―ライル・卒業式―

 

「ライル・エインズワーズ!」

「はい!!」

名前を呼ばれ、ゆっくりと舞台に上がる。

「お疲れ様」

「いいえ」

卒業証書を渡す学長・・・お母さんに返事をする。

 

試験も無事クリアし、今日はとうとう魔法学園の卒業式。
試験は色々考えさせられることが多かったけど、受けてよかったと思う。
いや、この魔法学園に来て本当に良かった。

 

「それでは、卒業式を終了します」

 

『一同、礼!!』

 

さてっと・・・
これからが大変だ

 


2002 スタジオ・エゴ!『メンアットワーク3』

『その後の物語』
最終話・これからの未来


 

卒業式も終わり、
今はバラバラになってそれぞれの恩師に挨拶に回っている。
と言うオレもお母さんと執務室で話している。

「フフフ・・・
息子の卒業式に証書を渡すなんて可笑しいわね」

「そうだね。
でも、親としたら特別席じゃない?」

「それもそうね」

今は学長としてではなく、母親として話しているから敬語はなし。

「それで、ライルはこれからどうするの?」

「うーん・・・」

正直、これとって何がしたいということは無い。
当初の予定は決まっているけど。

「とりあえず、ジャスティンについて行って行こうと思う」

「あら?
どうして?」

「約束があるから」

「そう・・・」

試験の時にジャスティンと約束をした。
『卒業したらジャスティンの屋敷に皆で行こう!!』 と・・・
皆はどうかわからないけど、オレはそのつもりだ。

「なら、その後はどうするの?」

「特に考えていないけど・・・」

「なら、私にアイデアがあるけど、いいかしら」

「へ?
何?」

その内容は余りにも予想外で、飛びすぎた話しだった。

「・・・どうかしら?」

「それはちょっと・・・
それにオレでいいんですか?」

「ええ。
ジェイルは乗り気じゃないしね。
貴方なら大丈夫よ。
それに良い事もあるのよ」

「良い事?」

「それは・・・」

確かにその内容にまた驚かせられたけど、取り合えず保留にしてもらい部屋から出た。

「それじゃ・・・」

「いつでも帰ってらっしゃい。
それと先ほどの件、よろしくね」

「はい・・・」

さて、どうしたものかな・・・

 

 

卒業式から数日が経ち、魔法学園から離れる日が来た。

「ついに、こことお別れか・・・」

「そうね・・・」

荷物をまとめて駅に行き、汽車が来るのを待っている。
もちろん、ミラとジェイルを含めて全員いる。

「さて、皆はこれからどうするの?」

本当は前から聞きたかったけど、
全員何か考えているようだったので敢えて聞かなかった。

「リサはやっぱり、帰らずに旅に出るっす!
そして、もっともっと強くなるっす!!」

リサらしいな。
まあ、ハンターの仕事は高額だからやっていけるだろう。

「僕は故郷に戻るよ。
そして、僕自身を認めさせるよ」

実は、ジャスティンには約束の件を話すと一人で戻ると言った。
『やっぱり、自分自身の力で認めさせたい』との事。
オレは何も言わず、『頑張れ』と言った。

「私達も旅に出るわ」

「やっぱり、俺達はこの方が性に合ってるわ」

ミラ達も旅に出るそうだ。
彼らもその方は合っている。
ただ、年に一度はココ・・・魔法学園に帰って来いとお母さんから言われたらしい。

「そういうライルはどうするの?」

ミラに聞かれると、何故かモニカ・フィリス・瑞穂の眼が怪しく光った(汗
そして、オレを掴みそれぞれの主張を掲げる

「ライルは、私達の故郷に戻って村の皆とお母さんに報告するのよ!!」

「いいえ。
ライルさんにはサイフォン家に来ていただいて、お父様達に会っていただきます!」

「フィリスさん、それは違います。
ライルさんは東洋に来ていただいて綾小路家の者達にご紹介しまう!!」

あ、あのさ・・・
オレの意見は?
オレだって一応、お母さんが提案してくれた事もあるんだけど・・・
モニカ達がもめている光景を見ながら、リサたちはそれぞれ言葉をくれる。

「兄貴、頑張るっす」

「ライル・・・
もう少し女心に注意してね」

「ライル、義姉からの忠告よ。
はっきりと決めなさいよ」

「だははは!
ライル、幸せ者だな!!」

本当に暖かい言葉を・・・(泣
そんなオレにさらに追い討ちが・・・

 

ガシッ!(右腕

 

「ライル、もちろん故郷に戻るわよね!!」

「へ?」

聞いているのではなく断言なのね(汗
しかも痛いんですけど・・・

 

ガシッ!(左腕

 

「ライルさん、駄目ですか?」

「うっ?」

フィリス、その上目使いは反則だよ。

 

ガシッ!(背中から前へ手を回す

 

「もちろん来てくれますね、ライルさん?」

「うう・・・」

瑞穂、一応疑問系だけど涙目も反則。

 

「「「さあ、どう(するの、します)!?」」」

「あ、あうあう」

答えを返す事が出来なくて、壁際まで追い込まれる。
その時・・・

 

ポー・・・

 

ちょうどうまく汽車が着てくれた。

「ほ、ほら、汽車も着たことだし乗ろうよ!!」

取り合えずこの場を収めようと必死になるが、
すぐに後悔する。

「・・・そうね、汽車の中でもゆっくり聞けるわね」

「そうです、丸一日ありますから」

「そうしましょう」

3人同時に頷いて、それぞれがオレを引きずりながら汽車に向かう。

「兄貴・・・」(汗

「・・・自業自得だね」

「身から出た錆ね」

「俺達も乗ろうぜ」

俺達の後をリサ達も追ってくる(忘れられたオレの荷物も持ってきてもらって

 

これから先にどんな事があるか分からないけど、きっと乗り越えられる。
仲間や愛しい君達がいるなら・・・

 

 

―数年後・魔法学園―

 

「はい、今日はこれでお終い」

「ほら、そろそろ寝る時間よ」

「えー!
もっと聞きたいよ、ママ、瑞穂ママ!!
ね、菫?」

「うん。
駄目なの、お母さん、モニカお母さん?」

「駄目です。
いい子はもう寝なさい」

「ほら、アナタも言ってください」

モニカと瑞穂がそれぞれの子供達を説得するけど、
興味津々な眼を見れば無理だと思うけど。
しかし、父親として言わなくちゃいけない。

「ほら、カミラ、菫。
お母さん達を困らせてはいけないよ。
その代わり、明日は学園が休みだからお父さんが遊んであげるよ」

「「本当!?」」

「本当だよ。
お父さんが嘘を付いたことがあったかい?」

「「ううん、ない!!」」

「なら、今日はお休み・・・」

「うん!
それじゃ、フィリスママにお休みを言ってくるね!!
行こ、菫!!」

「ま、待ってよ、お姉ちゃん!!」

「もし、フィリスママが寝ていたら起こしちゃ駄目だぞー」

「「はーい!!」」

元気一杯に返事して部屋から出て行く娘達。

 

「アリガト、ライル」

「アナタも明日はお休みなんですか?」

「ああ。
それに、フィリスもそろそろだし側にいてあげたいしね」

 

魔法学園を卒業してから数年後・・・
オレは提案にあったお母さんの跡を継ぎ、第7代学長となった。
色んな理由があるけど、一番の理由は簡単。
どうしてもモニカ・フィリス・瑞穂の3人から選ぶことが出来ず、
学長になればそれぐらいの融通を利かせるくらいの権力があったらしいのだ。
その考えを聞かせた時は彼女達は驚いていたけど、賛成してくれた。
モニカは良いとして、サイフォン家と綾小路家が中々認めなくて大変だったけど、
本人達の説得とお母さんを始め先生達にも協力していただいてうまくいった。
今は学長として何とかやっている。
モニカ達も教師として働いている。

もちろん、それだけじゃない。
モニカとオレの娘(というよりモニカにそっくり)、カミラ・・・
瑞穂と俺の娘(この子はお互いに面影がある)、菫・・・
フィリスは妊娠中でそろそろの予定だ。

 

「そう言えば、さっきの娘達に聞かせていた話だけど、
懐かしいな・・・」

「そうね・・・
色々会ったわね」

「そうですねぇ・・・」

少し上を向いてあの日々を思い出す。

 

リサは今も独身でハンター内では有名になっている。

ジャスティンは無事、跡を継ぎ良い領主としてやっている。

ミラとジェイルもすでに結婚しているが子供はまだいない。
2人曰く『子供が生まれれば旅や闘いが出来ないからそれに飽きた頃にでも生むわ』との事。
ちなみに余談だが、娘達に『ジェイルおじさん』と呼ばれたのがショックを受け、
『お・に・い・さ・ん・だ!!』修正しているがその効果は未だ出ていない。

 

「感傷に浸るのはフィリスの所に行ってからにしよう」

「そうね、フィリスも退屈しているし」

「それでは、お茶でも用意して行きましょう」

多少、準備してからフィリスと娘達がいる(寝ていないと断言)部屋に向かう。

 

 

ふと、部屋に続く道を歩いていると3人にプロポーズをしたときのことを思い出す・・・

「本当に良いのかい?
誰も選べないからこんな手段しか思いつかない男だよ?」

「良いも何もライルは私達の為にここまでしてくれたじゃない。
なら、私達の答えは決まっているわ」

「そうですよ。
卒業試験の時にも言いましたよね?」

「『私は貴方だけを愛しています。
いつまでも側にいてください』って・・・
だから、私達の返事は・・・」

「「私を貴方のお嫁さんに・・・妻にしてください」」」

 

 

あれから娘が生まれて・・・
慌しくても幸せな日々がある。
この幸せな日々を俺は絶対守る。
何があっても、どんな事が起きても・・・
全ては・・・

「ライル、どうしたの?」

「お疲れですか、アナタ?」

「アナタ、私もカミラ達に負けないくらいの赤ちゃんを産みますね」

彼女達のために・・・