100のお題 No,057 「ヒモ無しバンジーやるくらいの覚悟でいろよ!」





 困っていた。
 以前にも、この手の人間が来たが、その時は、まだほんの子供。 小介くらいだったか?
 しかし、小介のように特出した頭脳がある訳でもなく、運動神経がずば抜けていた訳でもなく。
 マスコミまで呼んで大々的に発表しようとするという大それた事を平気で出来る根性は見事だったが、いかんせん、何も知らない子供の事だから、散々怒られて、後見人(保護者?)に引き取られて帰って行った。
 しかし、今度は豹馬達と同世代。
 豹馬達に出来るんだからと言って聞かない。
 豹馬達が選ばれたのには、それなりの理由があるのだが … 。

 「暴走族上がりに出来て、何で僕等に出来ないんですか?! 納得出来ません!」
 3人の少年達の中でもリーダー格の少年が食い下がる。 脅しても、なだめすかしても駄目。 いい加減、四ッ谷博士も疲れてきた。
 「だからぁ … 色々事細かに調べて挙がった候補から更に絞り込んで今のメンバーに決まったんじゃ。 悪いが君たちは、最終選考どころか、第3次選考にも残っとらん。 それだけでも、理由になるだろうがっ。 いい加減にしなさい」
 隣の部屋からコッソリ様子をうかがっていたバトルチームの面々も、最初は興味津々で聞いていたが、次第にうんざりしてきた。
 「悪かったな、族上がりで」
 「豹馬、し〜っ。 聞こえるわよ」
 「ばってん、粘るとね〜。 それなりに、根性あるとね?」
 「何も知らんだけやないのか?」
 「その可能性有りますね」
 キャンベル星人との戦いは、生半可な物ではない。 以前第2コン・バトラー隊に選抜された川上健二でさえ、マグマ獣との戦いに最初はビビッたくらいだ。
 並の肝の据わり方では、務まらない。 それがバトルチーム。

 「仕方ないのぉ … じゃぁ、これからするテストに出合格出来たら、考えよう」
 「「「「「?!」」」」」
 「本当ですね?!」
 バトルチームの面々は驚いた。 一体、どんなテストをするのか … ?
 「豹馬、十三、大作、ちずる、小介 … お前達、出てこいっ」
 どうやら、四ッ谷博士には隠れていた事はバレバレだったらしい。 伊達にコネクションの所長を務め、悪ガキバトルチームを率いていない(笑)
 「あ、やっぱ解ってたか( ̄▽ ̄;」
 ドアから顔を出す5人。 そんな5人に敵意の目を向ける少年達。
 今までコッソリ聞いていた話によると、学校でも成績優秀、スポーツ万能な少年達のようだ。 正義感も強い。
 しかし、バトルチームのメンバーに選ばれる為には、そんな事だけでは駄目なのだ。 それだけの少年少女達は、他にもいくらでもいた。
 しかし、全て何回目かの選考で落とされているのだ。

 「聞いていたんじゃろ? なら話は早い。 この子達のテストをするから手伝え」
 「どんな事をするんですか、博士?」
 「取りあえず、 “射撃場” に行くぞ」
 「「「「「 “射撃場” へ?」」」」」
 四ッ谷博士の意図が分からないまま、皆は “射撃場” へ移動した。


 バトルチームの面々は四ッ谷博士からテストに関する説明を受け、配置に付いた。
 射撃場の的の前に豹馬、大作、ちずる、小介が並ぶ。 十三は拳銃片手に射撃位置に着く。 傍らの台には、何丁かの銃が置いてある。
 「さて、君たちも、豹馬達の間 … 何処でも良いから並びなさい」
 「「「はぁ … 」」」
 訳が分からないまま豹馬達の間に立った。
 「では、テストを始める。 まずはそこから動かなければ良い。 そのまま目を開けて立っていられれば、このテストに関しては合格じゃ」
 「え? 立っているだけ … ですか?」
 「楽勝じゃん」
 少年達は解っていない。 何故、十三が射撃位置に拳銃片手に立っているのか。
 「まずは君らの度胸が見てみたい。 では、十三頼むぞ」
 「はいな。 任しときっ」
 「では、構えっ」
 四ッ谷博士の号令で、十三が豹馬達と少年達に向かって銃を構えた。
 「なっ、何をっ?!」
 銃を向けられて、少年達は驚いた。 驚くなと言うのが無理かも知れないが。
 「今から十三が君たちの間を狙って撃つから、そのまま動かず立っていれば良い。 大丈夫、十三は百発百中の腕前じゃ」
 「そ、そんな無茶なっ」
 抗議の声を上げたが、聞き入れられる訳がない。
 「始めっ!!」
 四ッ谷博士の号令と同時に、十三はひっきりなしに撃ち始めた。

 「ひいぃぃっ」
 銃の轟音が響く中、少年達は、撃ち始めとほぼ同時に頭を抱えてうずくまった。
 室内なので、その轟音の反響はすさまじく、銃の恐ろしさを煽る。 更には、十三から殺気を感じる。
 アメリカなどとは違い、一般人の生活の中に銃がない為、銃に関しては少年達に余り恐怖感はなかった。 ゲームセンターなどで使う弾の出ない … 人を傷付けない玩具の銃しか知らないからだ。
 が、銃の轟音を身近で聞いて恐怖が湧いた。 我が身の近くを通過する弾丸に銃本来の怖さを知った。 同時に自分達の方に銃を向ける十三からの殺気に背筋が凍った。
 殺気と言っても十三にとっては、さほどの物ではない。 豹馬達なら軽く流せる程度の物だ。 しかし、少年達には十分効いていた。
 「おいおい、動いたら逆に危ねぇぞ」
 「そうじゃ。 十三しゃんは、オイ達の間を狙っちょるけん、ジッとしとらんと逆に当たってしまうばい」
 豹馬と大作は、涼しい顔で、動くとマズイので視線だけを少年達に向けて、まるで世間話でもするかのように話をする。 十三が当てるはずがないと解っているからもあるが、この位でビビッていては、マグマ獣は相手に出来ない。
 「空砲なんだろう? そうだよな?!」
 「実弾に決まってるじゃない。 空砲じゃテストにならないわ」
 「証拠見せましょうか? 何か目標物に当てて貰って … 」
 女の子のちずるや、明らかに自分達よりも年下の小介までも平然として、さらりと言ってのけた。
 「ほな、その眼鏡、いってみよか」
 少年の一人が眼鏡をかけていたので、十三は眼鏡の蝶番(レンズの両脇に付いている折り曲がる所)を狙った。
 「 … 十三、眼鏡の弁償、お前持ちだぞ」
 四ッ谷博士がさり気なく、経費では落とさない事を告げる。
 「えーっ、ホンマでっか? ほな止めトコ」
 十三は改めて構え直すが、四ッ谷博士は、それを制した。
 「ああ、もういい。 十三、終了だ」
 「へ、もうエエんでっか?」
 十三は、いささか物足りなかったようだ。 豹馬達も 「な〜んだ、もうお終いか」 と気が抜けてしまっている。
 「さて、君たち。 ワシの出した条件をクリア出来なかったから、当然テストは不合格じゃな。 第一段階でこれじゃ、どうしようもない」
 「で、でも … 」
 少年達3人の内2人は、もう意気消沈のようだが、例のリーダー格の少年は、先程までの勢いはなくなったものの、まだ食い下がってくる。
 「実際は、こんなモンじゃない。 ミサイル、レーザー、火炎放射器。 雨霰と降ってくる。 今のように目をつぶって頭を抱えてうずくまっていては戦えん」
 「そ、それは、これからの訓練で慣れれば … 」
 少年の言葉を遮るように、豹馬が目の前に来た。 その身には、先程の十三以上の殺気を纏っている。
 「いい加減にしろよな。 お前達は、もう負けたんだ。 テストにも、俺達にも、自分自身にも」
 そんな豹馬の両脇に残りのメンバーも集結する。
 「お前ら覚悟足んねーよ。 バトルチームのメンバーになりたいと思うなら、最低でもヒモ無しバンジーやるくらいの覚悟でいろよ!」
 少年達は、もう何も言えなかった。


 そのの後、少年達を帰し、全員リビングルームでティータイムとなった。
 「ゲームとかの世界しか知らんから、軽く考えとったんじゃろうな。 ま、心意気だけは買うが」
 四ッ谷博士は、ようやく解放されたといった感じで、ため息をつく。
 「ヒモ無しバンジーか … 実際はやりた無いなぁ」
 「確かにそうですが、いつ死ぬか解らないような状態ですからね。 そのくらいの覚悟はホントに必要かと … 」
 豹馬が少年達に言った言葉を思い出す。
 「普通の戦争とも違うからな。 めちゃくちゃな怪獣相手だ。 そんじょそこらのヤツじゃ務まらねぇよ。 …… ヒモ無しバンジーやれるくらいの根性、あいつ等ならあるかも?」
 豹馬の視線をたどってリビングルームの窓の外を見れば、ケロットが木兵衛に特訓を受けていた。




* 忍の言い訳 *
 飛田小太郎や一木兄妹みたいなのがいるですから、他にもいそうだなと。
 でも、普通の肝っ玉の大きさじゃ駄目でしょう。




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