今日は大晦日。
それは明日に新年を迎える準備の日である。
だが、乙女達にはそんな事は関係ない。
それぞれが想い人との為に忙しい・・・

 

 

〜星崎希望〜

「よし、これで準備よし」

「希望お姉さん、こっちも用意できたよ」

現プリンセス『星崎希望』と未来のプリンセス『水無月瑛』が、
明日迎える新年の準備をしているようだ。

「わかったわ、瑛ちゃん。
ふふ、着物も用意したし・・・
『彼』、似合うって言ってくれるかな?」

「もちろんだよ。
ものすごく綺麗だったもん」

どうやら先程まで着物の着付けをしていたようだ。

「ありがとう。
・・・今年こそ、『彼』と恋人同士になるんだから!!」

「私も今年は和人と進んだ仲になる!!」

・・・一応、新年の抱負だろうか?

「もうすぐだから待っててね!!」

「待ってなさいよ、和人!!」

それぞれが気合いを入れて、想い人との新年の出会いを待つ・・・

 

一方、その『彼』は・・・

「ブッ!!ゲフッ、ゲフッ・・・」

彼女の想い(気合い?)が届いたのか、昼食中につまっていてもいないのにムセていた。

 

 

〜雪村小町〜

「はあー、やっと終ったー」

どうも、今まで大掃除をしていたらしい。
1人暮らしでは珍しいぐらいの真面目様だ。

「これで、明日は『せんぱい』が来ても大丈夫!」

・・・動機は不純だが。

「・・・星崎先輩達や青葉ちゃん達には負けない。
だって、私が一番『せんぱい』の事を知っているんだから!!」

彼女も気合い十分だ。

「せんぱい。
わたしを選んでくれるなら、呪いだってかけますし受け入れます!!」

いや、呪いはマズイのでは・・・(汗

「『せんぱい』、私の気持ち届いていますか?」

ま、まあ、それほど想っているという事でしょう・・・

 

一方、彼女の真下に住んでいるその『せんぱい』は・・・

「だーーー!! 『呪い』にかかるだとーーーー!!」

テレビゲームでRPGをしていた所、敵に『呪い』をかけられ全滅したらしい・・・
彼女の『呪い』が通じたのかは謎だ・・・

 

 

〜八重樫つばさ〜

「おねえちゃん、いいですか?
元々、男性というのは・・・」

「・・・ねえ、イクイク?
私が聞きたいのはそういう事じゃなくて・・・」

彼女がバイトをしている喫茶店『シャルルマーニュ』。
その席で妹の郁奈と話し込んでいる。
ただ、その内容は・・・

「えっ?
だって、おねえちゃんは『どうすればあの人と仲が発展するのだろう?』と、
聞かれたのでは?」

「い、いや、そうなんだけど・・・。
何もそこから話すことはないんじゃない?」

彼女自身、恋愛に関しては疎いと自覚しているのだろう。
その事を相談しようにも他の女性は皆ライバルらしい。
そこで、年齢の割にはしっかりしている妹に相談した様子。

「いけません。
相手のことをしっかりと理解しないと勝つ事は出来ませんよ」

「そ、それはわかるけど・・・」

しっかりしていても、所詮小さな女の子。
男性うんぬんから話されても彼女にとって知っている事だし(知識としては)、役に立つとは思わない。
何しろ、相手は掴み所のないのだ。

「解っていただいた様ですので、
話の続きを始めますね」

「・・・どうぞ」

姉思いの気持ちが通じるからこそ、妹の好意(行為?)を切り捨てるは出来ない。

「恨むよ、『あいつ』め・・・」

理不尽だとわかっていても思わず文句が出る。
本人が聞けば『恨むのはこっちだ!』と言ってワラ人形と釘を持ち出すかもしれない。

 

その頃、『あいつ』は・・・

「うーーん、うーーん・・・」

ゲームで不機嫌になりふて寝をしていた所、悪い夢でも見ているようだ。
『呪い』に続き、『恨み』までキャッチするとは・・・
ある意味、器用な男である・・・

 

 

〜里見こだま&結城ひかる〜

「ねえ、ひかり。
これはどうかな?」

「うーーん・・・
これよりあれの方がいいんじゃない?」

ショッピングセンターに買い物に来ている。
しかし、ネコリュックを背負っている小さい女の子(ここが重要)が手に持っている物は、
少し渋めの男性用の服だが・・・

「ええー、そうかな?
こっちの方が『あの子』に似合うよ。」

「わかってないわね、こだま。
『あの男』に合うのはあれよ」

眼鏡を掛けた少し性格がキツそうな女性が、
指差すのは逆に少しハデだがセンスは悪くない。
・・・これも男性用だが。
どうやら、ある男性に送るプレゼントを選んでいるようだ。
正月からプレゼントというのは珍しい・・・

「そんな事ないもん!
絶対、こっちの方が似合うもん!!
それで、私が選んだ服で『あの子』と初詣に行くんだから!!」

「・・・聞き捨てないわね、こだま。
なら、言わせてもらうけどあれの方が間違いなく似合うわ。
その選んだ服で『あの男』の隣りに歩くのは私よ」

それぞれ同じ動機があるらしい。
・・・納得。

「絶対こっちだよ!!」

「いいえ、あれよ!!」

お互いにヒートアップして行き、収集がつかなくなってきた。
怒りで周りに人が集まっていることにも気づかない。
ケンカするほど仲が良いと言うがこの場合はどうだろう?
・・・それから一時間後、それぞれが決めた服を購入し、
『明日、本人に決めてもらおう』という事で落ち着いた。

 

彼女達の怒りが最高潮になった時、『あの子』&『あの男』(同一人物)は・・・

ドス!

ガツン!

「ブッ!!」

悪夢から逃げるように暴れて、ベットから落ちた。
ただ、顔面からだが・・・
どうやら、1人分の『恨み』より2人分の『怒り』の方が勝ったらしい。
悪夢から覚めた事に喜ぶべきか、さらなる不運に嘆くべきかは本人次第である。
さすが主人公、お約束を忘れない男だ。

 

 

〜森青葉&芹沢かぐら〜

「よし、完成!」

「お疲れ様、かぐらちゃん。
何か飲む?」

「ありがとう、青葉ちゃん
それじゃあ・・・紅茶、お願い」

「うん、わかったよ」

出来たものを机の上に持っていき、お互いに休憩し始める。

「ごめんね、青葉ちゃん。
おせちの作り方、色々教えてもらった上に台所まで借りちゃって」

「いいよ。
私も作るし、お父さんもいないから一緒で楽しかったもん。」

どうやら、今までおせちを作っていたようだ。
それぞれ2段づつ綺麗に盛り付けした重箱が置かれている。

「『あの人』、おいしいって言ってくれるかな?」

「もちろんだよ。
上手に出来たし、『おにいちゃん』も喜んでくれるよ」

お互いに食べてもらいたい人がいるらしい。
顔には多少疲れが出ているがそれ以上に喜びに溢れている。

「今年は本当に色々あったよね・・・」

「うん・・・」

2人共、今年の出来事を思い出していると・・・

 

ドスッ

 

「あれ?」

「『おにいちゃん』の部屋からだね」

隣りの部屋から物音がするが彼女達には特に反応はない。
それが彼女達にとって『日常』だからだ。
この辺りから彼への見方がよくわかる。

「でもね、かぐらちゃん」

「なに?」

「このおせちには精一杯、『おにいちゃん』への想いを込めたんだから。
負けないよ」

「わ、私だって『あの人』の為に頑張ったんだから。
勝負だね、青葉ちゃん」

「もちろん、受けて立つよ」

ここでも対決があるようだ。
しかし、認め合っているだけ某上級生達に比べたらマシだろう。

 

その頃、『お兄ちゃん』&『あの人』(再び同一人物)は・・・

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」

顔面を全体重分の重力を受け、悶絶していた。
最後の最後まで楽しましてくれる。

 

 

それぞれが、準備万全で新年を迎える。
新年からさっそく、彼にとって騒がしい日になるだろう。

そして新年、正月一月一日・・・

 


2002 BasiL 『それは舞い散る桜のように』

「いつまでも貴方のそばに・・・」
 (番外編・桜井舞人のお正月)


 

「はあ〜、なぜこの俺が新年からこんな目に会わなくてはいけないんだ・・・」

「こんな目って、ひどいなぁ」

「黙れ、星崎。
貴様が一番被害が多いんだぞ」

「何、それ?
私、知らないよー」

「こ、このアマ・・・」

そう、昨日の大晦日から運が悪く、嫌な予感がしていたが・・・
夜は山彦と部屋で蕎麦(カップ麺)を食って静かに新年を迎えようとしたが・・・

 

まず、新年ジャストになると計っていたように(実際計っていただろう)チャイムが鳴り、
ドアを開けると『下級生ズ3人娘』(小町・青葉・かぐら)勢揃いで立っていた。
とりあえず、中に入れると非情にも山彦は『お邪魔虫は退散するか』と清々しい笑顔で逃げていった。
(後で覚えてろ)
その5分後に『アンバランス上級生軍』(こだま先輩・ひかり姐さん)がご到着なされた。
何故か、その2人から『どっちを選ぶの!?』と服を出され(突き出され)、いきなり崖っぷちに追い込まれる。
(新手の痛がらせか?)
何とか収集を着け(取りあえず両方貰い、今は持っている服を着ている)、
落ち着いたと思ったら我が宿敵『八重樫つばさ』が襲来。
まあ、今回は土産があったから休戦した。
(土産に釣られたわけではないぞ)
今度こそとおもったら、最後にプリンセスが着物を着て参上した。
だが、先に来ていた彼女達を見ると見事に暴走(汗
もう、部屋の事は語りたくない(泣
ちなみに、青葉ちゃんとかぐらちゃんのおせちは守ったという事だけ知らせておこう。

 

全員揃った事で皆で初詣に行こうということになり、神社に向かっている最中だ。

「ねえねえ、せんぱいせんぱい」

「何だ、雪村?」

「雪村は想いを込めて、せんぱいに年賀状を10枚送りましたのでしっかりと受け取ってください」

「雪村。
受け取ってはやるがただ送る事ではイカン。
新年最初の運試し、年賀状のお年玉くじを当たるようなモノを送らなくてはダメだぞ!!
そう、これこそ最初の運試し!
当たれば縁起が良いと思い、当たらなければ不吉な予感!
まさに、人生ルーレット!!
わかるな、雪村!!」

「うわー、さすがせんぱい。
乙女の純真な想いより、切手入れの方が大事なんですね。
惚れ直しちゃいます。
ちなみに雪村は残念ながら予知能力は持っていませんので、当たりのハガキを送る事は出来ません。
順番をバラバラにしたものを送りましたのでこれで許してください」

腕を上げたな、雪村。
お兄ちゃんは嬉しいぞ(お兄ちゃんって誰だ?)

「・・・あんた達、何ていう会話しているのよ」

駄目ですぜ、ひかり姐さん。
これぐらいに着いて来れなくては先は続かないぜ。

「それにしても、結構人がいますね」

「そうだね、かぐらちゃん」

「そうだな・・・」

青葉ちゃん達の言葉で周りを見回すと、確かに同じ方向に向かう人が多い。
深夜に関わらずだ。

「そろいも揃って、行事物に流される愚民共め」

「私たちもその内の1人だよ」

「・・・だまらっしゃい」

星崎の的確な突っ込みに何も言い返す事が出来ないとは・・・
無念!

「舞人、いい加減にしないと土産やんないわよ」

「すみません、八重樫さん」

クッ!
人質を取るとは!
八重樫つばさめ!!
卑怯なり!!
ちなみに、その土産はヤツがバイトをしている喫茶店『シャルルマーニュ』の商品割引券。
再度言うが決して釣られたわけではないぞ!!
(少し矛盾している)

「舞人君は初詣の意味をわかっていないようだね。
いい?
元々初詣というのは・・・」

こだま先輩が『説明ポーズ』(右手の人差し指を出して左手を腰に当てる)を決め、
初詣について語りだす。
俺はその話を聞き流し神社を目指す。
はあー、早く着かねーかな。

 

 

あれから10分して神社に着いた。
いや、正確に言えばまだ入り口だが。

「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」

しかし、俺達全員言葉もなくただ立ち尽している。
だって・・・

「も、もの凄い人数だな」(汗

「そ、そうですね」

唯一、雪村だけは返事を返すがそれも掠れている。

「さて、この人盛りに突撃する根性のあるヤツはいるか?」

「い、行くよ、もちろん」

星崎だけでなく、彼女達はあの要塞に攻める気だ。
何が彼女達にそこまで決意させるものがあるかわからんが、
その心意気だけは誉めてやろう。

「そうか・・・
ならいって来い。
俺は帰る」

「ま、待ってよ、お兄ちゃん!」

「待ってくださいよ、舞人さん!」

後ろを向いて我が家に帰還しようとすると、
青葉ちゃんとかぐらちゃんが腕を掴んで止める。

「桜井・・・
あんた、もしかして帰るつもりじゃないだろうね?」

ひかり姐さんがとてつもなく怖い表情をしてくる。
これで、剣を持てばアマゾネスの完成だ(汗

「し、しかしですね、姐さん!
こんな人ごみを掻き分けて、神様を拝んだって何の意味がある!?
それなら、家にある仏さんを拝めって感じですよ!!」

「大丈夫。
舞人君なら、これぐらい何でもないよ」

「黙れ、星崎。
こんな事で体力使うなら、寒中水泳した方がマシだ!!」

本当にやれと言われれば困るが・・・

「ま、舞人君、さっきも言ったけど初詣というのはね・・・」

「こだま先輩の話はさっき聞きました!
ですが、所詮神社に着いたってやる事はお賽銭を投げて、
願い事を言うだけじゃないですか!!
1人が減ったって神様は喜ぶこそすれ、悲しむ事はないですよ!!」

本当は聞いていないというのは内緒だ。
悪いと思うが、この人だかりを蹴散らしてまでいくほどの目的は俺にはない。
青葉ちゃん達を振りほどいて、帰ろうと一歩進むと・・・

「・・・たこ焼き」

ピタッ

何?

「イカ焼、焼トウモロコシ、リンゴアメ」

プルプルプルプルプル・・・

クッ。
八重樫の誘惑の言葉が俺を惑わす。
そ、そうだ、俺はこれを食いにここまで来たのではないか!

「ベビーカステラ、おでん、栗、綿アメ」

・・・・・・・
腹は決まった。

「皆の者、何をしている!
早く行くぞ!!
俺に続けぇーーーーー!!」

再度、後ろ(神社の方向)を向き彼女達を追い抜き、要塞に攻める。

「舞人ー、荷物になるから先にお参りねー」

「了解!!」

今の俺に止められるの何もない!!
この苦労でさえ、後から来る達成感のスパイスなものだぜ!!

「うおおおおおおお!!!」

 

「・・・さすが八重ちゃん。
伊達に2年間、舞人君と付き合っていないね」

「まあね。
あいつをその気にさせるなんてマッチに火を付けるより簡単よ。
でもね・・・
あいつ自身を手に入れようとするのは、それこそある意味全てを賭けなくちゃ駄目よ」

「うん、そうだね」

 

 

「ぜー、ぜー、ぜー・・・
やっと着いたぜ」

「お、お疲れ様、お兄ちゃん」

「大丈夫ですか、舞人さん?」

「お、おう。
食うまでは死んでも死にきれん」

八重樫の巧みな作戦に乗せられ、全力疾走で駆け上がりようやく着いた。
俺の後ろから悠々と上がってきた奴らが憎いが罪はない。
あるのは、俺をそそのかした・・・

「ああ、ご苦労さま。
どう、新年最初の運動は?」

「き、貴様・・・」

こいつだ!

「もう、そんなに睨まなくてもいいじゃない?
ちゃんとお礼もあるわよ」

「お礼?」

な、なにが出るんだ?

「皆と相談して、後で食べるもの全部奢ってあげるわ」

「ほ、本当か!?」

「もち」

「ありがとう!
八重樫、睨んで済まなかった!
今年も、仲良く行こうじゃないか!!」

よっしゃあ、食いくるぜ!!

「・・・舞人君って単純」

「逆にその方がいいんじゃない?
ねえ、 こだま?」

「そ、そうだね」

さあ、皆もこの喜び分かち合おうじゃないか!

「せんぱい。
そろそろお参りしましょう」

「お、おお、そうだな。
さっさとして食いに行くぜ!」

「はいはい」

 

 

それから、俺たちはお賽銭を投げてお参りをした(鈴を振りまくってやったぜ!)
と言っても、今の俺の頭の中は食い物でいっぱいだ。
すぐに抜け出したが彼女達は中々終らなく3分くらいしてやっと来た。
そんなに何を願っていた?
それから、文字通り出店に有るものを食いまくってやった。
だが、家に青葉ちゃん達のおせちがあることを忘れていて苦労して食った。
『どっちが美味かったか?』と聞かれても、食うだけで苦労したのに味の判別など出来るはずがなく、
保留にしてもらった。
マジで苦しかったよ(汗

 

その後、正月の初めの一日はゆっくりさせてくれと懇願したので、
明るくなってきた頃に帰ってもらった。
それから一度寝てから届いている年賀状をチェックすると、
どういうわけか朝陽と桜香から届いていた。
内容を見るとこう書いてあった。

『新しいゲームはどうだい?
君も苦労しているみたいだけど、まだまだこんなものじゃないよ。
まあ、しっかり頑張ってくれたまえ』

こ、これ以上に何が起こるんだ?

『舞人さん、お久しぶりです。
今の貴方には笑顔が浮かんでいるでしょうか?
この状況はまだ続きますので頑張ってください』

つ、続くのか?
ま、まあ・・・
今はこの静かな日を楽しもう(汗

 

・・・平穏な日々、カムヒアーーー!!(絶叫)

 

 

終わり

 


皆さん、あけましておめでとうございます!
siroです。
これからも『幸せなる日々』を頑張っていきますのでよろしくお願いします。
今年もいい年になりますように・・・
・・・いかん、プロローグが長すぎた(汗