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〜アスベスト問題と企業の責任について考える〜part2
アスベスト救済基金負担〜特別事業主の要件とは?
     
選ばれた4つの企業−19の意見
(その4)

2006.12.7更新

19の意見
もくじ



 意見4-石綿使用量が「1万トン以上」の事業主は、すべて特別事業主とするべき
[意見]
<該当箇所>
 「石綿による健康被害の救済に関する法律施行例の一部を改正する政令案の概要」
 「(3)@ 当該工場又は事業場における石綿の使用量(昭和26年から平成17年までの合計)が1万トン以上であること。」の部分(【法第47条第1項】関連)

<意見内容>
石綿使用量が「1万トン以上」ある事業主は、すべて特別事業主に該当するようにすべき。

<理由>
「案」では、使用量が「1万トン以上」の事業場を持つ企業であっても、その事業場の労災認定件数が10件未満(保険給付の受給者数が10人未満、以下同じ)であれば特別事業主には該当しない。

また、企業全体で1万トン以上の石綿を使用していても、事業場ごとの使用量が1万トン未満であれば特別事業主にはならない。

1万トン以上の石綿を使用し、それによって利益を得てきた企業が、事業場の数が多く、事業場ごとの集計では使用量が1万トンに満たなかったり、労災認定が10件に満たない、または労災認定件数がゼロであるという理由で、特別の負担を求められないというのは不合理である。

大量のアスベストを使用して製品等を販売して利益を得ている企業であれば、その利益の一部を被害者救済にあてるということ、それを社会が求めるということは当然と思える。

アスベストの場合は、長い間、危険性が明らかであり、被害者が発生していることを前提に使用が続けられてきた。

特に、1990年代以降、アスベストは大部分が建材に使用されており、屋根用化粧スレートは一般住宅に広く使われてきた。

屋根材メーカーは、代替品を自社で製造しているにもかかわらず、アスベスト含有であるということをパンフレットにも記載せずにアスベスト含有の屋根材を販売し、莫大な利益をあげてきた。その結果、多くの人は、アスベスト含有の屋根材が自分の家に使われていることも知らずに購入し、使用している。

アスベスト含有製品の取り扱いや処理に関する規制が厳しくなるにつれて、購入した個人や取り扱い業者、行政機関をはじめ、広く社会全体に過大な負担を与える結果になっている。

当時の代表的なメーカー、クボタや松下電工で、完全にアスベスト含有の屋根材の製造を使用をやめたのは、2003年である(クボタのニューコロニアル製造は平成13年まで、松下電工のフルベスト製造は平成15年まで)。

その間、危険性が指摘され、代替品があるのにもかかわらず、アスベスト製品の販売を続け、莫大な利益をあげてきた。

にもかかわらず、使用されてきたのが白石綿であることや、労災件数がない(または少ない)ことを理由に、被害者救済に対する負担を求められないというのは、社会正義に反すると思える。

また、労災認定は申請や認定が難しく、補償請求にきちんと対応して被害者に協力してきた会社が、負担を求められる結果になることも不合理である。


認定件数が少ない企業は、疾病の発生が少ないということだけではなく、労災認定に協力的でない会社の場合もある。
それ以外でも、白石綿の被害が肺がんなどの一般の疾患にまぎれてアスベストとの関連が明確にならない可能性や、長い潜伏期間のために、今後被害者が出てくる可能性もある。

このようなことを考えると、労災認定件数に関係なく、一定の量以上の石綿を使用した事業主を特別事業主とすることは、意味があり、むしろ必要だと思える。

応益に応じた負担、アスベストによって利益を得てきた企業としての責任を果たすこと、それを社会が求めるということは、予防原則の実現のためにも、行政や消費者にとって、必要な視点であると思う。

さらに、環境省では、昨年の省庁が行った検証で、特に追加的調査まで行って予防原則について調査し、環境省の政策に予防的アプローチの視点が欠けていたことを強調した。

しかし、予防原則は単に規制範囲を広げるという問題ではなく、様々な手法を用いて、有害なものはなるべく使わないようにするという考え方を、企業や社会全体に浸透させるための施策を推進する中で実現すべき課題である。

実際に政策に予防原則を取り入れようとすれば、他の省庁や、企業との軋轢や利益調整のために大きな力を注がなくてはならず、相当踏み込んだ対応を覚悟しなければ、実行に移すのは難しい。

今回の、事業主負担の要件や額の算定方法の決め方を見ると、環境省が、本当にそのような困難さを踏まえて、予防的アプローチについて言及していたのか、甚だ疑問である。

法律上は事業主の要件を定めるべきところを事業場の要件とし、結果的にわずか5つの事業場、4つの事業主だけの特別事業主にとどめた。拠出金についても、現実には、ほとんどをクボタとニチアスの2社に負担を求め、事業主負担の大半を一般事業主に負担させることで、幕引きを図ろうとしている。それも、経済界からの求めに応じて、特別事業主の名称までも秘密ということにした。

これを見ると、環境省の言っている予防的アプローチというものが、いかに実体のない絵空事か、単なる形だけの言い訳に過ぎないかよくわかるのである。言い換えれば、環境省は、環境省が本来行うべき、ぎりぎりまで踏み込んだ企業との利益調整や他の省との対立を避け、最も無難で安易な一致点を事業主負担という形にしだけと思える。

危険なものを危険と知りつつ、代替品があるのにもかかわらずそれを販売する努力をせず、企業の利益のために、禁止される直前まで販売し(在庫品は禁止後も販売できた)、製造をしなくなった後も、国民全体に負担を与え続けている企業が、被害者救済のための負担を求めることについて、社会的な合意をつくることができないのであれば、何のための予防原則かと思う。

アスベスト問題は公衆衛生をあらわす指標だといわれる。
日本のアスベスト政策が遅れたわけは、環境行政や公衆衛生の行政があまりにも企業本位で、企業の利益を優先し国民全体の安全を守るという本来の役割を果たそうとしてこなかったからだ。

事業主負担の問題は、単に金銭の負担の問題ではなく、環境行政のあり方そのものが問われているという受け止め方をして、もう一度この問題をとらえ直し、改善できることは改善する必要がある。

そのような意味からも、1万トン以上という要件を満たす企業(または事業場)は、全て特別事業主に該当することにして、石綿の使用によって利益を得た企業に、応益に応じた負担を求めることのできる制度とするべきだ。


(2006.12.5) (19の意見-もくじへ戻る)



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