100のお題 No,040 「忘れない」





 忘れないよ … 忘れない … 。
 虐げられながらも、必死に生きて、命がけで家族を助けようとした。
 そんな君が確かにココにいた事は、俺達が知っているから … 。


 波の音と潮風と。
 彼女達が身を躍らせた崖の上に、彼女達の墓があった。
 「よっ、久しぶり … 」
 そう声をかけた。 何も答えは無いと分かってはいたけれど。
 パサッ … 。
 色取り取りの季節の花。 綺麗にまとめられた花束。
 跪いて、それを墓標の前に静かに置いた。
 “山部ゆき子”
 そう書かれた墓標は、静かに海風を受けていた。 隣にたたずむ彼女の父の墓標と共に。
 「ゆき子さん … なかなか上手くいかねぇよ。 約束を果たすのには、まだ時間かかりそうだ … 」
 かつて、キャンベル星人の奴隷にされていた少女。 脱走犯の父を助ける為に、豹馬の暗殺を命じられた。
 しかし、豹馬の優しさに触れた彼女は、豹馬暗殺を果たせず、最終的には豹馬を助ける為に、人間爆弾にされた父と共に、目の前の海へ崖から身を躍らせ、自爆したのだった。
 あの時、墓標に誓った。
 彼女が話していた、他にも囚われ、奴隷にされている地球人達。 その救出を。

 しかし、戦いは、なかなか進展しなかった。
 キャンベル星人繰り出すマグマ獣の撃退が精一杯で、敵基地の発見までには至らない。
 念のため、前任者の使っていた基地も調べたが、完全に崩壊しているし、再び利用された形跡は無かった。
 完全に崩れ、海底に沈んだので、地球側でも調査が出来なかったくらいだ。 調査しようとした国防軍の一部の人間に、ネチネチ文句を言われたくらいである。
 『    ソコまで気を遣って戦ってられる状況じゃなかったって』
 ふと思い出して、再び腹が立つ。
 つい、ガンつけする様な目つきで墓標を見てしまった。
 「! っと、いけね」
 気持ちを落ち着けて、改めて墓標に語りかける。
 「ごめんな … でも、どんなに時間がかかっても、何とかしてみせるから」
 ソコに眠る彼女に新たに誓う。

 君の事は、忘れないよ …… そして、この約束も、忘れない … 。





* 忍の言い訳 *
 正確なお墓の場所、分からないので、飛び降りた所にしちゃいました。




トップへ






ホームへ インデックスへ