前出のような理由から、20%ほど全長を引き伸ばし再設計してみた。テーパー最後の板を薄くするのが大変だったので、この部分だけ設計を変更した。 リム ジンのよう にほぼそのまま前後に引き伸ばした感じになっている、よって閉塞端と開口面積の比は約4:1のままである
Negative Tapered Transmission Line Enclosure Schematic (Version-0.2)
Version-0.2 吸音材なしの状態での開口音圧特性
想定通り20%ほどチューニング周波数が低くなっている。
吸音材なしの状態でのインピーダンス特性
大きくなったぶん箱の強度が低いのか?密閉度が悪いのか? 電気的インピーダンス測定ではインピーダンスの山の周波数は計算通りには低くなっていないよう だ。 もっとも最初のバージョン1が接着せずにクランプとベルトで締め上げただけの状態なのでどれが正確な原因かは判らない。
実際に製作したエンクロージャーの画像 (ver. 2)
この画像では吸音材のサーモウールに加え、3
th定常波の腹(全長の1/3付近)となる位置に局所的にニードルフェルトを追加して いる。
1mの距離でOmniMicで測定したウーファー側の特性 (Crossover LPF Frequency = 3.2kHz)
(以下、
塩沢@町田さんのオフ会blogページの
添付資料より引用)
フローリング音楽室内で測定した特性です、多少床面の反射による影響があります。低域は10dB落ちのポイントで45Hz〜といったところでしょうか。
開口部音圧(赤) と SPユニット軸上近接の音圧特性
開口面積が不足気味なのと吸音材のチューニングがイマイチのためローエンドの伸張効果がどうもハッキリしませんが、近接なので差が強調されていますが 35Hzから下の大陸棚的な部分が開口からクロストークしている音かも・・・。 距離1mでの測定でも同様の傾向が見られ、SPユニット前面からと思われ る領域と比較すると14dB近くも違うので少々差が大きすぎますね、 やはりエンクロージャーの幅、つまり開口面積の不足か、SPユニットのFsからかけ離れたチューニングの何もが効率低下の原因でしょうか?
この時のND105の電気的インピーダンス(実線)と位相特性 (
FRAplusで 計測)
電気的インピーダンス特性の二つの山の間の42Hz付近で位相が0度なので、ここがファンダメンタルなλ/4共振周波のようです。
SPユニット近接のウエーブレット解析の結果
60Hz付近の強度分布を見ると、やや右下がりに見えますが、これはユニット背面からの圧力が1.5mの音道を通って開口部から放射されるまでの時間遅れ であると思われます。またバスレフ型と違い、強くアブソーブされているために低域のトランジェントのたち下がりが早いのが特徴的です。4mS辺りからの 300Hz〜2kHzにある三角形のレスポンスは、測定環境かSPシステム自体に何からの反射の類の問題がありそうな事を暗示しています。
う〜ん、こんなに色々と解析できるのを目の当たりにしてしまうと、
Omni-Micが 欲しくなってきた(笑)
当初から、細い音道のために、SPユニット裏側から放射された音圧が相当にロスってしまう事は想定していたけれど、最大の関心事は、開口からの音圧がメイ ンとなる周波数領域で振動板にはどの程度の制動がかかっているのかという事で、仮に無制動状態で「暖簾に腕押しに」フラフラならすぐに振動板がボトムして しまうので50Hz以下の低い周波数まで音圧を出す事は出来なくなるが、能率は低いもののちゃんと空気を動かして鳴ってるのであれば置き方を工夫したり電 気的に補正するとかのやり方も実はアリなのではないかと考えており、そのためにも今回は最初からマルチアンプによるアクティブなクロスオーバーを使用して 実験を進めてきた。 実際にポートからの放射される音圧特性を見る限りは、効率こそ低いものの30Hz付近まで十分に空気を動かせる状態にあるようだ。 8cmの小口径SPユニットでここまで低い音を出せる方式はそう多くないと思うので、なんとかまとめ上げたいと思っている。 その前に、箱のチューニング に対してSPのFsが高すぎるのでユニットの入れ替えを検討している、次なる候補としてはDayton AudioのSpeciality Driverシリーズ
CF120−4の 個人輸入を考えている、Qmsが低いのでパーシャルな共振モードでの音圧への影響が気になるが、ND105とほぼ同サイズでFsが53.2Hzと低く、 Qtsは0.28、素材も造りも良さげなので いま非常に気になっている存在である。
SPユニット取り付け位置による特性の違いについて
近くCF120−4が日本のショップでも販売されるとの情報を得たので、それまでに出来る検討事項として残っていたSPのオフセット取り付 け位置による違いについて実験してみた。 実測してみたのは以下の3箇所で、それぞれλ/4基本波の節、5次共振の腹、3次共振の腹付近で ある。SPユニットを裏返しにして外側からドライブするという方法で取り付け、ユニットを移動した際に開けた穴は外側に当て板をして塞いだだけなので、完 全に理想的な条件ではないが十分にオフセットによる傾向は解ったような気がする。 以下の測定ではPeerlessの830985を12mmのバッフルに 取り付けエンクロージャーに開けた穴に外側からネジ留めで固定し開口から放出される音圧の周波数特性を測定した、残念ながらドライブする音量を一定にしな かったので音圧の絶対値は無視してほしい、吸音材は軽く入れた状態で一定にしている。
配置は下図A〜Cの1箇所だけSPユニットをマウントし、他の穴は合板で塞いて測定した。
位置A [閉塞端から約5cmのところにユニットを取り付けた場合]
吸音材が少なめなので150Hz付近には3rd、250Hz付近には5thという具合に奇数次の高次共鳴が起きているポイントでピークが薄っすらと見え る。
位置B [閉塞端から約20%オフセットした位置にユニットを取り付けた場合]
明らかに5thのポイント(250Hz付近)にデッドポイントが出来ているのが判る。
位置C [閉塞端から約35%ほどオフセットした位置にユニットを取り付けた場合]
1/3よりも少し中央寄りなためか、やや低い方にズレて100Hz付近にデッドポイントが出来ているようにも見えるが、それにも増して顕著なのが 40Hz〜60Hz付 近のパーシャル共鳴でのレスポンスの低下である。 後になって考えてみればすぐに解る事だが、オフセットの量が増えるという事は、パーシャル なλ/4共鳴にとっては駆動するポイントがどんどん波動の腹に近づいていく訳で、確かにSPユニットをオフセットして取り付ける事で高次共鳴 を抑えられるデッドポイントに置く事が出来るメリットがあるが、同時にλ/4共鳴の振幅も小さくなってしまうという実にシンプルな理由に今 頃気がついたの であっ た。
以上の結果から考察するに、吸音材を詰めると特性がブロードになる故に3rdの共鳴デッドポイントをピンポイントで狙うのは難しそうである事。 5th の共鳴を抑える 効果を狙ったオフセット取り付けはパーシャルでのλ/4共鳴による音圧が十分であればアリなのかもしれないが、今回のエンクロージャーのよ うな明らかに細すぎる音道でロスが大きい場合にはλ/4共鳴の音圧を稼ぐことを最優先し、閉塞端付近にSPユニットを取り付ける方が楽に低 域再生の拡充が図れ、全体としてまとめやすいのではないか?という感じがしてきた。
そこで、閉塞端寄りの位置Aに比較検討用の5cmユニットに代えて8cmのND105-4を取り付けて測定してみた。
音道の閉塞端がほぼSPユニットで塞がれたような状態に近いが、この時の開口部から放出されている音圧の特性は、次の通りでパーシャル共振での音圧が 増えている、またロールオフはしているもののポートから出る音の帯域はかなりブロードで広い。位相特性を測定していないのでユニット全面からの音との干渉が懸念されるが、 この点はサブウーハー専用ユニットに交換でもしない限りは吸音材の詰め方で改善する位しか方法がなさそうだ。
位置A [閉塞端から約5cmのところにND105-4を取り付けた場合の開口音圧特性]
[同上のSP前面で約50cm音圧特性] (sin波スイープによる測定結果、リニア目盛)
なんと、まるでEQでBassブーストしたかのような特性となった、ただし160Hz付近に位相回転による干渉が絡む何らかの打ち消しが起きているようだ。
ともかく音バランスは改善されるのは嬉しいけど、現状では配置的にポート開口部がエンクロージャーの天板にきてしまうのでSPユニットから離れたところにポート開口部を付けたくない私としては、箱の設計から新規に見直す必要に迫られた・・・・
こうなると
欲が出てしまった勢いで天板に来た音道をさらに30cmほど延長!
加えて閉塞端から音道全体の約2/3まで吸音材を追加してみたところ、ポートから放射される音圧は以下の ような特性になった。
[延長したTLポートから放射される音圧の特性]
口径8cmのユニットにしては、異例な位に低い周波数まで出るようになった。中域の漏れ音圧も下がり振動板前面の音とポートからの放射が干渉する事 も減ってスッキリした印象の音になってきたので、等距離に両者を合わせた近接レスポンスを測ってみた。
[Woofer前面約50cmでの音圧特性] (sin波スイープによる測定結果、リニア目盛)
吸音材を追加したせいか? 160Hz付近にあったデップは無くなったようだ。 業務用モニターSPとかなら話は別だけど、家庭用の小型SPシステムとしてはこういう特性ならラウド ネス要らず?で実用的 にはこれはこれでアリかもしれない、測定中のスイープ音を聞いていると、スタンディングでも何とか30Hz付近まで一応音として聞き取れる。
ウーハーの前面50cmでポートと合わせたレスポンスを測ってみた。
50Hzのスペクトルはグランドループによる 測定系のハムノイズなので無視してほしい、総合的に見て調整次第で±6dB程度のリップルを許容するなら下は40Hzぐらいから何 とかイケそうな予感がしてきた。
【改造失敗】
60Hz〜80Hzにある盛り上がりをもう少し低い周波数に持ってこようと色気を出して、エンクロージャーに以下のような増築をしてみた。延長した音道の高さを1mm低くして15mmにしてみた、全長は約180cmとなる。
インピーダンス特性は低い方の山が僅かに認められる程度に低く約20Hzに低い方のピークがある。
これなら盛り上がりの周波数が低い方へ平行移動しているだろうと甘い期待を抱いたら、チューニングを下げすぎたようで、思っ切り100Hz以下のレスポンスが下がってしまった。
QWTのチューニング周波数が下がりすぎたのと、開口の断面積が減ったダブルパンチが原因ではないかと思われる。
伝達関数解析で位相を読めるようにしたので、スピーカー前面と開口からの音圧と位相を比較解析してみた。
まずSP前面近接で約3cmでの特性
スピーカー振動板前面からは、100Hz以下は大して音量が出ていないのが判る。
これに対してQWT開口からの輻射音の特性(音道の開口付近)
ポートからは20Hz近くまで出てるようだ、元を正せばスピーカー裏側の音なので逆相だったはずだが、QWTで一応位相が反転しいるので、多少ズレはあるが80Hz付近ではスピーカー前面の音と同相になっているから、レベルさえ稼げれば両者は強め合うはずである・・・ 音圧を稼ごうと吸音材を減らしたので300Hz付近の減衰量が減ってしまっている。