映画・演劇鑑賞記録2007
本文は随時作成中。
「ソロモン」観劇でテンションが上がったので、
二年以上貯まりに貯まった感想をまとめて書き上げていきたいと思います。
12月31日(月)
さて、あっという間に今年も終わりの日を迎えたので、例年通り面白かった映画と演劇について振り返ったみたいと思う。
映画では、ゲキ×シネ「メタル・マクベス」、「絶対の愛」、「不都合な真実」、「デスプルーフ
in グラインドハウス」、「シッコ」、「クワイエットルームへようこそ」といったところ、演劇では、「朧の森に棲む鬼」、「美藝公」、テラヤマ博・演劇篇より「書を捨てよ、町へ出よう、とか」、水族館劇場「花綵の島嶼へ」、少年王者館「シフォン」、APB-Tokyo「青ひげ公の城」、月食歌劇団[寺山修司ー過激なる失踪ー」、劇団、本谷有希子「偏路」といったところです。
12月22日(土)
大駱駝艦・天賦典式『カミノコクウ』(監督 ダイ・シージエ)★★★
12月15日(土)
『林静一展 1967-2007』(会場 八王子夢美術館)☆☆☆☆
演劇学ゼミ『青ひげ公の城』(原作 寺山修司/演出 黒田可菜/会場 東京学芸大学構内芸術館第3展示室)☆☆
入口から客席までの道程は黒いカーテンで仕切られた簡単な迷路のようになっていて、道を間違うと行き止まりに不思議なオブジェが置いてあったりする。こういった劇が始まる前から空間の異化を始める舞台設定には、芸大生らしい趣向が凝らされていて好感がもてた。劇そのものは、メタフィクショナルな内容に対して、俳優の演技力が追い付いてない印象だった。
壁ノ花団『悪霊』(作・演出 水沼健/会場 こまばアゴラ劇場)☆☆☆☆
12月14日(金)
パラダイス一座『続 オールド・バンチ』(脚本 佃典彦/演出 流山児祥/美術 妹尾河童/会場 下北沢ザ・スズナリ)☆☆☆☆
劇団、本谷有希子『偏路』(作・演出 本谷有希子/会場 紀伊國屋ホール)☆☆☆☆☆
12月2日(日)
東松照明[Tokyo曼陀羅]展(会場 東京都写真美術館・2階展示室)☆☆
昭和 写真の1945〜1989」展 【第4部】オイルショックからバブルへ(会場 東京都写真美術館・3階展示室)☆☆
『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』(監督 大島新)☆☆
11月22日(木)
『クワイエットルームにようこそ』(監督 松尾スズキ)★★★★★
11月21日(水)
劇団桟敷童子『しゃんしゃん影法師』(作 サジキドウジ/演出 東憲司/会場 吉祥寺シアター)☆☆☆
1970‐71 ダイニチ映配ノスタルジア『可愛い悪魔 いいものあげる』(監督 井上芳夫)★★★
劇団APB-Tokyo『さらば、映画よ<スタア篇>』(作 寺山修司/演出 高野美由紀+East 10th
Street/会場 ザムザ阿佐ヶ谷)☆☆☆
書籍化されていない、寺山修司の幻の傑作戯曲(姉妹作品「さらば、映画よ<ファン篇>」については「寺山修司の戯曲」に収録)。2002年版に比べて、他の寺山作品のシーンがいくつもデコレーションされ、役者の演技も過剰に狂騒的で、少しごちゃごちゃした印象があった。2002年版の方がすっきりして私の好みである。終盤の高野美由紀さんの独り語りには、2回目ながらやっぱり感動。
11月11日(日)
『大徳川展』(会場 東京国立博物館)☆☆☆☆☆
演劇実験室万有引力『夢のコンタジオン劇 螺旋階段』(テキスト 寺山修司+アントナン・アルトー/構成・演出 J.A.シーザー/会場 笹塚ファクトリー)☆☆☆
内容は寺山修司の『疫病流行記』にアントナン・アルトーの演劇論をミックスさせたような内容でした。
11月10日(土)
『演劇人 坪内逍遥』展(会場 早稲田大学演劇博物館)☆☆☆
『疾走するガジラ』展(会場 早稲田大学演劇博物館)
『早稲田と映画』展(会場 早稲田大学小野梓記念館1階 ワセダギャラリー)
スクウェア『つるつる』(作 森澤匡晴/演出 上田一軒/会場 池袋シアターグリーン)☆☆☆
『村田兼一写真集刊行記念展 PRINCESS OF DESIRE』(会場 ギャラリーミリュウ)☆☆☆
『TCHINAI弐拾壱世紀の絵師 智内兄介展』(会場 ギャルリーためなが)
11月6日(火)
ゲキ×シネ『朧の森に棲む鬼』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり/会場 新宿バルト9)☆☆☆☆☆
『中島みゆき コンサートツアー2007』(会場 東京国際フォーラムホールA)☆☆☆☆☆
「同じ時代に生れてくれて、ありがとう」の言葉に感動しました。
10月8日(月)
『ティンゲル・グリム〜眠れぬ森のおどけ譚〜』(演出・構成 串田和美 美術・衣装 宇野亜喜良/会場 にしすがも創造舎)☆☆☆
cube presents『犯さん哉』(作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ/会場 パルコ劇場)☆☆☆
9月16日(日)
『ブラック・スネーク・モーン』(監督 クレイグ・ブリュワー)★★★★
流山児事務所『オッペケペ』(作 福田善之/演出 流山児祥/会場 森下ベニサン・ピット)☆☆☆
9月13日(木)
演劇実験室カフェシアター『疫病流行記』(作 寺山修司/演出 中沢清/会場 ネオンホール)☆☆☆☆
以前から気になっていた演劇実験室カフェシアターをようやく観に行くことができました。元天井桟敷の中沢清氏が主宰し、長野で寺山ワールドを描き続けている劇団。会場のネオンホールは、長野駅から歩いて15分ほど。善光寺の門前通りを、少し脇道に入ったところにあります。小さな2階建ての建物の階段を上がったところにある、劇場兼カフェになっている空間。狭くて薄暗くて雑然としているところが素晴らしい(笑)。小劇場はやはりこうでなくては。寺山演劇の通例で、開演前から俳優は舞台を徘徊している。やがて開演時間になるとともに完全暗転となり、釘を打つ音と様々な病気の名前を叫ぶ声が響く。
物語の舞台はある南洋の島。何十年も昔、陸軍野戦病院があった場所は、今はキャバレーになっている。そこに「私はあなたの病気です」と名乗る謎の少女が現れる。そして「陸軍野戦病院は、実は捕虜を使った疫病の人体実験場だった」という過去の記憶が蘇ると共に、島に疫病が蔓延していく……。
本物の天井桟敷を体験した人が演出しているだけあって、きっちりとアングラ世界を作りあげていたのが見事。まさか長野のような地方都市(失礼)で、こんなものが見れるとは思いませんでした。カーテンコールで「劇団をやって30年になる」とおっしゃっていたので、天井桟敷を退団した直後くらいからずっと長野で活動を続けてきた計算になる。すごいとしか言いようがありません。
9月8日(土)
劇団☆新感線『犬顔家の一族の陰謀』(作・演出 いのうえひでのり/会場 サンシャイン劇場)☆☆☆
8月26日(日)
月蝕歌劇団『寺山修司‐過激なる疾走‐』(脚本・演出 高取英/監修・音楽 J.A.シーザー/会場 紀伊國屋ホール)☆☆☆☆☆
「寺山修司の生涯を舞台化」というコンセプトを聞いたときは一体どんな作品に仕上がるだろうと思っていたのですが、「寺山修司の生涯を基にしたフィクション」という前書きを置いた上で、いつもの高取英ワールドに仕上げてきました。寺山作品からは、映画「田園に死す」「トマトケチャップ皇帝」、演劇「盲人書簡」「毛皮のマリー」「邪宗門」などのシーンをコラージュし、登場人物としては、唐十郎(と思われる人)、中井英夫(と思われる人)、三輪明宏(と思われる人)なんか次々と出てきて、寺山修司の作品とその生涯を知っていればいるほど、楽しめる内容になっています。特に三島由紀夫(と思われる人)は、もう一人の主人公と言っていいほど、大きく扱われています。作品のクライマックスの展開は、同じ高取氏の作品「ネオ・ファウスト地獄篇」と似ています。平良千春(旧名:長崎萌)は「ネオ・ファウスト地獄篇」とほぼ同じ小悪魔メフィスト役で出演しており、青年寺山修司に成功を約束する一方で、病魔としてその体を蝕み、死の際はその美しい魂を譲り受けます。最後に思ったのは、歌の力は偉大だということ。これはもちろん、寺山修司の作詞や、田中未知・J.A.シーザーらの作曲が素晴らしいということなのですが、劇中で「戦争は知らない」「カム・ダウン・モーゼ」などの曲が歌唱されたシーンにはちょっと泣きそうになってしまいました。
少年王者館『シフォン』(作 虎馬鯨/演出 天野天街/会場 下北沢ザ・スズナリ)☆☆☆☆☆
8月19日(日)
トリのマーク『5時には家に帰ろう』(構成・演出 山中正哉/会場 下北沢ザ・スズナリ)☆☆☆
芝居流通センター・デス電所『輪廻は斬りつける(再)』(作・演出 竹内祐/会場 駅前劇場)☆☆☆
8月5日(日)
『トヨタ コレオグラフィー アワード 東京公演』(会場 シアタートラム)☆☆☆☆
8月4日(土)
大駱駝艦・天賦典式 白馬野外公演第六弾『語り草』(会場 白馬村松川河川敷公園特設ステージ)☆☆☆☆
7月14日(土)
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(監督 吉田大八/原作 本谷有希子)★★★★
デリシャス・ウィートス 見世物小屋興行(会場 靖国神社・みたま祭)☆☆☆☆
野戦之月海筆子『変幻痂殻城』(作・演出 桜井大造/会場 東京八幡山高井戸陸橋そば
特設テント)☆☆☆
7月13日(金)
野田地図番外公演『THE BEE ロンドンバージョン』(作・演出 野田秀樹/会場 シアタートラム)☆☆☆
Zombie Lolita 6th Anniversary『最速の美術団』(会場 新宿ヘッドパワー)☆☆☆☆☆
6月24日(日)
コクーン歌舞伎『三人吉三』(作 河竹黙阿弥/演出 串田和美/会場 シアターコクーン)☆☆☆☆
『ヘンリーダーガー 少女たちの戦いの物語―夢の楽園』(会場 原美術館)☆☆☆☆
ポかリン記憶舎『息・秘そめて』(作・演出 明神慈/会場 こまばアゴラ劇場)☆☆☆☆
6月23日(土)
『ウミヒコヤマヒコマイヒコ』(監督 油谷勝海/出演 田中泯)★★★★
劇団、本谷有希子『ファイナルファンタジックスーパーノーフラット』(作・演出 本谷有希子/会場 吉祥寺シアター)☆☆☆
劇団唐ゼミ『鐡假面』(作・監修 唐十郎/演出 中野敦之/会場 川崎市市民ミュージアム内広場)☆☆☆☆
6月9日(土)
『赤い文化住宅の初子』(監督 タナダユキ/原作 松田洋子)★★★
劇団APB-Tokyo『青ひげ公の城』(作 寺山修司/演出 高野美由紀/会場 ザムザ阿佐ヶ谷)☆☆☆☆☆
素晴らしい出来でした。2003年パルコ劇場上演の「青ひげ公の城」、及びその延長戦にあるであろう「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」での三上博史の演技を参考にしたと思われる浅野伸幸さんの演技が素晴らしい。けたたましいオカマそのもので、「青ひげの公の城」がこんなににぎやかで爆笑できる戯曲だとは思いませんでした。第二の妻とコプラが、観客席で客いじりをしつつ、舞台上の第七の妻を「あんたがいるべき場所はそっちじゃなくて、ここ!」と罵倒する様は、ヘドウィグとイツァークのようでした。ほかの出演者の皆さんも、とにかく楽しんで演じられているようで、見ているこちらも楽しかった。
廻天百眼『夢屋』(脚本・演出 石井飛鳥/会場 神楽坂die
pratze)☆☆
6月3日(日)
『アートで候。会田誠 山口晃』展(会場 上野の森美術館)☆☆☆
劇団三年物語『VAMPIRE HUNTER』(作・演出 藤本浩多郎/会場 大塚萬劇場)☆☆☆
METROPOLIS PROJECT Vol.20『時計仕掛けの肖像』(作・構成・演出 じんのひろあき/会場 江古田ストアハウス)☆☆☆
水族館劇場『花綵の島嶼へ』(作・演出 桃山邑/会場 駒込大観音境内特設野外劇場
風の栖)☆☆☆☆☆
5月13日(日)
『終わりなき旅―劇団黒テント39年の足跡』展(会場 早稲田大学演劇博物館)☆☆☆
『幻想と異端の図書室―文学とアートのコラボレーション―』(会場 Bunkamuraギャラリー)☆☆☆
ナイロン100℃『犬は鎖につなぐべからず』(作 岸田國士/潤色・構成・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ/会場 青山円形劇場)☆☆☆☆
唐組『行商人ネモ』(作・演出 唐十郎/会場 新宿花園神社)☆☆☆☆
5月12日(土)
ヨーロッパ企画『冬のユリゲラー』(作・演出 上田誠/会場 ザ・スズナリ)☆☆☆☆
『千乃ナイフ展ーイノセントな姫言ー』(会場 スパンアートギャラリー)☆☆☆
『藪原検校』(作 井上ひさし/演出 蜷川幸雄/音楽 宇崎竜童/会場 シアターコクーン)☆☆☆☆
5月6日(日)
テラヤマ博・演劇篇
『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』(作 寺山修司/構成・作曲・演出 佐藤香聲/会場 -IST[イスト]零番館)☆☆☆☆
5月5日(土)
Art Dance SAFARI vol.2【卍】(出演 渡辺理緒、雲母、Karena、Shu
Wun、他/会場 Art Theater dB)☆☆☆☆
テラヤマ博のチケットを購入済みだっため、最後まで観ていられないのはわかっていたのですが、途中まででもいいからどうしても観たくて行きました。
テラヤマ博・演劇篇
『大山デブコの犯罪』(作 寺山修司/演出 岩崎正裕/会場 -IST[イスト]零番館)☆☆☆☆
-ist零番館は、開館当初新宿タイニイアリスの姉妹館として始まっただけあって、劇場の雰囲気もとてもよく似ていました。
ピアノ生演奏に載せて始まる「大山デブコのテーマ」の大合唱。このオープニングを見た瞬間、大阪まで来た甲斐があったと思いました。
テラヤマ博・演劇篇
『書を捨てよ、町へ出よう、とか』(作 寺山修司/構成・演出 ウォーリー木下/会場 -IST[イスト]零番館)☆☆☆☆☆
こんなにも若々しく、明るく、パワーに溢れた寺山劇の上演は観たことがない。ウォーリー木下氏はチラシの紹介文で「寺山修司を知らない」という類のことをおっしゃっていたが、だからこそ過去に上演された寺山作品に縛られず、ここまで自由なすばらしい作品を作れたのだろう。
元々の戯曲は、寺山修司が家出少年少女の書いた詩をコラージュして作った作品。今回の上演では、そこへさらに寺山修司の詩集からいくつかのシーンをコラージュして作られている。そのため全体を統一するような物語はないのだが、強く考えさせられたのは、「書(=本)を捨てよ、町へ出よう」という言葉の意味についてだった。「本を捨てよ」であって、「本を読むな」と言ってはいないのだ。「捨てる」ためには、一度は自分の物にしなければならない。実際、寺山自身はものすごい読書家だった。本というのは、虚しい存在である。それ自体は、ただの紙にすぎない。そこに記された言葉を誰かに読まれることによってのみ、本は初めてその存在価値を持つ。記された言葉が読めなければ何の価値もないし、読めたとしても、読んだ人間が記された言葉に何も感じなければ、やはり何の価値もない。そして読んで深い感動を受けたとしても、読み終えてしまえば、再び読み返されるときまでは、やはりただの紙に過ぎなくなる。重要なのはあくまでもそこに記された言葉であって、印刷された紙の塊ではないのだ。何よりも価値があり、そして何よりも無価値なもの、それが本である。「書を捨てよ、町へ出よう」とは、「まず本を読め。そしてそこから何かを得たなら、その本を捨て、得たことをもとに、町へ出て戦え」ということではないだろうか。
この舞台では、舞台上の無数に打ち捨てられた本が、小道具としてとても面白く使われていた。あるときは、そこに記された物語をめぐって、男と女が書物を奪い合う。あるときは、ページを破って、便所で尻を拭く使われる。ほんの使い道というのは、それぐらい自由であっていい。
4月15日(日)
劇団乞局『媚励』(脚本・演出 下西啓正/会場 こまばアゴラ劇場)☆☆
4月14日(土)
大人の麦茶『外は白い春の雲』(作・演出 塩田泰造/会場 下北沢「劇」小劇場)☆☆
アジアン・クィア・フィルム&ビデオフェスティバル
イン ジャパン2007
『アジアン・ガールズ短編集1』(会場 シネマアートン下北沢)★★★★
演劇キックプロデュース『天国と地獄』(脚本・演出 江本純子/会場 シアターアプル)☆☆☆☆☆
4月1日(日)
『大野一雄 ひとりごとのように』(監督 大津幸四郎)★★
翠『毛皮のマリー』(作 寺山修司/脚色・演出 登り山美穂子/会場 中野・スタジオあくとれ)☆☆☆☆
『毛皮のマリー』の上演を観るのもこれで5回目なので、台詞もほとんど暗記してしまっているのですが、オリジナリティあふれる演出で、最後まで楽しんで観れました。
寺山修司の演出ノートでは男が演じることになっている美少女・紋白役を美しい女優さんが演じているのですが、女性が演じると少し生々しすぎるというか、いやらしすぎる感じがします。美少年・欣也役も女優さんが演じており、戯曲の言葉の上では「男×女」なのだが、演出ノート上では「男×男」(ゲイ)、今回実際に演じる役者さんの肉体上では「女×女」(レズビアン)という二重三重の性倒錯が演じられています。
蜻蛉玉『頂戴』(作・演出 島林愛/会場 こまばアゴラ劇場)☆☆☆
メタリック農家『癖』(脚本・演出 葛木英/会場 中野・劇場MONO)☆☆☆☆
3月26日(月)
『蟲師』(監督 大友克洋/原作 漆原友紀)★★★
3月24日(土)
三月大歌舞伎『義経千本桜/鳥居前』(会場 歌舞伎座)☆☆☆
害獣芝居『邪宗門』(作 寺山修司/演出・構成 浅沼ゆりあ/会場 明治大学和泉校舎第一校舎地下)☆☆☆
会場は、校舎の地下の隅にある、ボイラー室のような一室。大きさは普通の教室くらいで、床に赤い雛壇のような赤い敷物が敷かれ、観客はそこに座って観劇する形。開演前から読経の声がテープから流れ続けていた。開演と同時に読経の音は止んだのだが、この舞台の特徴的なところは上演中BGMの類が一切使われなかったことだ。役者の肉声以外は無音という状態で舞台は進んでいく。そしてそのセリフ回しも、感情を抑えた抑揚のない、ひたすら読経を続けているような演技で進められていく。また、原作の戯曲の内容の順番が入れ替えられたり、同じ個所が繰り返されたりもしていた。つまりこの作品は、役者の喜怒哀楽もなければ、物語として起承転結・序破急もない、始まりもなければ終わりもない。ただひらすら同じようなシーン、同じよう演技、同じような台詞が繰り返される中で、次第に、いったいこれはいつ始まったのか、いつ終わるのか、全てが無限の繰り返しの円環の中にいるようなふしぎな感覚にとらわれていく。まさに僧侶が己を滅して果てしなく読経を続ける声を聞いているかのように。そういう意味では、非常に面白い演出ではあったのだが、その繰り返しの単調さが退屈に感じたのも事実である。赤い糸(布きれ?)があふれ出し舞台が内蔵のような真っ赤な色で埋め尽くされる幕切れは圧巻だったのだが、ここにも壮大な効果音などはなく無音なのだ。この徹底ぶりは見事。そして次の瞬間には何事もなかったかのように明かりがつき、上演が終わったことが告げられたのだった。
なお、なお旗揚げ試演会ということで「ご縁があるように」と入場料がわずか5円(!)だったのだが、帰り際にはその5円玉を使ったお手製のろうそくを記念品として配っていました。こういう遊び心はなかなか楽しいですね。
五反田団『いやむしろ忘れて草』(作・演出 前田司郎/会場 こまばアゴラ劇場)☆☆☆☆
サーカス劇場『ファントム』(脚本・演出 清末浩平/会場 タイニイアリス)☆☆
3月18日(土)
『絶対の愛』(監督 キム・ギドク)★★★★
KUDANProject『美藝公』(原作 筒井康隆/脚本・演出 天野天街/会場 ザ・スズナリ)☆☆☆☆☆
劇団唐ゼミ『ジョン・シルバー(続)』(作・監修 唐十郎/演出 中野敦之/会場 芝居砦・満点星)☆☆☆☆
3月17日(土)
『秒速5センチメートル』(監督 新海誠)★★★★
池の下『中国の不思議な役人』(作 寺山修司/演出 長野和文/会場 麻布die
pratze)☆☆☆☆
寺山修司の全作品上演を目指しているとのことで、この劇団の公演は欠かさず観ているのですが、2004年の『大山デブコの犯罪』以来の良い出来だったと思います。上演時間は1時間ちょっと。余計な味付けをせず、寺山戯曲の見世物演劇としての魅力を引き出していました。
『the who's TOMMY』(演出 いのうえひでのり/訳詞 湯川れい子・右近健一/会場 日生劇場)☆☆☆
3月10日(土)
『さくらん』(監督 蜷川実花/原作 安野モヨコ)★★★
3月3日(土)
庭劇団ペニノ『笑顔の砦』(作・演出 /会場 駅前劇場)☆☆
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(原作 ジョン・キャメロン・ミッチェル/演出 鈴木勝秀/会場 新宿FACE)☆☆☆
『エクステ』(監督 園子温)★★★★
2月21日(水)
『1960-70年代ポスター展 第3回』(会場 スパンアートギャラリー)☆☆☆
iOJO!(オッホ)『ナーバスな虫虫』(作・演出 黒川麻衣/会場 シアター・トップス)☆☆
ク・ナウカ『奥州安達原』(作 近松半二/台本・演出 宮城聰/会場 文化学園体育館)☆☆☆
2月12日(月)
『幽閉者 テロリスト』(監督 足立正生)★★
ゲキ×シネ『メタルマクベス』(原作 W.シェイクスピア/脚色 宮藤官九郎/演出 いのうえひでのり/会場 新宿バルト9)☆☆☆☆☆
黒色綺譚カナリア派『繭文〜放蕩ノ吊ラレ作家〜』(作・演出 赤澤ムック/会場 ザムザ阿佐ヶ谷)☆☆☆
1月27日(土)
『球体写真二元論 細江英公の世界』展(会場 東京都写真美術館)☆☆☆☆
三島由紀夫を撮った『薔薇刑』などで知られる、写真家細江英公の展覧会。舞踏家の土方巽や大野一雄の写真も撮っているので、今日観る公演の予習も兼ねて行ってきました。閲覧コーナーにあった写真絵本『たかちゃんとぼく』の犬が「あまりにも良い表情すぎる」のがおかしくてたまらなかった。何でそんなに良い表情なんだ……
『光と影』展(会場 東京都写真美術館)☆☆
流山児事務所『浮世風呂鼠小僧次郎吉』(作 佐藤信/演出 天野天街/会場 SAPCE早稲田)☆☆☆
2003年には流山児祥が自らの演出で上演しましたが、今回は役者に徹し、演出は少年王者館の天野天街。相変わらずの無限ループシーンに笑わせてもらいました。2003年上演時にも感じたのだが、この台本自体はそれほど好きではない。ではなぜ今回観ようと思ったかと言うと、劇中歌がすばらしかったから。とくに「次郎吉のテーマ」は大好きで、これが聴けただけでも満足。
大野一雄 百歳の年 ガラ公演『百花繚乱』(会場 神奈川県立青少年ホール)☆☆☆
出演は、吉村ゆきぞの「鐘が岬」、和栗由紀夫「避雷針屋」、上杉満代「O氏へ」、武内靖彦「燃え殻」、金満里「九寨溝の龍」、麿赤兒「Summer
Time」、三上賀代「雀の躍り」、石井満隆「大野先生へのオマージュ」、田中泯「独舞」、ルーシー・グレゴワール「EYE」、金梅子「サルプリ」、大野一雄舞踏研究所研究生。ピナ・バウシュは映像のみでの出演。全員は踊り終わった後に、車椅子に乗った大野一雄が登場したのですが、ぴくりとも動きませんでした。
1月14日(日)
Xクエスト『エロドラマ』(作・演出 トクナガヒデカツ/会場 サンモールスタジオ)☆☆☆☆
劇団鹿殺し『僕を愛ちて。』(作 丸尾丸一郎/演出 菜月チョビ/会場 池袋シアターグリーン
BOX in BOX THEATER)☆☆
1月13日(土)
innerchild『アメノクニ』(作・演出 小手伸也/会場 時事通信ホール)☆☆
『朧の森に棲む鬼』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり/会場 新橋演舞場)☆☆☆☆☆
「リチャード三世」を下敷きにしたピカレスクロマン。「悪」の魅力を存分に発揮する市川染五郎が圧巻。
1月3日(水)
お正月休みは、クリスマスに届いた「寺山修司実験映像ワールド」のDVD(全4巻)を観ている間に終わってしまった。去年のお正月は寺山修司のラジオドラマCD(全8巻)を聴いて過ごしたので、毎年寺山漬けの正月を過ごしているわけである。母校の早稲田大学も5年ぶりに箱根駅伝のシード権を確保したし、めでたしめでたしである。さて、問題のDVDセット。10年近く前にビデオ版で観たことがあったのだが、そのときとそれほど受けた印象は変わらなかった。私の感性はそれほど変わっていないらしい。寺山の長編劇映画に比べて、はるかに実験性が強く、その分物語性は後退してしまっているので、最初のうちは面白いが、だんだんと退屈になってくるのも確かである。正直「トマトケチャップ皇帝(短縮版)」は大好きな作品だが、それ以外の作品にはあまり思い入れがない。まあ、DVDの解説にもあるように「劇場のスクリーンに映写されたとき、はじめて作者の意図が明らかになる」作品ばかりなので、退屈な部分も「スクリーンに映写されたときの様子」を思い浮かべて、自らの想像力で補完するのが正しい鑑賞方法のだろう。今回初めてソフト化された作品「父」と「記憶のカタログ」(寺山修司主演、岸田理生監督)は、内容は面白いが、両作品とも3分ほどの超短編なので、これだけを目当てに購入するなら、一考した方がいいかもしれない。それにしても第4巻に収録の「トマトケチャップ皇帝 オリジナル完全版」の画像の状態はあまりにもひどい。元のフィルムの経年劣化か、DVDソフト化に際しての加工が悪かったのかわからないが、収録時間のうち半分近くは画面が真っ白で、何が行われているか全くわからない。これでは不良品扱いされてもしょうがないのではないかと思う。全巻通して鑑賞して感じたのは、寺山は演劇同様映画においても、やはり「外部から来た者」だったということ。映画という行為・ジャンルを相対化し、破壊し、分解し、ある意味貶めるような実験が繰り広げられているので、映画という形式を愛してすぎている人が観たら不快に思うかもしれない。