side 葵 豹馬
定期検査を終えて部屋へ戻る。
普段は気にもとめなくなったが、実は生来の物じゃない物をジッと見つめた。
この戦いで、色々な物をなくした。 勿論、得た物もあるが … 。
なくしたものの一つがコレ。 俺の両腕。
肩から下は作り物。 見た目も何もかも、そんな風には見えねぇけどな。
もう両腕が使えない そう言われた時は絶望の闇が見えた。
腕が使えないって事は、ジェットに乗れないという事。 勿論、バイクにも。
バイクはともかく、ジェット … コン・バトラーには脳波操縦装置で乗るって手もあるが、負担が掛かりすぎるから、これ以上許可出来ないと言われた。
万事休す … てか?
「人体実験に近い物があるが … ソレで良いなら … 」
おっちゃんの一言に飛びついた。
俺は、こんな中途半端な所でジェットを降りたくなかった。
こうなりゃ形振り構ってられねぇ。 何でもやってやるさ! 可能性があるなら。
そうして得たのが、この腕。
ホントに良くできてやがる。 定期検査が無けりゃ、忘れちまう程だ。
薬品による壊死や拒絶反応とか、苦労もあったが、今じゃすっかり俺の腕。
異常が無いかの確認と、今後の研究・改良、そして一般へ普及させる為のデータ集めを兼ねた定期検査は、苦痛じゃねぇが、自分の腕が作り物だと再認識させる。
他のみんなも、色々なくしてるんだろうな。
肉親の死、家や故郷をメチャクチャにされたり … 。
俺だけじゃない、他のみんなも色々なくして … そして、もうなくしたくないと思ってるだろう。
改めて決意する。 もう、なくさないように。
グッと手を握り込む。
この腕は、新たに得たものであり、俺の決意を象徴するもの。
そして、かつて、なくしたもの … 。
* 作者の言い訳 *
豹馬の腕は、邪悪なキャンベル星人を倒す為に得た、新たな武器でもあるような気がします。
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