こっそり取り分ける。
いけないと分かっているけど … 。
「ちずるさん、ニンジン食べてないようですけど … 」
「 … ( ̄_ ̄;」
ちずるの皿を見た小介にバレてしまった。 そう、ちずるはニンジンだけをさり気なく分けていた。
それでも他のモノと混ぜて、騙し騙し半分以上は頑張って食べたのだ。
「あ、ちずるはニンジン嫌いか」
「悪かったわねぇ。 好き嫌いくらい誰にだってあるでしょ」
少しほほを赤らめているのは、恥ずかしいからだろう。
「ま、確かにな〜。 俺もピーマン駄目だ(苦笑)」
「あ、豹馬さんに同じです(^_^;」
苦笑いしながら自分の嫌いなモノを白状した豹馬に小介が同調した。
「お、小介もか! そうだよな、そうだよな。 あんなモン、食いモンじゃねぇよな」
同志が居た事で喜んだ豹馬は、小介の肩をバシバシと叩いた。
「ほなら、ピーマンの肉詰めとかは、アカンのか?」
「はい、駄目ですね」
小介は恥ずかしそうに白状する。
「俺、細かく刻まれたモノなら、他のと一緒に誤魔化して食べられなくはねぇけどな。 デカイのはなぁ … 」
「それ、あたしも。 このニンジンだって、半分は他のと一緒に頑張って食べたのよ」
ちずるは、 「チョットはエライでしょ?」 と自分の努力をアピールした。
「皆しゃん、結構好き嫌いがあるとね」
不思議そうに大作が視線をよこした。
「大作は無いんか? 嫌いなモン」
「オイは、何でも大丈夫たい。 もし、好き嫌いしようモンなら、お虎叔母しゃんの一本背負いが待ってるたい(笑)」
「ああ … あの強烈な叔母はん … ( ̄▽ ̄;」
「一本背負い食らいたくないが為に、何でも食べる様になったってのか」
「凄い矯正の仕方ですね … 」
コネクションに、あの強烈な印象を残していった大作の叔母、西川虎子。 彼女の一本背負いが待っているとなれば、確かに好き嫌いは言っていられないだろう。
「そういや、太陽学園でも、好き嫌いは園長先生達を困らせてたよな〜。 食べさせる為に、色々工夫していたよ。 ニンジンは摺り下ろして混ぜるとか … 」
「ウチの母もやりましたよ。 一緒に炒めたりすると、他の食材にも味がうつるので、ピーマンだけ別に炒めて後で混ぜるとか、味付けを濃いめにして誤魔化すとか」
「どこも食事を作る人が苦労するのね … 」
「古今東西、そんなモンやな」
ウンウンと納得している十三を見て、豹馬は、ふと気付いた。
「そういや、十三の嫌いなモノってのは? ねぇのか?」
大作、ちずる、小介も、そう言えばと十三に視線を向ける。
「おお、ワイにもあるで。 嫌いなモン」
「へぇ、何なの?」
「それはなぁ … 」
グッと両手をグーにして力を入れる。
「あの、腐れた豆やぁっっっっっっ!!!!」
「「「「(・ ・;」」」」
あまりの力説に、他四人は、目が点。
「どないしてん?」
「え、え〜っと … “腐れた豆” って、ひょっとして “納豆” ですか?」
「そや! あないな腐ったモン、喜んで食べるヤツの気が知れんワ!」
更なる力説。 握り込んだ両手は、更に力が込められている。
「ああ、ナルホド。 一応 “腐った豆” か、アレは … 」
「そう言えば、関西方面の人は、納豆駄目だって話、良く聞くわね」
「ばってん、納豆は栄養価は高かよ」
「他のモンで、栄養取ればエエのや!」
「それって、好き嫌いを推奨する言葉ですよ … (^_^;」
言いたい事は、皆分かる。 自分もわざわざ嫌いな物を食べないで、別のモノで栄養をとればと考える事が良くあるのだ。 かといって、それを推奨する訳にはいかない。
「 “好き嫌いはいけない” ってのは … まぁ、 “沢山の好き嫌い” はいけないってコトだろ。 “一つ二つ嫌いなモノがある” のはご愛敬ってコトにしておこうぜ(笑)」
「「「「そう … やな」 じゃね」 ね」 ですね」
その後、金太と知恵が食堂にやってきたので、おおっぴらに食事を残せず、結局、ちずるは頑張ってニンジンを食べたのだった。
* 忍の言い訳 *
それぞれの嫌いな食べ物は、勝手に捏造しました。
皆さんは何が嫌いです?
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