100のお題 No,005 「頭が高い!」





 リビングルームで、何の気なしにテレビを見ていた。
 映っているのは時代劇。 超有名な “水戸■門” である。
 時刻は午後八時四十分を少し過ぎた所。 おきまりの物が出てくるシーンである。
 『皆の者、が高い! 控えおろぅっ!』
 バッと、お供の懐から出された印籠。 美しい絵柄がアップで映る。
 「ねえねえ。 何で 『背が高い』 なんて言うの? 黄■様が背が低いから?」
 「???」
 ちずるの隣に座ってテレビを見ていた知恵が、ちずるに聞いてきた。
 「(    『背が高い』 … ? っあ、そうか)」
 知恵の質問内容が分からず、しばし考え込んでしまったちずるだったが、知恵の勘違いに気が付いた。
 「知恵ちゃん。 それは 『背が高い』 じゃなくて 『が高い』 って言ったのよ」
 「 『ズが高い』 ?」
 「 『が高い』 の 『』 は 『あたま』 のコトよ。 黄■様は、みんなより身分の高い人でしょ? 身分の低い人達に 『頭を下げなさい』 って言っているのよ」
 ちずるは、知恵の勘違いを正して説明してやった。
 「(    確かに、パッと聞いた感じでは 『背が高い』 に聞こえなくもないわね。 それに 『が高い』 なんて言葉、今時使わないから聞き慣れないし)」
 そんな知恵の聞き違いの事を考えていたちずるだったが、知恵は次の質問をしてきた。
 「じゃぁ、 『ゴゼンであるぞ』 って言うのは? このシーン夜だから 『午後』 でしょ?」
 これまた可愛い勘違い。 ちずるは苦笑しながら答えた。
 「午前・午後の 『午前』 じゃないわよ。 『その人の前』 って言う言葉の尊敬語よ。 こんな字を書くのよ」
 ちずるは、近くにあったメモ用紙に 『御前』 と書き込んだ。 知恵には、まだ難しい漢字だったが、 『御』 と 『前』 の意味をかみ砕いて説明してやった。
 知恵は、それに納得した後、次の質問。
 「じゃぁ、 『紋所』 と 『目に入らうか』 は?」
 「 『目に入らか』 じゃなくて 『目に入らか』 よ(^▽^;」
 やはり、昔の言葉は、現代の子供には難しい。 ちずるも、今は分かっているが、昔はチンプンカンプンで、祖父に聞いたものだった。
 ひとしきり説明すると、知恵は納得してくれた。
 「随分言いづらい言葉や、ややこしい言葉を使っていたんだね、昔の人って」
 「そうね(苦笑)」
 知恵の言う事にに同意しながらも、 「(    御所言葉は更に難解だったりするのよね)」 等と考えていたちずるだった。


 後日、ちずるは金太と水戸黄■ごっこをしている知恵が、早速教わった知識を披露し、胸を張っていたのを見て、笑っていた。




* 忍の言い訳 *
 「背が高い」 と間違えたのは、私の幼い頃の実体験だったり(^▽^;




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