【スキとキライとワガママと】 (啓X拓)
(SCENE 拓海)
悔しい、悔しい、悔しいったら悔しい!
どんどん、あの人に捕らわれていってる自分が居る。
いつだってマイペースで、誰に動かされたこともない自分が・・・
あの人のどこが『好き』なんて、そんなのわかんない。
「・・・・なのに、訊いてくるんだよなぁ・・・」
『なぁ・・・俺の事、スキか?』
いつもの鋭い瞳を、ほんの少し和ませて・・・・
まっすぐに自分の心の中に入ってくる。大人のクセに、子供みたいな笑顔で、まっすぐに・・・・
「ヤなとこなら数え切れないくらい言えんだケドなぁ・・・」
─── 口説き上手なトコとか。
─── 行け行けGOGOのマイペースすぎるトコとか。
─── 強引でイヤになるくらい慣れた仕草とか・・・。
そこまで思いついて、ふいに一人恥ずかしくなる。
まったく、ホントに自分はどうしたんだろう。
それでも嫌いになれない。
どうでもイイ人にも出来ない。
惹かれていく自分を止められない。
一緒にいたい。側にいたい。
「最初はそんだけ・・・だったんだけどな・・・」
今は・・・・
ふぅ・・・・
どんどん増えていく、小さなため息。
「・・・全く、俺なんかドコがいーんだろ?」
素朴な疑問。
自分は特別、人を惹きつけるモノなんて持ってない。
その辺にいるただの子供だ。あの人から見たらきっと・・・
「いくらでもイイ女が寄ってくるだろーに・・・」
言ってしまって、ちょっと不愉快になる。
自分を捕らえる時の、強引なくせに優しい腕や、自然にキスする慣れた仕草、耳の側で囁く甘い声に───時々、他の誰か影を感じる。
「そりゃー、あの人は大人だから・・・」
恋人なんていっぱい居ただろう。
・・・でも、判る。
今はきっと自分だけを見てること。
あの視線も、あの声も、あの腕も・・・今は自分だけのものだって判るくらい、大事にしてくれているから。
『俺、お前のコト、すっげー好き』
聞き慣れた告白。何度も何度も、耳元で囁かれてキスされた。
(・・・お前は?俺のこと好きか?)
言葉の後ろにある声もホントはちゃんと聞こえてる。
ちくしょー、好きだよ。大好きだよ。
心の中では、何度も言ってる。
───でも、悔しいから絶対好きって言ってやらない。
(SCENE 啓介)
欲しいったら欲しいったら欲しいんだ。
・・・なんて、ガキみてーな我が儘だ。
イヤ、まぁ俺は昔っから我が儘だって言われてっけど・・・・
ここまで酷くはなかったハズだ。・・・多分・・・・
抱き寄せる、抱きしめる、キスをする・・・
それだけじゃ足りなくて、どんどん押してっちまう。
こんなことしてたら、そのうちぜってーキラワレっぜ・・・なんて、判ってんだけど、止められねぇ。
「何でなんだか・・・オレって、もしかして欲求不満か?」
第1印象は、実は最悪っつーか、最低っつーか、とにかく、オレのプライドも自信も粉々ってカンジだった。
我ながら『かなり速い』と思っていた自分を、あっさり追い抜いて行った車。
あの時の事は、きっと一生、忘れられない。
───そして、あの車を運転していた、『アイツ』と、初めて逢ったあの瞬間の事も・・・きっと一生、忘れられない。
どんなに想っても満たされなくて、つい触れてしまうのだ。自分は。
ボーっとしたアイツが、いつ自分から離れてしまうか怖くて、閉じこめようとしている。
───バカみたいな独占欲。
アイツはいつも、見えない薄い膜のようなモノに包まれている。
周りと自分を、どこか遮断していて、ソレがもどかしい。
もっともっともっと・・・ただ、アイツに近づきたい。
アイツの気持ちを、感じていたい。
だから、強引にでも触れてしまう。
触れている時だけは、ずっと近くにアイツを感じられるから。
自分の事をスキなんだなって感じられるから。
「でも、やっぱキラワレっかな───」
苦笑する。
きっと、本音はこんなに弱気な自分をアイツは知らない。
『んーっ、ちょ・・・ヤダって。もー、その慣れたカンジがヤなんだよ』
真っ赤な顔して、怒鳴るのも可愛くて、また触れると、今度はホントに怒ってスルリと逃げて行ってしまう。いつだって、自分は負けてばかりだ。
「・・・ま、しゃーねーか。ホレた方が負けってヤツかな?でも、一体ダレが決めたんだか・・・・・」
当たってっケドな・・・
溜息ついてる自分なんて、きっとアイツは想像した事もないだろう。
でも、それでいい。今はまだ・・・・
まずは、捕まえる事が先決だから。
誰かに『鳶に油揚げ』なんて、ジョーダンじゃねぇ。
「覚悟しろよ、・・・藤原・・・」
頭の中に、鮮やかに思い出せる。子猫みたいに可愛いクセして、獣の爪を隠してる。
スリル満点のコーナー攻めより、自分をワクワクさせるアイツを・・・・
「ぜってー、捕まえてやっからな。」
End.
・・・9/1 間違えて『天使のKiss』を上書していた事が判明(笑)←アホか!
コメントなんて残ってないし、覚えてない…(-_-;)ま、いっか。
迷子になって、この話に辿り着けなかったヒト居たらゴメンなさい〜。
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