忘れないよ … 忘れない … 。
虐げられながらも、必死に生きて、命がけで家族を助けようとした。
そんな君が確かにココにいた事は、俺達が知っているから … 。
波の音と潮風と。
彼女達が身を躍らせた崖の上に、彼女達の墓があった。
「よっ、久しぶり … 」
そう声をかけた。 何も答えは無いと分かってはいたけれど。
パサッ … 。
色取り取りの季節の花。 綺麗にまとめられた花束。
跪いて、それを墓標の前に静かに置いた。
“山部ゆき子”
そう書かれた墓標は、静かに海風を受けていた。 隣にたたずむ彼女の父の墓標と共に。
「ゆき子さん … なかなか上手くいかねぇよ。 約束を果たすのには、まだ時間かかりそうだ … 」
かつて、キャンベル星人の奴隷にされていた少女。 脱走犯の父を助ける為に、豹馬の暗殺を命じられた。
しかし、豹馬の優しさに触れた彼女は、豹馬暗殺を果たせず、最終的には豹馬を助ける為に、人間爆弾にされた父と共に、目の前の海へ崖から身を躍らせ、自爆したのだった。
あの時、墓標に誓った。
彼女が話していた、他にも囚われ、奴隷にされている地球人達。 その救出を。
しかし、戦いは、なかなか進展しなかった。
キャンベル星人繰り出すマグマ獣の撃退が精一杯で、敵基地の発見までには至らない。
念のため、前任者の使っていた基地も調べたが、完全に崩壊しているし、再び利用された形跡は無かった。
完全に崩れ、海底に沈んだので、地球側でも調査が出来なかったくらいだ。 調査しようとした国防軍の一部の人間に、ネチネチ文句を言われたくらいである。
『 ソコまで気を遣って戦ってられる状況じゃなかったって』
ふと思い出して、再び腹が立つ。
つい、ガンつけする様な目つきで墓標を見てしまった。
「! っと、いけね」
気持ちを落ち着けて、改めて墓標に語りかける。
「ごめんな … でも、どんなに時間がかかっても、何とかしてみせるから」
ソコに眠る彼女に新たに誓う。
君の事は、忘れないよ …… そして、この約束も、忘れない … 。
* 忍の言い訳 *
正確なお墓の場所、分からないので、飛び降りた所にしちゃいました。
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