「ぎゃぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
「な、何だ何だ?!」
「えっらい、悲鳴やなぁ」
リビングルームから絹を引き裂く … とは形容しがたい、ホントに無粋な男の悲鳴。
「大作の声だった様な … 」
「大作が、あないな悲鳴上げるっちゅうコトは … アレか?」
「多分な … 」
通路をリビングルームへ向かって走って行く。
「どうしたっ?! ( って、たぶんアレだろうけど … )」
予想しながらも、一応確認の為に何事と聞きながら豹馬と十三はリビングルームに飛び込んだ。
「ぎえぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!」
そんな悲鳴と共に、二人に突進してくる巨体。 スピードが衰える気配もない。
「「うわぁぁぁっっ!!」」
ドッカーンッ!
ぶつかり、倒れ、潰された。
バチンッ。
少し離れた所で、何かを叩く様な音が聞こえた。
「大作君、退治できたわよ」
「もう大丈夫です」
奥からちずると小介が連れ立ってやってくる。 小介の手には筒状に丸めた新聞紙。
「はぁ〜〜 … 申し訳なか … ありがとしゃん。 死ぬかと思ったばい(ToT)」
倒れ込んだ大作は、ホッと息を吐く。
「そ、それはコッチの台詞だっての … 」
「そ、そや … 早よ退かんかいっ … 」
「あ゛ … 」
大作の巨体に押しつぶされ、あがいている豹馬と十三に、やっと目が行った。
「す、すんましぇんっ((((^_^;」
そそくさと大作が、二人の上から退いた。
「く、苦しかった … 。 頭もぶつけたぞ」
「大作は、重量があるさかいな … ホンマ、コッチの方こそマジ死ぬかと思ったワ」
豹馬も十三も、頭や背中、腕といった所をぶつかって潰された時に床に打ち付けてしまっていた。
「大丈夫、二人とも?」
ちずるが心配そうに豹馬を覗き込んだ。 二人に 「大丈夫」 かと聞きつつも、やはり豹馬を贔屓する所が乙女心だ。
そんなちずると豹馬を打ち付けてしまった頭をさすりつつ、ジト目で見る十三は、寂しかった … 。 密かかに 「( エエな〜)」 等と考えていた。
「ほんに申し訳なか … ((((-_-;」
大作は二人前で、その巨体を小さくして謝っていた。
「で、一体なんだよ … って、だいたいの予想は付くけどよ」
「また出たんか? ゴキ … 」
「ご名答です、十三さん」
手にした新聞紙を示しながら、大作の代わりに小介が答えた。
「「やっぱり … 」」
叔母の西川虎子に鍛えられたおかげか、どっしり落ち着いて構えている事が多い大作。 滅多な事では、あんな大声 … それも悲鳴を上げるなどという事はない。 しかし、例外は何にでもあるもので。
その唯一の例外が、彼の大の苦手 “ゴキブリ” である。
ちずるの様な少女ならば “ゴキブリ” を嫌い、怖がるというのも分かるが、大きな体格で柔道の達人でもある大作が “ゴキブリ” を恐れるというのは、何とも滑稽だった。
が、本人にとっては死活問題だった。
「いくらコネクションでも、あんな薄い身体のゴキブリは、どこからかは入り込んでしまうものなんですよね。 大作さんにとっては、災難なコトですが」
「何とかできんとですか? 心臓が保たんばい(ToT)」
「 … 不可能かと思われます」
キッパリと小介にトドメを刺された大作のゴキブリに恐怖する日々は、続きそうである … 。
「コネクションなら、そんな虫、出ないと期待しちょったのに …… (ToT)」
* 忍の言い訳 *
あの彼が、そんなにゴキを怖がるとは、最初見た時に以外でした(笑)
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