―シャルロット、ロンサールの町・丘―

 

クロード様・・・

わたしはロンサールの一番高い丘で、クロード様がいる方向を見ています。

今日もお屋敷でメイドさんのお仕事に追われています。

少しドジもしちゃってミレーヌさんにも迷惑を掛けちゃってます・・・

クロード様は大丈夫ですか?

ちゃんと元気にしていますか?

戦場でも元気は大事ですよ?

でも、わたしが言わなくてもクロード様は分かっていますよね。

・・・・・・

思えば、クロード様が戦場に行ってから毎日ここに来ています。

当初は、ここでクロード様が無事に帰って来てほしいと神様にお祈りしていました。

けど・・・

一週間が立って、それは贅沢なお願いかもしてないと感じるようになります・・・

だって、それから毎日のように亡くなった人達の喪報が届くから・・・

その知らせを聞いて、

泣きくずれる人・・・

部屋に閉じこもる人・・・

教会で天国に逝けるようにお祈りをする人・・・

後を追って自殺しようとする人・・・

様々な人を見てきました。

わたしも、いつかクロード様が・・・と考えてしまい、喪報が届く時間はいつも怖くなります。

クロード様、『無事』になんて贅沢なことは言いません・・・

だから・・・

・・・・・・・

・・・

 

 

―クロード、戦場―

 

だから、『生きて』帰って来てください・・・

生きて、ロンサールへ・・・わたしの所に帰って来てください・・・

戦場で怪我をしたらわたしが貴方の代わりになります。

 

目を失えばわたしは貴方の目になります。
―人の死や血を見るのは終り、ロンサールを一望してください・・・
 そしてわたしを見つめてください・・・

耳を失えばわたしは貴方の耳になります。
―銃声や悲鳴を忘れて、笑い声を聞いてください・・・
 そしてわたしの想いを聞いてください・・・

手を失えばわたしは貴方の手になります。
―銃を捨てて、執務室でペンを握ってください・・・
 そしてわたしに触れてください・・・

足を失えばわたしは貴方の足になります。
―命がけで走ることをやめて、平和にゆっくりと散歩してください・・・
 そしてわたしの側に帰って来てください・・・

 

それでは、今日はこの辺りで・・・

戦争が終り、クロード様に会える日を一日でも早いことを祈っています。

 

シャルロット=ヴェルレール”

 

「シャルロット・・・」

シャルロットの想いが込められた手紙に思わず微笑む。

敵・味方関係なく人が戦死している。

それは確かだ。

シャルロットの『無事に』という事は贅沢な願いかもしれない・・・

でも・・・

「なおさら、『無事』に帰らなくちゃ」

そう、だから絶対に『無事』に帰らなくてはいけない。

失えば、彼女に支えてもらうだけになってしまう。

そうではなく、お互いに支え合いたいから・・・

「クロード様、そろそろ・・・」

「うん、わかったよ」

仲間に呼ばれ再び戦場に戻る。

彼女との『新しい約束』を守る為に・・・

「行って来るよ、シャルロット・・・」

 

 

―戦争の終り―

戦争が始まってから数ヶ月・・・

王女であるロザリーやその教育係であるソフィーの働きにより、
少々エーベンブルグ側が不利な条約でも受け止め、戦争が終結する。

国民達は、国の為ではなく国民の為に戦争を終らした事に賞賛する。

だが、彼ら達は知らない。

2人が戦争を早く終らせたのは、それだけではない事に・・・

ただ、自分達が知る1人の青年を死なせたくなかったからだという事を・・・

 

 

―シャルロット、ロンサール・広場―

ロンサールの町は、今、歓喜に包まれている。

待ち望んだ戦争の終結・・・

それは、家族・恋人・友人、すなわち大切な人が帰ってくる事だから・・・

抱きついて涙する者・・・

何も言わず抱きついている者・・・

お互いに笑顔で叩き合っている者・・・

子供を抱き上げている者・・・

残念な事に戦争で亡くなり、教会や墓地で戦争の終結を報告している者・・・

それぞれが戦争に終結を喜んでいる。

・・・その中をメイド服を着た1人の少女が走り周る。

「クロード様!! クロード様、どこですか!!」

彼女は愛する人を呼びながらその姿を捜す。

しかし、その声は周りのざわめきにかき消される。

それでも彼女は叫びながら愛する人を求める・・・

だが、ついに体力の限界が来たのか立ち止まる。

・・・いや、違う。

「あ・・・」

彼女の顔に喜びに溢れているからだ。

涙が流れ、前が良く見えない。

でも、彼女―シャルロットは間違えるはずがない。

少し遠くから銃を肩にもたれさせ、1人の青年が歩いてくる。

彼こそがシャルロットが愛するクロード=フラヴィーニだから・・・

 

―クロード、ロンサール・広場―

彼は指揮官という事もあり、他の人達と違い少し遅れてしまった。

広場に着くまでは走ってきたが、今はゆっくりと歩いている。

その訳は、自分が誰よりも愛する人が手を広げながら走ってくるのを見えたからだ。

「クロード様ーーーー!!」

喜びの顔に涙を流しながら走ってくる女性(ひと)―シャルロット=ヴェルレールを待つ。

「ただいま、シャルロット・・・」

彼―クロードも涙を流している事に気付いている。

だが、それを拭おうとはしない。

「そして・・・」

ついにお互いが抱きつく・・・

クロードは優しく彼女の背を撫でながら・・・

シャルロットはもう離さないと強く彼の背に手を回して・・・

「約束を守ったよ」

「・・・はい」

そう・・・

彼は『無事』に帰って来たのだ・・・

 

 

〜シャルロット・八ッピーエンド〜


天然ドジっ子、シャルロットです。
掃除をすれば物は壊す、雑巾を掛ければ水をこぼす、まさにへっぽこ(笑
キャラ的には結構好きですね。
でも、シャルロットルートでよくわからないこのエンディング。
いきなり戦争はないだろ?(しかも前ぶりなし)
もう少し前から『お隣さんは戦争やってんだぞ』と教えてくれたら・・・
でも、シャルロットがクロードを引き止めるシーンは、シャルロットの中で一番好きです。
他の人を気にせずに『2人で私達の事を誰も知らない所に移りましょう』というセリフ。
見ず知らずの人たちより愛する人が大事・・・
これは人間としては当たり前だと思います。
まあ、それは置いといて。
こういうSSになりましたが、何かめっちゃシリアスですね・・・
CGを見て、思うがまま書いたらこうなりました(笑
結構賛否両論が出てきそうですね。