ARTA MEASUREING BOX
(BALANCED INPUT VERSION)




introduction:

非常に優れたスピーカーシステムの計測ソフトであるARTA SoftwareのARTA(Audio Measurement and Analysis Software)は、未登録の場合にはデータや設定が保存できないという点を除けばフル機能が使える優れものである、しかし設定が保存できない状態では毎回スクラッチから機材をセットアップして測定するのも大変なので、測定用のジャンクションボックスを作成する事にした。ARTA Softwareのwebページにその一例が公開されているが、クラスDアンプを多用する現代ではBTL(or 差動)出力のパワーアンプが使えないと測定専用にアンバラ出力のパワーアンプを用意しなくてはならなず不便だったのと、手持ちのUSBオーディオI/Fがファンタム電源供給可能なXLRバランス入力対応だったので、普段使っているクラスDのパワーアンプのままで測定できる計測アダプタが簡単に作れる事に気がついた。ファンタム電源を供給できない機種の場合にはボックス内にファンタム電源供給回路を搭載する事でべリンガーECM8000などのコンデンサーマイクを使用できるような機能を追加する事もできるし、自作のマイクアンプを搭載するのも一案であろう。


実際に制作した測定ボックスの画像

前面から

上面から

背面から

内部画像

回路について

パワーアンプ出力がBTLもしくは差動である場合、スピーカー端子の何の側もGNDと接続する事は絶対に許されない、多くのクラスDのパワーアンプも同様である。 なぜならコールド側の端子であっても位相が逆というだけでアンプの出力という事に違いはなく、これをショートすることは出力を短絡することに等しいからである。特にクラスDアンプの場合、出力動作の中点は電源電圧の半分という事が多く無信号時にもグランドに対して10数ボルト以上高いことがザラである。 このようなパワーアンプの出力をUSBオーディオI/FのXLR入力で受けることで、グランドから観た電圧に関係なくホットとコールド間の電位差(差動)のみを読み取れるようになる。 またファンタム電源供給機能のある機種の場合、ホットとコールドの入力端子は無信号時に対GNDで+48Vまでコモンモードでバイアス電圧が掛かっても大丈夫なように設計されているはずなので、クラスDアンプなど、シングル電源のアンプの場合には好都合である。 よって本測定ボックスでは差動信号の振幅を小さくする簡単な回路だけで測定できるようになる。 使用する部品は高精度な抵抗のほかに3回路2接点(3PDT, TPDT)のトグルスイッチというやや特殊なスイッチの入手を除けばさして特殊なものは必要ない、どうしても多接点のトグルスイッチが入手できない場合にはローターリースイッチで代用されたし。(許容電流と接触抵抗に注意)ちなみにアマゾンでも買える


オリジナル版のARTA測定ボックスの回路図 (アンバランス入力、同社のアプリケーションノートから引用)



今回考案したバランス対応版の回路


測定に使用するUSBオーディオインターフェースにはXLRバランス入力を2つ持つもの、例えばFocusrite Scarlettシリーズや、RolandのQuad-CaptureSTEINBERG UR22mkIIBEHRINGER UMC204HDなどを使用することを想定しています。 これらの機種はファンタム電源を供給できるので、回路図中にある"Optional Cap/50V"を追加し+48Vのファンタム電源をオンにしてECM8000EMM-6などのコンデンサーマイクを測定に使用することが可能になります。このカップリングコンデンサーは容量が足りないと低域での特性が劣化してしまうので、無極性で2.2uF以上の容量で耐圧が50V以上のものを使用してください、10uF程度あればほぼ可聴帯域の下限までカバーできると思います。アノード付き合わせの5.6Vツェナーダイオードは過大入力時のクリッピング(保護)用です。

ARTA SOFTWAREによる測定例

LIMPによるSPインピーダンス測定例

Dayton Audio DN20FA-6

データーシート上のインピーダンス特性 (同社のデータシートより引用)


本測定BoxとARTA Software LIMPによる測定結果

ほぼ、ユニットの個体差レベルの違いと言えそうな程度の測定結果が得られました。

ARTAによる周波数特性の測定結果例

iMacの脇に設置した状態の密閉型サテライトSPの測定結果(15cm近接)


4次バンドパス型サブウーハーの測定結果(LS10-44, 15cm近接)

ネットワークなしで測定しているので、500Hzから上側にはポートの気柱共振による共鳴現象が起きているのが見える。
床置きなのでウォールエフェクトによるローエンドの上昇を考慮すると、もう少しだけポートを長くしても良さそうだ。

ーーー(以下工事中)ーーー

STEPSによる伝達関数の測定例

おまけ

音楽進学教室RINNKAKUによる測定例


作成日 2017.Apr.9th


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