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〜アスベスト問題と企業の責任について考える〜part2
アスベスト救済基金負担〜特別事業主の要件とは?
     
選ばれた4つの企業−19の意見
(その6)

2006.12.7更新

19の意見
もくじ



 意見6−市区町村の中皮腫死亡数が全国平均以上の要件を削除すること
[意見]
<該当箇所>
「石綿による健康被害の救済に関する法律施行例の一部を改正する政令案の概要」(資料1)
「(3)A 当該工場又は事業場の所在地の属する市町村において中皮腫により死亡した者の数(平成7年から平成16年までの合計)の年平均数を当該市町村の人口で除して得た数に10万を乗じて得た数が0.553人以上であること。」の部分(【法第47条第1項】関連)

<意見内容>
事業場所在地の市区町村の中皮腫死亡者数が全国平均以上の要件は削除すべき

<理由>
この要件は、偶然性に左右される要素が強い。
第1回事業主負担検討会でも質問が出たが、環境省の担当者の説明は次のようなものだった。

「なかなかこの資料自体の評価というのは非常に難しい面がございますけれども、全国さまざまな場所で中皮腫でお亡くなりになられている方がいらっしゃるということが1つと。
また、全体として見れば、やはり人口規模の大きな都市に中皮腫でお亡くなりになられた方が多いわけでございますけれども、中には今回のアスベストの被害の発端となりました兵庫県の尼崎市のように人口規模と比べますとやはり中皮腫の死亡者数が他の市区町村に比べて多いというような市区町村もございまして、ある程度中皮腫の死亡者数にも一定の偏りが見られるのかなということでございます。」

「・・・本当にこの方はどこで曝露した可能性があるのかということを調査をいたしましたけれども、結局、やはり30年、40年という時間の壁というのがございまして、なかなかよくわからないという方が多かったというのが、これは細かい兵庫県だけですけれども、やってみた事実でございますので。なかなかやはり中皮腫でお亡くなりになったといっても、じゃあ、どこでということを厳密に明らかにしていくというのはおそらく不可能事に近いような困難さがあるのではないかという感じを持っております。」

このように、漠然とした関連性が認められるという程度に過ぎないことがわかる。

一定の関連性が認められるということと、この要件に該当しないからという理由で、拠出金の負担を免れることが適切かという問題とは違う。事業場の所在地の平均値が全国平均以下だからといって、その事業場が周辺住民に被害をもたらしていないという意味にもならない。

市区町村の中皮腫死亡者数が事業場による被害を反映している場合もあるが、反映していない場合も少なくない。

中皮腫の場合、潜伏期間が20年から60年という幅広いもので、被害を受けた市区町村で死亡届を出すかどうかわからない。市区町村という区分自体、被害を受けた時期、届出をした時期、判断を行う現在が同じとは限らない。

特に、「平成の大合併」が進められている昨今は、次々と市町村の合併が行われて、行政区分もかなり変化している。合併前ならばこの要件に該当する市町村も、合併によって、住民が多く中皮腫死亡者が少ない他の市町村と合併すると、この要件に該当しなくなる。

小規模な自治体なら被害が数値に反映される場合でも、人口の大きな市区町村であれば、被害者発生の影響が水増しされて、結果的に平均未満となる場合もある。工場の従業員の多くが近隣の市区町村から通勤している場合には、従業員の住所が事業所の所在地と一致しない。さらに、工場が移転する場合もある。

大きな死亡者数のところはアスベスト工場があるという、ある程度の漠とした関連性があることはわかるが、平均以下か以上かという小さな数値では、偶然性によって支配される要素がかなり強くなる。これを満たさないことで、拠出金を払うか払わないかの判定に使えるような明確な関連性は認められてない。

この要件で絞込みを行うことがどれほど不合理であるかということについて、具体的な例を次にあげる。

環境省によれば、労災認定件数10件以上、石綿の使用量1万トン以上という要件に合致した事業場で、この要件で除外された事業場が1件あったという。


旧日本エタニットパイプ(株)大宮工場
である。

旧日本エタニットパイプ(株)大宮工場は、旧大宮市にあったが、大宮市は、2001年5月に町村合併で、浦和市、与野市とともに、さいたま市となり、さらに2005年4月には、岩槻市が加わり、現在のさいたま市になっている。

もともとは4市だったものが合併しているので、数字上の人口が大きくなっている。もし合併前であればどうだったのか、岩槻市が加わる前ではどうだったのか、大宮市のままだったら平均以上になっていた可能性も多分にある。

次の例として、東京都の例がある。

東京都では、大気汚染防止法上の事業場は、大田区3、世田谷区2、北区2、足立区5、八王子市1のように分布しているが、中皮腫死亡数が平均以上かどうかみると、大田区×、世田谷区×、北区○、足立区×、八王子市×のようになっている。

逆に、大気汚染防止法上の事業場がない新宿区、台東区、江東区、品川区、中野区、豊島区、葛飾区、国立市、武蔵村山市、羽村市は平均以上となっている。

労災認定のデータでは中央区に事業場が多いが、中央区は中皮腫死亡者数では平均未満である。

東京都の場合、住民は区や市単位で生活をしていない。東京都の場合、どの区が平均値以上でどの区が平均未満かなどということを示す数値は、全く無意味である。同じことは、多少の違いがあるが他の市区町村でもいえることである。

事業主負担検討会で、環境省は、石綿の使用量についてのデータも正確ではないし、労災認定件数も疾病の発生状況を直接反映する数値ではないため、それ以外の要件を何か入れる必要があるという説明をしている。より正確にするためというより、他のデータの不正確さをカバーするために加えられている要件ということだ。

他に見つからないから、止むをえずこの要件を使うという。この要件ならば、少なくともある程度は被害の状況との関連性が認められるという理由である。しかし、不合理な要件で絞込みを行うと、本来なら負担を求められるべき事業主に負担を免れさせる結果となり、他の事業主や一般事業主の不利益となる。

特に今回の場合、いくら他に適当な要件が見つからないからといっても、労災認定件数10件以上、石綿の使用量1万トン以上という厳しい要件を満たして特別事業主の候補となった事業場を、このような漠然とした関連性があるかないかというだけの理由で、該当しないことにすることが妥当かどうか、よく考えるべきである。

このような不合理な要件で、他の要件に合致している事業主を対象から除いたなら、その事業場を除くために、わざわざこの要件を入れたのではないかという疑問すら抱かせる。

このような不合理で非科学的な要件を、金銭の負担という問題で使うことは、行政に対する信頼感も損なうので、反対である。



(2006.12.5) (19の意見-もくじへ戻る)



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