ポケット名言を 私家版
演劇
言葉

 


血を腐らせて生きるくらいなら、血を流して死んだ方がましだ

 

『血の婚礼』(作 清水邦夫/演出 蜷川幸雄)


のぞみのない悲しみのなかで、ざわめく闇の底にひそみ、なおもあなたのことばをきく、なおもあなたのことばをききわけたいと願う」
「なおもあなたのことばをきく、なおもあなたのことばをききわけたいと願う……」
「これまでうたわれなかった歌、これまでひびかなかった音楽、それが今きこえてくる……これまでとどかなかった光が今とどく……落ちつけ、いつの時代にもうたわれなかった歌が今生れるのだ……あわてるな、光が身体にあふれるのを待て……でもなぜだ、急に時間の足がおとろえたのか、すべてが止まってみえる、すべてが死んだように動かない、みんな動け!動け!動け!そして自分の歌をうたえ!まずは自分の歌をうたえ!

 

『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』(作 清水邦夫/演出 蜷川幸雄)


どうかしています。生きている人間は淫らだ、淫らな夢を追いすぎます」
「かも知れん…でも五郎よ、逆にわしに言わせれば、死人は立派すぎる、高貴な夢を語りすぎる、とくにお前のような若い死人はな…生きた人間には、時としてその高貴な夢はわずらわしい、うんざりなのだ…出来うれば、死の瞬間まで平凡に、淫らに、つつましやかに、そして激しく…

 

『わが魂は輝く水なり』(作 清水邦夫/演出 蜷川幸雄)


芝居をしなければ気ちがいになるから、芝居をするんだ

 

『タンゴ・冬の終わりに』(作 清水邦夫/演出 蜷川幸雄)


「……いとしい灰、いとしい焼土たち……ええい、くそ!吹雪が吼える、燃えさかる夏の日の木の葉一枚、幻が白い……にいさん……三郎にいさん、今頃どこで血を凍らせているの………

「こんなことで豊田郷ノ三郎、血の涙を流すとでも思ったのか!おれはミナトの衆だ、地の虫のようなミナトの人間だ、おれの血の涙は、もっと永遠の恨みのために流す、腐った魂の行きつく果てにそそぐ。そのために生きてきた、そのためだけに血を凍らせてきた、見損うな、ゆき!

「……将門よ、どににいる……お前は世界の恐れだ、自然の恥だ、お前のひたいには死者たちの呪いのしるしが見える……よもや貴様、おれの知らざる国へ逃げ込んだのではあるまいな……おれはあきらめんぞ。きっと貴様を見つけ出してやる……知らざる国……炎の道……いったいそれはどこだ……なにをしている将門、早く教えろ、勿体ぶるな、将門、早くおれの手をひけ!

 

『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』(作 清水邦夫/演出 蜷川幸雄)


ウソよ!死ぬもんか、あれくらいの暴力で誰が死ぬもんか、……死んだマネをしてるのよ、彼は必死になって死んだマネをつづけてるのよ。あんた達にわかるもんか。あたし達は生きたマネより死んだマネの方がうまいのよ、……生きたマネより死んだマネ……生きたマネより死んだマネ……

 

『真情あふるる軽薄さ2001』(作 清水邦夫/演出 蜷川幸雄)


「なんだ……ここは監獄島じゃないか……おれたちはずっと監獄島にいたんだ……監獄島にいるおれたちが……自由になんてなれるはずがなかったんだよ!」

 

新感線『蛮幽鬼』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり)


Yes! 何のために生きるか? Yes! それが判らないから
生きてみるんじゃない!
五右衛門ロック 五右衛門ロック 五右衛門ロック 五右衛門ロック
五右衛門ロック 五右衛門ロック 五右衛門ロック 五右衛門ロック
愛があるんじゃない!

 

新感線『五右衛門ロック』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり)


 「天が剣を使わせる時、それは暗殺とは言わんでがす。天誅言うじゃが!」

 

新感線『IZO』(作 青木豪/演出 いのうえひでのり)


「血よ!俺の中から流れ出る赤い血よ!オボロの森を真っ赤な嘘に染め上げろ!鬱蒼と静まりかえったこの森を嘘の森に染め直せ、それが俺の最後のペテンだ!!」

 

『朧の森に棲む鬼』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり)


 「小さな人間が大きなことをするの。大きな人間になるために」

 

『メタル・マクベス』(原作 W.シェイクスピア/脚色 宮藤官九郎/演出 いのうえひでのり)


わかりました。なりましょう、修羅に!

 

『吉原御免状』(原作 隆慶一郎/脚色 中島かずき/演出 いのうえひでのり)


「……出門」

「やっと殿づけやめてくれたか。全く段取りの多い女だぜ、お前はよぉ」

「……今度こそ、今度こそとどめをさして下さいますね」

「約束だからな」

「約束?それだけ?」

「……突き立てたいんだよ。お前の中に。俺の情のありったけをな」

「出門……」

「面白えもんだな、初めて会った時にはお前が俺の首筋にこうかんざしを構えてたんだけどな。……因果はめぐる糸車、めぐって紡ぐか赤い糸、か」

「めぐって紡ぐか血の縁、流れた血潮が熱い程、糸の芯まで真っ赤に染まる。……出門」

「なんだ」

「お前の血、おいしゅうございました」

「鬼がよぉっ!!」

「笑死はただ視る者。ずっとそうだった。これからもそうだ。それに……」

「それに?」

「あと五十年もすれば、人間の城も消えて失くなる――」

 

『阿修羅城の瞳』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり)


「いいか、我ら蝦夷は、逃げず、犯さず、脅かさず。ただ、此処に在るために戦う。それが北の民の誇りだ」

 

『アテルイ』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり)


「せっかく助けに来てくれたんだ、ただで帰しちゃ申し訳ねえや。俺の首、落とせ。そうすりゃ天魔王の首に懸かった賞金は全部おめえらのもんだ」

「冗談じゃねえよ、そんな金!」

「なんだあ、金五百枚だぞ」

「えっ!」

「“えっ!”じゃねえよ!情けねえよ俺は!」

「浮世の義理を全て流して、三途の川に捨之介なんて気取っちゃあみたが、どうやらいったんくたばんなきゃ、昔の縁は断ち切れねえらしい。言ったろ?俺の最後は女に刺されることになってんだ」

 

『髑髏城の七人』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり)


「この世でたった一匹、俺は半妖の犬夜叉だぁ!」

 

『犬夜叉』(原作 高橋留美子/演出 いのうえひでのり)


平和なときに もてるのは二枚目 戦さのときに もてるのはちから 

しかしおれには そのどっちもない だからおれは 平和も戦さも嫌いだ

平和と戦さの ごたまぜが好きだ

桜のいろは血のいろ 桜のいろは火のいろ 桜のいろは死のいろ 桜のいろは無のいろ

桜のいろは匂へと 桜はやがて散りぬるを 桜もたれも常ならむ

桜の奥山今日越えて 桜の夢見じ酔ひもせず……

「鏡の中のおれを殺したおれ、抱え百姓を斬り殺した抱え百姓のおれ。すると死ぬのか、おれは?(天を仰いで)馬だ!馬を持ってこい!ここから、いや、この世から抜け出すには馬が、それも羽の生えた天馬が要るんだ!そいつを持ってきた奴に、何もかもくれてやる!」

 

『天保十二年のシェイクスピア』(作 井上ひさし/演出 いのうえひでのり)


「脳みそをシャキッとさせなきゃな…記憶力との壮絶な戦いが今、始まろうとしている」

 

パラダイス一座『続オールド・バンチ 復讐のヒットパレード!』(作 山本清多/演出 流山児祥)


 

権利幸福 きらいな人に 自由湯をば飲ましたい 
オッペケペ オッペケペッポーペッポーポー
固い裃角とれて マンテルズボンに人力車 
意気な束髪ボンネット 貴女に紳士のいでたちで
外部のかざりは 良けれども 政治の思想が欠乏だ 
天地の心理がわからない 心に自由の種をまけ
オッペケペ オッペケペッポ ペッポーポー

 

流山児事務所『オッペケペ』(作 福田善之/演出 流山児祥)


一丁かまして うれしやな 返り血あびて たのしやな 
花のお江戸の下水道 あぶくのなかで 股濡らす
ああ うちたいな うちたいな 天にかわりて 不義うちたいなあ

 

流山児事務所『浮世風呂 鼠小僧次郎吉』(作 佐藤信/演出 天野天街)


 

祭りだ祭りだ!お祭り一揆だ!祭りだ祭りだ!お祭り一揆だ!目を醒まして!目を醒まして!目を醒まして!」

 

流山児事務所『無頼漢』(原作 寺山修司/演出 流山児祥)


血飛沫ダンス!血飛沫ダンス!血飛沫ダンス!」

 

流山児事務所『夢の肉弾三勇士』(作 高取英/演出 天野天街)


首が飛んでも動いてみせらあ!」

 

コクーン歌舞伎『東海道四谷怪談』(作 四世鶴屋南北/演出 串田和美)


「私だって原因があると思いたいじゃない。生まれつきだったらもう私、誰のことも……わからないのよ、本当に!お願いします!お願いだから、私から原因取らないで……私から原因取らないで……」

 

劇団本谷有希子『遭難、』(作・演出 本谷有希子)


あたしが特別じゃないなら、他の人間全員滅亡すりゃあいいのよ!……死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」

 

劇団本谷有希子『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(作・演出 本谷有希子)


それじゃあもう、僕だけでいいってこと?」
「それとこれとは話が別。ごめんね理一郎、やっぱり、あんたが、一番可哀想……」

 

劇団本谷有希子『無理矢理』(作・演出 本谷有希子)


 

素見千人 客百人 間夫が十人 恋一人 
廓の恋は 金持って恋 いっそも わっちゃ 死にんすへ
おいて頂であもに おきゃあせ ちょっとも だちゃかんとなー
いやあすぜーも そうきゃあもそうきゃあも
行きやすか おきゃすか どうしゃあす

おまえは生きている ほんとうに生きている
美しい明日を 美しい明日を
おまえが持っているなら ほんとうに持っているなら

 

『表裏源内蛙合戦』(作 井上ひさし/演出 蜷川幸雄)

 


 

「貧しくて若いということが、どんなに素晴らしい宝なのか、道元君、君にはわからないのかね?貧しければ変えようと考え、頑張ろうと思う。一枚の白紙がある。その白紙には何も書かれていず、寒々として見えるが、白紙こそ、貧しさこそ、もっとも美しい文字を書くのに都合がよいのだよ」
「はぁ…」
「君は自分の可能性を、卑下し、否定した。それが思い上がりでなくて、何が思い上がりかね?」

「道元君、君には誰も道連れはいない。つねに独り行く、つねに独り歩くのだ。よいか、自分を救ってくれるものは自分よりほかにない。師も同僚も単なる橋渡し、悟りを選ぶのはあくまで自分ひとりなのだよ。他人は月を指す指のごときもの。そこに月はない。月はその指の延長線上にある。延長戦を辿り、月を見るのは自分さ。畢竟、仏教とは「自分が自分で自分を自分にすること」なのだから…

「けっして形を残そうとこだわってはいけない。心を伝えなさい、心を。その心は、たとえ、仏教が消滅しても、人から人へ伝わっていくはずだ」
「はいっ!」
「外国の器良人よ、君はいま小さな火花を胸に旅立とうとしている。その小さな火花を大切にな。小さな火花も、やがては広野を焼きつくす」

 

『道元の冒険』(作 井上ひさし/演出 蜷川幸雄)

 


 

「聞いとれや。おまいはあんとき泣き泣きこよにいうとったではないか。『むごいのう、ひどいのう、なひてこがあして別れにゃいけんのかいのう』……覚えとろうな。応えてわしもいうた。『こよな別れが末代まで二度とあっちゃいけん、あんまりにもむごすぎるけえのう』」
「……」
「わしの一等おしまいに言うたことばがおまいに聞こえとったんかいのう。『わしの分まで生きてちょんだいよォ!』」

「……」

「そいじゃけえ、おまいはわしに生かされとるんじゃ」

「生かされとる?」

「ほいじゃが。まことあよなむごい別れが何万もあったちゅうことを覚えてもらうために生かされとるんじゃ」

 

『父と暮らせば』(作 井上ひさし)

 


 

シェイクスピアは金の蔓 あの方がいるかぎり金には困らぬ
シェイクスピアは不動産 あの方がいるかぎりわれらは安泰
シェイクスピアはノースペア あの方に身代わりはいないのさ

 

『天保十二年のシェイクスピア』(作 井上ひさし/演出 蜷川幸雄)

 


 

「おっかさん、俺は今の男を殺そうと思ったのは、ど盲と言われて怒ったからじゃねえ。おっかさんに銭投げつけたからでもねえ。おっかさんのことをあの野郎がおへちゃだとほざきやがったからだ。おれのおっかさんは器量よしなんだ」
「そうさ、おっかさん器量よしさ。塩釜中のどんな子どももひとりひとりがみんな塩釜小町のおっかさんを持ってんのさ……坊やの……可愛さ……限りなし。苦しい、楽になるようにしておくれ」
「おっかさん……」
「親孝行すると思って……さあ、早く」
「来世は目明きに生まれてくるぜ。そうして、おっかさんの顔をしみじみと拝ませてもらわあ」

 

『藪原検校』(作 井上ひさし/演出 蜷川幸雄)

 


 

時はゆくゆく乙女は婆ァに、それでも時がゆくならば、婆ァは乙女になるかしら

 

『少女仮面』(作 唐十郎)

 


  

 

町は一体どんな衣装を着けていると言うのか。売女の色か、貴婦人のレースなのか。過ぎゆく時にあわせてまとい続ける、みだらな服どろぼうが町ならば、この町こそ、ほの暗きあのブタ箱に放り込めばいいのだ!」

 

MODE『唐版・俳優修業』(作 唐十郎/演出 松本修)

 


  


死人箱にゃ七十四人 それからラムが一ビンと よいこらさあ よいこらさあ
残りは悪魔が片づけた それからラムが一ビンと よいこらさあ よいこらさあ
七十五人で船出をしたが 帰ってきたのはただ一人 よいこらさあ よいこらさあ

 

劇団唐ゼミ『ジョン・シルバー(続)』(作 唐十郎/演出 中野敦之)

 


    

「あたしの前に立たないでよ。あたしはもっと遠くに行きたいんだ。このボストンバッグを手にあの森の一番深いところまで。ああ、銀バエが群がっている。あたしはあそこで象になるんだ。月の光を浴びて青く光る像になるんだ」

 

劇団唐ゼミ『鐡仮面』(作 唐十郎/演出 中野敦之

 


    

心がほろべば 男伊達 匂う 無双の和尚美人
命も宝も惜しくなば 島原美男の御首が欲しい
南に忍ぶ声もする 江戸へ行きたい お江戸はどこじゃ
正しき雪にたもとを振って 一度は心をまどわされたい
首はいらんかねえ

 

流山児事務所『由比正雪』(作 唐十郎/演出 流山児祥)

 


 

「行ってもらわなければ困ります」
「なぜっ」
「行ったあなたに、わたしは声かけるんですから……名のないこの絵の、名を思い」
「……」
「でなければ、これは陽の目をみない、行って、風が吹いたその時に……いま……何処へ」

 

唐組『紙芝居の絵の町で』(作・演出 唐十郎)

 


    

あれはいつのことだろか 二つの風を頬に受け 歩いていったこんな道
コタンの崖と人は言い 誰も立てぬと風も言う
がふと見上げるおいらの目には きみのルージュのその香ばかりが 
逆巻く風になびいてた そこはドタンバ 夢のきっさき

 

唐組『鉛の兵隊』(作・演出 唐十郎)

 


 

「こんな風に語りかけ、ふと思ってしまうのは、もう君は眠っていない、起きてぼくの話を聞いてる。ただ辺りのなじまない気配にとまどって、ささくれた神経に困ってる。そんな風にも見えてくる」
「起きてるよ」

 

唐組『眠りオルゴール』(作・演出 唐十郎)

 


  


「胸を刺されて生き返ったあたしだ。六号室の窓から飛び降りて町を駆けるあたしさ。病院の金も払わずに尼に紛れ込むあたしだよ。織部、気違いか正気かわからない織部。あたしたちはおまえの話した蠟なんだよ。形を変えて軒をかいくぐる不滅の蠟なんだ!」

「蠟だったらいいですねえ」

「(すくって)これは血じゃない。零れる蠟なんだ。織部、おまえの蠟が零れてく。織部、正気かおテンテンかわからない織部。あんたは姿を変えるんだ。かき抱いたあたしのために姿を変えるんだ」

どっどど どどうど どどうど どどう 

ふるさと捨てて巷に住めば あの子も恋し この子も恋し あの子の胸に この子の胸に

どっどど どどうど どどうど どどう 

ああまいリンゴに 青リンゴ あまいくゎりんに 青くゎりん

柘榴も胡桃も吹き飛ばし 胸に結んだ北風日記

 

『唐版・風の又三郎』(作 唐十郎)

 


    

「昭和58年4月28日、阿佐ヶ谷河北病院に昏睡状態で担ぎ込まれる。つっかけていたサンダルはベッドの脚に揃えられたが死者を離れて、ある日、忽然と姿を消した。それが、あれが寺山修司のサンダルだ!」

思い出した!思い出したあ!これです。(と、リンゴを掴む)このリンゴが、帰る時、この幸せと不幸せの路上を、ある日、リンゴが、こうして戻る時!あの目を治して、あのジャガーの眼を治して、きっと帰ると言ったんだ!倒れて来た梁、崩れるレンガの中で、三度生きるジャガーの眼の持ち主が、あたしにそう告げたんだ!そこにいるんだね、その路地にいるんだね、ジャガーの眼!」

 

唐組『ジャガーの眼』(作・演出 唐十郎)

 


    

「できます。踊ります。この滝の白糸太夫は!今、あの壁に描かれた“復しゅう”の血管符号に学んで白糸太夫の繰り出す銀の雫は赤い滝となるでしょう。万事はこの一事から!それでは皆さま、手首の蛇口を外しましょう!」

 

『唐版・滝の白糸』(作 唐十郎/演出 蜷川幸雄)

 



兄さん、ぼくは時々考えるんです。どうしてウンコってのは、臭いんでしょうね。ぼくはね、こんな風に考えているんです。これは、ウンコにとっての最後のあがきなんではないだろうかって。かつては、様々に調理された美味なる食物であったウンコが、最後に力を振り絞り、“忘れないでー、忘れないでー”と、鼻につく匂いを必死に放出してさせているような、そんな気がしているんです」

 

宇宙堂『花粉の夜に眠る戀〜オールドリフレイン〜』(作・演出 渡辺えり子)

 


 

「私は、お前の父だ。お前を作った者だ。お前は私に育てられ、言葉を覚えた」
「はい、お父様。あなたは私を膝に乗せ、可愛いと言う言葉を教えながら、裏切り者の首を刎ねろと仰言いました。私を眠らせ、楽しい夢をごらん、という言葉を教えながら、あいつの領土を奪え、と、仰言いました。私は良い言葉と悪い言葉を同時に覚えたのです。そうして今、私は、あなたに、言葉を贈りましょう。愚かで独りぼっちの老人を、生かすことも殺すことも、それが愉しい遊びだったら、殺すことの方を選んだからと言って、どうしてそれが罪悪なの
?」

あなたの手……、あなたの指。私の妹を殺した手と指。どんな気がした?」
「彼女の顎は細かった。柔らかかった。呆気ない程に脆かった。細く、柔らかく、脆く、そして、」
「そして?」
「肉、だった。殺す私の手の肉と殺される彼女の顎の肉。肉と肉が生と死を分けた」

「私は体の渇きを癒しただけ。心は渇いていないわ。私の心は父殺しの欲望でいっぱい。左の拳に裏切りを隠し、右の手で私を抱いてきた、お前。お前と一緒に父を殺す?いいえ、私の父殺しは私だけのものよ。私のためだけ。そして私は、私自身の王になる

 

『リア』(作 岸田理生)

 


 

「十六、です」

「嘘、だったねえ。おまえは、十七だった。嘘ついて生きのびて、それは何のためだったんだい、お七?」

「もう一度、会って殺したくて。もう一度、殺しかえして火の中で思いを遂げたくて」

「それだけの甲斐のない男相手にかい?」

「どこかにいるんです、あたしの吉さんが。十日一夜たてば、八億四千の想いがとりついて、その想いにこづきまわされ、半殺しの蛇のよう。だったら蛇の成仏がしたい」

 

演劇実験室紅王国『火學お七』(作 岸田理生/演出 野中友博)

 


 

「探していたのです。その、たったひとつの顔を」
「子となるためにか?」
「はい。うしろの正面に、あなたを背負いたかったのです」
「なぜ?」
「目隠しされて犯されたから」
「一つの時代が終わり、また次の時代になっても、その男は同じ顔をして、目隠しされた少女を犯しつづける」
「わたしから流れた一滴の血の表面に一つの貌がうつっている。目も鼻もなく、のっぺらぼうの顔だ」
「一つの貌の下には、百の顔がひそんでいる。夜毎、仮面をつけかえて、一期は夢よ、醒めて狂え。そうだ。狂ってみせたのさ。正気の証しにな。赤い鳥の狂気、米の狂気、すべて嘘だ。嘘の花火が空に咲く」

 

榴華殿『捨子物語』(作 岸田理生/演出 川松理有)

 



「丑の年丑の月丑の日の丑の時に、丑童子、斑の御神……その丑待ちの鏡には、何が映ったんです?」

「……何も……」

「何も?」

「前世から定まった縁の人の姿が見えると信じて、でも、私の鏡には誰も映らなかったんです。在ったのは、唯、果てしのない虚空。闇。……どの位、たったのでしょうか……。気付くと私は人の世を降りていました」

「不義の恋と、定まっていたんです。そうに違いない」

 

『草迷宮』(作 岸田理生/演出 蜷川幸雄)

 


 

「さあ、行きましょう。顔を失くして、名前を失くし、忘れられるために出て行くのです」

 

『身毒丸』(作 岸田理生/演出 蜷川幸雄)

 


 

人―それは、空を飛ぶ為に四本の足から二本の足で立ち上がった動物だ。四ツ足の動物が、空へと助走していく途中の姿だ」

 

『白夜の女騎士』(作 野田秀樹/演出 蜷川幸雄)

 


 

さよならのあいさつをして、それから殺してくださるものよ。あたしも、さよならのあいさつをして、胸を突き刺していただいたのに」
「オレもせめて、おわびの一言でも叫んでからと思ったけれど、なにか、もう、あの、ヒメを見ると、その、あの……」
「いいの。好きなものは、呪うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前の大きなミロクがダメだったのも、そのせいだし、お前のバケモノが、すばらしかったのも、そのためなのよ。ねえもしも、また新しく、なにかをつくろうと思うのなら、いつも、落ちてきそうな広く青い空をつるして、いま私を殺したように、耳男、立派な仕事をして……」

 

『贋作・桜の森の満開の下』(作・演出 野田秀樹)

 


 

初めて会ったときこう言った。”あんたは鬼よ。人を食うから鬼よ”……間違ってたよ。鬼が人を食うんじゃない、人間が鬼を食うのよ。人間が生きるために。腕を差し出しながら、いつかあなたが言った。”食え、そして生きろ”……あたし食ったよ。そして生きたよ」

 

『RED DEMON』(作・演出 野田秀樹)

 


 

私は、このリングの下に「力」を語る為に棲みついたのじゃない。「無力」という力を語るために棲みついているの。人はいつも、取り返しのつかない「力」を使った後で「無力」という力に気づく」

 

野田地図『ロープ』(作・演出 野田秀樹)

 



「私はね、自分の罪がわからないの。絶対に!一度も!今ほど強く、自分が正しいと思うことはないわ!

 

野田地図『贋作・罪と罰』(作・演出 野田秀樹)

 



わたしを敵、敵という。それが私にはわからない。私はあなたの敵か!?え!?私は勝負はいやだと言ってるのだ。その私を殺そうというのは、敵討ちじゃない人殺しだ!あなた方は人殺しをしようというのだあ!」

生きて生きて、まあどう生きたかはともかくも、それでも生きた緑の葉っぱが、枯れて真っ赤な紅葉に変わり、あの樹の上から、このどうということのない地面までの、その僅かな旅路を、潔くもなく散っていく、まだまだ生きてえ、死にたくねえ、生きてえ、生きてえ、散りたくねえ、と思って散った紅葉の方がどれだけ多くござんしょ」

 

『野田版 研辰の討たれ』(脚本・演出 野田秀樹)

 



「いい、自分の敬う人が殺される。その殺した奴に復讐するのは、敬いの心があるからだ。愛された人が殺される。それに復讐することは、愛する心があるからだ。復讐心にはすべてが含まれている。敬いも愛も親切も献身も自由でさえも、すべての美徳が復讐心に繋がる。復讐こそ神が作った最高の美徳だ。だから、復讐をしたいと思ったら、ためらいなく復讐しろ。愛する者がサリンで殺されたのなら、サリンで殺し返せ!さもなければ、その愛は報われない。さもなければ!さもなければ!さもなければ!さもなければ!」

 

野田地図『オイル』(作・演出 野田秀樹)

 


 

「……ああ、そうか。俺は自分の正体に気がついた。俺はただの石だ。石が人間に愛されるなんて思った俺がバカなのだ。これは石の夢だ。河原にころがっている石が、人間になろうと天に向かって積み上げられた石の見た夢だ。……それから石は、絶対に開けるなとあなたに言われた小箱を開けた。そこには何も入っていなかった。俺はそれが、孤独という毒だと知った。石はその毒をのみほした」

 

野田地図『ローリング・ストーン』(作・演出 野田秀樹)

 


  

「いえ、人の心を操るのに走り回る必要などありゃしません。口先ひとつで足りるものです。恋する者のコトバを食い意地のはった人間のコトバに変えると、とたんに恋もさめちまう。“あなたが好き”と言わせずに“あなたを腹一杯食らいたい”ってね。どんなにか恋が、メシを食うくらいあさましいことか、バレちまう。……おや、お休みですか。人は人に恋してるのじゃない。星だの、月だの、太陽だの、ただの石ころで着飾ったコトバに恋してるだけなのさ」

 

『野田版・真夏の夜の夢』(作・演出 野田秀樹)

 


  

「そのとき、六角形の世界の果ての六つ目の角に、一つの化け物が生まれた」

「謎が化けていたスフィンクスのはて」

「欲望が化けていたユニコーンのはて」

「誘惑が化けていたマーメイドのはて」

「秘密が化けていたハーピーのはて」

「後悔が化けていたガブリエルのはて」

「さよなら」

「さよなら」

「別れていく双子が化けていたのは、孤独のはて」

 

『半神』(作・演出 野田秀樹)

 


   

「今ボク達は現在という名の砂浜に立っているんです」
「え?」
「ボクたちはそしてその浜辺で海を見つめている。海は宇宙の全体です。そこからは時間という名の波がつねに押し寄せてきます。波はボクたちに触れ、そして、宇宙に帰っていく。しかしその時、その波の中には、確かにボクたちに触れたという記憶が含まれている。そして波は、宇宙全体と交ざる。だから次にくる波はただの波じゃない。たとえ僕らがその時死んでいたとしても、かつて僕らが確かに存在したことを覚えている波なんだ」
「アレンジして、わかりやすくなってる」
「だから、マリエさん。あなたは宇宙に対して無力な存在では決してない。あなたは、旦那もユキヲ君も、すべてを失ったと思っている。しかし、それは違う。失ったんじゃない。それらは宇宙に交ざったんだ。あなたは孤独じゃない。あなたが今浴びている、時間は、彼らの記憶が少しずつ交じった、あなたのことを愛している時間なんだ!」

「……焼き場では泣くんだ!焼き場では、絶対泣いてやる!……集中!」

「成仏できない魂は、一度過去を旅する。自分がどうやって死にいたったか、自分の死がいったい何なのか、完全に理解するためだ。僕はドライブイン『カリフォルニア』の歴史を、こうしてたどってきた。そして僕の旅は、今終わろうとしている。この言葉を聞いて、僕は成仏することに決めたんだ」

「……焼き場では泣く!……でも、どうしてもだめだったら。目薬を使う……だめかなあ……」

 

『ドライブインカリフォルニア』(作・演出 松尾スズキ)

 


 

「穴を掘ってるのか……。掘れ、掘れ。もっと深く掘ってくれ。この穴は、俺の夢だ。家も国も捨てた俺の夢が、そんなに浅いわけがない。なあ、なんか見えるか。見えたら、教えてくれよ。しかし、江戸ってところは、俺と相性がいい。国じゃ基地外扱いされた俺が、こうして、なんとか生きてる。だから、この町で、俺は書きてえんだ。書きたくてしょうがないんだけどよ、じゃ、何が書きてえのかっていうと、おもしれえことに、書きたいことが何もねえんだ。おもしれえこと思いついてもよ、世のなかのほうが先におもしろくなっちまうんだ。でもよ、空っぽのはずはねえじゃねえか。掘れ。深く掘れ。なんかあるだろう!おーーーーい!」

「いはあ、こりゃ、ありがたい。やあ。小屋はできた、役者はそろった。だのに、おいらあ、からっぽだあ……からっぽだあ!からっぽだあ!」

「どんな芝居を観てるんだろうね」

「しっ。もうしばらくだけ、ほんのちょっと、この人の夢の住人になってあげてください。……すぐ終わりますから。……そっと、そっと。ね?……お願いしますよ」

 

『ニンゲン御破産』(作・演出 松尾スズキ)

 



「誰かを騙そうと思ったらねルーファス、嘘ばっかり言ってたんじゃ駄目。まず相手に自分を信頼させるところから始めるの。嘘ばっかりじゃ信憑性が感じられないでしょ。わかる信憑性、本当っぽさのこと、ね、本当っぽさ。いくつもの細かぁい本当の中にさりげなぁく嘘を混ぜるのよ。しかもここがむずかしいところなんだけど、適確なタイミングでね。信じさせて信じさせて、で裏切るの。ここぞというところでね。状況に応じて臨機応変に、裏切るの。わかる?臨機応変て」

 

『カメレオンズ・リップ』(作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ)

 


 

「もはや、戦後ではない。……戦前だ」

 

『東京のSF』(作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ)

 


 

撃てばよかった……いつもこうなのよ……銃を抜くのは誰よりも早いのよ……自信があるの……ただ、抜いてから撃とうかどうしようか10分も20分も考えちゃうのよ……ね?……」

 

ナイロン100℃『すべての犬は天国へ行く』(作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ)

 


 

「三年間、自分を人殺しだと思ってびくびくしてた……」

「だからお願いだから許して……」

「駄目よ!忘れないように頑張ってきたんだから!怒りは時とともに薄れてしまうから、毎日何度も思い返して!」

「わかる?一度始まっちゃえば、もうどうしようもないの。いったん何かが起きてしまえば、それは永久に起こり続けるの。二度と変えることはできない。それは永久にそうであるしかないの」

 

ナイロン100℃『フローズン・ビーチ』(作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ)

 



「海舟、帰って我が弟、帝に伝えよ。国家百年の大計を成すものは、人の心の誠を知れと、人の心の憐れを知れと。弟にきっと伝えよ、女、恋に狂わば歴史を覆すと!」

ええか総司、よう覚えときや。国とは、女のことぜよ。日本とは、おまんの美しさのことぜよ。明日とは、男と女が見つめ合う、熱い眼差しのことぜよ

 

『幕末純情伝』(作 つかこうへい/演出 杉田成道)

 



「もうお別れなんだね。もう俺は、お前に愛されることに怯えなくてもいいんだね。もう俺は、お前をいとおしく思う気持ちに押されなくてもいいんだね。今まで俺は、お前のために、慎ましく、控えめに、誰からも後ろ指差されることのないように、化粧一つしたことはなかったけれども。もう俺はひとりで生きていかなくちゃいけないのだから。爪にマニキュアを塗って、唇にルージュを引いて、まぶたに長い付けまつげをつけて、綺麗なドレスを着て町を歩くんだ。もしかしたら、そんな俺に優しい言葉をかけてくれる男がいるかもしれない。そんなときは、もうかけがえのないお前を失い、ひとりで生きていかなくちゃいけないのだから。俺はそいつの胸に思いっきり飛び込んでいこうと思うんだ。

でも、これだけは覚えておいて欲しい。たとえどんなに寂しさに苛まれようとも。街角で客を引き、誰彼なく尻を突き出していようとも!俺はお前を愛し暮らした日々を、誇りに思っているということを!そしてあの和歌山の抜けるような青空を!とっと出て行きやがれ、この薄情もんがあああ!」

 

『ロマンス〜いつも心に太陽を・改題〜』(作・演出 つかこうへい)

 


 

「我、孤立を恐れず、孤高に陥らず、その孤独を友とせん。警視総監殿、いま義理と人情は、女がやっております。イエィ!!」

 

『売春捜査官・熱海殺人事件』(作・演出 つかこうへい)

 


 

「君は……」

「捕まったから死ぬのではないわ」

「わかっている」

「あなたに何もかも聞かれたから……」

「真実を聴くのは一等辛かった。僕はそういうことに馴れていない」

「男の中で一等卑劣なあなた、これ以上みごとに女の心を踏みにじることはできないわ」

「すまなかった。……しかし仕方がない。あんたは女賊で、僕は探偵だ」

「でも心の世界では、あなたが泥棒で、私が探偵だったわ。あなたはとっくに盗んでいた。あなたはとっくに盗んでいた。私はあなたの心を探したわ。探して探して探しぬいたわ。でも今やっとつかまえてみれば、冷たい石ころのようなもだとわかったの」

「僕にはわかったよ。君の心は本物の宝石、本物のダイヤだと」

「あなたのずるい盗み聞きで、それがわかったのね。でもそれを知られたら、私はおしまいだわ」

「しかし僕も……」

「言わないで。あなたの本物の心を見ないで死にたいから。……でも嬉しいわ」

「何が……」

「あなたが生きていて」

「忘れて下さって結構です。あなたの御一家はますます栄え、次から次へと、贋物の宝石を売り買いして、この世の春を謳歌するでしょう。それで結構です。そのために私は働いたのです」

「え?贋物の宝石だと?」

「ええ、本物の宝石は、(と、黒蜥蜴の屍を見下ろして)もう死んでしまったからです」

 

『黒蜥蜴』(原作 江戸川乱歩/脚本 三島由紀夫)

 


 

「お兄様……。(兄弟は立ったまま永いこと睨み合う)いいのよ。お兄様に罰をあげる。御褒美にと思っていたものを、罰にあげるわ。(兄の胸に頬をあてて)まだ、こんなに動悸を打っているのね。(顔を見上げて)お顔にもひどい汗。可哀想に。(手をとって)いらっしゃい。(勇、一寸拒む身ぶりをなす)怖いの?何もかも怖いのね。人間という人間が怖いのね。敵も味方も。(笑う)私、許してあげないわ。……いらっしゃい、お兄様」

 

『熱帯樹』(作 三島由紀夫)

 


 

いつかあなた来るでしょう ラストナイト だから声かけてあげましょね
ウェルカム上海 ウェルカム上海 いつか見たよな 忘れた上海
愛は消え 地は凍り 踊る心も過ぎたとき ああ 夢が遠すぎる
苦い夜明けの 朝もやのように 幻のウィ・ムッシュー 懐かしき上海

 

オンシアター自由劇場『上海バンスキング』(作 斎藤燐/演出 串田和美)

 


 

あたしここにいます!あたしここにいます!あたしここで、死んでます!」

 

デス電所『夕景殺伐メロウ』(作・演出 竹内祐)

 


 

「もうすぐいいモノが手に入りそうなんだ。君のお姉さんが、自分の幸せだけを考えてくれたおかげだよ」

「?……あ、わかった。体温のないあたしだ」

「正解」
「(笑う)ヘンタイ」
「(笑う)そ、ヘンタイ」

 

天然ロボット『ホルマリンの少女』(原作 J.P.ギドー/脚本・演出 湯澤幸一郎)

 


 

「七夕ってたしか、一年に一回けん牛が織姫を犯して牛の子供を孕ませる因果話だったよねえ…」

「なんか違う…

 

『劇終/OSHIMAI くだんの件』(作・演出 天野天街)

 



「なんか…またヘンなトコ…きちまったな…」

「”オワリ”っぺー感じだな…」

「なんだァ…イセェつくメェに…もうアガリかよ」
「フリダシだあ」
「え?」
「おわったら、またすぐにはじまんのよ」
「キタさん…」
「オイラたちゃ…ただ…あっちからきて…こっちにいくだけさ…」
「キタさん…」
「なんだよ」
「カッコイイ」

 

『真夜中の弥次さん喜多さん』(原作 しりあがり寿/脚本 天野天街)

 


 

「逆にらめっこ。先に泣いた方が負けなの」

 

青年団『東京ノート』(作・演出 平田オリザ)

 



「僕たちはどんなに目を見開いても世界を半分しか見ることができない。しかし見えない半分にも関わっていかない限り、革命などは実現しない。中国革命は阿片戦争より百年遅れた!だが、世界の滅亡はまた僕より百年遅れようとしている。さあ、灰と言ってみろ!迷路と言ってみろ!縄と言ってみろ!歴史と言ってみろ!抜け抜けと愛と言えるか!何が劇か!見世物など何もない!」

 

演劇実験室万有引力『百年迷宮ラビュリントス』(原作 寺山修司/構成・演出 J.A.シーザー)

 


 

「同じがものが姿を変えて、手で招く。とらわれた無垢の人形が流す血は、東シナ海よりも真っ暗!現れるたびにその血を吸う青龍刀は、フーマンチューの葬儀の花!一輪抜けば、百年さかのぼる!」

「そうだ、怪人フーマンチューとは、一人の怪人ではなく、白人たちに占領された百万のシナ人の作り出した、復讐のお化け、悪意の人形だったのかもしれない!」

 

演劇実験室万有引力『怪人フーマンチュー』(原作 サックス・ローマー/演出 J.A.シーザー)

 


 

「人に似ている喜びよりも、人に似ている虚しさを、私は知っている」

 

演劇実験室万有引力『ローラ?』(作・演出 根本豊)

 


 

でも私たちの神は、私たちに何も言わずに人間になってしまった。神はたった一人で全ての人間の罪を贖うことが出来るんだそうです。もしそんな神の罪を人間が贖わなければならないとしたら……一体どれだけの犠牲がいるんでしょうね

 

演劇実験室紅王国『聖なる侵入』(作・演出 野中友博)

 


 

「あたしだったらなんでしょうね。たんぽぽ、ひなぎく、紫山百合……あ、忘れてたあ……梅の花かあ!」

私はあきらめという名の化け物です。もう見たいものなど、この世のどこにも、ありゃしないのです」

 

黒色綺譚カナリア派『目だらめ』(作・演出 赤澤ムック)

 


 

「(犬の肉を咀嚼しながら)あたしをもっと強くしてちょうだい。男の心変わりを許さない、強い女にしてちょうだい。あの人……お前たちの代わりに、犬になるんだってさ

 

黒色綺譚カナリア派『犬華』(作・演出 赤澤ムック)

 


 

「美しい話ですこと」

「あ、その言葉。先生も言ってらしたわ。“美しい話ですこと”って」

「そうですか。あの人の口癖でしたからね……他人を馬鹿にするときの」

 

黒色綺譚カナリア派『月光蟲』(作・演出 赤澤ムック)

 


  

兵士は死ぬ時 夢を見る 遠き空より降りてくる
白い鳥なら ワルキューレ その時 兵士は蘇える
若き乙女は 身を変えて ゆくは夜空の銀河系

神様!何をぐうたら寝てるの!」

 

月蝕歌劇団『女神ワルキューレ海底行』(作・演出 高取英)

 


 

「私の名はメフィストフェレス。あるいは、いつも常に否定する者……マイナスとでも呼んでください」

 

月蝕歌劇団『ネオ・ファウスト地獄変』(作・演出 高取英)

 



「化け物だって、誰かのために死ねるんだ!」

 

月蝕歌劇団『ステーシー 少女ゾンビ再殺談』(原作 大槻ケンヂ/脚色・演出 高取英)

 


 

「花枝ちゃん。もし私にそういうことがあったらさ、ちゃんと言ってね。私、こういう性格だから、言われないとわかんないと思うし、時が経てば経つほど、傷は深くなっていくものだから」

「こずえ………でも私、もしこずえにそういうことがあっても、きっと言わないと思う。だって、言ったらこずえ、諦めちゃうってことでしょ?私、そんなの嫌だもの。こずえにはいつも突っ走ってて欲しいもの。レースは最後の最後まで、何が起こるかわからないから。だから、諦めちゃだめ。現にさっき、少しだけ追い風が吹いたし」

「花枝ちゃん、でもね……」

「とにかく!私は絶対、あんたに諦めさせたりしないって決めたの!」

 

シベリア少女鉄道『遥か遠く同じ空の下で君に贈る声援』(作・演出 土屋亮一)

 


 

「選べる道は常に二つしかない。時代を裏切るか、時代に裏切られるか」

 

早大劇研『偏差値50から早慶を突破する法』

 


 

「わたし、いつもそうなの。人の前で自分の意見が言えないの。怖いのよ、自分の思っていることをみんなに言ったら、みんなわたしのことどう思うんだろうって。すごく気になって、嫌われるんじゃないかって、独りになっちゃうんじゃないかって。そう思うと、何にも自分の意見が言えなくなる。だから、みんなに合わせて合わせて、独りにならないようにって、自分を守って笑ってる……」

 

兵庫県立朝日高校『女子高生症候群』(『青春舞台’99』より)

 


 

「あなたは英雄なんですよ!英雄らしく生きることが出来ないのなら、せめて英雄らしく死んでください!」

 

企画集団Carbon14『非・劇的生活』

 


 

「(ジングル・ベルのリズムで)角ぉ―生えた トーナカーイ♪トナーカイのー 角が刺さるー♪」

「「…………」」

「腹に刺さるー 喉に刺さるー♪ 耳に刺さるー あ、目に刺さる♪」

「「おい!」」

「刺さる 刺さる 角刺さる♪」

「「おい!」」

「腹に刺さって ケツ刺さる♪」

「「おい!」」

「刺さる 刺さる 角刺さる♪」

「「吉松!」」

 

カクスコ『正月どうすんの?』(作・演出 中村育二)

 


 

「何をしてるのかしら?」

「切り分けているのよ。ケーキみたいに八つに切り分けているのよ。八方美人の練習よ」

 

ベターポーヅ『オトメチック・ルネッサンス』(作・演出 西島明)

 


 

「……思い出しました?姿さん。……思い出しました?」

「忘れちまったあ!」

 

劇団ElectraOVERDRIVE『フォーストロール博士の娘』(作・演出 古田英毅)

 


 

「宝が見つからないのはねえ、あんたがいつまでもママのスカートの中にいるからよ」

「うらあ!(殴る)」

「俺じゃなきゃ死んでたぜ!」

 

劇団ElectraOVERDRIVE『バチスカーフ』(作・演出 古田英毅)

 


 

「何です?その素晴らしい笑顔は」

「俺は娘とセックスできないほど、道徳のある人間だったんだなあ」

 

劇団ポツドール『ウラミマス〜アナタは動物〜』(作・演出 三浦大輔)

 



「あたしは王女だった、だのにおまえはあたしを蔑んだ。あたしは生娘だった、だのにおまえはあたしから生娘の誇りを奪ってしまった。あたしは清浄で無垢だった、だのにおまえはあたしの血を燃え上がらせた……ああ!ああ!なぜあたしを見てくれなかったの、ヨカナーン?ひと目でも見さえすれば、お前とてあたしを愛してくれたであろうに。あたしにはよくわかっている、あたしを愛してくれたであろうことは、そして、愛の神秘は死の神秘よりも大きい。愛のことだけを人は考えておればよい

 

『サロメ』(作 オスカー・ワイルド

 


   

「そのりっぱな方は、どこから見ても天使のように神々しくて、光り輝いていて、私のようにただの人間にすぎない女は、その方の前にひざまずいて、愛を乞うたものだった。あなたは、そう、あなたなど心から尊敬せずに一度もその名を口にするに値しない、いえ、ひざまずかなければその名を耳にするにも値しないわ」
「その名は?」
「まだそれを言う時期ではありません。あなたはそんな素晴らしい方の子供の父親になれる、いまはただその名誉を知るだけで我慢なさい」

「もう一度キスを、わが妹」
「なんのために?」
「おまえの名誉を救い、キスしながら殺すために。死んでくれ、ぼくのそばで、ぼくの手で死ぬのだ。復讐は必ず果たすぞ、名誉が愛を支配するのだ

 

『あわれ彼女は娼婦』(作 ジョン・フォード/演出 蜷川幸雄

 


   

大空に舞い上がるひばり。それはおまえ。戦う少女ジャンヌ。その日から私は生き始めました。馬に乗り、手に剣を持って、それがジャンヌ。それだけがジャンヌ・ダルク

 

『ひばり』(作 ジャン・アヌイ/演出 蜷川幸雄

 


   

1961年8月13日 壁が建てられた、ベルリンの町の真ん中に。
世界は冷戦によって分断され、
ベルリンの壁は最も憎しみのこもったシンボルとなった、その分断の。
罵られ、落書きされ、唾を吐かれる、その壁は永遠にあるものと思っていたら
今はそれもなくなって、もはや自分で自分が誰かもわからない。
レディース&ジェントルメン。
ヘドウィグは、あの壁のように、あなたの前に立って分けている
東と西、隷属と自由、男と女、上と下を。
彼女を壊し、倒すことはできるけれど、でもその前にひとつ
忘れちゃいけないことがある! 聞いて

むかし むかし 違ってた 人の身体は 腕が四本 足が四本 そして顔も二つ 
まるでそれは 二人の人間が くっついた姿 
それはね まだ 愛を知る前の おはなし そう 
The Origin of Love  The Origin of Love

「愛の起源よ」と、ママは言った。

「いくじなし!ちゃんと正面から私を愛してよ!愛してよ!愛してよ!愛してよ!」

 

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(作 ジョン・キャメロン・ミッチェル/訳・演出 青井陽治

 


   

さあ 外へ出かけなさい すばらしい天気 春があふれている 花はまだ咲かない 蝶を待つのは空腹の死

 

『死の教室』(作 タデウシュ・カントール)

 



「三日あれば三人は殺せる」

 

『メディア』(作 エウリピデス)

 


 

「ユダヤ人には目がないか?手がないのか?内臓や体つき、感覚、感情、情熱、食べ物が違うか?刃物で傷つかないか?同じ病気にかからず、同じ薬で治らないか?同じ季節の暑さ寒さがキリスト教徒と違うか?針で刺しても血が出ないか?くすぐっても笑わないか?毒を盛っても死なないか?迫害されても復讐しないのか?それだってあんたたちと同じだ。ユダヤ人に迫害されたら、どうしたくなる?復讐か?」

 

『ヴェニスの商人』(作 ウィリアム・シェークスピア)

 


 

「こんな平和などクソおもしろくもない。太陽に姿をかざし、自分の影のいびつさを歌い上げるだけ。微笑みを浮かべ、俺は人を殺す。偽りの涙で頬を濡らし、表情も自在にあやつれる。愛されないなら、悪役に徹するまでだ。そしてこの楽しく空しい日々を憎むんだ

その唇に軽蔑の言葉は似合わない。口づけこそがふさわしい。復讐の気持ちが心に宿るなら、その手で殺してくれ。この通りだ。確かにご主人は殺したが、すべてはその美しさのせい。剣を取って殺すがいい」
「私の手は汚したくない」
「なら“自害しろ”と」
「とうに命じたわ」
「もう一度命令を」

馬をくれ!代わりにわが王国をくれてやる!」

 

『リチャード三世』(作 ウィリアム・シェークスピア)

 


 

「なぜ笑うのです?こんなときに不謹慎です」
「なぜかだと?流す涙はもう一滴も残ってはいないからだ。それに
悲しみは私の敵だ。涙で瞳を曇らせ、何も見えなくする。そうなれば復讐もできぬ。2つの息子の生首が、私に向かって語りかける。憎い敵に復讐するまで、お前には心の安息などないのだと。敵のノドをかき切るまで」

黒はいちばん上等な色だ。どんな色にも染まらん」

 

『タイタス・アンドロニカス』(作 ウィリアム・シェークスピア)

 


 

「名前ってなに?バラと呼んでいる花を別の名前にしてみても美しい香りはそのまま」

 

『ロミオとジュリエット』(作 ウィリアム・シェークスピア)

 


 

「今、来れば、あとには来ない。あとで来なければ、今、来る。まだ来なくとも、いずれ来る。覚悟が肝心だ」

 

『ハムレット』(作 ウィリアム・シェークスピア)

 


 

「……嫌」

 

『テレーズ・ラカン』(作 エミール・ゾラ)

 


 

「ドイツ人には素晴らしい長所が三つある。一つは、国家社会主義党であること。一つは、正直であること。一つは、知的であること。しかし、彼らの欠点はこの三つを同時には持てないことである」

 

「俺に何が出来る?俺はどうってことない、ただの当たり前の役者なのに!」

 

『メフィスト』(原作 クラウス・マン/脚色 アリアーヌ・ムヌシュキン)

 


 

「私、もうすぐ死ぬわ。そして誰も私のことなんて思い出してくれないわ」
「そんなことない。僕が思い出す。僕はお墓まで君に会いに行く。花と、それから、犬を一匹連れて」

                              

『ファンドとリス』(作 フェルナンド・アラバール)

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

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