前書き
雪之丞×晶子です。
少々ですが、晶子が壊れます(?)ので、そーいったSSが嫌いな方は見ないことをお薦めします。

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               『ブリ大根』

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俺と晶子が恋人同士になってから数ヶ月………。
俺は涼月に戻り、今日は夕飯の材料を買いに、二人で商店街に買い物に来ていた。

 

〜魚屋『嵐倶』〜


「おうっ! 晶子ちゃんじゃねーか、なんだい、今日は彼氏と一緒に買い物かい?」

「あははは……そうなんです♪」

う〜………相変わらずこの魚屋さんのノリにはついていけないよ〜
なんか、お兄ちゃんに似てるし……
それに大声で『彼氏』って言わないで……恥ずかしいから……

あっ! ゆっくんが彼氏ってことが恥ずかしいんじゃないからね!
恥ずかしいどころか、カッコよすぎて困ってるくらいなんだからね(惚気?)!

「雪坊もこんな可愛い彼女をもって幸せ者だぜ!
 晶子ちゃんは最高の奥さんになんぞ!」

「……奥さん」

晶子がぽつりと呟く。
そして何時の間にか、頬は隠し様がないほど緩んでいた。

「ああ、雪坊も、こんな良い子を奥さんにできたら幸せだろうさ」

「奥さん……」

奥さん……? ワイフ……? 私がゆっくんの奥さん……新妻♪

「てなことで、このブリなんてどうだい?」

「後の新妻さんにはサービスだ。
 なぁに、一匹使い切れねぇんなら半身でも……」

「新妻……♪」

ん? なんか晶子の目がキラキラしてるようだが………

「も、もぅっ、おじさんってば〜〜♪」

       
        ギュッ!

晶子は恥ずかしそうに顔を真っ赤にすると、親父さんが掲げたブリの尾の辺りを握り締めた。

「は……?」

「んもぅっ!恥ずかしいよ〜〜♪」

「なっ、いきなりど……おぶっ!」

「もうっ〜〜、奥さんなんて、新妻さんなんて、まだ早いよ〜〜〜♪」

           ブンブンブンッッ!!


興奮状態の晶子が、強烈にスナップをきかせてブリを振りまわす。
たった今、親父さんを弾き飛ばしたことにも気付いていないだろう。

「なにが……一体なにが……ガク」

「ゆっくん、ゆっくん、ゆっくんっ!
 わたし、若奥様って♪」

「お、落ち着け、晶子……わっ、危ないってば!」

目の前を高速で移動するブリ。
生まれて初めての光景だった。

さながら『デンプシーロール』みたいだ………。

「うふふふふ〜〜、だってぇ〜〜♪」

    グルングルンッ!


晶子の喜びが増すに合わせて加速するブリ。

「しょ、晶子、親父さんも伸びてるって!」

「やーん、照れちゃうよ〜〜♪」

ダ、ダメだ……声がまるっきり届いてない。

「晶子の知られざる一面だな………ふっ」

壁を背にして満足に動けない状態で、俺はそんなことを考えていた………。
デンプシーだったら、後ろに下がって距離をとれば、避けられるんだがな………。

          ブンブンッ!!

「やばい……」

ブリからは逃げられない。
俺は妙に安らかな気持ちで、瞳を閉じた。

……………
…………
………
……


「晶子……ブリって武器にもなるんだな」

「あうぅぅ……ゴメンね」

〜八百屋『蘭具』〜

「おっ! 久保さんとこの嬢ちゃんかい? しかも彼氏と同伴たぁ〜アツイね〜」

八百屋のおじさん……気をつけないと魚屋の二の舞いになりますよ………。

「そうなんです♪ だからオマケしてくださいね♪」

「相変わらず買い物上手だね〜………まかせておきな!」

「じゃあ、大根と生姜と……」

「晶子、せっかく男手があるんだから、明日のカレーの材料も買って帰らないか?」

一度で済ませば後が楽だしな……。

「そうだね、じゃあ…ジャガイモはあるから、人参と玉ねぎを追加してください」

「あいよ! 大根、生姜、人参、玉ねぎ……っと!
 ニンニクをオマケしておいたよ、彼氏に精をつけてやんな!」

「え……?」

ピタリ。

和やかに買い物が終わるかと思われた瞬間に、晶子の動きが止まる。

「ん……な、なんか変なこと言ったか?」

疑問に答えることもできない
そんな中、晶子の顔が朱に染まっていく。

「そんな……おじさん、精って…精って!」

「は……?」

「もぉ〜〜〜〜!」

晶子は今し方買ったばかりの物の中から、大根を引き抜いた。

「え、あ、はぁ……」

「おじさんってば、あんな、あんなこと言うなんて……」

「お、落ち着いて、俺は別に何も……」

「せ、精をつけるなんて……
 そんなことっ、恥ずかしいよ〜〜〜!」

     ぶんぶんぶんっ!


「うぉっ、ちょ、ちょっと待ってく……」

「もぉっ、おじさんっ! もぅ〜〜〜っ!!」


         バキッ!


「ぐぁっ!」

「もぉぉ〜〜っ!」


バキッバキッバキッ!


「がっ、ぐっ、ごはぁ!」

同じだ……さっきと同じだぞ……晶子……。

「わ、私が、ゆっくんに精をつけさせるって、
 何か変なことを考えてるみたいじゃないですか〜〜!」

         バコッ!


「ぐぅ……がはっ……」

災難でしたね………でも、俺もそうなる運命にあるんですよ……

「ゆっくんっ、ゆっくんっ、どう思う〜〜!?」

多少砕けて短くなった大根を振りまわしながら、晶子が近づいてくる。

「それは……」

  バキッ!

晶子からの質問に答える前に、俺の意識は闇へと叩き落された。


……………
…………
………
……

そして、今晩のオカズはブリ大根になった。


                     

                     FIN

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後書き

『ユキユキSS』第二弾……もっとも、また流用SSなんですけどね……
あまりにも使えそうだったので……つい。
ちなみに、このシーンは某ゲームのワンシーンからとりました。
次回は玲於奈にでもしようかな〜?