「イ〜ヤッホゥッッ!」
疾走するバイクを眺めながら、皆が笑みをこぼす。
「楽しそうですね、豹馬さん」
「バイクに乗るのは、久しぶりじゃけん」
例によって、戦闘での怪我が元でしばらく入院生活をしていた豹馬。
命に関わる様な大変な怪我ではないが、次回の出撃の事を考えると、少しでも早く直した方が良いので、強制的に普通より長く入院させられていたのだ。
入院中は、当然だがバイクに乗れない。
今日になって、やっと退院とバイク乗車許可が出たのだ。
入院していた日数分を取り戻すかの様にバイクを乗り回す豹馬に、他のバトルチームの面々は苦笑する。
「バイクに乗るって言うのは、豹馬にとってライフワークの一つだものね」
「ワイにも解るなぁ … やっぱり一日でも銃に触れん日があると、なんや変な感じやしなぁ。 ソレと一緒やろ」
しばらくバイクを乗り回していた豹馬が、ようやく満足したのか、皆の元に戻ってきた。
「おかえり。 どうだった、久しぶりのバイクは?」
「もうサイコー!」
ヘルメット取った豹馬は、満面の笑みで答える。
純粋な喜びの笑顔は、見ていて気持ちいい。
取りあえず、病み上がりなので今日はここまでと言う事で、皆と一緒にコネクションへと引き返し始めた。
「豹馬さん、前から思っていたんですけど、昔はともかく今はジェットに乗っているんですから、バイクによるスピードの体感は物足りなくなったりしなかったんですか?」
コネクションに戻ってから、リビングルームでお茶をしていた時、何気なしに小介は豹馬に聞いてみた。
バイクで出せるスピードは、たかが知れている。
それに比べ、バトルジェットはマッハで飛べるのだ。 バイクとは比べものにならない。
一度ジェットのスピードになれると、バイクのスピードは遅く感じそうである。
「何言ってんだよ。 ジェットじゃ風を感じられねぇじゃん」
「風 … ですか?」
確かに、ジェットでは密閉されたコックピットにいるのだから、風が入る事はない。 逆に入っていたら問題だ。 マッハの風を受けるなど、危険きわまりない。
「そー、風を受けるのが気持ちいいんだよ。 ジェットのスピードも魅力だけどよ、かなりのGが掛かってくるからスピードを楽しんでばかりもいられねぇんだよ(苦笑)」
他の面々も、 「ナルホド」 と納得した。
訓練でGの負荷訓練もした事があるので、確かにアレではスピードが楽しめないと頷いた。 遊園地のジェットコースターくらいのGならともかく、バトルジェットの飛行時のGでは … 。
「だからバイクが良いんだよ♪」
まぁ、人それぞれ。 スピードのみを追求する人もいるだろうが、豹馬はそれだけではないらしい。
「やっぱ、いいねぇ、オートバイ。 もうサイコー!」
再びバイクに乗って飛び出していきそうな豹馬を 「今日は、もう駄目」 と、皆が同時にガッシリと捕まえた。
* 忍の言い訳 *
風を受けるか受けないかで、体感スピードって変わるでしょう。
風を受けた方が、気持ち的には、スピードがある様に思えそう。
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