DBPOWER C307 Drive Recorder (PSU Modification)


イントロ:

つい最近まで、普段の運転中から録画するなんてことやろうとは露ほども思わなかったのだが、 続けざまに目の前で普通に考えたらあり得ないような場所から直進中のクルマに突っ込んできて事故になる光景を目撃した。 明日は我が身かもしれないと思う と、回避不能な状況で「せめて録画があれば」と思うような事になる前にドライブレコーダーを搭載しようという気になった。

 ちょうどアマゾンのタイムセールで録画の画質がいいと評判のDB-Power製のC307 という廉価モデルが安く売ってたので背中を押されたという理由もある、しかしこの機種には多くのレビューワーが指摘しているように、エンジン始動したあと 録画を開始せずに即終了してしまい、スタンバイ状態のまま何も録画されない状態になる事が頻発するという致命的な不具合があるのであった・・・


不具合発生状況の特定:

 確かに録画された画質は非常に良いのであるが頻繁に録画に移行しない、とにかく録画されな い事には取り付けた意味がない、製造上のばらつきやハード的な不具合によるものであれば交換を申し出れば改善される望みがあるだろうが、詳しく解析してみ たところ再現性がある不具合であり、ある意味「仕様」的なものに起因するものであることが特定できた。 まずは愛車の始動時のACC電源とドラレコ付属の 電源アダプター出力を観測した波形を見てもらいたい。

これは、時間0secのところがエンジンスターターを回した瞬間のもので、黄色がACC電源の電圧、シアンがUSB電源アダプターの+5V出 力電圧である。 ややバッテリーが弱ってきていることもあってクランキングの終わり頃までの約750mSのあいだVBUS電 圧が完全にドロップしてしまっている、どうやらこれが原因ではないかと思えてきた。 ドラレコ内蔵のバッテリーは30分近く持つほどに十分に充電されてる 状 態なのにも関わらず録画終了してしまう原因を特定してみるために、様々なタイミングでスターターを回して結果を調べてみた・・・

測定結果

1、録画に移行したケース(その1)

2、録画しないケース(その1)



3、録画しないケース(その2)


4、録画に移行したケース(その2)

 どのケースもスターターを回している時間は殆ど同じなのに、録画に移行したりしなかったりする、波形を眺めてやっと要因に気がついた、どうやら ACC電源が立ち上がってからスターターを回すまでの時間が関係しているようなのだ! このあとさらに追試を行なった結果から、DBPower製の C307はACC電源が立ち上がってから190mS〜370mSの間にスターターを回して電圧がドロップすると録画状態に移行しないという不具合が特定で きた。 ちょうど普通にキーを回すタイミング次第で容易に起きる事であり、これよりも長くても短くても録画に移行しないという現象は起きないのであった!


対策案検討:

几帳面なユーザーなら、運用で「必ずACCポジションでC307が起動完了するまで待ってか らスターターを廻す」事にすれば不具合を回避できるのだが、、私の場合 残念ながらそのような性格を持ち合わせていないの でハード的に不具合を解決することが必須である(笑)

アイディアその1 電圧保持方式

不具合が発生する状況さえ判ってしまえば対策の打ちようも考えられる。要は特定のヤバい範囲 で 瞬断しなければいい訳なので、まずは単純にUSB電源アダプターの電源電圧を大容量キャパシターで保持する力技に出てみる事にした、C307の消費電流 は平均 で 0.6A程度なので20,000uF程度の電解コンデンサーに電荷を貯めておけばスターターが転っている間電源を保たせる事ができる理屈になる、そこで最初に考えてみたの がコレ


 一応、突入電流を12〜13Aに制限してヒューズが飛ばないように1Ωのセメ ント抵抗を入れて ある、無いとほぼ確実にヒューズが飛ぶ、電解コンデンサーは手持ちの関係で10,000uFを2個並列使用、下画 像は実際に制作した 基板の画像、瞬間的ではあるが抵抗が発熱するのでULグレードの難燃素材の基板2枚で回路部品をサンドイッチしてある。



実際に検証してはみたが、確かに電圧は 保持できるものの、瞬間的に 10数アンペアも流れ0.1秒以下で必要な電圧まで大容量コンデンサーをチャージするのが難しいので2案のようにコンデンサーを常時電源側 でチャージしておいてACCに連動 するような電子スイッチ素子やリレーを使うアイディアも原理的には考えられるが回路がそう単純ではなくなる。 この案は突 入電流防止抵抗で常にロスっているし、無駄にデカいし、何よりもこういう力技でロッシーな解決方法はどうも暴力的な感じがし てあまり好きになない、弱電メインなワタ シなので路線変更して次の案を模索する事にした。 



アイディアその2 常時電源スイッチ方式

ACC電源がオンになった瞬間に一気に大容量のケミコンにチャージするのは難しいので、事前 に常時電源でチャージしておいてACC電源に連動し繋げる事で瞬断時だけケミコンから電源を供給するようにすれば大電流を一気に流さなくてもいいはずだと 考えてはみた・・・


しかし、実際の配線には常時電源を引き出してくる必要があるし、部品数も多く小型化できないので、メリットなしと判断し構想だけで終わリにした。 あとで気が ついたがMOS-FETには寄生ダイオードがあるために、ACC電圧が瞬断から回復した瞬間にはPSU側から逆流してくる電流でケミコンが一気にチャージされ る状態になる。 これの過電流防止対策のためにドレインとPSU出力の間にさらにもう一個ショットキーダイオードを追加しないといけないという実にダメダメな 構想であった。

アイディアその3 遅延立ち上げ方式

エンジンがかかってしまえば、電源電圧がドロップする事はまず無いので、別の解決案として 「エンジンが掛かった後にUSB電源アダプターに電源を供給するようにすればいい」ことになる、残念ながらACCオンの状態は簡単に判るが、エンジンが掛 かっている状態かどうか はCAN BUSを読むなりしないとそう簡単には知ることはできない、ならばキーを回してエンジンが掛かった頃合いを見計らって電源を入れてやれば、完 璧では無いが十分に目的が達成できるように思えた、実際のところキーをACCポジションのまま長時間留めている事は殆どしないので、キーを廻 し始めてから数秒もあればエン ジンは始動を終えている状態にあると考えて問題無いように思えた、そこでACC電源の立ち上がりから数秒遅延して電源が入るような回路を考えてみた。


この回路なら大容量のキャパシターも必要なく、超小型に表面実装部品だけで小さく作る事が可 能です。

Hardware解説:

 今回の回路は実に基本的なP-MOS FETを使った電源スイッチ回路で、ACC電源が立ち上が ると2.2MΩの抵抗を通じて47uFのチップコンデンサーが充電されていきます、やがてGーS間の電位差が大きくなるとSーD間に電流が流 れるようになりUSB電源アダプターがオンします。G-S間1MΩの抵抗はキーオフ時に完全な放電動作をさせるのと同時 に、動作時にはコンデンサーにかかる電圧を分割する事でコンデンサーの耐圧を稼ぐ役目もしています。下側にあるスイッチングダイオードは車両 のACC電源がオフになった 際に速やかに47uFのコンデンサーに溜まった電荷をディスチャージするために入れてあります。 この定数で大体数秒ほど遅れて電源が入るように なっています。47uFのチップコンは結構大きいので遅延時間が半分以下になりますが22uFでもかなりのケースで効果を発揮できると思います。

 

実際にSMD部品で制作した基板の画像


実測で10秒近く遅れて電源が入る動作を確認した後、これをC307に付属している USB電 源アダプターに内蔵してみました。


電源アダプタの改造:

まずはカッターの刃でケースの接着された箇所を切り離して分解

基板の裏側で+側電源のパターンを一部カットし、その間に制作した遅延電源スイッチ基板を繋 ぎました。


動作を確認しシリコンゴム系の接着剤で基板を固定


うまく動作したら再び接着して組み立てます。


外見は何も変わりませんが車両の電源が入ってから数秒後にLEDが点灯しVBUSの電源が供 給開始されます、実際の動作状態を測定してみました。

黄色がACC電源電圧、シアンがUSB電源アダプターの出力電圧です実際に6秒ほど遅れてVBUS の電源が入っているのが判ると思います。この改造をして以降は、録画しない不具合は全く出なくなりました。 

それにしても、かなりバッテリーがヘタってきてますね・・・(汗)



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更新日 2016,Nov.5th