幸せの定義(新キャラ(笑)&ユウリ) P12
 

「君の友人のことは、本当に残念だったと思う。でも、あの最期を選んだのは彼自身であって君じゃない。君が唆したわけでもないし、彼を殺したわけでもない。
もちろん、その時、自分が彼を止めていれば…と思う君の後悔は、僕にも分かるつもりだよ?同じような思いも、僕も知っているから・・・・」
 ユウリのその言葉が、ヒューの事件のことを指している事に気づいた何人かが、ユウリの中に消えない悲しみを見て、辛そうに目を眇めた。
「フォーダム…」
「きっとその後悔は、長く君を苦しめることになるだろうけれど、最後には笑っていてね。きっと、亡くなった君の友人も、それを願っていると思う。」
 ありきたりで、偽善な言葉だと、言えない何かが、ユウリの言葉にはあった。
サリヴァンは、一心に、目の前に立つ上級生の優しい瞳を見つめていた。
「・・・本当に?」
「うん、もちろん。だって、君ならばどうだい?」
「え?」
「もし亡くなったのが君の方だったとして、君は地上に残ってしまった友人を恨んでしまうのかな?大好きな友人が、悲しみと慟哭に明け暮れる日々を過ごすことを、望んだりするだろうか?」
 その言葉に、サリヴァンは何度も首を横に振った。
その様子を見て、ユウリはふわりと微笑しながら、再び黒曜の瞳で少年の顔を覗き込んだ。
「ほらね?誰だって、大好きな人には笑顔でいてほしいと願ってる。きっと君の友達も同じだと思うよ。サリヴァン」
 その言葉に、最後とばかりに涙を流し、しばし嗚咽を洩らしてから、サリヴァンはユウリを真っ直ぐに見上げた。

「・・・ホントに、色々、有り難うございました、フォーダム。貴方がいなければ、きっと僕はずっと、今も苦しいままだった。だから…」
「僕はただ、君の話し相手になっていただけだよ。・・・そうだね。又、君の歌が聴きたかったからかもしれないな。初めて逢った、あの日のように…」
「僕…僕、もう一度、歌います!いっぱい練習もします。声が変わってしまったから、あの日と同じようには、もう歌えないけれど・・・でも、今の僕が歌える歌を、精一杯歌いたい。」
 変声期を終え、安定したアルトの音に落ち着いたらしい声で懸命に言い募るサリヴァンに、ユウリは大きく頷いた。
「うん、それでいいと思うよ。楽しみにしてるね、サリヴァン」

 褐色でふわふわの髪の毛を、ゆっくりと何度か撫でて身を屈めると、ユウリは少年の額に小さな慈愛のキスを落とす。
 驚いた顔で凝視してくる少年をじっと見つめて、優しい笑みを浮かべると、声を改めて、宣言するように述べる。
「少し遅くなってしまったけど、君の心はようやく今、ここに戻ってきたみたいだから、まだ言ってなかったこの言葉を僕も伝えらるね。
・・・改めて、セント・ラファエロ学園へようこそ、サリヴァン。此処での毎日が、君にとって幸福なものでありますように・・・。」
 その言葉は、まるで天使の祝福のように、少年の心に響いた。

「あ・・・有り難うございます!あの…」
 ここに至って、ようやくサリヴァンは周囲の注目を一身に浴びている己を認識していた。
だが、今を逃せば二度とないチャンスだということも分かっていたので、なけなしの勇気を振り絞ってつま先立つと、ユウリの頬へとキスを返した。
「貴方の上にも・・・幸福がありますように・・・フォーダム」
「うん。有り難う、サリヴァン」

 ニコニコと笑いあって、ほのぼのとした空気を醸し出す2人の姿を、教諭陣はよかった…と、胸を撫で下ろしながら見ていた。
・・・が、生徒達の中には、微笑ましいけど、なんかムカつくかも……という心情の人物がちらほらと増えており、いつの間にか近づいて2人の間に割って入った人物もまた、その一人だった。

「じゃあ、僕も改めて挨拶をしようかな?シェークスピア寮へようこそ。歓迎するよ、サリヴァン。さあ、おいで。君の仲間達を紹介しよう。」
「オニール!」
 相変わらず芝居がかった仕草でそう声をかけてきた人物の名を呼んだのは、ユウリだった。
 その声に惹かれるように、視線をユウリに向けたオニールは、甘いマスクによく似合う微笑みを浮かべる。
「本当に有り難う、ユウリ。何もかも、君のおかげだよ。」
 お礼はまた後でゆっくり…と呟きながら、サッと素早くユウリの頬に感謝のキスをすると、オニールはユウリの腕から鮮やかな手並みで下級生を引き取った。

 頬を掠めた温もりに驚いたユウリは思わず後ろにタタラを踏んだが、もちろんその体は、同じくいつの間に来たのか背後に立っていたシモンが支えている。
 倒れ込んできた体を立たせてあげながら、シモンはオニールに負けず劣らずな微笑みを浮かべて、ユウリの顔を覗き込んだ。
「ご苦労様、ユウリ。あとはオニールに任せるといい。」
「うん、シモン。そうだね。…ああ!ヴァイオリンッ!」
 事もあろうに、校医に持たせたままだったことに気づいて叫ぶと、ユウリは慌ててマクケヒトに視線を移した。
「はい、ユウリ」
「すみません、マクケヒト先生」
 恐縮して、ペコペコと頭を下げるユウリの動作を、マクケヒトは肩に手を置くことで制した。
「なんの、これくらい。逆に僕の方がお礼を言うべきだと思ってるよ。有り難う、ユウリ。これでもう、あの子は大丈夫だ。」
 満足げに頷いて太鼓判を押すマクケヒトに、しかし、ユウリは未だ、心配そうな表情を返していた。
 その心情を察して、マクケヒトは、本当にこの子は…と、もはや『お人好し』の一言では足りないくらいに他人を気に掛けるユウリへ、困ったような笑みを浮かべる。
「そんな顔をしなくても大丈夫だよ、ユウリ。もちろん、もうしばらくは、彼の様子を見ておくつもりだからね。それにしても・・・本当に、君はセラピストにも、十分なれるよ、ユウリ。将来の選択肢の一つに考えてみてもいいんじゃないかな?」
「は?…ま…まさか!とんでもありません。・・・僕なんて、いっつも自分が迷ってばかりなのに・・・」

 両手を胸の前で振りながら懸命に否定するその姿に、全員がもった感想は同じだった。
”・・・いや、充分なれるって。・・・だって、現に今、目の前でやってたんだし・・・”
 だがしかし、これがユウリ・フォーダムなのだ…と、いい加減その天然ぶりに慣れていた生徒達は、賢くもそれ以上の言葉を控えた。

「迷いのない人間なんていないよ、ユウリ。…でも、サリヴァンじゃないけれど、僕も今日の君は天使のようだと思ったよ。」
 冗談のように軽く、でも、瞳には真剣な想いを込めてシモンは腕の中に佇む愛すべき友に告げた。

”・・・いや、ベルジュの場合、今日だけじゃないだろう、絶対・・・”
 常日頃の2人の様子を、嫌になるほど見ている周囲の心の声は、またしても一つだったが、もちろん、口に出すバカはいない。

 だが、言われたユウリの方は、というと、何ともまぁ、複雑そうな顔でシモンの顔を見返して、こう宣ったのである。
「・・・なんか、それ、シモンに言われると変な感じ。」
 一体全体、それはどういう意味なんだ、と問いたくなるユウリの反応に周囲が驚きを示し、シモンも首を傾げて疑問を示す。
「だって、シモンの方がよっぽど天使みたいだもん。」
 ね?と愛らしく微笑みながら、言われたそのセリフは、恐らく彼の本心なのだろう。
照れてもいないあたりから、それが伺える。
 だがしかし、流石のシモンも日頃の卒の無さで『有り難う』と返すことはとても出来なくて、これはマイッたと言わんばかりに苦笑した。


「・・・まあ、天使にもいろいろあるしな。さしずめシモンは、裁きの天使ってトコロか?」
 ボソッと零れたウラジーミルの呟きに、何とかユウリのセリフを納得した仲間達が、そろってウンウンと頷くことで、取りあえず、波瀾万丈なミニコンサートは、幕を下ろすことになったのである。

End

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新年、明けましておめでとうございます。
きまぐれ更新なサイトですが、今年もどうぞヨロシクです。(^-^)

本の方も無事入稿できたので、Webも最終までUP!\(^o^)/うわぁ〜い
結局、本は80頁の予定が116頁という、大幅オーバーとなってしまいましたが、とりあえず、終わったので全てヨシ!(ちなみに、ここまでで、新刊の30頁くらいまでデス)

この話は、ユウリに「人間だって幸せだ」って言ってほしくて書いた話なので、無事にお気に入りのセリフを入れられて大満足です〜!

ちなみに、続編である【幸せの定義〜after〜】にも、ちょろちょろと私的、美味しいセリフを入れてみました。中でも、一番のお気に入りは、アシュレイのセリフ。(^ー^)
あんまり出番ナイ彼ですけど(すみません)、その分、美味しい場面を奪ってくれました(笑)
まぁ、そちらは本を読んで下さった読者さまのみのお楽しみといううコトで…。

1/8の大阪Cityのスペースは、「6号館Aゾーン、ヤ54b」です。
お暇な時間があれば、是非、お立ち寄り下さいネ。
・・・ちなみに私、初めの1時間はお買い物に行ってるので、余所様を廻ってから遊びに来てくださいませ。(すみません。一人参加なので…)

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