映画・演劇鑑賞記録2005



2005年、これまでの鑑賞結果。随時更新中。

★は映画、☆は演劇・ライブ等。☆〜☆☆☆☆☆で満足度を表わしています。あくまで個人的満足度ですので、鑑賞の参考にはならないかもしれません。念のため。







12月31日(土)
さて、今年も残り1時間を切ったので、1年の感想をまとめたいと思う。いろんな人が言ってることでもあるが、映画ではやはり「スター・ウォーズ」シリーズの完結が、演劇では蜷川幸雄と唐十郎の活躍、そして敬愛する寺山修司の生誕70年が印象に残った。今年観た映画は、75本。面白かったのは、「メリンダとメリンダ」、「フライ、ダディ、フライ」、「SW エピソード3/シスの復讐」、「バットマン・ビギンズ」、「親切なクムジャさん」など。どうも私はいい映像のある映画より、いい台詞のある映画の方が好きらしい。今年観た演劇・ライブは54本。週1回以上見てた計算で自分でも驚いた。面白かったのは、「幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門」、「血の起源」、桟敷童子「博多湾岸台風小僧」、「NINAGAWA十二夜」、劇団新感線「吉原御免状」、アンパース「あんずとすしお」など。とにかく次から次と観て消化不良になった感もあるので、来年は少し控えて、自分の中で咀嚼することに力を入れたいと思う。


12月25日(日)
『キング・コング』(監督 ピーター・ジャクソン)★★★★
「LOTR4」あるいは「ジュラシック・パーク4」といっても過言ではないほど、次々と現れる奇想天外なクリーチャーたちが素晴らしい。クリーチャー同士のファイトは大迫力。ガキ大将のようなやんちゃで感情表現豊なキンゴングのキャラクターがキュート。

12月18日(日)
『GUNDAM―来たるべき未来のために』(会場 上野の森美術館)☆☆☆
若手アーティストたちがガンダムをテーマに作成した作品を集めたアート展。実物大コアファイターはカッコいいが、セイラさんの巨大オブジェはうなされそうなほど怖い。水墨画でガンダムを描いたり、モビルスーツのパーツで毛筆を作ったりと、道を究めたいい年の大人が真剣になってバカなことをしているのが面白い。

アンパーズ『あんずとすしお』(作 新谷真弓・湯澤幸一郎・政岡泰志/演出 湯澤幸一郎/会場 新宿ゴールデン街劇場)☆☆☆☆☆
「ホルマリンの少女」以来の湯澤さんと新谷さんがタッグを組んだ二人芝居。期待通りエロく、可愛く、美しかった。七話の物語からなる短編集。
1話目「歌姫と鍵盤奏者」(作.湯澤)は、酒場をクビになった年増の歌姫と、彼女に憧れている若いピアニストの青年の話。街を去ろうとする歌姫に、ピアニストは求婚する。「年齢が違いすぎる」「うまくいきっこない」と最初は拒むが、次第に青年の純粋さにうたれ、「二人で街を出よう。俺がピアノを弾いて、君が歌を歌うんだ」という夢に応じる。この作品のみ男女の役柄が逆で、湯澤さんが歌姫役で新谷さんが青年役。カウンターテナーとしての湯澤さんの本領発揮の歌声が美しい。
2・4・6話は連作短編「あんずとすしお」(作.新谷)。ロリコンエロ漫画家の兄と、コスプレホステス嬢の妹。親元を離れ、20代後半になるというのに二人っきりで同居している。妹は、「ロリコン、ロリコン」とバカにしながら、本当は兄を愛している。妹の心に浮かぶのは14歳の誕生日の夜、「頼むから大人にならいでくれ」と泣きながら自分にすがった兄の姿。だが妹が秘めた想いを告げたとき、兄は「あの夜言ったことは間違いだった」と妹の想いを拒み、それぞれに大人への道に進もうと諭す。まったりとした日常の最後に、兄妹の恋の終わりを切なく描く。「宮崎駿ぜってーロリコンだよ」と「花嫁衣裳がどう見てもカリオストロの城」の台詞に爆笑。
3話目は「小二極道血風録」(作.政岡)。跡目争いの血みどろのヤクザの抗争を収めるため、最終手段として組長に据えられた小学二年生の少女。何か嫌なことがあるとすぐに「指詰めてー、指詰めてー」とだだをこねる。そのたび指を詰めさせられる子分の男。疲れて眠ってしまった組長のスカートをついついめくってしまう、抑えられないロリコン症。
5話目は「CANDY MAN」(作.湯澤)。ゴシックロリータな衣装の新谷さんが美しい。特別なキャンディーだけを食べるという生き人形の少女を商人から購入した男。少女を愛玩するが、無反応な様に次第に興ざめする。だがそのキャンディーこそが、人間を人形に変えてしまう薬だった。好奇心からキャンディーを舐めるようになった男は、次第に人形のように無反応になり、キャンディーを舐めなくなった少女は、次第に人間としての感情と記憶を取り戻す。少女は人買い商人にさらわれ、キャンディーを食べさせられて、人形に変えられたのだった。記憶を取り戻したところでもう帰るべき家を持たない少女は、人形になってしまった男に愛しそうに呟く。「大事にしてあげるよ、私のご主人様だからね」と。
6話目は「兄弟島」(作.湯澤)。孤島に住む兄と妹。身寄りのない二人が島で生きてこられたのは、美しい妹を娼婦として育てるため。兄と一緒に暮らせなければ死ぬという妹のために、兄も養われきた。16歳になり最初の客をとることになった夜、妹は客を殺し、兄の元に逃げてくる。真っ暗な砂浜で兄妹は寄り添い、星空を眺める。遠くからは娼館の燃える音と、二人を探す追っ手の声が聞こえてくる……。夢野久作の「瓶詰め地獄」を想わせる、耽美と禁忌と破滅の予感に満ちた作品。

『マリアの心臓・美少女展覧会』(会場 マリアの心臓)☆☆☆☆☆
人形のように美しい少女を見た後は、少女のように美しい人形を、ということで渋谷のマリアの心臓へ。美少女の人形・絵画・オブジェなどばかりを集めた企画展示。

『ヴェニスの商人』(原作 W.シェイクスピア/監督 マイケル・ラドフォード)★★★
全身が憤怒の塊のようなアル・パチーノの演技が圧巻。

12月17日(土)
『ガラスの使徒』(監督 金守珍/原作 唐十郎)★★★
唐組の芝居そのままな感じの、唐十郎の想像力羽ばたく言葉が紡ぐ世界。芝居をまったく見ない映画ファンには違和感あるだろうなあ。5月の公演「鉛の兵隊」にスライドで出てきた、唐さんがトラックに引きずられるシーンが出て来て爆笑。映画用のシーンだったのか。

横須賀功光の写真魔術『光と鬼』(会場 東京都写真美術館・2階展示室)☆☆☆☆
薄暗い室内に、石碑、あるいはモノリスのように立ち並ぶパネル群。そしてそこに嵌められた写真は、パネルの内側からの光によって浮かび上がる。光と影のコントラストという表現があるが、それがこんなにも鮮やかなに描かれたものは見たことがない。

大駱駝艦・天賦典式『AMA-ZONE』(振鋳・演出 麿赤兒/会場 世田谷パブリックシアター)☆☆☆
白馬村の野外劇で惚れこんだ大駱駝艦を劇場で初めて鑑賞。派手な舞台装置など、見所は多かったが、やはり野外劇感じたようなエネルギーなかった。

『ティム・バートンのコープスブライド』展(会場 パルコ・ミュージアム)☆☆☆

ASAMIXJUICE『SENSE』(会場 渋谷ギャラリー・ル・デコ 5階)☆☆
カナリア派の公演で折込みチラシを見て、気になっていた人形作家さんの企画展示。「野悶氾」のチラシの人形は、この方の作品のようです。

『ワダエミの衣装世界』(会場 梅窓院・祖師堂ホール)☆
まったく見るつもりはなかったのだが、デリシャのライブが始まるまでの時間をつぶしていたらたまたま会場を見つけたので、入場。うーむ、興味のある人にとっては面白いのかもしれないが、私にとってはいまいちだった。やはり芝居や映画の衣装というのはそれを着て演じるからこそその魅力が活きるのであって、こうやって飾られるとやっぱり抜け殻だな、と感じる。

デリシャ●カーニバル とびだせ!人間 第11回目『チムニーのラブレターでアタックしよう!』(出演 デリシャスウィートス、母檸檬、他/会場 AOYAMA 月ミル君想フ)☆☆☆

12月16日(金)
『富江』(監督 及川中/原作 伊藤潤二)★★★
富江シリーズの映画化第1作。98年の作品なのに、画面が80年代のSFドラマみたいに古っぽい感じなのは、狙って撮ってるんだと思われる。富江役の菅野美穂は物語終盤まで正面の顔を映さず、「見せない」演出で恐怖を倍増させていく。親友の恋人を誘惑し、親友の憎しみを受けながら微笑する富江、その残酷さの中に、裏返しの強烈な愛情がほんの一瞬かいま見える辺りの演出はなかなか良かった。

12月15日(木)
『SAYURI』(監督 ロブ・マーシャル)★★★
芸者同士がナンバーワンの座を巡ってしのぎを削る、というまんま日本版『シカゴ』の前半分はかなり面白く観ていたのだが、興奮は物凄くお約束のメロドラマで、すこし退屈だった。チャン・ツィイーの可愛さはもちろんだが、子役の女の子もなかなかけなげで可愛かった。

12月3日(土)
寺山修司+森山大道『あゝ、荒野』展(会場 ロゴスギャラリー)☆☆☆
寺山修司唯一の長編小説を、森山大道の写真を多数掲載した豪華本としてパルコ出版が復刻した。その出版記念の写真展。無数に会場に張られているのは、1960年代の東京・新宿を写したモノクロ写真。その風景も、人も、物も、今はもうない。だが写真に切り取られた一瞬だけは、この先も永遠に残っていくのだ。体験したことがないはずの、あの時代の熱気が少し伝わってくるような気がした。

劇団、本谷有希子『無理矢理』(作・演出 本谷有希子/会場 吉祥寺シアター)☆☆☆
小説版『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』に感動して数年ぶりに観劇。できたばかりの吉祥寺シアター、大き過ぎず小さ過ぎずなかなかいい感じの劇場。本谷有希子自身による案内アナウンスにちょっとどきどき。真っ赤な色調の舞台構成。サイゴ邸という奇妙な屋敷と、そこに住まう奇妙な人々の物語。脚立にまたがって終わりのない屋敷の改築を続ける女主人。盲目の童話作家、自殺志向の少女とその父親、リストラされたサラリーマンと妊娠中のその妻と頭の悪いその息子、という3組の下宿人。それぞれ嘘をついたり、気が狂ったりしていながら、やがてどれが嘘でどれが真実か、誰が狂人で誰が正常者なのかが交錯していく。

@ザ・グローブ・プロジェクト『燈色の星』(作 川村裕紀/演出 川除学・高橋奈都子)☆
芥川龍之介の「地獄篇」と「八百屋お七」の伝説が題材にされているのだが、ただ二つの話を合わせただけという程度のもので、そこに付加されるべき作家・演出家の力量というものが全く感じられなかった。早稲田!どうした早稲田!こんなもんじゃねえだろ!


11月30日(水)
流山児事務所『SMOKE』(作 ケラリーノ・サンドロヴィッチ/演出 天野天街/芸術監督 流山児祥/会場 スズナリ)☆☆☆
TV番組『あいのり』をモチーフに、タバコを吸うことが犯罪である国に迷い込んでしまったあいのりの面々が遭遇する奇妙な出来事を描く。前半は多いに笑わせて、後半は悪意に満ちた嫌な展開になっていく、いつものケラシナリオ。女の首吊りシーンが無限ループしてしまう天野演出に爆笑。本当に何の意味もなく出張ってくる流山児祥、このおじさん嫌いじゃないんだけど、今回は少し辟易しました。

11月27日(日)
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(監督 マイク・ニューウェル/原作 J.K.ローリング)★★★
シリーズの中では一番面白く楽しめた。やはり偶数作が当たり、奇数作がはずれという方程式が当てはまるらしい。

11月23日(水)
『親切なクムジャさん』(監督 パク・チャヌク)★★★★
「どんなもので、美しくないとダメ」という台詞がでてくるが、救いのない内容に反して映像・音楽はどこまでも美しく、それゆえにこそ悲劇性が際立つ。復讐というのは何も生み出さない行為である。たとえ成し遂げたとしても、失ったものが蘇えるわけではない。それでも復讐せざるをえない、そうせずにいられない、それほどの怒りと絶望。そこには何のカタルシスもなく、ただ哀しい。クライマックス、子供を殺された家族たちが順番に犯人を嬲り殺しにする。最後に手を下した老婦人が犯人の首に突き立てたのは、殺された孫が使っていた子供用の鋏だった。このシーンを観ながら、涙がぼろぼろ流れて止まらなかった。感動したとかではなく、ただとにかく、哀しい。映画を観てこんな感情にとらわれたの初めてだった。パク・チャヌク監督の力量に脱帽。イ・ヨンエの美しさにも感動。

11月19日(土)
『早稲田大学の寺山修司展』(会場 早稲田大学・小野梓記念館1階ギャラリー)☆☆☆
寺山修司の母校、そし実は私の母校でもある早稲田大学での初めての寺山企画展。没後22年、デビューからは50年近く経つというのに、一度もこういった催しがなかったというのもかなり意外である。やはり鬼子と見られていたのだろうか。かつて汚らしい第2学生会館があった場所は跡形もなくなり、綺麗に整備されたギャラリーになっていた。それが今回の会場である。展示品の内容はある程度見たことがあるものばかりだったが、寺山修司がかつてこの同じ学び舎で生きていたのだと再認識でき、感動だった。寺山が学生だった50年前、わたしが学生だった数年前、そして現在と、早稲田の風景も人も変わり続けている。「もの皆、思い出に変わる」けれど、「いつまで経っても思い出に変わってしまわないものも、この世にはある」と寺山は言っている。変わるもの、変わらないもの、どちらも大切にしたいものである。

『調教師』(作 唐十郎/演出 内藤裕敬/会場 シアターコクーン)☆
唐十郎の言葉というのは、想像力の詰まった火薬である。俳優という発火装置が導火線に火をつけることで、舞台の上で想像力が爆発するのだ。だがどうやら今回は、火薬は不発だったらしい。導火線がしけっていたのか、風が強くて火が消えてしまったのか、それはわからない。今か今かと2時間の間花火の打ち上がるのを待ちながら、結局観れたのは何もない空ばかりなのであった。

11月18日(金)
『復讐者に憐れみを』(監督 パク・チャヌク)★★★
憎しみが憎しみを呼ぶのではなく、人を愛する気持ちが復讐の連鎖を生み出していく悲劇。残虐で残酷なシーンが、驚くほど美しい映像で語られていくパラドックス。

11月9日(水)
『ティム・バートンのコープスブライド』(監督 マイク・ジョンソン、ティム・バートン)★★★
『ナイトメア〜』以来のバートンのストップ・モーション・アニメ。異形・異端の者たちの悲しみ・可笑しさを丹念に描きながら、変でも自分らしく生きようという「ナイトメア〜」のラストとはある意味正反対のささやかでありふれたハッピーエンドに終わるところに、10年の時間を感じた。本当にマイホーム・パパになってしまったんだな、ティム・バートン。

11月5日(土)
『TAKESHIS’』(監督 北野武)★★
現実と空想が入り混じる不可解映画。わけのわからない映画で、それを目指したのだと言われればそれまでだが、面白くないんだよなあ。これまでの映画の集大成というよりは、寄せ集め感が強い。とりあえず京野ことみのベッドシーンのために星二つ。いやあ、エロくてびっくりした。よくよく考えていくと、たけしはわざとつまらない、売れない、どうしようもない映画として作ったんじゃないかという気がしてきた。はっきりいって『菊次郎の夏』以降のたけし映画に傑作はないと思う。だが、一度巨匠として認知されてしまったため、作る映画作る映画大絶賛。本来権威をあざ笑う毒のある芸人だった自分が、いつの間にか権威の側になってしまっている。そんな自分にうんざりして、自らの権威をぶち壊すために、わざとこんな映画を作ったのでないか。


11月3日(木)
『ブラザーズ・グリム』(監督 テリー・ギリアム)★★★
監督の悪趣味全開の作りが面白い。鏡の女王が永遠の若さを手に入れるために生け贄を欲するのだが、美少女ばかり12人攫うというのがエロい。この監督は絶対変質者の素質があると思う。

11月1日(火)
『機動戦士ZガンダムU 恋人たち』(監督 富野由悠季)★★
『Zガンダム』の映画化3部作の第2弾。繰り返しになるが、旧映像と新作映像の違和感が大きい。物語はフォウ・ムラサメやサラ・ザビアロフら強化人間の少女との心の交流が中心になっているのだが、これまた声優が変わっているので違和感が大きい。ゆかなも池脇千鶴もがんばっているとは思うが、やっぱりフォウは島津冴子に、サラは水谷優子に演じてほしかった。2時間の尺とは思えない情報量は圧巻、さすが富野監督。ハマーン率いるアクシズのモビルスーツ隊に宇宙が埋め尽くされ、ガクトのテーマ曲がかぶってくるラストシーンにぞくぞくした。


10月30日(日)
『春の雪』(監督 行定勲/原作 三島由紀夫『豊穣の海 第1巻』より)★★★
文学作品の映像化にこだわる雪定監督最新作。大正時代、良家の子女である清顕と聡子の恋物語。ひねくれた愛情表現しかできない、幼いお坊ちゃんの妻夫木聡と、徹底しておしとやかで一途なお嬢様の竹内結子。ともに美しいが、エロティックさ・禁断の雰囲気などは薄味。妻夫木君は『ジョゼと虎と魚たち』のときの方がエロかった気がする。「夢日記」とか、夢の中に聡子がお雛様の格好で現れる部分など、幻想的なシーンであるはずの部分が、今の時代だとギャグとして受け止められてしまう可能性もあり微妙。

10月22日(土)
Cherry Bombers project 02『The Cherry Bombers Strikes Back』(作 ケラリーノ・サンドロヴィッチ、吉増裕士、他/演出 吉増裕士、他/会場 笹塚ファクトリー)☆☆
新井由香・峯村リエ・長田奈麻・種子の4人の女性ユニットの、2000年の公演に続く第2弾。二人の女優をゲストに迎え、脚本陣も前回よりパワーアップ!……のはずなのだが、前回ほど物語にも演技にも切れがなかったような気がする。一言で言えば笑えませんでした。

10月21日(金)
『処女の泉』(監督 イングマール・ベルイマン)★★
原始宗教的な映画。13世紀の欧州の農村。誰からも愛される名家の令嬢と、父無し子を孕んで厄介者扱いされる召使いの娘。召使いの娘は令嬢に嫉妬し、オーディーンに祈る。令嬢は召使いの娘をともなって協会へと行く道すがら、森の中で三人の乞食に襲われて、強姦され、殺される。三人の乞食は令嬢から剥ぎ取った服を、そうとは知らずに令嬢の母親に売りつけようとし、令嬢の父の復讐によって殺される。森の中で令嬢の死体を見つけた父がその身体を抱き上げると、その下からは澄んだ泉が湧き出す。

10月20日(木)
『蒸発旅日記』(監督 山田勇男/原作 つげ義春)★★★
寺山修司のスタッフだった山田勇男の、『アンモナイトのささやきを聴いた』以来の長編映画。前売り券を買ったにもかかわらず、ロード−ショー公開時に見逃して、今回ようやくDVD化されたものを観れた。つげ原作映画お決まりのストーリーとも言えるが、旅行く先でいろいろと妙なものに出会う、和風ロードムービー。秋桜子さん妖しげな美しさ。


10月16日(日)
シベリア少女鉄道『スラムダンク』(作・演出 土屋亮一/会場 シアターサンモール)☆☆

唐組『カーテン』(「電子城U」より)(作・演出 唐十郎/会場 西新宿原っぱ)☆☆

10月15日(土)
月蝕歌劇団『盲人書簡-上海篇-』(作 寺山修司/演出 高取英/会場 ザムザ阿佐ヶ谷)☆☆
寺山修司の実験劇「見えない演劇」シリーズの一本。寺山修司の没10周年の93年に上演して以来、同劇団としては12年ぶりの上演。内容はほぼ戯曲どおり。舞台をしょって立つような華のある俳優さんがいなかったように思う。一ノ瀬めぐみさんは白痴のおぼっちゃん役で出番少なく、残念。以前(劇団内ユニットの)幻同盟トップとか称してたように思うが、聖同盟共々いつの間にかなくなってしまったようだ。ボンテージ衣装や、スリットの入ったチャイナ服、セーラー服の女の子がいっぱい出てきたりと、いつもどおりのちょっとエッチな内容。3年前に観た万有引力版の方が自分好みだ。閉幕後、一階のサロンを覗いてみたら、黒色すみれのみなさんがお化粧直しをしているのを目撃。さらに九条今日子さんが来ているのも発見。少し得した気分。

劇団桟敷童子『風来坊雷神屋敷』(作 サジキドウジ/演出 東憲司/会場 北区・飛鳥山公園内特設天幕劇場)☆☆☆☆
あいにくの雨の中、会場とともにテントの中に入ると、テントの中の舞台にも雨が降っていた。物語は戦国時代の山村。黒澤明の映画音楽をテーマに登場する、明らかに三船敏郎を意識した風来坊の侍。数年に一度、若い娘を雷神の生け贄に捧げるという村のしきたりを知り、それをぶち壊そうとする。そこに現れる「生け贄になるためだけに」育てられた娘、阿呆丸。他人の犠牲になって死ぬことが、自分の幸せだと信じて疑わない。「自由の国アメリカ」を守るために戦地へ送られる兵士も、「聖戦」のために自爆テロに突き進むイスラム教徒も、恐らく「阿呆丸」なのだろう。

10月12日(水)
『チャーリーとチョコレート工場』(監督 ティム・バートン/原作 ロアルド・ダール)★★★
変な髪形のジョニ―・デップも何のその、始まってみればアフリカ系濃い顔のおっちゃんが主役。終わってもあのおっちゃんの顔しか記憶に残りません。とってつけたように「家族は大事」というテーマがでてくるのは何だかなあ、という感じ。確かに家族は大事だが、あそこまであからさまに描かれると少し辟易する。家庭を持つとここまで変わるものなのか。

10月8日(土)
『やなぎみわ 無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語』(会場 原美術館)☆☆
かなり早起きして行ったんですが、劇団唐ゼミ『盲導犬』の当日券は買えませんでした。というわけで急遽予定変更。朝日新聞で紹介されていたやなぎみわの展覧会を観に行く。腹美術館は駅から結構あって、歩くのに疲れた。展示品は写真とビデオ作品。少女と老女が戯れ合い、殺し合い、時に互いの存在を入れ替るといった感じの不思議な作品。童話をモチーフした一連の写真と、「砂女」というビデオ作品が面白かった。

インバル・ピント・カンパニー『ブービーズ』(会場 世田谷パブリックシアター)☆☆☆
三軒茶屋に移動し、先週に引き続きイスラエルからきたカンパニーの新作を鑑賞。中央にぽっかりと太陽(あるいは月?)が浮いた舞台。そこから登場人物がシルエットとなって、現れたり消えたりする。。

花組芝居『泉鏡花の日本橋』(作 泉鏡花/構成・演出 加納幸和/会場 シアタートラム)☆☆☆
ものは試しととりあえず一回観劇に。観客は和服姿の女性が多い。そのほかも女性、女性、女性。男性客は数えるほど。物語は大正時代の日本橋。姉の面影を持った芸者清葉に恋焦がれる医学生葛木。清葉をライバル視するお孝は葛木を誘惑するが、当てつけのはずの恋がほんとの恋に変わってしまう。

10月1日(土)
インバル・ピント・カンパニー『オイスター』(会場 世田谷パブリックシアター)☆☆☆
宣伝写真の奇想天外なキャラクターに惹かれて鑑賞。タイトルはティム・バートンの絵本『オイスターボーイの憂鬱な死』から取ったそうです。踊りの方は意外と普通でした。

劇団☆新感線プロデュース『吉原御免状』(原作 隆慶一郎/脚色 中島かずき/演出 いのうえひでのり/会場 青山劇場)☆☆☆☆☆
劇団新幹線の初の原作もの。回り舞台で吉原の町を描きが出す手腕が見事、見事。涼やかな青年剣士を演じる堤真一、敵に囲まれ窮地に追い詰められたとき、二刀流で切り抜けるさまが惚れ惚れするほどカッコいい。


9月23日(金)
『メゾン・ド・ヒミコ』(監督 犬童一心)★★★★

『忍-SHINOBI-』(監督 下山天/原作 山田風太郎)★
忍者十人勝負を五人勝負にしてしまった時点で、この映画の失敗は約束されていたのだと言ってよいだろう。で、余った時間で何をやっているかと言うと、仲間由紀江とオタギリジョーのいちゃいちゃと、薄っぺらい人間ドラマ。人気俳優が出てるからといって、なんでどれもこれもプロモーション映画にしてしまうんだろう。

9月21日(水)
『天保十二年のシェイクスピア』(作 井上ひさし/演出 蜷川幸雄/会場 シアターコクーン)☆☆☆☆
NINAGAWA VS COCOON最終作。オールスターキャスト。それぞれにちゃんと見せ場があるのが楽しい。各人がヒーロー、ヒロインを演じながらも、結局最後に生き残るのは名もない民衆たちであるというところに、蜷川節を感じた。宇崎竜童の楽曲もいい。特に「もしもシェイクスピアがいなかったら」が最高。
   
ダンス・エレマン『美女と野獣』(原作 ジャン・コクトー/芸術監督・台本 宇野亜喜良/会場 草月ホール)☆☆☆
昨年、一昨年に引き続き鑑賞。今回も宇野さんの美意識が行き渡った舞台は美しかったが、寺山原作ではなかったのでストーリー的にはいまいち楽しめなかった。吉川ひなの演じる西洋人形っぽい美女よりも、一ノ瀬めぐみ演じる日本人形の方が個人的に好み。


9月4日(日)
『ギュスターヴ・モロー展』(会場 Bunkamura ザ・ミュージアム)☆☆
別ページでも公開してますが、学生時代にモローの絵画と象徴主義のレポートを書いたことを思い出し、懐かしくなって鑑賞。夢現だな。

『ルーシー・モノストーン写真展』(会場 Hapworth16)☆☆
大塚英志が開いたという、吉祥寺のギャラリーに行って来た。本当にマンションの一室を借りただけの狭いフロアだった。ルーシーの写真は馬鹿馬鹿しすぎて笑えるというか、笑うに耐えないというか、とにかくそんな感じ。見所はむしろ、球体関節人形とトレヴァー・ブラウンの未発表原画でしょう。限定物販品を適当に買って、さくっと撤退。

9月3日(土)
『妖怪大戦争』(監督 三池崇史)★★★
とりあえず美少女の太腿とクライマックスの八百万妖怪大集合を見るだけの一見の価値あり。栗山千明はやっぱり良い。


9月1日(木)
『容疑者・室井慎次』(監督 君塚良一)★★
拍子抜けの落ちに、カタルシスなし。語り口は面白いのに、仕掛けがいまいちという感じ。


8月21日(日)
『東京物語』(監督 小津安二郎)★★★
パロディを観た後に本物を見るものどうかと思うが、「トーキョーあたり」でネタにされていたので、とりあえず見てみる。しみじみ人情話。

『パイレーツ・オブ・カリビアン』(監督 ゴア・ヴァーヴィンスキー)★★★
ディズニーアトラクション「カリブの海賊」映画版。ディズニーが嫌いなので、この映画もいまいち好きになれなかった。飄々とした演技のジョニー・デップがイカす。


8月17日(水)
劇団健康『トーキョーあたり』(作・演出・音楽 ケラリーノ・サンドロヴィッチ/会場 本多劇場)☆☆
ナイロンの公演よりもとっ散らかっているような感じ。『生きる』と『東京物語』のパロディをやりつつ、筋はあってないようなものだった。いつものナイロンの方が好みだなあ。

『真夏のアンプラグド2005 大槻ケンヂ』(会場 吉祥寺スター・パインズ・カフェ)☆☆☆☆☆
オーケンライブ初鑑賞。会場は吉祥寺の駅近くの地下喫茶、吹き抜けで1階席・2階席がある。客席はガラガラでもなく、息苦しいほど満員でもなく、ちょうどいい感じの混み具合だった。若者からおじさんおばさん、ゴスロリ少女にロック青年と客層もさまざま。オーケンももうすぐ40歳というのに、時の流れを感じた。歌われた曲を記憶しているままに挙げると、「香菜、頭をよくしてあげよう」「サボテンとバントライン」「猫のおなかはバラでいっぱい」「子犬にしてあげる」「Guru」「花火」「企画物AVの女」「青ヒゲの兄弟の店」「町のスケッチ」「プカプカ」「パティー・サワディー」。「Guru」が聞けたのが一番嬉しかった。

8月14日(日)
『下弦の月〜ラスト・クォーター〜』(監督 二階健/原作 矢沢あい)★★
栗山千明主演ということで、とりあえず鑑賞。まさにお人形さんみたいな美しさを堪能。しかし作品的には、PVみたいな内容だった。


8月6日(土)
大駱駝艦・天賦典式『SUMMER TIME』(振鋳・演出 麿赤兒/会場 白馬村松川河川敷公園)☆☆☆☆
公言通り今年も行って来ました。天気予報は夜から大雨・雷警報とのことで、ややおびえながら鑑賞。冒頭、何十人という金箔ショー軍団が一斉に舞台に駆け上がって、群舞に突入する展開は昨年とほとんど一緒だったが、それでも圧倒された。群舞のあとは、舞台上に巨大な輪が運び込まれる。それは天使の輪なのか、仏教の「空」を表しているのか、それともこの世界にくくりつけられた「首輪」なのか、様々なイメージを想起させた。舞台後方の空にときおり雷鳴がきらめくのが、なかなかいい演出になっていました。    


7月30日(土)
毛皮族『銭は君』(作・演出 江本純子/会場 本多劇場)☆☆☆
結成5周年にして、とうとう本多劇場に進出。凄いなあ嬉しいなあと思いつつ、やっぱり駅前劇場でのあの一体感・あの熱気には及ばないなあと再認識。シベリア少女鉄道の紀ノ国屋公演もそうでしたが、売れている以上中劇場に進出するのは仕方のないことですが、いちファンとしてはやっぱり少し寂しい。物語は吉原を舞台にしつつも、やっぱり吉原とはあまり関係なし。江本純子の自虐的ともいえる借金ネタが彼女の実生活とかぶって、私は笑うに笑えなかった。私の友人も旅行先で金がなくて初めてクレジット会社を利用したとき、「こうやって手にしてると自分の金のような気がしてくるから不思議だよなあ」と言ってたな。5周年記念のDVDも劇場窓口で購入。「ちじれた毛のようなもの」が印刷された箱ティッシュが特典についてきた。これはこのDVDを「使う」ときはこのティッシュを使えと(笑)、そういうことなんでしょうか。

7月24日(日)
七月大歌舞伎『NINAGAWA十二夜』(原作 シェークスピア/演出 蜷川幸雄/会場 歌舞伎座)☆☆☆☆
シェークスピアのロマンティックコメディを歌舞伎化し、蜷川幸雄が初演出。やはり負けず嫌いなおじさんだから、野田秀樹に触発されたんでしょうか。男装の女性を男が演じると言うややこしさをどう表現するのかと思っていたが、尾上菊之助の演技は所作の一つ一つ(声、表情、歩き方など)がきっちりとしていて、安心して楽しめた。ほんとに美しい俳優さんだ。鏡を使った舞台装置に、舞台の様が映って二度お得な感じ。

7月18日(月)
『フライ,ダディ,フライ』(監督 成島出/原作・脚本 金城一紀)★★★★
友情、努力、勝利と、少し前の少年漫画誌のような爽やかな感動を与え続けてくれる金城作品。クールで孤独な岡田准一と、明るく飄々とした堤真一の取り合わせが楽しい。何でそんなにホモっぽいんだ、お前ら(笑)。狙ってるとしか思えない。


7月10日(日)
『メリンダとメリンダ』(監督 ウディ・アレン)★★★★
ウディ・アレンそっくりの演技のウィル・フェレルがおかしい。自分が年取って出れなくなったから、別の人にやらせてるだけじゃん。でも面白いから、よし。

『Laugh&Music vol.1』(出演 母檸檬、金魚ミルク、他/会場 渋谷ガボウル)☆☆☆☆
噂の母檸檬さんを一目見たくて行って来ました。「音楽と笑いの関係」をテーマに、6組のアクターが出演するライブ。母檸檬さんは5番手。日本国旗に身体を絡ませながらの登場シーンに、いきなりハートを鷲掴みにされました。少女が生き人形になったのか、少女人形に命が吹き込まれたのかはわからないが、とにかく人形のような可愛さでした。映画『書を捨てよ町へ出よう』の挿入歌『あたしが娼婦になったら』(これを持ち歌にしてると聞いて観に来たのです)を歌いながら、上着を脱ぎ捨てていく明るいエロス。小道具の日の丸が血に染まったシーツのイメージなのは間違いないだろうけど、あの赤い着物姿も破瓜の血で真っ赤に染まっているのじゃないだろうか。それが暴力によって純潔を奪われる絶望の赤なのか、愛する人に純潔を捧げる歓喜の赤なのかはわからないが、一曲ごとにその歌に処女を捧げ、破瓜の血を流し続ける永遠の処女/非処女。と、そんな取り止めもないイメージを浮かべながら聞き惚れ、見惚れていました。


7月9日(土)
オフィスプロジェクトM『鳥よ鳥よ青い鳥よ』(作 岸田理生/演出 丸尾聡/会場 こまばアゴラ劇場)☆☆
昨年の追悼公演『捨子物語』『火學お七』『リア』で岸田理生さんの言葉に触れ、その美しさ、鋭さに感動した。また生で岸田さんの言葉を聞いてみたくて、追悼戯曲集第3巻に収録されているこの演目を選んで観に行った。アゴラ劇場はかれこれ7年ぶりだったが、意外と迷わずにたどり着けた。おそらくは韓国併合をイメージして書かれた、自分たちの言葉を奪われてしまった人々の物語。詩的な言葉は身を潜め、呻き声のような抽象的な言葉が舞台を覆う。全体的にオーソドックスな演出で、台本をなぞる以上のものになっていなかったような気がする。昨年の指輪ホテル『リア』ぐらいにぶっ壊れたものが見てみたかった。

劇団桟敷童子『博多湾岸台風小僧』(作 サキジドウジ/演出 東憲司/会場 ザ・スズナリ)☆☆☆☆☆
倉庫や廃館になった映画館など、特殊な場所で公演を行ったきた同劇団の、初の劇場での上演。『贋作少年』以来1年半ぶりに観劇。黒く薄汚れたドヤ街のような場所に、真っ赤な彼岸花が鮮やかに咲き乱れる美しいセット。強い者が弱い者を虐げるのではなく、弱い者がより弱い者を虐げる世界。絶望の象徴として何度も何度も描かれる彼岸花が、弱者が勇気を振り絞った瞬間、人を救う希望の花へと意味が反転する展開に感動。最後の大掛かりな舞台装置は圧巻。

7月6日(水)
『逆境ナイン』(監督 羽住英一郎/原作 島本和彦)★★★
燃える漫画家島本和彦の最高傑作の映画化。原作は中学生の頃に夢中で読んで熱くなっていた作品なので懐かしい。漫画家の星里もちる、永野のりこ、あさりよしとお、そして編集者の大塚英志と、あの当時の月刊少年キャプテンの漫画は、マイナーながらかなり面白かった。そして二度の絶版と復刊を経て、連載から15年以上を経った今年、ついに映画化(ちなみに2001年には、劇団カプセル兵団によって舞台化もされている)。原作にかなり忠実な、無意味に熱く、無意味に仰々しく、無意味に馬鹿馬鹿しい展開。主演の玉山鉄二のカッコよさ、ヒロインの堀北真希の可愛さは反則。脇を固める田中直樹と藤岡弘もいい味を出している。CG合成の男球は可愛すぎて、少しイメージと違った。しかしあれだけ盛り上げておいて、「丸刈りが嫌で部員が裏切った」というオチはないだろう。もう少しカッコよく終わらせて欲しかった。

7月2日(土)
『宇宙戦争』(監督 スティーブン・スピルバーグ)★★★
町を蹂躙する巨大三本足の宇宙兵器は、ハリウッド映画というより、日本の巨大怪獣映画に違い雰囲気。全世界で被害を受けているにもかかわらず、同時刻イギリス、同時刻東京、といった大局的な描写はせず、あくまでもトム・クルーズとダコタ・ファニングの親子関係に的を絞った小さな視点からのドラマにしているところが、この監督らしい。原作同様、宇宙人たちは散々暴れ回った挙句、地球のウイルスで自滅するので、反撃して勝利するといったカタルシスはない。

『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(監督 ジョージ・ルーカス)★★★★
愛するパドメを救う力を得るために、ダークサイドに墜ちるアナキン。とそこまではわかったのだが、パドメが死んだ後もなぜ銀河皇帝の元にとどまってダース・ベイダーであり続けたのか?と、そこの所をもう少ししっかり描いて欲しかった。冒頭のドゥークー伯爵との再戦から始まって、ウィドゥ対パルパティーン、ヨーダ対パルパティーンのフォース対決、溶岩流の中でのアナキンとオビワンの対決と見所は多い。


6月19日(日)
『バットマン・ビギンズ』(監督 クリストファー・ノーラン)★★★★★
やばい、面白い。1・2より好きかも。腐敗しきった地球圏の人々(ゴッサム・シティ)を粛清せんと、シャア(デュカード)はネオ・ジオン軍(影の軍団)を率いて、地球への隕石落とし(幻覚剤散布)を企てる。罪もない人々が巻き添えになるその計画を阻止せんと、シャアの前にアムロ(バットマン)が立ちはだかるのだった(以上、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」より)……とそんなストーリー。間違った道に進んでしまったものを正しい方向へと導きなおすのは、全てぶち壊して初めからやり直すのよりも、ずっと難しい。それに挑むのがヒーローだ。ブルース・ウェイン=バットマン役のクリチャン・ベール、影の軍団のの首領役の渡辺謙と、その配下デュカード役のリーアム・ニーソン、バット・モービルを作る科学者役のモーガン・フリーマンと、男優たちが漢らしくカッコいい。違いはあっても、みなそれぞれに信念を持って動いている。ブルースを火事の中から救い出す、執事のアルフレッドの姿に涙。劇中、何度も進むべき道を見失いそうになるブルースが、そのたびアルフレッドに「僕を見捨てる?」と尋ね、アルフレッドが「見捨てませんよ」と答えるやり取りがある。「ミリオンダラー・ベイビー」にもまったく同じやり取りがあったので驚いたが、本当の愛とは、何があっても相手を見捨てないことなのだろう、と思う。幸福ではなく不幸を、成功ではなく逆境を分かち合えること。うーん、こんな風に考えて「ヘドウィグ」を見直すと、あの裏切りのシーンは一段とせつなくなるなあ。

6月18日(土)
ナディッフへ新津保建秀写真展「記憶」を見に行く。原宿駅から歩いたら、えらい遠かった。四季の移ろいの中に置かれた、風景としての少女が美しかった。

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(原作 ジョン・キャメロン・ミッチェル/訳・演出 青井陽治/会場 パルコ劇場)☆☆☆☆
三上ヘドウィグ待望の再演。客席はもうはじめから、ライブ会場のノリ。ある程度何が起こるかわかっているわけなので、やはり衝撃という点では初演ほどではなかったが、音楽性とマイクパフォーマンスは前回以上にアグレッシブでサービス満点。どこまでが台本どおりで、どこまでがアドリブかわからないほど、完全に「ヘドウィグ」という人格になりきっていた。恋人の裏切りを思い出し、スポットライトの外の暗闇ですすり泣くシーンは、本当に泣いているみたいに見えた。男装を解いた後のエミ・エレオノーラは、ドレスにウサ耳みたいなカチューシャをつけた姿で、なかなかかわいい。前回のバイキングみたいな衣装は、やはりどうかと思う。今年もアンコールはなく、そこだけが残念。

唐組『鉛の兵隊』(作・演出 唐十郎/会場 西新宿・原っぱ)☆☆☆☆
あるスタントマン事務所をめぐる話。スタントマンは他人に成り代わって、危険をおかす仕事だ。だがここには、人生のスタントマン、恋愛のスタントマンといったものがでてくる。誰もがみな、誰かの代わりに生きているとも言えるし、誰もがみな、誰かの代わりに生きているわけではない、とも言えるだろう。水槽一杯の塩の中から飛び出す、唐十郎の新巻ジャケ姿に爆笑。60を超えてるとは思えないエネルギーに感服。ラストシーン、西新宿原っぱを抜け、独り夜の街へ旅立っていく二風谷の後ろ姿がカッコよすぎる。

6月13日(月)
『電車男』(監督 村上正典/原作 中野独人)★
コスプレ映画、書き割り映画という感想。秋葉系のダメ人間が、精一杯背伸びして、カッコいい男に変わろうとがんばる様が原作の良さだったと思うのだが、映画を観る限り、もともとカッコいい男が、わざとダメ人間を演じてるようにしか見えない。いや実際そうなのだが、そう見えてしまうのでは、フィクションとして失敗だろう。なんか健常者の子供が障害者の真似をして遊んでるような感じというか、いや、それはちょっと言いすぎか。たとえば、飲み会とかで「えー、わたしなんてー、ぜんぜんだめですよー」とかわざと馬鹿っぽく話す女を見てるみたいな感じ。「お前全然そんなこと思ってないだろ!」とつっこみたくなるというか、むかついてくるんだよなあ。ラスト近くの現在と過去がつながるシーン、成長した電車男がかつての自分のような奴を助けるシーンにはちょっと感動した。

『ミリオンダラー・デイビー』(監督 クリント・イーストウッド)★★
果てしなく救いのない映画でした。前半の女版「ロッキー」的展開と、後半の重い展開とのギャップが激しすぎる。別の映画と言ってもいいくらいだ。鬱にはなったが、泣けはしなかった。

6月11日(土)
『オペレッタ狸御殿』(監督 鈴木清順)★★★
鈴木清順ワールド全開の奇想天外な映像を楽しませてもらいました。片言の日本語で、歌に踊りにがんばるチャン・ツィイーがかわいい。ひっくり返ったときに袴から見えるオタギリジョーのすね毛が気になった。

ピナ・バウシュ&ヴッパタール舞踏団『ネフェス』(振付・演出 ピナ・バウシュ/会場 新宿文化センター大ホール)☆☆☆
世界的に有名な舞踏団を初観劇。面白かったのですが、ものすごい迷惑な観客がいて興ざめでした。

流山児★事務所『戦場のピクニック・コンダクタ』(脚本 坂手洋二/演出 流山児祥/会場 本多劇場)☆☆
おとなしめの音楽劇でした。

6月9日(木)
『機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者』(監督 富野由悠季)★★★
20年前に放映されたTVアニメ『Zガンダム』の映画化3部作の第1弾。放映当時は小学生で、ちゃんと通して見たのは大学生のとき。エイジングという手法が駆使されたそうだが、やはり旧映像と新作映像の違和感は激しいものがあった。いっそ全編新作映像にしてくれれば良かったのにと思う。90分とは思えない密度の濃いドラマ展開に圧倒された。もちろんはしょりすぎの部分もあるのだが、ちゃんとキャラクターの情動を生かした作品として仕上げているのは富野由悠季ならでは。半端に前衛映画を目指した「エヴァ」の「DEATH編」なんかより、ずっと面白いすよ。

6月3日(金)
黒色綺譚カナリア派『野悶氾〜泣いた雀は紅ダルマ〜』(作・演出 赤澤ムック/会場 ザムザ阿佐ヶ谷)☆☆☆
サイケ耽美アングラ新派のカナリア派第4作。人間の負の感情が膨張に膨張を重ね、やがて一気に爆発する様を描くのが赤澤ムック氏の作劇の魅力だとこれまで作品から感じていたのですが、今回はその意味での「溜め」が少なかったように思う。主人公の雀は、行方不明になった義母の幻影ばかりを追い求める男たちに、全ての罪と憎しみを背負わされる。その責め苦にひたすら静かに耐えていた雀が、一気に逆転の復讐劇に転じるというのが、これまでの氏の作品からいえば定石の展開のはずである。だが、そこに至るまでの展開においても、すでに全ての登場人物は悪意に満ちた感情のぶつけ合いをしているので、「人が墜ちる」瞬間の衝撃は薄まってしまっている。また、雀の復讐自体も、唯一の味方だと思っていた兄に裏切られることで空振りに終わる。はじめから不幸な人間がさらに不幸になって終わるので、復讐劇としてのカタルシスも悲劇としてのカタルシスもないのだ。初日ということもあってか、台詞の噛みや間違いがかなり多かったことも気になった。物語としての完成度や、俳優に演技力は前回の方が上だったように思う。一方で、小道具・美術・衣装・照明・選曲などを含めた演出力は、これまでで最高の完成度だった。とくに笹を使った緑を基調とした舞台装置が美しかった。そこに劇中何度も、闇の中に浮かぶ幻のように現れる赤澤ムック嬢演じる鷺子の姿は、まさしく「恋の盲執に迷い、鷺の姿となって地獄の責め苦を受ける」という「鷺娘」のようだった。

6月1日(水)
『交渉人真下正義』(監督 本広克行)★★★
踊るシリーズのスピンオフムービー第1弾。だんだん作りが荒くなっていく気がするなあ。「寅さんシリーズのような皆に愛される息の長いシリーズになって欲しい」という映画評を前作公開時に読んだのだが、まさにそうだった。恋愛あり、人情ありで、面白くて充分楽しめたのだが、どこまでも予定調和のストーリーとキャラクター。良い意味でも悪い意味でも期待を裏切らない出来。


5月28日(土)
企画展「憎まれっ子世に憚る〜流山児祥の激的人生」(会場 早稲田大学演劇博物館)☆☆☆
高田馬場からバスに揺られて大隈講堂前まで行く道中、馬場下通りがものすごく綺麗になっていて驚いた。煉瓦の舗道とは洒落てるなあ。企画展の会場は演博の3階の廊下の周辺。100点以上のポスターやチラシに圧倒された。『人形の家(狂人教育)』の舞台衣装や小道具も飾ってある。寺山修司の劇作家としての遺作となった『新・邪宗門』のポスターもあって感動。岸田理生も亡くなってしまったし、どこかの劇団が再演してくれないだろうか。
   

劇団四季『ライオンキング』(オリジナル演出 ジュリー・テイモア/日本版企画・製作 浅利慶太/会場 四季劇場[春])☆☆☆
それにしてもライオンキングのマークって、プロミスのマークと似てるよなあ。というわけで、浜松町からてくてく歩いて四季劇場へ。劇団四季は嫌いだった。国外のヒット作をそのまま日本人のキャストに変えただけで上演するというオリジナリティーの欠片もないやり方が嫌いだったし、大学の時に受けた演劇の講義で「ミュージカルはマクドナルド文化だ」という話を聞いていたせいもある。曰く、ミュージカルというのは、世界中で同じ内容のものが上演される。マクドナルドと一緒で、世界中のどこに行っても同じ値段で同じ味。同じ味覚で世界を均一化してしまう。だが、我々はそれでは満足できない。ミュージカルがファーストフードなら、小劇場は個人経営の料理屋だ。我々はその店でしか味わえない味を求めて、その店に行くのだ。味覚が一人一人違うように、演劇ももっと多様性があって然るべきだ。とまあ、そんな先入観があったから、四季は一度も観たことがなかった。それでも一度観てみようという気になったのは、演出のジュリー・テイモアが監督した映画『タイタス』が、面白かったからだ。現在の活動方向からは考えられないが、我が敬愛する寺山修司の処女戯曲「血は立ったまま眠っている」を上演したのも劇団四季である。一度も観ないで毛嫌いしてけなすというのも良くなかろう、ということで暇を見つけてやって来たのだった。
さすが評判になるだけのことはあってなかなか面白かったのですが、やはり好きにはなれない世界でした。登場人物の中で誰に感情移入してみたかというと、やはりスカーになってしまうんだよなあ。「ハリー・ポッター」でも同じ印象を受けたのだが、物語の主人公のシンバはただ「王である親の血を受け継いだ」というだけで、その才能と将来の地位を約束されている。ほとんど努力も犠牲も払うことなしに、だ。それに対してスカーは、ただ王の弟(先王の二番めの子)して生まれたというただそれだけの理由で、王になることはできない。だから「リチャード3世」のように、兄ほどの腕っ節も人望もないことに強いコンプレックスを抱きつつ、権謀術数の限りを尽くして王座を奪い取る。与えれられないのなら、奪い去るしかない。それは罪なのか?だが、追放されていたシンバが戻ってきた途端に、全ては彼のものとなってしまう。スカーの治世で荒れ果てた大地が、シンバガ王に成り代わった途端に豊な大地に戻るのも、ご都合主義にしか見えない。
   

劇団犯罪友の会『手の紙』(作・演出 武田一度/会場 タイニイ・アリス)☆☆
以前大阪に旅行したときに、暇つぶしに地元のアマチュア劇団の舞台を2本ほど観たことがあった。舞台の内容はいまいちだったが、折込みチラシの中に「犯罪友の会」という物騒な名前の劇団のチラシがあった。旗を持ったセーラー服の少女が馬にまたがっているイラストがなかなか妖しくて良かったので、ずっと気になっていた。それから、5年。まさか東京公演があるとは。野外劇でないのが残念だが、それでも劇団色ぐらいは味わえるだろうと思い、観劇。戦後しばらく経った関西の片田舎を舞台に、淡々と物語は進む。過去に何かがあった男や女たちが集まり、思わせぶりな会話を交わすが、最後まで大きなドラマが起こる事はない。戦争という大きなドラマはすでに終わってしまい、生き残ってしまった人間たちは、人生に残された長い長いエピローグを前にどうしていいのかわからず、ただ漫然と時を費やしていく。期待に反してアングラ色は薄く、台詞の噛みが多いのが気になった。

5月22日(日)
『ツィゴイネルワイゼン』(監督 鈴木清順)★★
『オペレッタ狸御殿』を観に行く前にと、鈴木清順作品を2本続けて鑑賞。自由人の友人に振り回される常識人の話なのだが、よくわからず。放っておくとすぐに女を犯しちゃいそうな感じの原田芳雄。汚い髭と着物が、いやらしそうでカッコいい。

『陽炎座』(監督 鈴木清順/原作 泉鏡花)★★
泉鏡花原作ということなので、寺山修司の『草迷宮』と比べながら観たのだが、いまいちだった。ワンカットワンカットは美しいシーンがかなりあったのだが、それが連なって一つの作品になったとき、あまりにも盛り上がりのない作品になっている。話が進んでるんだか進んでないんだか全くわからない。

5月21日(土)
『クローサー』(監督 マイク・ニコルズ)★★
ゴールデン・グローブ賞を受賞したナタリー・ポートマンの演技と美少女ぶりを堪能。それにしてもヌードシーンがカットされたのが残念だ。かなり楽しみにしてたんだがなあ。ストーリーは男女の惚れた腫れたの四角関係の話。

『生きる』(監督 黒澤明)★★★
黒澤作品のベスト1と呼ぶ人もいる、ヒューマンドラマ。人は誰も還らざる時間を失いながら生きている。そし失ってみるまで、その大切さを知ることはできない。それは命のような重いものに限らず、友人と過ごした学生生活の時間とか、行きつけの店で食事をする時間とかいった些細なものまで含めて。そして人は、その時間、その場所に自分が確かに生きて、そこにいたのだという証を残そうとする。それこそ机に名前を彫ったり、お店に色紙を残したりとかして。志村喬演じる主人公が全身から発する、「私は確かに生きていたんだ!」という孤独の叫びが、深く心に残った。


5月14日(土)
『キングダム・オブ・ヘブン』(監督 リドリー・スコット)★★★
『グラディエイター』で歴史大作ブームの先駆けとなったなったリドリー・スコットが、ブームに終止符を打つ最後の大作、というのが宣伝文句。俳優も演出も悪くはなかったのですが、正直歴史大作ものは見飽きたというのが感想。登場人物もストーリーも戦争の描写も、だいたい想像がついてしまう。小ずるい敵がいて、家族か親友が刃に倒れて、絶体絶命の状態で演説をぶった後知恵と勇気で乗り切って、戦闘シーンでは、火矢と投石の雨が降りそそいで、城壁を越えるための山車が出てきて、という感じ。主演のオーランド・ブルームは『トロイ』とは天地ほどの違いで、カッコよかった。最後のナレーションは少し教訓的すぎるかも。

5月8日(日)
シベリア少女鉄道『笑顔の行方』(作・演出 土屋亮一/会場 紀伊國屋サザンシアター)☆☆
前回に引き続き、今回もオチの部分はいまいちでした。基本的にゲームは昔からほとんどやってこなかった人間なので、このネタはよくわかりません。実際テトリスは知ってたけど、DDRは名前しか知らなかった。ネタ振りの部分のシナリオと演技は格段に完成度が上がってきているので普通に楽しめたのだが、そういう楽しみ方をする劇団じゃないはずだ。先行販売特典のトレカは、会場手渡しが間に合わず後日郵送とのこと。残念。レアカードで染谷恵子さんとか入ってないかな。


5月7日(土)
『さよなら、さよならハリウッド』(監督 ウディ・アレン)★★★
2週続けて恵比寿ガーデンシネマへ。入場時に、なんかものすごく安っぽいウディ・アレンキャンディをもらった。久々の新作映画を撮るプレッシャーで目が見えなくなってしまう監督が主人公。画のほうはいつも通りの惚れた腫れたの内容。アレンも年取ってすっかりおじいちゃんになっちゃったなあ。アメリカでは落ち目の映画監督で欧州では評判が良いという本人そのままの役柄にちょっと食傷気味。それでも、健在の神経症的なマシンガントークを堪能して満足。
    
『ジャパン・アヴァンギャルド―アングラ演劇傑作ポスター展』(会場 北千住・THEATRE1010アトリ☆)☆☆
昨年都内10箇所で開催され、現在全国巡演中のポスター展。内容的には過去の展覧会で何度も見ているものですが、やっぱり良いものだ。ポスターハリスギャラリーから寺山の著書の詰まった本棚と「レミング」の小道具の巨大体温計が持って来てあったのがおかしかった。

『血の起源』(作 寺山修司/演出 栗田芳宏/音楽 宮川彬良/会場 北千住・THEATRE1010)☆☆☆☆☆
パンフレットが買えなかった……あれだけのキャパのある劇場で、パンフが限定50部ってどういうことですか?芝居の方が物凄くいい出来だっただけに、口惜しい。「身毒丸」の延長線上にある、生演奏を使った陶酔的な音楽。寺山の言葉を散りばめた、視覚的イメージにあふれた世界。スカートの裾をつまんで踊る少女たちが可愛らしい。主演の3人は動きも声も、あらゆる意味で怪しすぎる。
    

『鷺娘』・『野田版研辰の討たれ』(作 木村錦花/脚色 平田兼三郎/脚本・演出 野田秀樹/会場 歌舞伎座)☆☆☆☆
歌舞伎座初のスタンディングオベーションを巻き起こしたという、伝説の作品の再演。16時くらいから並びだして何とか一幕見席が買えたので、玉三郎の『鷺娘』と続けて鑑賞。俳優を使って影絵の手法で赤穂浪士の討ち入りを表現するオープニング。道中の場面で「弥次喜多」のメイクのが出てきたり、染五郎に向かって「最近の阿修羅のようなご活躍」という台詞があったりと、遊び心も満載。「キャッツ」のように踊りだしてしまうシーンには爆笑。テーマ的には「野田版・鼠小僧」と同じく、流されやすい大衆の心というものが描かれている。研辰が「生きてえなあ、生きてえなあ」と泣きながら刀を研ぐ場面には、その後の展開を知っているだけに泣けた。こういう卑怯でどうしようもない奴が死ぬ方が、憐れで心を揺さぶられる。「嫌がる私を殺すのは、もはや敵討ちじゃなく人殺しだ」という言葉に「9・11」後の世界が重なってくる。

5月5日(木)
『春夏秋冬そして春』(監督 キム・ギドク)★★★★
富野由悠季と蜷川幸雄も感動したという韓国映画。四季を描く、そこで生きる人間を描くというただそれだけのことが、こんなにも美しく、愛しいものだとは思わなかった。ある山奥の湖に浮かぶ小さな寺で暮らす和尚と少年。少年はやがて青年となり、病気療養にやって来た少女に恋をし、彼女を追って山を降りる。人生が四季に重ね合わせられ、その喜び・苦痛・後悔・慈愛といったものが語られていく。『幻に心もそぞろ〜』でも印象的に使われていた韓国語の歌曲が流れるクライマックスは感動的。HMVでサントラを売っているようなので、買いに行こうと思います。

5月4日(水)
『オールド・ボーイ』(監督 パク・チャヌク)★★★★
絶望の向うにあるさらなる絶望。映像、音楽、物語、俳優と、すべてが神話的な美しさに満ちている。傑作です。


4月28日(金)
『サマリア』(監督 キム・ギドク)★★★
前半の過剰なまでに仲の良い二人の少女のエロティックな睦み合いとは裏腹に、後半は胸が詰まるほど重苦しく凄惨な展開になっていく。罪と罰とは一体何か?終盤のロードムービーのような展開は、正直よく理解できませんでした。


4月23日(土)
『ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ』(監督 ジョン・ポルソン)★★★
予告で観た黒いドレスを着たダコタ・ファニングが、『ビートル・ジュース』のウィノナ・ライダーみたいで可愛かったので、観に行った。そして可愛かった。『シックス・センス』以降のスリラーに必ず使われる、“結末は絶対に明かさないで下さい”の煽り文句はいい加減うんざり。その結末は別に衝撃的でも何でもなく、予想の範囲内の内容だった。というか、状況証拠で他に犯人いないしなあ。

不安が的中し、『阿修羅城の瞳』は9位スタートと興行的には苦戦している模様。同じ滝田監督で大ヒットした『陰陽師』よりもはるかに傑作だと思うのに残念だ。どちらも伝統芸能の俳優が主演で、ジャンルも同じ伝奇ものだが、やはり野村萬斎は『あぐり』に出て知名度が上がっていたのがよかったのだろうな。市川染五郎も演劇界ではスターだろうが、一般的な知名度はいまいちという感じがするし。

4月16日(土)
『阿修羅城の瞳』(監督 滝田洋二郎/原作 中島かずき)★★★
劇団新感線の名舞台の映画版。『陰陽師』が好きになれなかったので、滝田監督には不安だったが、意外といい出来だった。市川染五郎は相変わらずの色気っぷりで、セリフも決まってる。富田靖子、天海祐希につづくヒロインの宮沢りえも、これまた可愛く、赤い着物から覗く肌が色っぽい。無国籍アジア風に描かれる江戸の町の様子が、にぎやかで面白い。VFXの部分は怪獣映画並みに派手。クライマックスの台詞回しは、原作のもがかなり生かされていて満足。出門と阿修羅王の丁々発止のやり取りは、聞いているだけで続々する。しかし客層が微妙であるだ。子供にとっては話がアダルトすぎるだろうし、真っ当な時代劇が好きな人には荒唐無稽すぎるだろう。

『コンスタンティン』(監督 フランシス・ローレンス)★★
キアヌ・リーブス主演だが、『マトリックス』とはまたかなり違った味わいの作品。VFXは迫力はあるが、どこかで観た感じのする映像ばかりで、あまり新鮮さが感じられなかった。ハーフ・ブレードを殺しまくるアクションとか、『ブレイド』の武器が、刀から銃に変わっただけじゃん。神のメリケンサックっていうのがまたいい。天使を融通の効かないホワイトカラー連中、悪魔を裏通りのゴロツキ連中みたいに描いてるのが、なかなか面白かった。


4月10日(日)
『月光の囁き』(監督 塩田明彦/原作 嘉国雅彦)★★
塩田明彦監督のデビュー作。主演の水橋研二とつぐみはいい味出してるが、性的倒錯を扱った割には、ドラマ展開はあっさりしていると感じた。


4月3日(日)
『カナリア』(監督 塩田明彦)★★★
大人のつけを払わされる子供たちの話、という意味では『誰も知らない』に印象が似ている。オウム事件を扱うというので、もっと社会性の強いものを想像していたが、むしろボーイ・ミーツ・ガールのロードムービーという感じだった。少年少女の駆け落ちといえば、「R&J」や「小さな恋のメロディ」のように、必要以上に自分たちを守り締め付ける大人から逃れようとする旅だったのが、大人を捜し求める旅になってるあたりに現代性を感じた。

『PEEP“TV”SHOW』(監督 土屋豊)★★
フィクションでありながら、半分ドキュメンタリーのような構成。渋谷の現在(いま)の映像がふんだんに使われている。現実に起きたことでもネットやテレビなどのメディアを通した途端、現実感が感じられなくなってしまう、というのはありがちといえばありがちなテーマだが、なかなか面白くまとまっていたと思う。ただ、1,800円払って映画として楽しめるものを観たいという人が満足できるかと言ったら、疑問が残る。しかし『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』といい、『リリイ・シュシュのすべて』といい、ハンディカメラで撮った映像は観てて疲れる。画面に酔って気持ち悪くなってしまった。

夜想会&モモグレ『多重人格探偵サイコ/新劇 雨宮一彦の消滅』(作 大塚英志/演出 野伏翔/会場 紀伊国屋サザンシアター)☆☆☆
もっとダークでサイコなものかと思っていたが、タイトルにもあるとおり、シンプルな新劇だった。原田大二郎演じる笹山徹と、松本まりか演じる女子高生(あるいは℃)の掛け合いに爆笑。井上ひさし『ブンとフン』、筒井康隆『朝のガスパール』(あるいは大塚英志の著作『物語消費論』でいえば『おしゃれ泥棒』か)などでも扱われた、虚構の入れ子構造をめぐるメタシアター。虚構と現実との境界、他人と自分との境界が曖昧になっている時代を反映していると言えるが、「私は作者で、あなた方は私の書いた登場人物に過ぎだ。私が原稿にそう書いたから、あなた方は喋ってるんだ」なんてセリフは、馬鹿馬鹿しいといえば馬鹿馬鹿しい。ラストは「虚構の世界から現実の世界に帰る」という第三舞台みたいな締め方。


3月30日(水)
『24TWENTY FOUR シーズンV』鑑賞終了。T・Uに比べると、いまいちだった感が拭えない。作戦のためとはいえ、ジャックはやりたい放題だし、憎まれキャラとはいえ、シャペルの扱いはひどすぎる。クライマックスのトニーとデスラーの愛の行方は見応えがあった。しかしレギュラーがほとんどいなくなってしまったが、Wはどうなるんだろう。


3月19日(土)
流山児事務所『夢の肉弾三勇士』(原作 流山児祥/脚本 高取英/演出 天野天街/会場 Space早稲田)☆☆☆☆
「爆弾担いで特攻、自爆!」というのは流山児祥の破天荒な演劇姿勢そのものという感じもする。とにかくすさまじい役者さんの熱気!三勇士の俳優さんが舞台に揃ってるだけで楽しい。「血飛沫ダンス!」と思わず歌っちゃいそうです。
   
演劇集団池の下『邪宗門』(作 寺山修司/演出 長野和文/会場 新宿SPACE107)☆☆
天井桟敷の『邪宗門』のCDを何百回とくり返し聴いて、思い入れたっぷりの身としては、どんなにできが良くても満足は出来ないだろうな、とは思っていた。しかしそれにしても、劇壊しの劇を謳っている割には、あまりにおとなしい舞台だったというのが、正直な感想。それこそ池の下が、長野和文が、寺山修司の台本の操り糸を断ち切って、暴れ回るようなものを期待していたが、どこも間でも予定調和な台本通りの進行。『大山デブコの犯罪』で劇団として一皮むけたと思っていたが、また一歩後退してしまった気がする。クライマックス、山太郎が山吹の不義を見つけた時に現れる、桜の花びらが舞い散り、異形の者どもが蠢きあうシーンの美しいこと。こういうシーンをもっと早く観たかった。ラストシーンは、シンプルに見世物芝居として終わらせればいいのに、なぜまたしてもこういう余計なラストをつけるのだろう。『星の王子さま』といい、『小鷹狩菊子』といい、一捻りしようとして結局陳腐になってしまっている。

3月13日(日)
『バトル・ロワイアルU 特別篇 REVENGE』(監督 深作欣二・深作健太)★★★
なぜ始めからこれで公開しなかったのか、という感じの未公開シーンを含めた完全版。劇場公開版は明らかに“不完全版”だったというのが改めてわかった。

『狐怪談』(監督 ユン・ジョエン)★★★
“韓国美少女ホラーの決定版”というキャッチコピー。ああ、そういう一つのジャンルだったんだ。鏡の中や夜の背後の闇に、ふっと現れて舞い踊る少女の亡霊の姿が美しい。霊が窓から侵入してくるシーンが、貞子がテレビから這い出てくるシーンそのまんまで少し笑えた。


3月12日(土)
『ローレライ』(監督 樋口真嗣/原作 福井晴敏)★★★★
潜水艦の最新兵器が超能力を持った美少女というのは、リアルな戦争モノを期待してる人にとっては相当荒唐無稽に感じられるんだろうが、アニメや漫画として考えればよくある設定でしょう。この監督の出自を考えれば、『不思議の海のナディア』を実写にしちゃいました、という感じなのかもしれない。世界の戦局を変える力のあるローレライシステムはブルーウォーターといったところか。ナチスの人体実験で潜在能力を引き出された、って設定はまんまニュータイプだし。戦闘シーンはさすがは『ガメラ』の樋口監督というか、圧巻の迫力。パウラのコスチュームはエロいなあ。

『ロング・エンゲージメント』(監督 ジャン・ピエール・ジュネ)★★★
『アメリ』のオドレイ・トゥトゥ主演によるコンビ2作目。戦闘のシーンの描写が想像以上に激しくて驚いた。戦地から後送させられるるために自分の掌を銃を撃ち抜いたり、目の前で爆弾の直撃を受けた兵士の肉片が雨のように降ってきたりといった、生々しい“恐怖”や“苦痛”を感じさせられるシーンがいつくもあった。ストーリーはものすごくオーソドックスな戦争悲恋モノ。そしてオーソドックスなハッピーエンド。監督の色は薄かった。


3月10日(木)
風琴工房『機械と音楽』(作・演出 詩森ろば/会場 下北沢ザ・スズナリ)☆☆
黒い舞台に真っ赤な舞台装置、そこに激しい音楽と共に真っ赤な照明があてられるというオープニングは鮮烈だったが、俳優の演技や紡がれるセリフは平坦で定型的。

『またの日の知華』(監督 原一男)★
スズナリを出たその足で、シネマアートン下北沢にて鑑賞。ドキュメンタリー映画の巨匠の初の劇映画。1人の女性を4人の女優によって演じるという画期的な試み、という触れ込みだったが、あまり効果を上げているようには思えなかった。惑星ピスタチオの舞台や前衛劇何かを観てる人間としては、試み自体がそれほど真新しいものには感じられなかったし、それ以前に単なる4編のオムニバス映画に見えてしまう。


3月6日(日)
1週間かかって『24TWENTY FOUR シーズンU』鑑賞終了。行く先々で他人に不幸をまき散らすキムがムカついた以外は、シーズンTよりも楽しめた。死を前にして急にかっこよくなるジョージ・メイスンの姿が泣けた。ミッシェルに最後のアドバイスをするところや、セスナ機の中でのジャックとのやり取りとかすごい好きです。あと女性工作員のブロンドに黒のカツラってのにも心惹かれた。『ティコ・ムーン』でもジュリー・デルピーがボブ・カットのカツラをかぶってたが、あのカツラを外してブロンドの長い髪がこぼれ落ちるところに何というかすごいエロチシズムを感じるんだよなあ。


2月20日(日)
『THE JUON/呪怨』(監督 清水崇)★
日本版に忠実、という触れ込みそのままの内容。つまり日本版が楽しめなかった私のような人間が観ても面白くはないわけです。確かに怖いのかもしれないが、話の脈絡や起承転結がなく、ただ怖いシーンを並べたという感じで、「ホラー映画」以前に、「映画」として楽しめないのです。


2月19日(土)
『影武者』(監督 黒澤明)★★★
私の知り合いにはいまいちと言う人が多かったが、結構楽しめました。人間ドラマとして見ると、感情のうねりが全く感じられないのですが、とにかく映像が美しい。


2月12日(土)
『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』(作 清水邦夫/演出 蜷川幸雄/会場 シアターコクーン)☆☆☆☆☆
いやあ、最高でした。私が観た蜷川作品の中では、『身毒丸』に並ぶベストワークだと思います。『オイディプス王』のように様式美に偏ることもなく、『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』のようにセリフの暗誦だけに終わることもなく、清水邦夫の詩的で力強い言語と蜷川幸雄の壮大で美しい演出ががっちり組み合い、相乗効果で素晴らしい世界が出来上がった。舞台には天井近くまで伸びる巨大な階段が作られている。『隠し砦の三悪人』に確かこんなのが出てきたような気がする。反乱に失敗し追われる身となった、将門とその一行。将門は頭を負傷し、よりにもよって自分が将門を追う刺客だという妄想に取りつかれる。妄想のままに将門の―つまり自分自身の―行動や思想を批判し、糾弾し、彼を慕って従ってきた妻の、友の、兵達の心を徹底的に踏みにじり、嘲けり、陵辱する。戯曲が執筆された当時の背景にあるのは、連合赤軍の「総括死」の事件とあさま山荘事件。幸福な集団が不幸な集団に墜ちていく。一度でも、「仲間」と呼べるものを持ったことがある人間なら、心を動かされずにはいられないはずだ。


2月11日(金)
宇宙堂『花粉の夜に眠る戀〜オールドリフレイン〜』(作・演出 渡辺えり子/会場 本多劇場)☆☆
渡辺えり子の作品初体験。もっとアングラチックなものを想像していたのだが、意外とセリフも演出もオーソドックスな内容だった。「うんこ」の話の辺りは多いに笑わせてもらったが、似たシーンのリフレインが続く終盤は少し居眠りしてしまった。

シベリア少女鉄道『アパートの窓割ります』(作・演出 土屋亮一/会場 シアター・トップス)☆☆
こなれて来た俳優の面白演技に、前半部分の楽しさはいつも以上だった。が、オチの部分は拍子抜け。まぎらわしさをネタにしたって事はわかったけど、こんなあっさり終わるとは。次回は紀伊国屋サザンシアターってことですが、期待半分、不安半分ですね。


2月5日(日)
『オペラ座の怪人』(監督 ジョエル・シュマッカー/原作 ガストン・ルルー)★★★
アンドリュー・ロイド・ウェバーのヒットミュージカルの完全映画化。ミュージカルは普段まったく見ないのだが、『ファントム・オブ・パラダイス』の元ネタらしいので一度は観ておかないとと思い鑑賞。ああこの曲が「ファントム・ジ・オペラ」のテーマかと納得。確かに聞いたことがある、いい曲だ。シャンデリアが上がっていくとともに、朽ち果てた劇場が再生していくシーンは圧巻。様々な俳優、歌手、ダンサー、曲芸師、動物などが入り乱れるオペラ座を描いたシーンが豪華で、それだけでも観る価値がある。実際に歌えることを基準に選んだだけあって、俳優の歌が素晴らしい。ファントムとヒロインの絡みなど、予想よりもずっとエロティック内容にかぶりつき。エミー17歳!胸もスカートもはだけすぎだよ、いいのかよ、おい!クライマックス、仮面の下の心を剥き出しにして泣き崩れるファントムの姿に涙。とりあえずCDが欲しくなりました。

『アレキサンダー』(監督 オリバー・ストーン)★
3時間は長すぎる。超大作歴史ホモ映画。しかもファザコンでマザコン。


1月29日(土)
KUDAN Project『劇終/OSHIMAI〜くだんの件』(作・演出 天野天街/会場 横浜相鉄本多劇場)☆☆☆
『弥次喜多』と同シリーズの二人芝居。夏休みの終わりの空虚な寂しい感じは、世界の終末を予感させる所がある。
   
gROTTESCO△sEPHIRAHプロデュース公演『洞窟曼荼羅』(作・演出 羅入/会場 東京バビロン)☆☆☆
こういうのが好きなんです。妖しく、美しく、そしていやらしい。最高でした。絡み合う二人の男女の舞。さながら二匹の蛇が交わっているかのように見える。何より女優のあの目が良かった。獲物を見据える爬虫類のような、冷たく黒く無機質な瞳。そして現れた無数の巫女と神たちによる狂乱の宴。踊り自体は同じ動きを繰り返すだけの単純なものだったが、それが逆に時間の感覚を喪失させ、いつ終わるのか、いつ始まったのかさえわからなくなり、無限にこの空間が続くのではないかという気分にさせられた。


1月27日(木)
ヘドウィグ再演決定!
ネットで知ったのですが、いやー、もう嬉しくて笑いが止まりません。ヘドウィグ以上にヘドウィグであると言えそうなほど、激しい三上博史の演技に圧倒された前回公演。もう一度見たくて、聴きたくて、感じたくてしょうがなかったのですが、本当にまたやってくれるとは。パルコ劇場他で6月に上演とのこと。これは絶対観に行くしかないですね。

1月23日(日)
『オーシャンズ12』(監督 スティーブン・ソダーバーグ)★★★
「1」に引き続き、オールスター集合の大人の雰囲気の映画。ちょっとした会話ややり取り、表情なんかが洒落てて素晴らしい。ベネディクト対オーシャンズ11の頭脳戦が再び繰り返されるのかと思えば、ブラック・フォックスという新キャラが一人奮闘し、両者ともほとんど活躍はなし。俳優を楽しむ映画であって、ストーリーを楽しむ映画ではないという印象。


1月21日(金)
『ターミナル』(監督 スティーブン・スピルバーグ)★★★
空港に足止めされることになった男を巡る、トム・ハンクス主演のハートフル・コメディ。けっこう楽しめたが、傑作という程じゃないと思う。


1月15日(土)
月蝕歌劇団『家畜人ヤプー』(原作 沼正三/脚本・演出 高取英/会場 大塚萬スタジオ)☆
やっぱりエロ芝居になっていた。何故ヤプーでセーラー服の少女が緊縛されてるんだ?何故ピュ−がスクール水着の女の子なんだ?何故女優の一人がひん剥かれる必要が?といった疑問が次々浮かぶ。畜人がどう描かれるのかが楽しみで、『奴婢訓』の小竹信節が作ったような装置を想像していたのだが、タイツを被っただけとか、自転車に跨っただけのちゃちなものでがっかり。エロさ以外に観るべきものはなかったが、シーザーの音楽が良かったからいいか。「私はほんとはゾウリムシ/ただ泥の中」という歌詞が自虐的な人間の心をくすぐる。

遊園地再生事業団+ニブロール『トーキョー/不在/ハムレット』(作・演出 宮沢章夫/会場 シアタートラム)☆☆☆
『ハムレットをまちながら』ともいうべき、ある不在の人間をめぐる物語。まったりとした絶望。映像、コンテンポラリーダンスとのミックスがなかなか面白い。無限に続くローソンの映像はかなり不気味だった。

1月9日(日)
『カンフー・ハッスル』(監督 チャウ・シンチー)★
やりすぎです。前回以上の漫画っぽい演出が過剰すぎて、食傷を起こしてしまいました。意味もなく『シャイニング』や『マトリックス』のパロディがあるのも好きになれない。


1月8日(土)
東京幻想倶楽部『即席電影館』(監督 麿/会場 JazzBarサムライ)★
寺山系サイトに情報が載っていたので、何となく観に行ってきました。ああ、学生の頃に観た映画サークルの自主制作映画を思い出すなあ。幻想的な作品を目指してる感じは伝わってくるし、よく出来ているとは思うが、やはりアマチュア作品なので、一見さんの鑑賞に堪え得るほどのものではないよなあ。お客も内輪という感じの人ばっかりで、なんか居づらかった。

1月3日(月)
年末年始は『24TWENTY FOUR シーズンT』を見ている間に終わってしまった。噂通り面白かったが、最後のあのどんでん返しだけは納得がいかないなあ。

Project Nyx「浅草版・くるみ割り人形」(作 寺山修司/脚色 岸田理生/構成・美術 宇野亜喜良/演出 金守珍/会場 吉祥寺シアター)☆☆☆☆



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