俺は小さい頃、道に迷っていた時にある家に入った。
そこには綺麗な庭とヴァイオリンを持つ少女がいた。
それからは毎日、彼女の家に遊びに行った。
その少女の誕生日の日に、友達を集めようとしたけど誰も着てくれなかった。
約束を守れなくて、顔を会わせられなくて・・・
そのまま、その家に行くことはなかった・・・

そして、俺たちは長い月日の後、学園の図書室で出会った。
しかし俺はその記憶を忘れていて、古河・杏・藤林と共に友人として付き合っていく。
杏が漫才もどきを教え、古河と藤林が演奏会を開いたり、俺はそれを見守っている。
両親を失って俺を待っていた彼女にしたら、どれほど辛かったかと思うと自分を殴りたくなる。

そんな時、あるキッカケで彼女は自分の家に閉じこもってしまった。
両親を失った悲しみと恐怖がよみがえったのだ。
その時の俺はまだ分からなかったが、心配して彼女の家に行って荒れた庭を見た瞬間、 思い出した。
小さい頃のことみ、優しい両親、綺麗な庭、そしてあの歌・・・
俺は何度も挫けそうになったけど、必死に庭を直し、想いをことみに届けた。
そしてその想いは届き、彼女を抱きしめて外の世界に・・・陽の当たる場所へ連れ出した。
数日後に、後見人の人が両親の想いと数多くの人の想いが詰まったカバンを届けに来た。
娘の幸せを望む両親が込めたぬいぐるみと、その想いに打たれた世界中の人達が彼女に届けようとしたカバン。
そのたくさんの想いが彼女に本当の笑顔を取り戻してくれた・・・

今は平凡ながらも楽しい日々を送っている
そんな最愛の彼女は演劇部(仮)の部室で・・・

「ここでツッコミ!!」

「なんでやねん」

杏から漫才の練習をしていた(汗

 

 

「って、それこそなんでやねん!!」

その理不尽に思わずツッコミを入れてしまった。

「何よ、急に大声出して」

「朋也君、ツッコミ上手なの」

「ビックリしました」

「わたしも」

冷静に聞く杏に、何故か感心していることみ、驚いている古河に藤林。
スマン、古河・藤林。
別に驚かせようして叫んだわけじゃない。
ただ、予定していた放課後とかなりかけ離れた現状に・・・な。

「なあ、杏。
いつまでことみにそんなもん教えているんだよ?」

「もちろん、わたしが納得できるまでよ!!
目指せ、某大阪お笑い芸人!!」

「がんばるの」

グッと拳を握り締める杏と、ムンッと気合を入れることみ(汗
芸人になってどうすんだよ、おまえ・・・

「それだけの為に・・・
放課後はことみとあの庭で、優雅にティータイムするはずだったんだぞ」

その言葉を聞いた杏は、ニマァとした嫌な笑みを浮かべた。
しまった、やぶ蛇だ。

「あらぁ、もしかして私たちってお邪魔だったかしら?
それはごめんなさいね・・・
親友の私達を放って2人だけラブラブするなんて、朋也にしたら考えられないからぁ」(邪笑

「ぐぬぬ・・・」

どう言い返せばいいんだ?
ことみはキョトンとしているし、あの2人は苦笑しているだけでフォローする気はないようだ。
というか、藤林!
姉のことなんだから、少しは何とかしろよ!!

「ま、まあ、それは置いておいてだな。
教えるなら他にもあるだろ?」

「それならヴァイオリンの練習でもさせる?」

「・・・ゴメンナサイ。
これ以上イジらないでください」(泣

「あはは!
あんたは私の言うことをきいていたらいいの!!」

「理不尽だ・・・」(諦

神よ・・・
このジャイアニズムの女を何とかしてください(泣

「が、頑張ってください、岡崎さん!」

「ご、ご愁傷様です」

そう思うなら、少しは・・・もういい。

「でもね・・・
確かにこんなことばかりもあれだし・・・」

ようやく分かってくれたか。
安心していると何か思いついたのか、さかんにことみを見る杏。

「・・・・・・」(ジー

「??」

どうした?

「ねえ、朋也」

「あん?」

「正直に答えて」

「あ、ああ?」

何を訊いて来るんだ?
あのことか、それともこのことか?
ぐわー、心当たりが多すぎて分からん!
しかし、杏からの質問はどれとも違った。

「このオドオドしたことみが、高校を卒業して・・・
大学に行くにしろ、世間を渡っていけると思う?」

「無理」(即答

「でしょうね」

そりゃそうだろう。
知識は学園一でも常識が少し欠けている。
それは本屋での件で実証済みだ。

「今の世の中・・・
特に女の子は気にしすぎがいいくらいなんだから。
・・・あんた達もよ」

「「えっ?」」

うん。
この2人も騙されやすそうだな。
・・・古河はあのオッサンがいるから大丈夫か。

「あんた達はまた後日ということで・・・
まずはことみよね。
ことみ」

「なに、杏ちゃん」

「一人の学校帰りで、知らないおじさん近寄ってきて、
『お菓子を上げるからおじさんのところに来ない?』
って、訊いて来たらどうする?」

杏の例えはあまりにも古かった!!

「・・・・・・」

ことみは想像中なのだろう。
しばらくすると・・・

「・・・いじめる、いじめる?」(泣

ことりの対処方法も低かった!!

「駄目じゃない、ことみ。
そういう時は・・・
『何言ってるの、この変態!!』
とか言って、股間を蹴り飛ばすのよ」

杏の対処方法は再凶だった!!
というか、杏しかできんと思うぞ、その対処方法は。

「が、がんばるの」

いや、真に受けなくていいから(汗
残りの二人も引いているぞ。

「次に・・・」

ことみ・・・
後で、ちゃんとした答えを教えてやるからな。
今は杏に付き合ってくれ。

「さっきと同じで一人での学校帰りなんだけど・・・
隣に車が止まって知らない男が、
『君の彼氏が交通事故にあった!
病院へ連れて行ってあげるから急いで乗って!!』
ったら、どうする?」

設定が変わっただけのワンパターンだった!!

「・・・・・・」

またもやジッとして想像中のことみ。
しばらくすると・・・

「・・・・・・」(ジワ

「「「えっ?」」」

「うおっ!」

急に涙腺が緩み、涙がこぼれ・・・

 

ペタン

 

膝の力が抜けたように、尻餅をついた。

「ちょっ、どうしたの!?」

「ことみ!?」

「ことみちゃん!」

「大丈夫!?」

そんな突然な結果に慌てて、慌ててことみに駆け寄る俺たち。
ことみは俺たちを・・・いや、俺をジッと見る。

「朋也君・・・
無事でよかったの」

そう言って抱きついてくることみ。
おれも安心させる為に、抱きしめ背中をさする。

しばらくするとようやく落ち着き、
イスに座り、お茶を啜る。

「ゴメン、朋也、ことみ」

「いや、俺もすぐに注意しなかったから同罪だ。
すまんな、ことみ」

杏も例えが悪かったと反省する。
確かに両親が不慮の事故で亡くなったことを考えると、今回は最悪の例えだ。

「ううん、いいの。
それに朋也くんも無事だったから」

「それはよかったです」

「ホッ・・・」

どうやら、ことみの想像の中の俺は無事だったたらしい。
俺だって、ことみのなかで死んでたまるか。

「でも、やけにリアルのようね。
一体、どんな想像したのよ?」

「えっとね・・・」

杏に注意しようとしたが、
ことみも特に気にしてなく話し始めるので、そのまま聞く。
俺も気になってたし。

 

「朋也君に用事があって、一人で帰ってたの。
するとね、後見人のおじさんが車で突然現れたの。
『朋也君が事故にあって病院に運ばれました!
お送りしますので、乗ってください』って、言われたの。
パニックになったけど、車に乗って病院に向かうの」

「初めっから設定が違うな」

知らないおじさんから、後見人の人に代わっているし。

「別にいいんじゃない。
気になるのはその先よ」

「まぁな。
というわけで、ことみ、続き」

「うん。
病院に着くと、私は急いで朋也君の病室に向かうの」

「・・・先に受付に行って、病室訊けよ」(汗

「朋也、いちいち突っ込まない」

だってよ・・・
なら、どうやって行くんだよ?

「エレベーターもすぐに来なくて、階段を使うの。
走って」

「・・・1階分で力尽きそうだな、ことみなら」

「朋也」

「へいへい」

想像ならではだな。
ここら辺がことみが泣いていた場面らしい。

「上りきって、やっと朋也君の病室に着くの。
そして、ドアを開けると・・・」

「ゴクッ・・・」

「(ドキドキ)」

古河と藤林はこの3級ドラマに緊張しまくっている(汗
どうせ、俺は『重体だが命は別状がない』といった所だろう。

「実は擦り傷程度で、先に来ていた杏ちゃんに殴られてたの」

「「「(ガクッ)」」」

「そういうオチかよ!!」

ことみの中での俺も、杏に吹っ飛ばされていた!!

「そ、それじゃ、座り込んだのは?」

「安心して、腰が抜けちゃったの」

紛らわしいわ!!

「岡崎さんに抱きついたのは?」

「杏ちゃんばかり相手して、私に気づいてくれなかったの」

その俺は、これ以上杏に傷を増やされたくなかったのだろう。
間違いではないぞ、ことみの中の俺。

「あんた・・・
ことみの中でも馬鹿やってるのね」(呆

「ほっとけ」

「と、とりあえず無事でよかったです」

古河・・・
おそらく、杏によって無事じゃなくなっているはずだ。

「あれ?
擦り傷なら、入院しているの?」

「一日の検査入院なの」

後説だった!!

「朋也君・・・」

「ん?
何だ?」

疲れた顔をしているだろう。
そんな俺に、ことみは・・・

「大丈夫だよね?
もう置き去りにしないよね?
たとえ会えなくても、見ていてくれる?」

あの時・・・
ことみの家で誓った時の言葉だった。
なら、俺の言葉も決まっている。

「約束する。
それが俺の幸せだから」

「うん」

いつの間にか杏達も席を外していた。
お詫びを込めて、気を利かせてくれたんだろう。
俺達は夕陽が入る教室で、キスを交わした・・・

 

ことみ・ハッピーエンド!!


とんでもなく頭が良くても、常にハサミを持ち、独自の世界をかもしだす不思議少女(笑
その内に秘める悲しみと、朋也への想い。
最後の両親からの手紙を読むシーンでは、不覚にも泣いてしまいました。
あの時の感動は忘れられません。
さて、ことみのSSですが・・・
杏の時と違って、甘々ではなくほのぼの風味にしました。
彼女は朋也と二人っきりより、皆で騒ぐ方が似合っていると感じたからです。
ツッコミはことみより朋也の方が合っている思いました。
そのため、ツッコミし放題でしたね(笑