![]() HOME |
〜アスベスト問題と企業の責任について考える〜part2 アスベスト救済基金負担〜特別事業主の要件とは? 環境省への質問 |
更新履歴 新着情報とお知らせ メッセージ ボード おまけ |
| (2006.12.3更新) もくじ ☆環境省の回答はこちら⇒ pdfファイル |
2006年9月18日 環境大臣 小池 百合子 様
アスベストについて考える会 日ごろ、アスベストによる被害者救済のためにご尽力いただきましてありがとうございます。 8月31日に、「石綿による健康被害の救済に係る事業主負担に関する検討会」により、標題の報告書が公表され、アスベストによる被害救済基金の事業主負担についての考え方が示されました。 アスベストによる被害者救済のための費用負担は、全企業に拠出を求めるため、国民全体に負担が及ぶ重要な問題です。負担の分担方法については、公平、公正が求められるのは言うまでもないことですが、特定の企業の利益につながったり、恣意的な分担方法が採用されることのないように、特に透明性や説明責任が求められる事柄であると思います。 この点、今回公表された報告書は、わずか本文が6ページという短いもので、報道されている、全企業(約260万社)から約70億円徴収、特別事業主(4社の見込み)から約3億4千万円徴収、という結果にいたる経過や基礎的な数値が明らかにされていません。 そのため、なぜこのような負担方法が導き出されたのかがわからないばかりでなく、提示されている負担方法では、石綿被害救済法の規定の主旨に合致していないのではないかとの疑いもあります。 この様な理由から、この報告書の不備な点について質問させていただき、報告書で示されている事業主負担の考え方を確認させていただきたいので、至急ご回答いただきますようにお願いいたします。 なお、本検討会は、7月24日から8月30日まで3回の会合が開かれましたが、現時点で公開されている議事記録と資料は第1回のみにとどまっています。 第2回は非公開で、議事録その他の資料も非公開とされていますが、現在、非公開部分をマスキングした議事録および資料等がインターネットで公開される見込みと聞いています。また、第3回目の議事録等も近日中に公開されることになっています。 今後公開される議事録や資料の中に、質問の回答にあたる部分も出ているかもしれませんが、現在、この「考え方」に基づいて政令の作成作業が進められており、近日中にパブリックコメント手続きも予定されているとのことから、資料が整わない現時点での質問とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。 個々の質問につきましては、別紙に詳細を記載しています。質問の内容や意図がわかるようにしているので、参照してください。また、先日お伝えいたしましたように、この質問とご回答につきましては、上記サイトへの掲載を予定しておりますので、あらかじめご承知おきください。 T 算定の根拠となっている数値について 1 「 特別事業主の要件」関連 (1)事業場数と石綿使用量、及びその推計方法について @ 大気汚染防止法による事業場の総数 A 「労災認定件数を勘案して石綿の使用量の推計を行う事業場を絞り込む」というが、これによって絞り込まれた事業場の数(石綿使用量の推計を行った事業場の数) B この絞込みの際の労災認定件数 C 石綿の使用量を推計した方法 D 推計結果である、それぞれの事業場の石綿使用量 E 大気汚染防止法上の事業場は、参考資料にある、厚生労働省、経済産業省、国土交通省等の事業場や事業所と同じと考えてよいか。また、異なる場合、大気汚染防止法上の事業場は、他省の資料にある事業場や事業所とどのような点が異なっているか。 (2)石綿使用量について @ 事業場における累計の石綿使用量が、1万トン以上となった事業場数と事業場名 A この合計が、「石綿の輸入量967万トンの5割以上をカバーする」ことを示す根拠 (3)市町村別の中皮腫による死亡数について @ 全国平均0.553人(人口10万人当たり)の計算方法と使われたデータ A 全国平均0.553人以上となった672市町村の内訳 (検討会資料「平成7年〜16年市区町村別の中皮腫の死亡者数」の表で、全国平均以上となった市町村名にマークを入れてください。) B 他の二つの要件に該当しているにもかかわらず、事業場がある市町村が平均値にみたないという理由で、該当しないとされた事業場はいくつあるか (4)指定疾病の発生状況について @ 「労災認定件数10件以上」の要件をみたす事業場の数と事業場名 A 各事業場ごとの労災認定件数を示すデータ(10件の算定に使用したデータ) B 労災認定件数10件以上の要件を満たす事業場数は、総事業場数の何割を占めるか C 総労災認定件数860件はどのデータを基にした数値か D この算定には、平成17年度の労災認定件数(772件)が含まれているか E 平成17年度分の労災認定件数を加えた場合、「労災認定件数10件以上」を満たす事業場はいくつになるか 2 「特別拠出金の算定方法」関連 (1)総額(73.8億円)を「石綿の使用量分」と「指定疾病の発生状況分」に按分することについて @ 「石綿の使用量分(A)」の金額、及び全体に占める割合 A 「指定疾病の発生状況分(B)」の金額、及び全体に占める割合 B 「石綿の使用量分(A)」と「指定疾病の発生状況分(B)」の比率 C 石綿の使用量割額は、1万トンあたり何万円になるか D 指定疾病の発生状況割額は、1認定件数あたり何万円になるか E 「指定疾病の発生状況を労災認定の件数で代替することができる」と判断した根拠 F 労災認定件数は中皮腫による死者数に比べて著しく少ないため、労災認定件数を基に算出するにしても、「労災認定件数×20」程度の補正を加えなければ、合理的な算定結果は得られないと思うがどうか G 「石綿の使用量170トンにつき1名の中皮腫患者が発生する」という統計が妥当であるとすれば、理論上A対Bは1:1になるはずである。それが、この計算式によれば72対1になっている。このことは、「指定疾病の発生状況」を「労災認定件数」で代替することが不適切であることを示しているのではないか U 基本的な考え方について 1 石綿被害救済法47条との関連 (1)「特別事業主の要件」と「事業場の要件」との違い @ 「石綿による健康被害の救済に関する法律」第47条は、「機構は、救済給付の支給に要する費用に充てるため、石綿の使用量、指定疾病の発生の状況その他の事情を勘案して政令で定める要件に該当する事業主(以下「特別事業主」という。)から、毎年度、特別拠出金を徴収する。」と定めている。 「特別事業主」は、「石綿の使用量、指定疾病の発生の状況その他の事情を勘案して政令で定める要件に該当する事業主」とされており、求められているのは特別事業主に該当する要件である。 一方、今回示されている「考え方」は、各事業場に該当する要件を決めている。 個々の事業場ごとに要件に当てはまるかどうかを判断し、該当する事業場がある場合は、各事業場ごとに金額を算出し、それを事業主単位で合算して負担金額を決めるという方法をとっている。 この「考え方」で示されている要件は、あくまでも各事業場に対する要件であり、「特別事業主」の要件を定めているわけではない。事業場ごとの要件で抜き出された「特別事業主」は、石綿被害救済法で求めている特別事業主とは異なっているのではないか。 A この「考え方」に基づいて拠出金額を決めていくと、事業主ごとにみると、「石綿の使用量、指定疾病の発生の状況」を反映しない結果となる場合があるのではないか。 B このような結果は、この「考え方」が、石綿被害救済法の規定に合致していないことを示しているのではないか 2 労災認定件数10件を要件としたこと (1)個々の事業場ごとに労災認定件数10件を要件とすると、該当する事業場は極端に少なくなる(400事業場中の10事業場程度か?)。 事実上、この要件だけで一定の事業場に特定される結果になり、同時に、それ以外の事業場をすべてふるい落とす効果が出てくるので、かなり恣意的な印象を与える。 事業場あたりの労災認定件数10件というは、かなり厳しすぎる要件ではないか。 (2)一般拠出金は、広く、浅く、という考えで、全企業を対象に基金への拠出を求めている。他方、特別拠出金の方は、ごく一握りの事業場が対象になり、たった数社(4社)の特別事業主を対象に、狭く、深くという考え方に立っている。 同じ法律で二つの拠出金の考え方がここまで大きく異なる理由について、説明や審議した箇所があるか。 3 特別事業主からの意見聴取 (1)今回示された「考え方」を決めるにあたって、要件や拠出金の算出方法について、一定の事業主に対してヒアリングを行ったか (2)行ったとすれば、その日時とヒアリングの対象となった事業主、出席者はだれか (3)事業主負担に関して、特別事業主に該当する可能性のある企業から提出された意見書等があるか (4)これ以外に、特別事業主に該当する可能性のある企業から、公式、非公式に伝えられている意向などがあるか V 事業主負担検討会委員の選定に関して 1 省庁関係者のOBの有無 (1)「石綿による健康被害の救済に係る事業主負担に関する検討会」の委員の中に、省庁関係者OB(いわゆる「天下り」)の方がおられるかどうか (2)おられる場合は、それらの方々の前所属はどこか 2 中央環境審議会委員との兼任の有無 (1)事業主負担検討会の委員の中に、中央環境審議会の委員を兼任されている方がおられるかどうか (2)おられる場合は、その方々の氏名と中央環境審議会の部会名、常任か臨時委員かの別 (3)事業主負担に関する政令は、中央環境審議会のどの部会に諮問されるか (4)諮問される部会の委員と、事業主負担検討会の委員を兼任されている方がおられるかどうか (5)その方の氏名と所属、常任か臨時委員かの別 (6)事業主負担検討会は中央環境審議会に諮問する内容を作成した側になるので、同一の方が委員を兼任していると、その委員は、諮問する側とされる側の両方にたつことになり、中央環境審議会の審議の客観性、中立性が損なわれる恐れがあっる。 事業者負担検討会の委員になった方は、諮問する中央環境審議会の委員を辞任していただく必要があると思うがどうか。 以上 (別紙)【質問の趣旨】 T 算定の根拠となっている数値等について 1 「4 特別事業主の要件」関連 (1)事業場数と石綿使用量、及びその推計方法について 2頁下の注によれば、石綿使用量は、事業場ごとの推計が困難なため、「労災認定件数を勘案して石綿の使用量の推計を行う事業場を絞り込む」としている。 そうすると、総事業場(400?)に対して、あらかじめ労災認定件数による絞込みを行うことになるが、この絞込みの要件は明らかにされていない。 3番目の要件として、事業場あたり労災認定件数10件という要件が出されてくるわけだから、労災認定件数という同一のファクターで絞込みを行うのであれば、はじめの絞込みをそれ以下の条件で行っても意味が無くなる。 そうだとすると、はじめの段階で、労災認定件数10件という条件で絞込みを行い、残った事業場だけに限定して、それぞれの事業場の石綿使用量を推計し、その中から推定使用量が1万トン以下の事業場を除く、というのが一番手っ取り早い方法となる。 そうすると、始めの段階で労災認定件数10件という条件で絞込みを行うことになり、報告書の説明とは異なる手順になってしまう。この点が、注に数行あるだけであいまいに書かれているだけなので、はっきりわからない。 報告書の手順どおりに行われたとすれば、絞込みの途中のデータがあるはずなので、その数値を確認したい。 実際には、3つの要件に優先関係はないから、どの要件から絞込みを行っても結果的には同じことになる。後述するように、参考資料からは、労災認定件数10件以上という条件を満たす事業場は10箇所程度の事業場しか見つけられなかった。 厚生労働省から出された事業場ごとの労災認定件数を使うと、始めから8事業場(4事業主)程度に限定されてしまう。 そのような形で最初に極端な絞込みを行い、はじめからごく限られた事業場だけしか検討対象にしなかった可能性がある。そうすると始めから決まっていたのとほとんど同じことになってしまう。 そのような方法で絞込みを行ったのかどうか確認したい。 (2)石綿使用量について 不信感を与える理由のひとつは、個々の事業場の石綿の使用量を示すデータ、また、推定したのならその推定方法がまったく記載されていないことだ。 個々の事業場の石綿使用量のデータは、大気汚染防止法の届出書類にも書かれていないし、推定するといっても、事業主から情報が得られなければ無理となる。 示された計算式を使うと、1万トン当たりの拠出金額は750万円にもなってくる。労災認定件数当たりの拠出金額はかなり低めに設定してあるから(1件あたり13万円程度)、推定トン数の大きさが拠出金の額に直接反映する。その合計が特別拠出金となる。一般拠出金は、総額から特別拠出金を差し引いた金額となるから、推定された石綿使用量のトン数が、一般の事業主の負担割合にも大きな影響を与える。 このようなことから、石綿の使用量を推定した方法が重要になる。 (3)市町村別の中皮腫による死亡数について 市町村は、単なる行政区分に過ぎないから、個々の事業場による被害の重要性を市町村ごとに区切った被害者数で判断できるのかという問題がある。 「人口動態統計」による中皮腫死亡者数は、死亡届の居住地による集計であるから、これを市町村ごとにまとめた数値を、絞り込みのための条件として使うことが適切かどうかという問題もある。 さらに、10万人に対して0.5人しか発生していない中皮腫死亡者を、10万人以下の人口が7、8割も占める市町村単位で集計した数値と比べて、統計上有意であるのかどうかという点も問題だ。 このようにすると、1人以上中皮腫死亡者がでている市町村はほとんどが平均以上となってしまう。実際、1人以上の死亡者がいる市町村はすべて該当することになっているから、この要件は意味をなさない。 逆に、労災認定が10件もある事業場が、死亡届がすべて別の市町村で提出されたことによって、市町村単位の集計ではゼロとなり該当しないことになるなら、この要件が不適切であることを示すだけである。 また、この報告書では、全国平均0.553人以上となった市町村数を672としているが、提示されている資料を調べると、1名以上中皮腫死者数がでている市町村の数は432前後になると思う。何をどのようにカウントしているのかもわからない。 (4)指定疾病の発生状況について 事業場の労災認定件数10件を要件としているが、個々の事業場の認定件数はどのデータに基づいて決められたのかが示されていない。 「労災認定件数10件以上とすると、総労災認定件数の2割以上をカバーする」としているが、その根拠も示されていない。 また、労災認定件数10件以上の事業場が、総事業場のどの程度の割合を占めているかにも触れられていない。 報告書の記載からは、あたかも2割に絞られただけのような印象を与えるが、事業場の数で考えると、この絞込みはかなり極端なもので、この条件を満たすのは、400事業場のうち、わずか10事業場程度に絞られてしまう。 特別事業主4社が、実際にはこの要件だけで決まっている可能性もあることになる。 もう少し詳しく見ると、現在公表されている事業場ごとの労災件数のデータは、厚生労働省から 「石綿ばく露作業に係る労災認定事業場一覧表」(平成11年度〜平成16年度) http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/07/h0729-2.html http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/07/dl/h0729-2d1.pdf ほか が出されている。 これを見ると、労災認定件数10件以上の事業場は、次の6事業場、4事業主に限定されてしまう。 横須賀防衛施設事務所(横須賀)(*国の機関) 労災認定件数 13 住友重機械工業(株)横須賀製造所(横須賀) 労災認定件数 11 ニチアス(株)羽島工場(岐阜) 労災認定件数 12 (株)クボタ大浜工場神崎分工場(尼崎) 労災認定件数 30 ニチアス(株)王寺工場(葛城) 労災認定件数 10 三井造船(株)玉野事業所(玉野) 労災認定件数 17 このデータから絞り込めば、対象となる事業場は6事業場、事業主は、住友重機械工業、ニチアス、クボタ、三井造船、の4事業主となってしまう。 (ただし資料は平成11年度から16年度分だけだから、当初からのデータがあればもう少し増える可能性はある。) もしこれだけの事業場しか対象にされていないのであれば、この間、多数の被害者を出し、周辺への環境汚染の問題で住民に不安を与えてきた、ミサワリゾート(旧エタニットパイプ)、竜田工業ほか、多くの事業主がはじめから対象とされていない可能性もでてくる。 事業場ごとにみても、工場周辺に大量のアスベスト製品を埋めて問題となり、地元住民や自治体との協定が作られ、環境監視が続いている、ニチアス袋井工場などの事業場が対象に含まれないことになる。 また、松下電工のように、屋根材も外壁もクボタよりずっと遅くまで製造、販売し、アスベストによってかなりの収益を上げていると推測される大手企業も、「応益に応じて」という前提とは裏腹に、検討対象にも入れられないことになる。 その結果、特別拠出金の金額が極端に減り、一般の事業主の負担を増やすことにつながっているから、労災認定件数を10件と決めたことはきわめて重要になる。 これについて、経済産業省、国土交通省など出されている参考資料で調べてみると、各事業場の被害者数が10件以上の事業場は、次の11事業場程度とみられる。 クボタ 神埼工場(尼崎市)89件(健康被害者数 以下同じ) ニチアス 鶴見工場(横浜市)13件 ニチアス 王寺工場(奈良市)67件 ニチアス 羽島工場(羽島市)33件 太平洋セメント (秩父市)25件 竜田工業 (奈良県斑鳩町)23件 ミサワリゾート 大宮工場(さいたま市)23件 ミサワリゾート 高松工場(高松市)15件 アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド 呉工場(呉市)13件 住友重機械工業 (横須賀市)16件 川崎重工業 兵庫工場(神戸市)13人 これだともう少し多くなるわけだが、ここでいう「被害者数」は労災認定件数とは異なるので、算定に用いられた数値ではないだろう。 この報告書は、労災認定件の総数を860件としているが、この数はどの数値か。 上に挙げた厚生労働省の資料では、平成11年度〜16年度までの件数を531件としている。それ以前の数を加えると848件となるが、同じ厚生労働省の資料でも別のデータを使うと856件になる。総数860件が、どのデータに基づく数値なのかわからない。 また、労災認定件数の総数を860件とするとしても、それは、平成16年度までの総数に過ぎず、平成17年度は激増し722件もあるので、平成17年度のデータも加えれば、総数は倍程度に増えてしまう。10件以上の事業場数も、もっと増える可能性が高い。 どの年度のどのデータを使うかによって、特別事業主になるかならないかが違ってくるし、特別拠出金の額もかなり異なってくる。 労災認定件数が10件以上になるかならないかを判定した際に用いられたデータを明示する必要がある。 事業場ごとに判定する場合、労災件数10件という数値はかなり高い数値で、総事業場数400のうち、わずか10事業場程度にしかならない可能性もある。 この場合、残りの390事業場は検討対象にならず、この要件で、事実上該当する事業主がほぼ決まってしまう。事業場ごとに判定するという方法と、めったにない労災件数を要件としたことが、このような不合理な結果を導き出している。 労災認定件数を少し下げるだけで該当事業場は大幅に増えてくるから、10件がかなり恣意的に決められた数値ではないかと疑う理由がある。 2 「5 特別拠出金の算定方法」関連 (1)事業主負担の総額(73.8億円)を「石綿の使用量分」と「指定疾病の発生状況分」に按分する方法について この計算式で計算すると、石綿の使用量分は約72.7億円、指定疾病の発生状況分は約1.1億円となり、両者の比は72対1となる。 この点、この報告書は、数値が入れられた数式が示されているのに、計算結果が伏せられ、次ページの図も、72対1をイメージさせないように書かれている。すぐにわかる数値を入れないで、わかりにくい記号などを使って説明しているので、わざと理解しにくくしているのではないかという印象を与えるが、まず、これがなぜ適切な比率といえるのかが問題になる。 報告書では、括弧書きで「指定疾病の発生状況を労災認定の件数で代替する」と簡単に書かれているが、指定疾病の発生状況を労災認定の件数で代替することができる理由には触れられていない。 労災認定の件数と人口動態統計の中皮腫死亡者数とは大きな隔たりがあり、添付された資料を基にしても、平成11年度から16年度の中皮腫の労災認定件数は356件であるのに対して、人口動態統計の中皮腫死者数は7,013人で、約20倍の開きがあることがわかる。 この点を考慮するなら、認定件数を基にするとしても、(×20)程度の補正をしなければ、合理的な算定結果は得られないのは明らかと思える。 さらに、「石綿の使用量170トンにつき1名の中皮腫患者が発生する」という研究結果を妥当であると仮定するなら、170トンという数値は、もともと石綿の総量を基に出されている数値だから、適切な中皮腫数を入れて計算すれば、中皮腫数×170トンが石綿の総量になるのは自明の理である。 つまり、この研究結果が正しいなら、理論上は、中皮腫数に170トンをかければ、石綿の総輸入量967トンと同じにならなければおかしいことになる。つまり、指定疾病による発生状況分が適切に石綿の使用量分に換算されるなら、両者は同じとなり、73.8億円は2分の1づつに按分される結果になるはずである。 それにもかかわらず、この計算式では72対1になっている。 このようなあまりにも不合理な結果は、「指定疾病の発生状況を労災認定の件数で代替する」とした判断に誤りがあることを端的に示しているのではないか。 U 基本的な考え方について 1 石綿被害救済法、第47条との関連 (1)「特別事業主の要件」と「事業場の要件」との違い 「石綿による健康被害の救済に関する法律」第47条は、「機構は、救済給付の支給に要する費用に充てるため、石綿の使用量、指定疾病の発生の状況その他の事情を勘案して政令で定める要件に該当する事業主(以下「特別事業主」という。)から、毎年度、特別拠出金を徴収する。」と定めている。 (48条では、「特別事業主から徴収する特別拠出金の額の算定方法は、石綿の使用量、指定疾病の発生の状況その他の事情を考慮して政令で定める」と定めている。) 救済法は、「石綿の使用量、指定疾病の発生の状況その他の事情を勘案して政令で定める要件に該当する事業主」を「特別事業主」としている。 石綿の使用量、指定疾病の発生の状況その他の事情を勘案して、特別事業主の要件を定めるということが、この法律によって求められていることである。 ところが、今回示された「考え方」は、各事業場の該当要件を決めているにすぎない。 個々の事業場ごとにそれぞれの要件に当てはまるかどうかを判断し、該当する事業場がある場合には、各事業場ごとに拠出すべき金額を算出し、それを事業主単位で合算して負担金額を決めるという方法をとっている。 この「考え方」で示されている要件は、あくまでも各事業場に対する要件であって「特別事業主」の要件を定めているのではないということが問題である。 事業場ごとに集計しているから、大部分の事業場は該当しないことになり、拠出金の算入に加えられない。そればかりか、大量のアスベストを使用し収益を上げてきた事業主や、周辺への被害が多く出ているのに事業場ごとの集計では該当しない事業主は、特別事業主に含まれないことになってしまうからだ。 このように、各事業場ごとに要件を決めていることが、石綿被害救済法第47条の特別事業主の定義に合致しているのかという疑問がある。 もう少し詳しく述べると次のようになる。 この報告書では、特別事業主の要件として、まずはじめに大気汚染防止法上の事業場を選び出し、事業場を単位として、各要件にあてはまるかどうかの判断をし、該当した事業場ごとに負担額を計算し、それを集計して事業主の負担金額を算定している。 このような形で、事業場単位で各要件に当てはまるかどうか判断して負担金を算出すると、たとえひとつの事業主がいかに大勢の労災認定者を出していたとしても、もしその事業主がたくさんの事業場を持ち、それぞれの事業場ごとの集計では、労災認定件数が10件未満であれば、特別事業主とはならない。いかに大量のアスベストを使用していたとしても、その事業主の特別拠出金はゼロになるわけだ。 また、一部の事業場しか該当していない場合も、算出された負担金は、特別事業主単位で算出するよりもかなり低い額となる。結局、事業主の石綿使用量や労災認定件数の総数を反映するものではなくなってしまうわけだ。 たとえば、(株)クボタを例にとって試算してみると、 クボタの石綿使用量は「1,551千トン」と発表されている。 http://www.kubota.co.jp/new/2005/s7-15.html 経済産業省の資料では、石綿疾病者数は98となっている。(厚生労働省のデータでは、労災認定件数は30件だが、使われたデータが不明なので、ここでは、仮に経済産業省の被害者数で試算することとする。) この数値で報告書4ページの数式にしたがって試算してみると、事業主であるクボタの負担額は石綿使用量分だけで、約11.56億円となる。 (指定疾病による発生状況分はかなり過小に算定されるように作られており、1件当たり約13万円となっている。98件であれば1,300万円程度となる。30件ならば、390万円程度となる。) しかし、実際は事業場ごとに算定しているために、旧神崎工場しか該当していないとみられ、算定額は数千万から数億円(3億4千万円の一部)となっている。 また、三菱重工業の場合、横浜(1人)、神戸(9人)、下関(4人)、広島(1人)、長崎(1人)に工場があり、それぞれ括弧内の数値が石綿疾病者数となっている。 http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/10/100721_2/02.pdf 事業主全体の疾病者数は16だが、5つの事業場に散らばっているため、このデータでは、計算上は該当しない(大気汚染防止法上の事業場ではなく、対象になっていないとみられるが、示されている資料に出ているのでわからない)。 エーアンドエーマテリアル(旧アスク)も、疾病者数は13件以上だが、旧横浜工場、石岡工場等に分散されているため、事業場あたり10件以上の要件に該当せず、このデータでは、特別事業主に該当しないことになる。 http://www.meti.go.jp/press/20050826002/higaichousa-set.pdf (労災認定件数はもっと少ないので、総数でも該当していない可能性があるが、詳細は不明である。) このように、各事業場ごとに要件に当たるかどうか判定していくと、結果的には、事業主の石綿使用量や労災認定件数が、対象事業主になるかどうかの判断には直接は結びつかないことになる。 このような不合理は、個々の事業場ごとに該当要件を決めたことから起こっている。 石綿被害救済法は、該当する特別事業主の要件を決めることを求めており、事業場ごとの要件を決めることを求めてはいない。 事業場ごとに判断すると、事業主の石綿使用量と疾病者数を直接に反映しない結果になる。 このように、この報告書が示している特別事業主の決め方や拠出金の算定方法は、救済法が求めている特別事業主や算定方法とは異なるものである。 2 労災認定件数の要件を10件としたこと 前述したように、個々の事業場ごとに労災認定件数10件を要件とすると、該当する事業場は極端に少なくなるため(400事業所中の10事業所程度?)、ごく一握りの事業場だけしか負担を求められないことになる。 一般拠出金の方は、広く、浅く、という考えで、全事業主に拠出を求めているのに、特別拠出金の方は、ごく一握りの事業場が対象になり、たった数社(4社)という限られた事業主に拠出を求め、狭く、深くという考え方を採用している。 二つの拠出金の考え方がここまで異なるということはかなり不自然であり、どのような理由に基づくものかわからない。 特別拠出金も、一般拠出金と同様に、広く浅くという考え方で負担を求めれば、特別拠出金の総額も多くなり、その分一般拠出金の総額が減って、一般の事業主の負担も軽減できる。 低い労災認定件数を要件とすると、労災申請のディスインセンティブとなるというが、10件になったとたんに手ひどく徴収されるということになれば、事業主としては労災申請をさせないようにすることが考えられる。むしろ、特別拠出金のほうも、広く浅くという考え方で拠出を求めれば、該当したにしても金額が大きくならないから、労災申請に対するディスインセンティブにつながらない可能性が高い。 特別拠出金の方には、広く浅くという考え方が採用されなかった理由は何かという点は、かなり重要である。 V 事業主負担検討会委員の選定に関して 1 省庁関係者のOBの有無 「石綿による健康被害の救済に係る事業主負担に関する検討会」委員のお名前と所属は次のようになっている。 青木保之 財団法人首都高速道路協会理事長 岩村正彦 東京大学法学部・大学院法学政治学研究科教授 岩元睦夫 社団法人農林水産先端技術産業振興センター理事長 内山巌雄 京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻教授 高橋滋 一橋大学大学院法学研究科教授 谷野龍一郎 日本小型船舶検査機構理事長 永松惠一 社団法人日本経済団体連合会常務理事 成宮治 全国中小企業団体中央会専務理事 これらの方々のなかで、4名の方は、関係省庁のOB(いわゆる「天下り」)であるということである(担当者の電話回答による)。 今回の報告者は、内容的に見てかなり問題があり、必要な説明やデータも書かれていないなど、報告書自体の体裁も整っていない。検討委員会の審議記録は今後明らかになるが、委員の人たちが、それらの点について、どのような意見を持って審議に参加したのか、確認する必要がある。 2 中央環境審議会委員との兼任の有無 この検討会の委員のうち、次の方は、この報告書に基づいて制定される政令案の諮問を受け、それに対して答申を出す「中央環境審議会」(環境保健部会)の委員を兼任しているとみられる(環境省HPによる)。 内山巌雄 京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻教授 *中央環境審議会環境保健部会臨時委員 高橋滋 一橋大学大学院法学研究科教授 *中央環境審議会環境保健部会委員 検討会と中央環境審議会の委員に同一の人がいる場合、その委員は、諮問する側とされる側の両方にたつことになるので、中央環境審議会の第三者性が損なわれ、十分な機能が期待できなくなる。 提案する側の人が委員に含まれていれば、審議の客観性、中立性が損なわれる恐れがでてくるので、検討会の委員になった時点で、中央環境審議会の委員を辞任することは、一般的に見れば当然のことと思える。 |
→pdfファイル |
|
このホームページの記事、画像等は、ホームページ制作者の著作物にあたります。許可なく転載、使用、加工等を行うことは禁じます。 部分的な引用については、「アスベストについて考えるホームページ」の名称とHPアドレスを必ず明記してください。 このホームページに関する御意見、御感想はE-mail:hepafil@ag.wakwak.comまでお願いします。 (C) 2006 HEPAFIL |
||