでほしいから。

「それじゃ、そろそろ・・・」

「あら、引き止めてごめんなさいね。
これは受けてくれたお礼です。
『古河パン』はご存知ですか?
この町では有名ですから、地元の人なら知っていますよね。
そこの『早苗特別パン』とかいう券です。
ご主人曰く『2度と忘れられない味』とか。
はい、どうぞ」

「・・・・・・」

「あの・・・」

「あっ、ありがとうございます」(汗

何かあったのかしら?
受け取る朋也君の手が震えているけど・・・
でも、深く聞いてはいけないと私の勘が訴える。
・・・やめとこ。

「受けていただきありがとうございました。
実は2週間も頑張って見たんですけど、まだ成果なしだったんですよ。
それに今日で調査の期限だったんで・・・」

「それはご愁傷様です」(汗

「その仕事は毎日なのか?」

「基本的には毎日ですね。
平日は夕方からで、休日は丸一日。
今回は締め切りの都合で調査期間が短いですけど、ほぼ毎日です」

「ま、毎日!?
それじゃ、休みは取っているんですか?」

「もちろんですよ。
調査が毎日というだけで、社員は私だけではありませんから」

「そ、そりゃ、そうっすよね」

詩織先輩も2日くらい変わってもらったけど、成果はゼロ。
もちろん、『一ノ瀬ことみ』も見つからずしまい。
あらゆる意味で手強いわ、この町(汗
・・・訊いてみようかしら?

「突然な質問で申し訳ないんですけど・・・
『一ノ瀬ことみ』という女の子、ご存知ありませんか?」

「一ノ瀬ことみ・・・
何所かで・・・」

あら、意外な反応・・・
朋也君は顔を上に上げ、どこか懐かしそうで後悔してそうな微妙な表情。
もう、そんな顔されたらそれ以上聞けないじゃない。
私はいいけど、放っておかれた彼女は・・・

「朋也!!」(怒

「な、何だ、智代?」(驚

「その彼女は誰なんだ!?
しかも女の子だと言う!!
やはり浮気していたのか!!」

ものすごく怒ってた。
朋也君の襟首を取って、ガックンガックン揺らす。
見事に決まっているから、喋る所か呼吸すらも怪しい(汗

「や・・・やは・・り・・・って・・・なん・・・・・・だ・・・よ」(苦

そんな状況なのにツッコミを入れる朋也君に素直に凄いと思った。
でもさすがに止めないとね。

「ほら、智代ちゃん。
このままじゃ、彼、落ちちゃうわよ。
それは話を聞いた後よ」

「それもそうだな」

ん?
どこか違う?
いいのよ、こういうのは気づいた時にはっきりさせる方がいいんだから。

「ゴホッ、ゴホッ・・・」

「さて・・・
朋也、話してもらおうか」

口を押さえている朋也君(微妙に首も揺れている)に、腕を組んで仁王立ちの智代ちゃん。
身長では朋也君の方が高いのに、何故か彼女の方が大きく感じた。
朋也君、びびってるし(汗

「は、話すって言ったって・・・
ただ、その名前に何となく聞き覚えがあるようなないような・・・」

「だが、今の朋也の表情(かお)はそんな簡単なものじゃなかったぞ」

「そうか?
・・・その引っ掛かりがかなり昔のような気がしてな。
そのせいだろ」

「・・・それだけか?
それで思い出したのか?」

「いんや、さっぱり。
思い出す時は思い出すだろう」

「・・・わかった。
今はそれで納得しておくことにしよう」

「そりゃありがたい」

結局、朋也君も知らず・・・か。
結構、重要な記憶そうなのに。
少し残念ね。

「アッ・・・
すまない、置いてけぼりにしてしまった」

「構いませんよ。
朋也君の答えも聞けましたし」

「・・・すみません」

「朋也君。
そういうことには女の子は勘がいいんだから。
隠すのではなく、言った方が楽ですよ」

「・・・肝に銘じておきます」

「はい、よろしい。
所で、お時間よろしいんですか?」

「「あっ」」

会ってから結構時間が過ぎている。
貴重なデートの時間を削っちゃったわね。
ゴメンね。

「そ、そうだな。
智代、そろそろ行くか?」

「ああ。
宮下さん、そういうわけで」

「ご協力ありがとうございました。
すみません、せっかくのデートなのに・・・」

「いや・・・
こちらこそ、やってよかったと思う。
また、機会があればやってみたい。
それに貴女自身気に入った」

「そう言ってもらえると、こっちも嬉しいです」

ウウ・・・
そういう風に言ってもらえるなんて・・・
お姉ちゃん、嬉しいわ(マジ泣き

「それじゃ・・・」

「失礼する」

「はい。
2人とも、お幸せに」

「「っ!」」

赤くなった2人に手を振る、ちょっと小悪魔なわ・た・し(喜

 


2人を見送って、さっきまで座っていた場所に腰掛ける。
食べ損ねたパンを取り出して、用紙を膝の上に置く。
いいじゃない、早く知りたいんだから!!
認めるわよ、好奇心旺盛よ!!
悪い!?
半分逆ギレになりながら、目を通す。
うーん・・・
このワクワク感が堪らないのよねぇ。

 

Q1:相手とは年上?年下?

年上だけどそう感じさせないのは何故?

年下だが相手が子供っぽい所があって、私の方が年上のようだ

 

へぇ・・・
見た目は同い年のようだったけどね。
智代ちゃんのあの口調が特にそう思わせるわ。
でも、良い子じゃない。

 

Q2:恋人になる前のお互いの関係は?

一応、先輩後輩の仲?

他の誰よりも心地よい雰囲気を持った友人

 

あのね、智代ちゃん。
思いっきり恋する乙女じゃない(汗
それ以前の関係を書いてほしかったんだけど・・・
もしかして一目惚れ!?
まあ、彼女が『朋也先輩』とか敬語を使おうとしても、
『面倒だ』とか言ってすぐやめそうだけど。

 

Q3:どちらが告白しましたか?

正式な告白なら俺から

ちゃんとした告白は彼からだが、
その前に私が『ずっと一緒にいたい』と伝えたから、自分か?

 

やっぱり智代ちゃんが先だと思うな。
その事があったから朋也君は考えて答えを出したはずだもんね。
・・・彼、鈍感そうだし(笑

 

Q4:相手の性格は?

誰よりも強く(腕っ節が)一度決めたら『当たって砕けろ』ではなく『むしろ私が砕く』という、
多少強引な性格で女の子らしさに憧れている。
後、少し天然。
尽くすタイプ。

子供っぽくて面倒くさがりだが、自分より他人を大切にする。
今は社会人として、顔つきが逞しくなってきた。

 

朋也くんが優しそうだから納得できるけど・・・
智代ちゃんって強いの?
それとも朋也君にだけ強い(つまり尻にしかれている)ということかしら?
そういうことよね。
だって、女の子の方が強いんだから・・・ね。

 

Q5:お2人の出会いは?

ヘタレの付き添いで、こいつの教室に行った時だな。

私の関係でクズ達が学園に迷惑を掛けてしまい、鎮めた後に彼と馬鹿が私の教室に来た時。

 

ヘタレ?
馬鹿?
この2人にしてはやけに貶しているわねぇ。
これがコニュニケーションなのかしら?
もしかしたら、本当にヘタレで馬鹿かも?

 

Q6:相手にやめてほしい癖や行動は?

天然に恥ずかしめるのはやめろ

キス魔は卒業しろ

 

まあまあ、智代ちゃん。
そこの所は男の子からしたら仕方ないわよ。
嫌がったキスは朋也君はしないはずだし、本当は喜んでいるんじゃない?

 

Q7:では逆に好きなところは?

料理好きでまっすぐで、時々甘えてくる時

もちろん決まっている、全てだ

 

いや、もう・・・
まるっきり惚気ね。
他のアンケートでも、ここまで書くのは雪之丞君や舞人君の時くらいよ。

 

Q8:初めて行ったデート先は?

商店街

商店街だな
そこで大切な話をした

 

この町は商店街しかないからしょうがないって言ったら、
しょうがないけど・・・
初めてのデートくらい遠出しなさいよ。
それとも、その大切な話しの為に選んだのかしら。

 

Q9:では、一番印象深いデート場所は?

やっぱり商店街だな

やり直しする為に行った商店街だ
その時のことはずっと忘れないだろう

 

やり直し?
ケンカでもしたのかしら?
あの仲良しアツアツカップルが?
ううん、その分爆発すると凄いかも・・・
・・・・・
朋也君、彼女を怒らせては駄目よ(汗

 

Q10:自分がヤキモチをやくときはどんな時

彼女があまりにも優秀でカリスマ性を持っているから、近づいてくる男なんてたくさんいる
そのたびに気にしていたら疲れる
一応、信頼しているからな

あいつは外見より内面さに惹かれる
私が知っている限りでも、数人知っている
しかし呆れた世の中だが、見た目で判断するのが多いのが現状だ
その限りでは安心だ
しかし、これ以上ライバルを増やさない為に私自身努力しよう

 

微妙にズレているような・・・(汗
ようするにそれぞれ異性が近づくとヤキモチはするけど、
信用しているから大丈夫・・・ということかしら?
でも、智代ちゃん。
さっきのことみちゃんの件を見ると、そう思えないんだけど(汗

 

Q:11キスは付き合ってからいつ頃に?

そんな恥ずかしいこと書けるかー!!

その・・・
あいつが私を恋人と認めてくれた時に・・・

 

さきに智代ちゃんが告白したから、OKをもらった時ね。
あの2人だから結構良い絵になったでしょうね。
はあ・・・
相手がいない私にとっては羨ましい限りね・・・(溜息
本当に。

 

Q12:お互いのご両親に面会済みですか?

電話なら2人とも話した。
良い人だったよ。

ある。
すまないが、これ以上書けない。

 

訳ありね。
うーん・・・
次回からこの項目は削除しようかしら。
こういうのは載せていいか迷うし。

 

Q13:デートの待ち合わせの時間になっても相手は着ません。
   あなたはどうしますか?

あいつは約束は絶対守るからな。
待つんじゃないか?
でも、携帯持ってないからこっちからの連絡がつかないのが不安だ。

ど、どうしよう・・・
とも・・・あいつに電話を・・・
しかし、その携帯は仕事用だ。
こんな私用の為にかけていいのだろうか?
いや、しかし、事故でもあったら・・・
そんなことはない!
でも・・・(以下、長いので省略)

 

と、智代ちゃん、慌てすぎよ(汗
相手の名前が出掛かっているし、字が少し震えているわ。
用紙なんだから、心境そのまま書き出さなくても。
どうしようかしら、この解答・・・

 

Q14:相手に嘘はつけますか?

どうだろうな・・・
出来るだけ言いたくはないが、もし必要なら・・・

あいつにはありのままの私を見てほしい
だから嘘など言わないし、言ってほしくない
『自分が嘘をついて、相手には嘘を言うな』なんて馬鹿なことだ。

 

智代ちゃんの言葉も一理ある。
でも、人はそんな簡単なものじゃないのよ。
そういう所はまだ『甘い』。
彼女ももっと世間というのを知らなくちゃ・・・ね。

 

Q15:相手を動物に例えると?

熊。
別に本物じゃなくてだな、ぬいぐるみの小熊。

狼だ。
一匹狼の所があるが、大切なものを守りきり私なんかより強い。

 

お、狼と熊ね。
最強カップルじゃない。
朋也君の例えは内面さの評価だけどね。
それにしても智代ちゃんは小熊か・・・
頭の上に耳とお尻の少し上に丸い尻尾・・・
・・・・・・(想像中)
に、似合うじゃない(マジ

 

Q16:最後の質問です。
    相手とは婚約又は結婚する気はありますか?

そこは・・・まあ・・・その・・・・・・なんて言うか・・・
すみません、あります

私はあいつ以外には考えられない
これからも様々なことがあるだろう
だが、この想いだけは変わらない
もちろん、答えはあるだ

 

それにしても、ここまで言い切るのも凄いわね。
お似合いのカップルだし、幸せになってね、朋也君、智代ちゃん!

 

さて・・・
今日で此処は最後だし、頑張りますか!!

 

 

「お疲れ様でーす!!
宮下、戻りました!」

『お疲れー!!』

結局、あの後も成果はなくて、この2週間は朋也君達だけ。
ウウ・・・
今までで一番成績が悪いわ。

「お疲れ様、悠さん。
一ノ瀬さん、見つかりましたか?」

「いいえ、結局見つからずです」

「それはよかったですね」

「それはそうなんですけど・・・
一応、仕事に失敗してよかったとは・・・」(汗

複雑な心境だわ。

「あっ、ごめんなさい」

「いえ、先輩の言うことも分かりますよ。
では、編集長に報告してきますので」

「はい。
後でコーヒーを持ってきますね」

「ありがとうございます!」

詩織先輩のコーヒーはとても美味しいから、仕事から帰ってからの楽しみよね。
ちゃちゃっと編集長に報告しますか。

「編集長、ただ今戻りました」

「うむ。
では、報告を」

両肘をテーブルに着け、顎をを組んだ指の上に乗せて低い声を出す編集長。
重い雰囲気が広がる。
でも、これはほんのお遊び。
例えで言うと悪の秘密結社的なノリ。
もちろんその遊びに私も合わせる。
建前の報告もあるしね。

「編集長の指示通りにこの2週間の間、調査と称して一ノ瀬ことみを探索しましたが、
残念ながら発見することは出来ませんでした。
幼少の彼女を知っていそうな人物には出会えましたが、本人の記憶が曖昧な為、当てにはなりません」

「そうか・・・
ご苦労」

「はっ」

何故か敬礼する私。
雰囲気よ、雰囲気。

「以上で報告を終わります」

「ああ」

編集長が背伸びをして、重い雰囲気を消す。
以上、建前の報告終了っと。

「編集長も悠さんも何しているんですか」

ちょうどいいタイミングに詩織先輩がコーヒーを持ってきてくれた。
うん、やっぱり美味しい!

「ちょっと変わった雰囲気を出して、新鮮さを出してみたかったんだ。
どうだった、宮下」

「そうですねぇ・・・
時間は短かったですけど、楽しかったですよ」

「なら、次回は取り調べのシュチュレーションにするか?」

「編集長・・・
それで、アンケートの報告なんて合いませんよ」

詩織先輩までツッコミを入れられた。
編集長、ちょっと泣き入ってる(汗

「やっぱり2週間程度じゃ、アンケート調査は短いですよ。
悪い言い方ですけど、田舎ですし・・・
最後にやっと一組取れましたよ」

『はい、どうぞ』とばかり、用紙2枚を渡す。
編集長も受け取って、中身に眼を通す。

「それはすまなかったな。
今回みたいなことはこれで最後だ。
次回からまた毎日行ってもらうぞ」

「はーい・・・」

本当に足太くなったらどうしよう。
最近、太股が・・・
これ以上聞いたら、分かっているわね?(邪笑

「さて、先方に報告するから下がっていいぞ」

「「はい」」

電話を取る編集長を後にして、コーヒー片手に自分のデスクに戻る。
詩織先輩は一段楽したのか、隣に座って私とトークタイムに突入。

「知っているかもしれませんが、
今回の場所には一ノ瀬さん以外にも有名な生徒さんがいるんですよ」

「へえ・・・
知りませんでした。
男の子ですか、女の子ですか?」

「はあ・・・」

ケロッとしている私に、何故か眉間に指を当てて溜息をついている先輩。
どうして?

「・・・悠さん、お座りなさい」

「もう座ってますが・・・」

「姿勢を正しなさいと言っているんです!」

「は、はい!!」

理由は分からないけど、詩織先輩怒ってるよぉ(汗
普段滅多に怒らないのに、どうして突然怒るの?

「悠さん、今回行った場所にある学園ご存知ですか?」

「はあ・・・
学園があるくらいは・・・」

それがどうかしたの?

「なら、そこの生徒・・・女の子ですが、論文のコンクールにテレビ出演したのも、
もちろん知っていますね?」

「い、いえ・・・その・・・」(汗

「はい?」(怒

あう・・・
知らないし分からないよ・・・
誤魔化すのも無理そうだし、ここは正直答えよう。

「わ、分かりません・・・
ごめんなさい」

「・・・・・・はあ」

先ほどよりも深い溜息をおつきになる詩織さま(思いっきりヘコヘコしています)

「悠さん・・・
確かに今回のアンケート調査も一ノ瀬さんのことも関係ありませんが、
事前に調べておくモノですよ。
それに、この女の子はこの業界では有名なんですから。

『カリスマ性を持ち、成績優秀。
誰からも信頼され、切られるはずの桜を守った美少女。
だが、春から公の場から姿を消し、普通の生徒として過ごす』

私達とは受け持つ仕事は違いますが、他の方達が特集で雑誌に載せたじゃありませんか?
それでも知らないのなら、悠さんの情報と認識不足です」

詩織先輩が怒るのも当然だわ。
自分達が出している雑誌の内容すらも理解していないなんて・・・
穴があったら入りたい(泣

「・・・すみません。
以後、気をつけます」

「はい。
分かっていただければいいんです」

『お説教はお終いです』と言って、いつものほんわかとした雰囲気をだす先輩。
しっかりしなくちゃ、私!!

「あの、詩織先輩・・・
その女の子の名前は・・・?」

「言い忘れていましたね。
その女の子のお名前は『坂上智代』さんといいます」

「ああ、智代ちゃんですか。
今回の唯一のアンケートに答えてくれたカップルなんです。
あの子は可愛いと言うより、綺麗ですよね。
あれで高校3年生なんですから反則ですよ。
言葉使いもちょっと男の子っぽいけど、あれはあれでいいですよね」

「・・・・・・」(固

「詩織先輩?
どうかしまし・・・」

ちょっと待て、私・・・
今、なんて答えた?
私は詩織先輩に『その有名な女の子の名前は?』と訊いた。
詩織先輩は『坂上智代』と言った。
知らないはずの私が、世間対ではなく個人として知っているように話した。
つまり・・・

有名な女の子→坂上智代→今日アンケートを受けてくれた智代ちゃん

と、なるの?
私、またやっちゃったの?(汗

「ゆ、悠さん、か、確認させてほしいんですが・・・」

「わ、私もしてほしいです・・・」

外れててほしいなぁ。

「髪は長かったですか?」

「ええ。
とても長くて綺麗でしたよ。
ヘアバンドしていました」

「眼鏡を掛けていましたか?」

「はい。
用紙に書く時には・・・ですが」

「・・・
少し待っていてください」

大丈夫、大丈夫よ。
これくらいなら似ている人はいる・・・はず。

「では・・・
これを見てください」

詩織先輩が持ってきたのは、ウチの雑誌で開いてあるページの写真を指差す。
そこには・・・

「・・・・・・智代ちゃん」

何所をどう見ても(眼鏡を掛けているけど)、私が知っている智代ちゃんだった・・・

「・・・悠さん」

「はい?」

先輩が指差す所を見ると、聞こえていたのか編集長がものすっごい笑顔で、
おいでおいでしていた・・・(汗

 

私って・・・
どうしてこういう変な運に見舞われるのよー!!(絶叫

 

 

終わり(おそろく)

 


やっと終わりました、『幸せは手の中に』編。
初めに困ったのは・・・クルーザーさんのお返事にも書きましたが、学園名と待ちの名前が不明なんです。
そのためにビジュアルファンブックも購入したのですが、乗っていませんし(汗
結局、出会っていないことみをダシにして強引なストーリーにしまいました。
始めはほんの少し暗めな部分がありましたし・・・
それでも最後には妙な運に振り回される悠さんでした(笑