【天使のKiss】 (啓X拓) なんだかゲロ甘〜?!
(SCENE 1 天使の怒り)
「・・・で、何なんですか?一体・・・」
拓海は怒っていた。だから、語調もついキツクなってしまう。
「・・・けーすけさん?俺、マジで怒りますよ?」
拓海はもうとっくに目が据わっている状態なのだが、その怒りを向けられている運転席の人物はのらりくらりと知らん顔だ。
───今日は日曜日。
近所で大きな花火大会なんかあったりするので車の通りもいつもより多い。
バイトだって忙しいのだ。
───なのに・・・なのに・・・!である。
この恋人はバイト先へ向かう途中の拓海を無理やり車に乗せてしまったのだ。
はじめは、バイト先へ送ってくれるつもりなのか?と思ったのだが、車は全然違う方向へ走っている。
何処へ行くつもりなのかと訊いても「イイ所」というだけで教えてくれない。
・・・おまけに、バイトに行かなければならないと告げると
「あ、ソレへーき。拓海は今日は休むって言っといたから」・・・である。
これで怒らない人間はいないだろう。
さすがの拓海も開いた口が塞がらなかった。
・・・まったく何、考えてんだ、この人は・・・・
そういうワケで現在、拓海はとってもとっても怒っていた。
───手が出ないのが不思議なくらいだ。
(1歩まちがえればボコボコよ、けーすけ)
数十分、車を走らせ、ようやく目的地に到着したらしい。
「着いたぞ。」と上機嫌に声を掛けて、啓介はさっさと車を降りた。
その頃には、拓海ももう諦めた。
こんな時の啓介には何を言っても無駄なのだ。
ホントに時々、子供みたいな我が儘言うんだからなぁ・・・
自分のコトは棚の上に上げて、拓海は心の中でそう呟いていた。
啓介に続いて、車を降りてグルリと辺りを見回す。
どこかの会社の所有地なのだろうか、フェンスに囲まれた敷地の前だ。
「・・・?啓介さん、こんなトコ来て・・・」
どうするつもりなのか?・・・と続けようとした拓海の耳にバチンと何かを切るような音が聞こえた。
思わず振り返った先に見えたのは、ペンチを持ってる啓介と無惨な姿になっているフェンスだった。
拓海の視線に気づいた啓介は来い来いと、手招きをしている。
「───けーすけさん・・・ソレ犯罪なんじゃ・・・」
・・・ホントに、何、考えてんだろ?この人・・・
以前から、自分なんかに逢う為だけに、早朝秋名に通ったり、ガソリンをわざわざ入れに来たりと、拓海にとって理解しがたい行動を取る人だったが、どうやら拓海の啓介に対する謎は深まるばかりのようである。
「大丈夫だって。ホラ、こっち来な。」
呆然としながら声を掛ける拓海に、啓介は笑いながらまた手招きをした。
はぁーと、大きな溜息を一つついて、それでも拓海は啓介の後に続いてフェンスをくぐり、敷地の奥へと進んでいった。
(SCENE 2 キスの威力)
「んー、この辺でいっかな。」
立ち並ぶ木々を通り抜けると、少し開けた場所に出た。
そこからの景色で、この場所が眺めのよい高台である事がよく判る。
「ほら、もう始まんぞ!」
啓介が人差し指をスッと空に掲げてそんなコトを言う。
「?」
・・・何がだよ。もう!
未だに拗ねて眉を顰めながら、それでも拓海はその指につられて空を見上げた。
ドーン!と、大きな音と共に鮮やかな花が空に咲き誇る。
「キレイだろ?」
オレの気に入りのスポットだ、と啓介は嬉しそうに笑った。
拓海はボーっとそんな啓介を見つめている。
「?」
・・・マズイ。気に入んなかったか?それともまだ怒ってんのか?
啓介は弱ったような顔をした。
「何だよ・・・もしかして、まだ怒ってんのか?・・なぁ、勘弁しろよ?
オレはただ、お前の驚いた顔が見たかったダケなんだ。」
───そして、少しはにかんだようなあの笑顔も・・・。
照れて、それでも嬉しい時に見せる拓海の笑顔。
表情のあまりかわらない拓海が時々見せるその表情が、啓介は大好きだった。
───あの笑顔1つで、自分はとても幸せになれるから。
弱っているらしい啓介に拓海は溜息をついた。
全く、このヒトは・・・
「た・・・拓海?」
啓介は、何とか機嫌を直してもらおうと拓海の肩に手を掛けようとした・・・が、不意に拓海が動いてしまう。啓介のその手が届く前に。
───でも、離れてしまったワケではなくて───
唇に柔らかくて温かい感触───まるで天使の羽が触れたように。
一瞬、啓介の頭は真っ白になった。
───キス・・・めずらしい、拓海からのキス。
ほんの一瞬、微かに触れた、ママゴトのような軽いキス。
でも、それだけでも啓介には思ってもみない幸せな出来事だ。
啓介は嬉しくて笑った。
───何の含みもない、まるで、子供のような素直な笑顔だ。
・・・あ、オレの好きな顔だ。
時々見せる、啓介のこの笑顔に、拓海は弱かった。
この笑顔を見ると、啓介に恋をしている自分を自覚する。
抱きしめたくなって、抱きしめられたくなってしまうのだ。
拓海は上目遣いに啓介を見つめると、首に手を回して抱きつき、啓介の肩に顔を埋めてしまった。
「・・・怒ってませんよ。別に・・・」
うそ。ホントはさっきまで怒っていたけれど・・・
ドーン!と、また大きな音がして、さっきとは色が違う花火が空に上がる。
その光が2人の姿を不思議な色で照らしていた。
こんな時は、何だか顔を見られたくなくて拓海はいつもこうやって顔を隠してしまう。
でも、その体の温もりは啓介に伝わって──────
啓介はゆっくりと目を閉じて、じっくりとその温もりを味わった。
───オレ、今、サイッコーに幸せかも。
腕に中にある温もりは、いつでも自分の1番大切なモノ。
笑顔1つ、キス1つで自分を幸せにしてくれる存在だ。
───でも、人間の欲望に限りは無くて、そこんとこ、啓介は自分に正直なタイプだった。
照れて顔を隠した拓海の肩に手を掛け、少しだけ自分から離してしまう。
そして、真っ直ぐに拓海の目を見つめながら───
「もっかい・・してくれねー?今の。」
拓海もジッと啓介を見つめ返す。
・・・ホントにおねだりの上手い人だ。
ズルイ男だと、いつも思う。子供なんだか、大人なんだか、よくわからない。
───それでも、やっぱりこの人が大好きなのだ。
拓海はもう一度、腕を伸ばして、望み通り天使のキスを啓介に与えた。
「サンキュ!」
啓介はまた、子供のように笑って、今度は自分からキスをした。
拓海が与えるキスとは違う───舌を絡める情熱的なキス。
さりげなく、自分の腰に回された強い腕に
───やっぱり大人・・なのかな?
そんな風に思いながら、そのキスを受け止める拓海だった。
End.
可愛い啓X拓と宣言しておいて、しょっぱなから拓海が怒ってます(笑)
でも、甘い!甘すぎる!ゲロゲローって自分で砂吐きました、私。
ちなみに日曜日に花火があったのはウチの近所です。
PLの花火ってキレイなの!でも私、フェンスは切ってません。(笑)
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