雑賀衆の芽衣「土佐・中富川の合戦」をダイジェスト版で公開します。
本作はネーム(絵・コンテ)のみの制作なので、雑な作画となっていますが御了承下さい。

独断の一騎駆け (ネーム32ページ)

 勝瑞城へ逃げる敵軍の後を追い、芽衣は敵将、十河存保の背に向け発砲した。その銃弾は確実に兜と甲冑の隙間、首の付根を貫く。
「倒した!」
と勝利を確信した芽衣だったが、落馬する敵将の影から、全く同じ姿の武者が槍を振り上げ向かってきた。

「影武者!?」
芽衣は愕然とする暇もなく、槍の攻撃からの防御体勢を取る。鉄砲の銃身で槍を受け止めるが、反動で馬から投げ出され、身体は地面に叩きつけられた。
現状を理解した十河軍の兵が芽衣を討ち取ろうと槍を向ける。
「殺すな!城内へ連れて行け」
大将の存保は止めた。
「女とはな。利用価値があるかもしれん。」

芽衣は薄れていく意識の中で自分を見下ろす馬上の人物を見た。「十河…」、それ以上を声にする事なく気を失った。

 信親隊は城からの発砲に阻まれ進む事ができず、その間に十河軍は退却。長宗我部軍は初戦に勝利したが、芽衣の狙撃は失敗。勝手な行動により捕虜となる散々な結果となった。

 

十河存保 (ネーム35ページ)

 城外の長宗我部軍へ撃ちこまれる鉄砲の轟音で芽衣は目を覚ました。
「おい、女。貴様は何者だ。信親隊にいた所を見ると、名のある将の娘か。」
十河存保の問いかけに芽衣は自分が雑賀衆の援軍である事を明かした。

「くそっ…使い物にならんか」
存保は落胆した。人質として使える人材なら合戦を長引かせ、上方の援軍を待つ事が出来ると考えていたのだ。芽衣は臆する事なく相変わらず強気だった。
「だったら何?殺せばいいじゃない。その前に言わせてもらう!これから雑賀衆の本隊が到着するわ。降伏した方が身のためよ!」
十河家臣は刀に手をかけるが、それを存保が止めて言った。
「傭兵の女など斬ったら刀が汚れる。戦で商売する くだらん連中だ。」
芽衣は雑賀衆を馬鹿にされた事に怒り殴りかかるが、逆に喉を摘まれ片手で持ち上げられた。

「俺は長年、阿波と讃岐を支配してきた一族の誇りのために戦っている。初めから負け戦は覚悟のうえ。」「この戦は阿波軍の意地を見せるのが目的!貴様らとは志が違うのだ。」
十河存保の言葉は自分の合戦への美意識でもあり、雑賀衆を見下すものでもあった。
「クズが…城外へ摘み出せ。」
芽衣を投げ捨てると存保は去って行った。

「情けをかけられたなんてものじゃない。全く相手にされないなんて…。」
芽衣には命を助けられた事を安堵する余裕は無く、ただ敗北感に打ちのめされた。

 

慢心と己惚れ(うぬぼれ) (ネーム37ページ)

 「芽衣殿が戻ったのか」
生還した芽衣に元親をはじめ長宗我部軍の本陣は沸き立った。
「申し訳ありませんでした。只今戻りました…」
地面に手を付き頭を下げる芽衣に信親は近づき、襟を掴んで身を起こさせると平手で頬を叩いた。
「殺されたら…叩かれることも出来ないんだぞ!」

「ご、ごめんなさい」
芽衣の声は小さく、信親と眼を合わせられなかった。
『信親は初めから私と向い合ってくれていた。だから役に立ちたかったのに…私は自分の鉄砲の腕と雑賀衆の名に己惚れていただけだ…』
信親や長宗我部家の人達の信頼を裏切った行動に、芽衣は自分の慢心を恥じ、顔を上げる事ができなかった。

 長宗我部軍は勝瑞城を囲んでいた。本丸から城外を見下ろす十河存保は、敵に新たな一軍が加わった事に気がついた。傍らにいる家臣は、その旗に描かれたヤタカラスの家紋が雑賀衆の物だと分かり驚愕の声をあげる。
「うろたえるな。まだ時間は稼げる。」
存保は曇った空を見ながら言った。
「この季節、雨が降れば長引く。そうすれば敵は動けん。」

 

洪水 (ネーム43ページ)

 雑賀衆の援軍2千人が到着した。芽衣は合戦への遅刻を怒りつつも、一緒に狩りをする目付け役の家臣、与作と権蔵が来たのを喜んだ。そして本隊と共に城の包囲に向かおうとする。
「本当は本陣にいてほしいのだが。芽衣殿が近くにいないと寂しくなる。」
元親の優しい言葉に応えるかのように芽衣は張りきって言った。
「今度はヘマしませんから見てて下さい!」
すると雑賀衆へ一喝、「行くぞ!城内に向け挨拶代りの一斉射撃だ!」と意気込むが、その時、雨が降り出した。
雨では火縄が濡れるため鉄砲は使えない。攻撃は中止され全軍を休養させる事となった。芽衣の気合は空回りした。

 「もう何日目の雨だ…川の水位が上がり過ぎている…」
芽衣は編み笠をかぶって川岸の土手に立っていたが、急に走り出すと傍らにいる与作と権蔵に食料や火薬を高台に移すように指示した。
「洪水になるかもしれない!念のため小船を調達して!」

ドォッという轟音が長宗我部軍の本陣がある寺に聞こえ、慌てた兵が駆けこんできた。元親、信親達が境内を下り一望できたのは洪水による一面の水だった。低地にいた兵達は水面から出た民家の屋根や攻城用の櫓に上がり難を逃れ、敵の勝瑞城だけが無事で水に浮いたような形となった。
「これでは身動きが取れん…こうなっては人の力など小さなものだ…」
茫然とする元親達の所に3隻ほどの小船を従えて芽衣が到着した。

阿波攻めに雑賀衆が遅れる事、洪水が起こる事は史実なのです。

芽衣の頑張り (ネーム45ページ)

 雑賀衆は丘に避難して無事であった。芽衣は調達した船で本陣に食料を運ばせ米を焚き、水の上にいる兵達に配る事を提案する。
「本陣が元気を出さなきゃ駄目でしょ!洪水になんか負けてたまるかー!」
(いかだ)を造ろうと、片手にノコギリを握り締める芽衣に兵達は湧き上がった。
「いっきに活気がついた…不思議な娘だ」
元親は芽衣の気丈な姿に感謝していた。

 信親は筏造りの丸太を2〜3本担ぐが芽衣は1本も持てずに握り飯作りに励んだ。
『私は戦の役に立ちたくて土佐に来たんだ。鉄砲を撃つだけが戦じゃない。こんな時だからこそ自分に出来る事を頑張らなきゃ。』『私は援軍、雑賀衆なんだ!』
芽衣は雨が降り続く中、災害に疲弊する兵のために奮闘した。

 数日後、雨は上がった。芽衣と与作、権蔵の3人は民家の屋根に避難している足軽達と握り飯を食べながら雑談していた。
「水が引いたら、また戦が始まるのか…どっちが良いんだろう」
「芽衣様がこうして応援に来てくれてるんじゃ。十河軍など、すぐにやっつけてやりますぞ!」
足軽達の明るさに笑みを浮かべる芽衣だったが、その時、勝瑞城から数隻の小船が出てくるのが見えた。

敵の城から鉄砲隊を乗せた小船が出た、という知らせに元親は驚愕した。
「まさか…水の上にいる者達を狙うつもりか。」
信親は芽衣が本陣に戻っていない事に気付き雑賀衆を呼ぶように命じた。

船からは身動きが取れない長宗我部の兵に向け一斉射撃が始まった。

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