100のお題 No,043 「タバコは控えめにネ」





 「ふ〜 … 」
 白い煙がたなびく。
 滅多に人の来ない、屋上(?)。 たまに息抜きに、一人で来る場所。
 昼寝をする時も有れば、ボンヤリしているだけの時も。 そして、今日の様に煙草を手にする事もあったり … 。

 “孤児” … 。 その立場が、周りからのいじめや差別を産んだ。
 別に、なりたくてなった訳じゃないのに。 自分だって、父や母と、仲良く平和に暮らしていたかった。
 一瞬の不注意で起こった事故。 それが彼の運命を変えた。

 やがてグレた。 母親代わりだった園長先生に、大分迷惑をかけた。 学校にもほとんど行かず、暴走族の仲間に入って、やりきれない気持ちをバイクにぶつけた。
 そんなときに覚えた酒・煙草。
 今は、いつスクランブルがあるか分からないので、酒はやっていない。 だが、煙草は、たまにコッソリと。


 「ふ〜 … 」
 ぼんやり夕陽を見ながら、また煙を吐き出す。
 「くぉらぁっっ! 煙草は二十歳になってからっっっ!!」
 「!!!?」
 突然の大声の指摘に、流石の豹馬も油断しきっていた為、飛び上がって驚いた。
 振り向くと、ソコには関西弁の長身の男。
 「なんてな(笑)」
 「脅かすなよ、十三〜( ̄▽ ̄;」
 「一本、恵んでぇな
 実は、二人は “モク仲間” 。 お互い、未成年であるにもかかわらず、コッソリ吸っている。
 十三も、一時期グレた事があった。 豹馬同様、その時に覚えた酒・煙草。 彼も、酒は今のところ禁酒中である。
 「姿が見えへんかったから、ココかなぁ思うてな」
 貰った煙草に火を着けながら、言う十三。
 「他の連中は?」
 「リビングでダベッとるワ」
 ほぼ四十六時間中一緒のメンバー。 仲が良いので、一緒にいても苦痛ではないが、それでも一人になる時間は欲しい。
 だから一緒にいなくても何も言われないが、何処にいるのかは何となく気になってしまう。

 煙草を手に、しばらく2人でたわいもない事を喋っている内に、紅の空が夜の帳をまとい始めた。
 「そろそろ戻った方が良いか … 」
 「そやな」
 携帯灰皿に煙草を入れて火を消す。
 こんな所にポイ捨てして、誰かに見つかったら大変だ。 どんな雷が落ちるか知れない。
 「ホンマは、身体に悪いんやけど、クセになってしもてるからなぁ(苦笑)」
 「ま、吸い過ぎなけりゃ、なんとかなるだろ」
 ふと、二人で顔を見合わせて、ココで一緒になった時のおきまりの台詞を口にする。
 「「タバコは控えめにネ(笑)」」
 お互い、分かってはいるけれど … 。
 「ほな、戻ろか」
 「ああ … あ、モン●ミンで口ゆすぐの忘れねぇようにしねぇと」
 結構頑張って証拠隠滅。
 でも、バレるのは時間の問題 … かも?




* 忍の言い訳 *
 絶対服にニオイついてると思うんだよね〜。
 嫌いな人には、ホント鼻につくから。
 まぁ、室内で煙がこもる様な所で吸っている訳じゃないので、まだ、ニオイのつき具合は薄いだろうけどね。




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