「ふ〜 … 」
白い煙がたなびく。
滅多に人の来ない、屋上(?)。 たまに息抜きに、一人で来る場所。
昼寝をする時も有れば、ボンヤリしているだけの時も。 そして、今日の様に煙草を手にする事もあったり … 。
“孤児” … 。 その立場が、周りからのいじめや差別を産んだ。
別に、なりたくてなった訳じゃないのに。 自分だって、父や母と、仲良く平和に暮らしていたかった。
一瞬の不注意で起こった事故。 それが彼の運命を変えた。
やがてグレた。 母親代わりだった園長先生に、大分迷惑をかけた。 学校にもほとんど行かず、暴走族の仲間に入って、やりきれない気持ちをバイクにぶつけた。
そんなときに覚えた酒・煙草。
今は、いつスクランブルがあるか分からないので、酒はやっていない。 だが、煙草は、たまにコッソリと。
「ふ〜 … 」
ぼんやり夕陽を見ながら、また煙を吐き出す。
「くぉらぁっっ! 煙草は二十歳になってからっっっ!!」
「!!!?」
突然の大声の指摘に、流石の豹馬も油断しきっていた為、飛び上がって驚いた。
振り向くと、ソコには関西弁の長身の男。
「なんてな(笑)」
「脅かすなよ、十三〜( ̄▽ ̄;」
「一本、恵んでぇなゥ」
実は、二人は “モク仲間” 。 お互い、未成年であるにもかかわらず、コッソリ吸っている。
十三も、一時期グレた事があった。 豹馬同様、その時に覚えた酒・煙草。 彼も、酒は今のところ禁酒中である。
「姿が見えへんかったから、ココかなぁ思うてな」
貰った煙草に火を着けながら、言う十三。
「他の連中は?」
「リビングでダベッとるワ」
ほぼ四十六時間中一緒のメンバー。 仲が良いので、一緒にいても苦痛ではないが、それでも一人になる時間は欲しい。
だから一緒にいなくても何も言われないが、何処にいるのかは何となく気になってしまう。
煙草を手に、しばらく2人でたわいもない事を喋っている内に、紅の空が夜の帳をまとい始めた。
「そろそろ戻った方が良いか … 」
「そやな」
携帯灰皿に煙草を入れて火を消す。
こんな所にポイ捨てして、誰かに見つかったら大変だ。 どんな雷が落ちるか知れない。
「ホンマは、身体に悪いんやけど、クセになってしもてるからなぁ(苦笑)」
「ま、吸い過ぎなけりゃ、なんとかなるだろ」
ふと、二人で顔を見合わせて、ココで一緒になった時のおきまりの台詞を口にする。
「「タバコは控えめにネ(笑)」」
お互い、分かってはいるけれど … 。
「ほな、戻ろか」
「ああ … あ、モン●ミンで口ゆすぐの忘れねぇようにしねぇと」
結構頑張って証拠隠滅。
でも、バレるのは時間の問題 … かも?
* 忍の言い訳 *
絶対服にニオイついてると思うんだよね〜。
嫌いな人には、ホント鼻につくから。
まぁ、室内で煙がこもる様な所で吸っている訳じゃないので、まだ、ニオイのつき具合は薄いだろうけどね。
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