雑賀衆の芽衣「土佐・中富川の合戦」をダイジェスト版で公開します。
本作はネーム(絵・コンテ)のみの制作なので、雑な作画となっていますが御了承下さい。

射撃 (ネーム16ページ)

 弾丸は的には当たらず、その下の信親が持つ角材の部分を貫いた。
的に命中させるより、ずっと難しい技術を見せられ長宗我部の家臣達は驚ろき、ざわめきだすが元親だけは笑っていた。
「今のは偶然ではないのか?!」という家臣の言葉に、芽衣は「さぁ、どうなんでしょう」と余裕で答える。そこに信親が馬から下り、声をかけた。

「こうでもしなきゃ家臣達を納得させられないと思ってな。」
その表情は初めとは一転して優しいものだった。信親は芽衣と家臣達のために、わざと悪態をつき一芝居を演じてくれていたのだ。
「長宗我部 弥三郎 信親と申す。辛く当たった事、許してくれ芽衣殿。」
「芽衣でいいよ。ありがと」
丁寧に挨拶する信親に芽衣は安堵の笑顔を見せた。
「それじゃ俺のことも信親でいいぞ。」
すると次々と家臣達も自己紹介を始め、緊張していた場は陽気な雰囲気につつまれた。

芽衣は一発の射撃で雑賀衆としての信頼を得たのだった。

(この後、酒宴で芽衣が酔いつぶれるシーンも描いたのですが、ページの都合でカットしてしまいました。読み切り作品は構成が大変です…。)

 

阿波侵攻への想い (ネーム19ページ)

 芽衣は信親と馬を並べ、居城がある岡豊(おこう)周辺を散歩していた。それを見た農夫が信親をからかうように声をかけた。
「若様ー!女子(おなご)連れとは、ようやく気に入った娘ができましたか。」
「そんなのではない。客人を案内しているだけだぞ!」
四国の大大名、長宗我部家の嫡男が身分の低い百姓と親しげに話すのを見て意外に思う芽衣だったが、信親は彼らが半分は武士なのだと説明した。

 土佐では『一領具足』と呼ばれる半農半士の身分の者が主戦力で、それは雑賀の地侍と似ていた。
「だから、この20年の戦乱で田畑は荒れている。領民の暮らしを良くするためにも、敵国を平定して戦を無くしたい」
信親の横顔は真剣だった。

 「父上は次の出撃で阿波(徳島)を取ったら、続けて讃岐(香川)に攻めこむ気だ…それには味方の被害を抑えて勝つ戦をしなければならない」
桂浜の海岸まで来た時、信親は次の戦への思いを芽衣に語った。雑賀衆を呼んだのも、そのためだと言う。 芽衣は自分のやるべき事が、すぐに解った。
「敵の大将を狙撃するのね。成功すれば、力攻めをしなくても勝てる。」

「四国最強の殿様に頼られるなんて悪い気しないよ。」
芽衣は浜辺の砂に四国の地図を書きながら誇らしげに思い、相変わらず強気の口調で張りきるのだった。

 

長宗我部軍 出陣 (ネーム20ページ)

 天正10年(1582)8月、長宗我部軍は阿波へ出陣。
兵数2万3千、15歳から60歳まで可能な者は出陣させたという大軍勢だった。
「良い働きするから見ててよ。雑賀の鉄砲は日本一なんだから!そして私の初陣を勝利で飾るのだ!」
行軍中の大軍に感動して芽衣は騒いでいた。
「少し静かにさせるか?」と困惑気味の信親だったが、「賑やかなのは良い事だ」と元親は笑みを浮かべていた。

 長宗我部軍は阿波の拠点、勝瑞城を攻めるため中富川を挟んで対陣する。
本陣では芽衣が怒っていた。敵の城を目の前にしても雑賀衆の援軍は到着していなかったのだ。「波が高くて海を渡れないのだろう」と元親は仕方なく思うのだった。

 そこに元親の弟『香宗我部 親泰』が勝瑞城の城主『十河存保(そごう まさやす)』の動きを報告に来た。
「十河存保の兵5千、城を出て勝興寺に本陣を構えています。先陣は三好備前守、兵2千。中富川の対岸に打って出ました。」

「出撃しろ親泰、川を渡り先陣を切り崩せ!」元親は立ち上がり指示を出した。

 

芽衣・信親、出撃 (ネーム24ページ)

 敵将、十河存保は阿波を守っているだけあり強敵であった。
「黒岩種直殿、討ち死に!」「吉田俊政殿、討ち死に!…」
本陣には香宗我部隊の混戦や戦死した重臣達の知らせが次々と報告されてくる。元親は十河存保が戦闘に加わったと知ると信親の騎馬隊に出撃を命じた。馬上からも鉄砲が撃てる芽衣も後に続く。

 芽衣は戦場で多くの死体を見て表情を強張らせた。
「雑賀衆の援軍が来ていれば、ここまでの被害はなかったかもしれないのに」
信親は果敢に挑んでくる阿波兵に向かい一喝して槍を振るった。
「死にたいか!道を開けろ!」
一撃で敵を倒すと、芽衣を囲んで敵を近づけさせないように部下を指揮する。

「強い!これなら恐れることはない。いつも通り撃てばいいんだ。」
芽衣は信親を見て落ち着く思いがした。
その時、味方の兵が前方の敵軍に十河の旗を発見した。

(香宗我部 親泰が登場するのは3コマだけなのでカットしてしまいました。ダイジェストなので許して下さい。)

 

狙撃 (ネーム27ページ)

 十河家、扇の家紋の旗を立てた騎馬隊が見える。
「遠いけど弾丸(たま)は届く距離だ。この動きが多い人数の中で狙えるか…。大丈夫、落ちつくんだ。」
自分に言い聞かせるようにして、芽衣は大将らしき人物に銃口を向けた。
「当たれ!」

敵味方の兵の隙間を抜けた弾丸は、十河存保の肩、鎧の袖をかすめた。
「おのれ…信親隊からの発砲か。」
顔をしかめる存保。
「はずした…」
芽衣は狙撃を失敗した事に一瞬茫然としたが、敵を退却させる効果は充分だった。

芽衣は信親の指示を待たずに、退く敵軍へ向かい駆け出した。すでに次の射撃のため早合(弾丸と火薬を詰めた筒)を手にしている。信親は芽衣を見て、すぐに追撃しようとしたが、敵兵が大将の存保を逃がすために行く手を阻んだ。

「戻れ芽衣!!」
信親の声が届かないのか、芽衣は一騎で存保を追い、その背中に標準を合わせた。
「逃がさない!次は当てる。私の鉄砲で、この合戦は終わらせてやる」
集団での合戦には、あってはならない独断の行動だった。

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