カレハ先輩に続き、亜沙さんも喫茶店でアルバイトもウェトレスを始めて2週間ぐらいたった。
その間、オレだけでなく楓やシア・ネリネ、挙句の果てに麻弓と樹まで常連になるほどお邪魔した(約一名本当に邪魔したが
亜沙さんは楽しくウェトレスのバイトをしていて、『2人っきりの時間が作れなくゴメンね』と謝るほどだ。
けど、その事に不満なんて感じていない。
逆に、そんないきいきしている姿を見るのが好きだった。
今日も喫茶店に来て、時々亜沙さんとカレハ先輩と話したりするはずだった・・・
ほんの数分ほど前までは・・

「アアッ!
何だ、テメェは?」

「オマエなんかお呼びじゃないんだよ!!」

「さっさと失せろ!!」

「痛い目にあいたのか、コラ!!」

喫茶店の中は一触即発の状態。
亜沙さんを背にいい感じの不良達と言い合いになっている。
事の始まりは、いつも通り喫茶店に入った時まで遡る・・・

 

 

カランカラン

 

「いらっしゃいませー!!
・・・って、稟ちゃんか」

「何ですか、その前後の差は?」

営業スマイルから一転、素に戻る亜沙さんについツッコミを入れる。
そのことに喜ぶべきか微妙な所だ。

「冗談冗談。
今日は一人なの?
楓とかは?」

「楓はプリムラと料理教室を開いて、我が家で修行中」

「へえ、リムちゃんが・・・」

前に弁当を忘れてダウン中していた時、
プリムラが届けてくれた時に褒めたら興味が出てきたらしい。
プリムラが何かに興味を持つのはいいことだ。
もしうまくいけば、ネリネは肩身が狭いだろうなぁ(汗

「ええ。
それで楓から伝言で、出来たら味見をしてほしいらしいんです。
今日、大丈夫ですか?」

「もちろんオーケー!
リムちゃんの料理、楽しみだなぁ。
あっ、とにかく席に案内するね」

「はい、お願いします」

 

席に案内してもらい、取り合えずコーヒーを注文。
本当は何か腹に入れようとしたんだけど・・・

『今頃、リムちゃんが一生懸命料理を作ってくれているんだから、我慢しなさい!』

と言われてしまった。
その気持ちは嬉しいが、店員が客の注文を却下するのはどうだろう?
そんな下らない疑問を抱えていると、カレハ先輩がコーヒーを運んできた。

「いらっしゃいませ、稟さん。
ご注文のコーヒーです」

「ありがとうございます」

コーヒーを受け取り、さっそく一口啜る。
うん、旨い。

「そうそう、亜沙ちゃんから聞きましたわ。
リムちゃんがお料理に挑戦しているんですって?」

カレハ先輩はそのまま離れずに話しを始める。
休憩時間なのだろうか?

「はい。
もし良かったら、カレハ先輩もどうですか?
というより、元々誘うつもりでしたが」

「まあ、ありがとうございます。
では、お言葉に甘えますね」

「ええ。
楓共々駄目だししちゃってください」

それから少し話しをしていると、亜沙さんも寄ってくる。

「カレハー!
稟ちゃんとお喋りもいいけど、ちゃんと仕事しなさいよ」

「あら、申し訳ありません。
ついつい話し込んでしまいましたわ」

やっぱり休憩時間じゃなかったのか。
それより、亜沙さんのちょっと不機嫌そうな気がする。
カレハ先輩がサボっているのが、羨ましいのだろうか?

「わ、私だって、稟ちゃんとお喋りしたいのを我慢しているんだから」

「あらあら!
ヤキモチですか?
亜沙ちゃん、可愛いですわよ」

どっちかというと、話を聞いているオレの方が恥ずかしいです。
そんな事に気にもしないで、カレハ先輩は続く。

「そうそう!
稟さんはご存知ですか?
稟さんがいらっしゃらない日の亜沙ちゃんを?」

「ちょっ、カレハ・・・」

「それはさすがに知りませんね」

あたふたする亜沙さんに首を傾げるが、一応答える。
喫茶店に顔を出せない日には、前もって亜沙さんに知らせてある。

「その時の亜沙ちゃんは、ちょっと不機嫌なんですよ。
それに来ないと稟さんから聞いていらっしゃるのに、入り口をチラチラと見ていらっしゃるんです」

「へ・・・」

どうして?

「ほら、一度稟さんが予定があいたからって、来られた事があるじゃないですか」

「はい」

うん、確かに・・・
その時は樹とちょっとした約束があったが、ヤツが紅女史に呼び出しを喰らってキャンセルになった。

「ですから、それからの亜沙ちゃんは稟さんから聞いていてもつい気になっちゃうんです」

「カレハー!
お願い、それ以上はやめてー!!」

ついに亜沙さんが真っ赤になりながら、カレハ先輩の口を塞ぐ(文字通り両手で)
ついでに鼻も塞いじゃってますよ、亜沙さん(汗

「り、稟ちゃん、き、気にしないでね!
カレハは大げさに言っているだけだから!!
アハハ・・・」(汗

これからはもうちょっと来る時間を増やすかな・・・
それと、カレハ先輩も別の意味で真っ赤になっている。

「亜沙さん・・・
それそろカレハ先輩を解放しないと、神界・・・いや、本当のあの世に行っちゃいますよ?」

「えっ・・・
わー!!
カレハ、大丈夫!?」

慌てて手を離すと・・・

「大丈夫ですわ。
心配して下さってありがとうございます」

「「・・・・・・」」(汗

息切れ一つも見せずに、いつものスマイルで答えるカレハ先輩に何を言えばいいのだろうか?

 

『オーイ!
そこの店員さん!!
そんな男と喋ってないで、注文を取りに来てくれよー!!』

そんな中、あるテーブルから声が上がった。

「はーい。
ただ今参りますー」

「・・・ちょっと待ちなさい」

カレハ先輩が行こうとしたが、亜沙さんがそれを止める。
その声も多少緊張が入っている。
どうしたのだろう?

「私が行くからカレハはいいわよ。
稟ちゃんの相手でもしておいて」

「ですが・・・」

「いいから」

「・・・はい、わかりましたわ」

軽く手を振って、そのテーブルに向かう亜沙さん。
けど、彼女の雰囲気がピリピリしているのはわかる。
つられる様にその先に視線を向けると・・・

「ああ、なるほど・・・」

いかにも軽そうな男達が4人ほど座っている。

「亜沙ちゃんも心配しすぎですわ。
私だって、それなりの対処法を学びましたのに」

「そうなんですか?」

以前カレハ先輩が不良達にナンパされていた時があったけど、
困っていただけだった。
それが大丈夫だといわれても・・・ねぇ

「はい。
こういうバイトなら必需品ですわ」

『品』とはちょっと違うと思います。

亜沙さんは予想通り、注文を受け取っても離れられない様子だ。
はっきりとは見えないが、スマイル全開で必死に怒りと苛立ちを隠している。
あっ、怒気が少し漏れた(笑

「亜沙ちゃん、怒ってますね」

「ええ・・・」

さて、どうしようか・・・
オレは一般客だし、亜沙さんは店の人だから本当は見守るべきなんだが・・・

「稟さん・・・
どうぞ、行ってらっしゃってください」

「カレハ先輩?」

「フフ・・・
顔に書いてありますよ。
後の事は気にせずに行ってくださいな」

カレハ先輩はお見通しのようだ。
その笑みに決心がついた。

「・・・そうですね。
では、行ってきます」

「はい、頑張ってください」

よし、行くか!

 

 

という訳だ。
ここからどうするか・・・

「テメェ、何のつもりだよ!」

「俺達はこのウェトレスさんとお喋りしているだけじゃねぇか、なあ?」

「そうそう。
そういうアンタだって、この子と話ししていただろ?」

「それじゃあ、あまりに不公平だよな?
だから、注意される覚えはねぇよ」

うむ、いかにもベタな会話だ。
そろそろ行くか・・・

「オレはこの子の彼氏だからな。
困っているようだから、助けて何が悪い」

「稟ちゃん・・・」

おそらく、見えないけど亜沙さんは照れている。
こんなに堂々と宣言した事はないから当然かな。
だが・・・

「何言ってんだ、この野郎!
テメェ見たいなヤツが彼氏なんて信じられるかよ!」

「それとも、爽快に助けてポイント稼ぎか?」

「でしゃばりもいい加減にしろよ!」

「なあ、ウェイトレスさん?
こんな嘘にあわせる必要なんてないぜ?」

男達は全く聞いていない。

「・・・・・・」

ウワッ(汗
後ろから凄い怒気を感じるよ。
前より後ろの方が怖い。

 

カランカラン

 

しかし、ここままというわけには行かない。
店も迷惑になっているし、ここぐらいで追い出すには・・・

「・・・稟ちゃん」

「はい・・・っ!」

亜沙さんが肩を掴んで、オレを振り向かせると・・・

「ん・・・」

「っ!」

「「「「っ!!」」」」

キスをした・・・
4人ならず、おそらくカレハ先輩以外の時間が止まっただろう。

「はあ・・・」

時間にして10秒も満たなかったが、それ以上に感じた。
静粛の中、亜沙さんは毅然とした態度で男達に言い放った。

「嘘でもポイント稼ぎでもありません。
彼は私の彼氏ですし、私は彼の彼女です。
それ以上侮辱しないでださい。
私はこの人だけを愛しているんです。
他の人になびくなんて絶対にありません。
もし、ナンパ目当てなら他の人にしてください」

「「「「・・・」」」」

呆然としている4人組。
それに対して、亜沙さんはさらに追い討ちをかける。

「それと、先ほど神族の子も呼んでいましたが、それも諦めてください。
彼女も好きな人がいるんですから。
ね、カレハ」

「はい」

いつの間にかカレハ先輩が隣まで来て・・・いや、寄って来た。

「真に申し訳ありませんが、
私もこの方を想っていますのでお断りさせていただきます」

ニコッと微笑みながら、オレと腕を組む・・・って!!
ちょっ、亜沙さん、カレハ先輩!?

「それではごゆっくり」

亜沙さんがもう片方の手を掴んで元の場所に戻ろうとする。
が・・・

「テメェ・・・表に出ろ」

一人の男が立ち上がり、それに続く残り。
もうコイツ等は亜沙さん達は関係なく、オレに敵意が向いている。
もちろん、答えは決まっている。

「わかった」

「稟ちゃん!?」

「稟さん!?」

亜沙さんとカレハ先輩が掴んでいる腕を解いて、
4人と睨みあう。
ここまで2人に言わせておいて引いてしまったら、亜沙さんに会わせる顔がない。

「上等だ」

4人と共に喫茶店をでようと出入り口に向くと・・・

 

「ほう・・・
面白いことになっているじゃねぇか、稟殿。
その喧嘩、代わりにオレが買ってやるぜ」

 

神王のおじさんがバキバキと指を鳴らしていた(汗

「お、おじさん!」

「神ちゃんだけじゃないよ」

魔王のおじさんまで!?

「私達もいます」

「・・・・・・」(怒

シアにネリネまで!!
というより、何故ネリネがあんなに怒っているんだ?

「ど、どうして・・・」

「なーに、プリムラが稟殿の家で料理をしてるって聞いてな。
それなら、ウチのシアとマー坊も参加しようと決まったのよ」

「そうなんだよ、稟ちゃん。
いい機会だし、ウチのネリネちゃんにも勉強にもなるしね。
材料を買いに来たってワケさ」

「それで・・・?」

「その帰り道に、喉が渇いちまってな。
ここでちょいと一服しようときたんだが、いいタイミングだったぜ」

下を見れば、確かに大量の食材がある。
それ以上にお酒が多いけど・・・

「い、いつからそこに?」

「えっと・・・亜沙先輩とキスする前かな?」

シアの答えに真っ暗になる。
こんな場面を見られるなんて・・・

「稟ちゃん、心配しなくても僕達は怒ってないよ。
むしろ立派だと褒めてあげたいぐらいだ。
女性があそこまで言ったんだから、これ以上は男の出番だよ」

「でも・・・」

ネリネは相変わらず怒っているんですけど・・・

「ネリネちゃんは稟ちゃんに怒っているんじゃないよ。
稟ちゃんを侮辱しただけでなく、危害を加えようとしたそこの愚か者達にだよ」

「「「「ビクッ!!」」」」

さっきまでの勢いはなく、完全に怖気づいている。
それもそうだろう。
所詮、人数で集まっていい気になっていただけの程度だし。
神王の迫力より、ネリネの怒気の方が怖いのも理由の一つだ。

「女を守るのは男の役目だ!
だが、この喧嘩はオレが買ってやるぜ!
稟殿はあの子らを安心させてやんな。
ほら、行くぜ!!」

「おじさま、私もお手伝いします」

「オウ!
ネリ坊も来い来い!!
けどよ、記憶が飛ぶくらいで勘弁してやれよ」

「努力します」

「ネリネ・・・さん?」

「ちょっと失礼しますね、稟さま」

その笑顔がもの凄く怖いです。
4人を連れて外に出て行った神王のおじさんんとネリネ・・・

 

カランカラン

 

数秒後・・・

 

ドコーン!!

 

『ギャー!!』

破壊音と悲鳴が鳴り響いた・・・

 

 

それからはこの噂は喫茶店にのみならず、学園にも届いた。

『土見稟が時雨亜沙と見せ付けるようにキスをして、カレハも自分のモノだと宣言した』

と(汗
その噂を聞いた亜沙さんは・・・

「まあ、仕方ないか。
いつかこういう風になると思ってたし、認めた私にも責任があるし」

ため息をつきながら、仰った。
確かにあの時、カレハ先輩に聞かなければこうはならなかったかもしれない。
一方、その本人は・・・

「大丈夫ですわ。
神界は一夫多妻ですから」

そういう問題ですか?
そう思いつつ、屋上でいつものメンバーと昼食を食べる今日この頃・・・

 

 

亜沙(&カレハ)・ハッピーエンド!!



先輩なら相談しやすく頼りになる、友人としたら明るくて付き合いやすくて楽しい・・・
では、 恋人なら積極的なのに意外と甘えん坊な亜砂さんです。
全ヒロイン中、このキャラのストーリーが一番違和感なくクリアできました。
ですが、やはりCGの少なさが悔やまれます。
母親の若さも反則です(笑
SSですが、これも何か予定よりズレたストーリーになっちゃいました(汗
本来なら亜砂の告白で終わらせようと思っていたのですが、
何故かタイピングが進む事(笑
いざ、書き上げてみればこういうストーリーに・・・
本作のイメージと雰囲気にちょっとあわないかなと、読み返して思いました。
許してください。