映画・演劇鑑賞記録2002
2002年、これまでの鑑賞結果
★は映画、☆は演劇。☆〜☆☆☆☆☆でお勧め度を表わしています。あくまで個人的評価です、念のため。
12月30日(月)
『スコルピオンの恋まじない』(監督 ウディ・アレン)★★★
いつものどおりのウディ・アレン。ヘレン・ハントを相手役にした、佳作のコメディ。相変わらず会話の一つ一つが最高に面白い。
12月24日(火)
ユニオンレコードより「薔薇門」のCDが届く。1972年、寺山修司の企画により、「ゲイ(男色)」の人々を集めて製作されたCDの復刻版。ゲイバーのママを集めて出演させた芝居「毛皮のマリー」のレコードバージョンといったところか。聞きどころはやはり最終トラックの「君は答えよ」だろう。J.A.シーザーによる「君は答えよ!世界の終りが明日でも、君の生き方が自由だったと本当に言いきれるか!」という叫びから、東郷健の演説にいたる部分は「邪宗門」のクライマックスに匹敵する迫力がある。しかしクリマスイブに一人でゲイのCDを聞いてるというのはどうなんだろう……
12月14日(土)
NYLON100℃『東京のSF』(作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ/会場 シアターアプル)☆☆☆
前半はひたすら笑えて、後半はなんだか少しいやーな気持ちにさせられる、といういつもの内容。冒頭に合唱される劇中歌が印象的。(後日ムーンライダーズの「マニアの受難」という曲だと判明)これもいつものことだが3時間は少し長すぎる気がする。客演の渡辺えり子をあまり生かしきれてなかった気がした。
12月12日(木)
寺山修司の没後10周年に企画されたトリビュートアルバム「失われたボールをもとめて」が通販で届く。廃盤になっていたので入手を絶望視していたのだが、ネット上の古本屋で販売されているのを見てすかさず注文。多少のプレミアはよしとしよう。大槻ケンヂ、戸川純、タモリ、辻仁成など出演陣は豪華で、歌・朗読モノマネなど内容も多彩だが、その割にあまり迫力はない。やはり寺山世界を再現するのに、シーザーに勝るミュージシャンはいないということだろうか。
11月23日(土)
森博嗣の講演会を聞くために西の都、京都へ。ついでなので前日に現地入りし、あちこち見て廻る。嵐山の紅葉は素晴らしかった。清明神社は意外と大したことなかった。そして学祭開催中の、京都大学へ。13:00配布開始にもかかわらず、10:30には、既に列ができていた。寒風吹きすさぶ中、文庫版「地球儀のスライス」を読みながらひたすら2時間半の時間を待つ。そして整理券をゲット!開場後も、教室の回りには整理券を手に入れられなかった人が大量に窓に張り付いて中を覗き込んでいた。そして森博嗣登場。見た目は意外と普通の人だ。ありきたりな表現を使うと、おじさんというよりは少年がそのまま歳を取ったような感じの人。テーマは「アンチの視点」。常に疑問符を持って日常を見つめること。そう、寺山修司も言っている。「私は大きくなったら質問になりたい。いつだって「何故?」と問い掛けることのできる瑞々しさを持った質問に」と。
10月30日(水)
流山児事務所『人形の家』(作 寺山修司/演出 流山児祥/会場 シアターサンモール)☆☆☆☆
1999年のジァンジァン公演にくらべて、遥かに練り上げられていて、傑作に仕上がっている。京劇のような美粧の俳優たち。人形遣い役の男たちが舞台を踏み鳴らし、人形役の女優たちは舞い踊る、宵越し祭りのような活気溢れる演出。本田実の音楽も非常によかった。
9月29日(日)
何となく気が向いたので、新宿御苑を散歩する。そういえば一度もまともに歩いたことはなかった。その帰りに中野の古本屋で1993年の毎日グラフ別冊「寺山修司 反逆から様式へ」を見つける。素晴らしい内容。
9月28日(土)
シベリア少女鉄道『デジャ・ヴュ』(作 土屋亮一/演出 槌市良哉・土屋亮一/会場 王子小劇場)☆☆☆☆☆
クイック・ジャパンの記事で気になっていたが、今回初観劇。物語は前半と後半に分かれるが、前半のシナリオとまったく同じシナリオで、後半はまったく違う話が展開されると言う内容。想像以上に面白い出来だった。
演劇実験室万有引力『盲人書簡・上海篇』(作 寺山修司/演出 J.A.シーザー/会場 法政大学学生会館ホール)☆☆☆☆
「28年ぶりに同じ劇場で復活」ということで気合を入れて観に行った。毎度おなじみの完全暗転芝居。観客一人一人にマッチを持たせたインタラクティブ性はなくなっているが、それでもまあ面白かった。闇の中にマッチの灯りで浮かび上がる、異色の俳優たち。「見えないものを視る」ためには、闇が必要だと。
8月24日(土)
「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」(監督 ジョン・キャメロン・ミッチェル)★★★★★
プラトンの『饗宴』をモチーフにしたという曲「オリジン・オブ・ラブ」をはじめ、楽曲が最高。ラストが少し理解に苦しむところ。「裸の自分で生きろ」ってことなんだろうか。
8月18日(日)
『拳銃よさらば』(監督 須川栄三/脚本 寺山修司)★★
ラピュタ阿佐ヶ谷にて、寺山漬けの一日。これが1本目。大藪春彦のハードボイルド小説が原作ということだが、噂によると寺山が好き勝手に脚本を書いて、原作とは全然違う話になっているらしい。兄を事故でなくした青年。兄の知り合いから、兄は実は仲間と危ない仕事で大金を稼ぎ、その金を独り占めしたい他の奴等に事故に見せかけて殺されたのだと吹き込まれる。青年は兄の形見の拳銃を手に、兄の仲間だった奴等を一人ずつ殺していく……。相手が家族と幸せな生活を送っているものであっても、兄の無念を思って容赦なく撃ち殺していく青年の姿に、復讐の達成感とは程遠いやるせなさが漂う。青年の拳銃をおもちゃだと思って手に取った子供が、銃口を青年に向けて引き金に手をかけ、そこに警官が通りかかるというスリリングなシーンが印象的。結末自体は一番身近な奴が犯人というありがちのもの。
『夕日に赤い俺の顔』(監督 篠田正浩/脚本 寺山修司)★★★★
寺山にもコメディが書けるんだというのが新鮮な驚きだった。ラストも珍しくハッピーエンドだし。今まで見た寺山映画の中で一番面白かったかもしれない。殺し屋たちの仕事振りをサラリーマン風に面白おかしく描く。主題歌・挿入唄もいい味を出している。寺山作詞と思われるが、是非音源化してほしいものだ。
劇団APB-Tokyo『さらば映画よ!スタア篇』(作 寺山修司/演出 高野美由紀/会場 ザムザ阿佐ヶ谷)☆☆☆☆
月蝕歌劇団が制服向上委員会と組んで、「ミーハ―アイドルおたく男性向けの芝居」になりつつあるのに対し、きっちりとアングラと少女エロスの世界を見せてくれた。俳優に憧れる少女の悲しい末路。「演じる側になりたい」とどんなに願っても、自分はどこまでもただの観客でしかない。
8月11日(日)
月蝕歌劇団『時代はサーカスの象にのって2002』(作 寺山修司/演出 高取英/会場 ザムザ阿佐ヶ谷)☆☆☆
「今回秘策を用意した」と高取英氏が語っていたが、蓋を開けてみれば要するに「時代はサーカスの象にのって」+「田園に死す」だった。少年の家出先が東京でなくニューヨークにされちゃってるのはちょっと無理があるんじゃないだろうか。「田園に死す」では八千草薫が演じた人妻・化鳥の役を演じた野口昌代の可憐さが印象に残った。というか、うっかり桟敷席に座ったら、超満員で、脚が痺れて芝居に集中するどころではなかったのだが。あの鮮烈な「孤独の叫び」が、すっかりアイドルの歌唱曲にされてしまっていたのには拍子抜け。いや、たしかに可愛いんだけどね。「制服向上委員会」の参入ですっかり「おたく向けアイドル芝居」と化してきたな。
8月10日(土)
劇団新感線『アテルイ』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり/会場 新橋演舞場)☆☆☆
立見席で3時間半はさすがにつらい。好敵手と書いてパンフでいのうえひでのりが富野監督と対談していてびっくり。富野監督も最近あっちこちに出てくるよなあ。個人的には「阿修羅城の瞳」の方が好み。市川染五郎と堤真一の二大俳優の激突は惚れ惚れするほどカッコいい。水野美紀の役どころは少し中途半端でわかりにくい気がした。最後の祭のシーンには感動。
7月27日(土)
少年王者館『真夜中の弥次さん喜多さん』(原作 しりあがり寿/脚色・演出 天野天街/会場 池袋シアターグリーン)☆☆☆☆☆
ヤク中の幻覚をそのまま舞台化したような内容が素敵すぎる。実際に出前を取ってしまうのには笑った。
珍しいキノコ舞踏団『ニューアルバムズ』(演出 伊藤千枝/会場 世田谷パブリックシアター)☆☆
7月13日(土)
ナイロン100℃「フローズン・ビーチ」(作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ/会場 紀伊国屋ホ―ル)☆☆☆☆☆
じわじわと迫ってくる怖さ。だが、結局死ぬ人間は一人だけ。それ以上は誰も死なないし、狂わない。生きていかざるをえない怖さというか。生きるって無間地獄なんだなあ、と。
演劇実験室万有引力『さよならの城』(作 寺山修司/演出 J.A.シーザー/会場 サンシャイン劇場)☆☆☆☆☆
音楽の良さは言うまでもないが、それを引いても今回はかなりいい出来で、自分のような寺山マニア以外にも薦められる。「観客席2001」が、幕開きの衝撃に比較して後半失速していったのに対して、今回はなんと言うか、最後まで飽きなかった。パンフでも語られていたが、ちゃんとエンターテイメントできるじゃん、J.A.シーザー。
3月30日(土)
tpt『アダムとイヴ わたしの犯罪学』(作 寺山修司/演出 木内宏昌/芸術監督 デヴィッド・ルヴォー/会場 ベニサン・ピット)☆
「tptフーチャーズ2002」として、ストリンドベリ『火あそび』とともに上演された。寺山修司の初期の戯曲。トルコ風呂の二階に暮らす四人家族の物語を聖書になぞらえて描く。演出があまりにも真正直すぎて、中盤以降ほとんど寝てしまった。
流山児事務所『最後から二番目の邪魔者』(作 佃典彦/演出 天野天街/会場 ザ・スズナリ)☆☆☆☆
3月21日(木)
『身毒丸』(原作 寺山修司/脚本 岸田理生/演出 蜷川幸雄/シアターコクーン)☆☆☆☆
「まなざしの落ち行く彼方ひらひらと蝶になりゆく母のまぼろし」
95年に武田真治主演で、97年に若干15歳の藤原竜也の主演で上演された「ニナガワの、テラヤマ」作品の最終公演。武田真治版をビデオで観たことがあったのだが、基本的には演出・音楽・台本ともまったく同じ。昔インタビューで「寺山作品はお客に親切じゃないから嫌い」見たいなことを言ってたくせに、こんなにいい舞台を作っちゃってずるいよ、蜷川さん。藤原竜也・白石加代子の二人に俳優の存在感が圧倒的だった。庵野秀明、夢枕獏が寄稿しているパンフレットも読み応えがあり。
『天保十二年のシェイクスピア』(作 井上ひさし/演出 いのうえひでのり/会場 赤坂ACTシアター)☆☆☆☆
「誰か俺に馬をくれ!この地獄から抜け出すには、ただの馬じゃ駄目だ!翼の生えた天馬でなければ!そいつを持ってきた奴に、何もかもくれてやる!」
1月26日(土)
『狼少年』(監督 丹内心道/音楽 J.A.シーザー)★
シーザーの音楽以外は見所はあまりない。監督は寺山修司のスタッフだったらしいですが、多くのシーンが寺山映画の模倣にしか見えませんでした。自主制作映画のような映像で、2時間半は少し長すぎる。
月蝕歌劇団『女神ワルキューレ海底行』(作・演出 高取英/会場 ザムザ阿佐ヶ谷)☆☆☆
「神様!何をぐうたら寝てるの!」という言葉、立ち並ぶ少女たちの太腿から一斉に流れだす初潮の血、などが印象的だった。高取英は昔から、神や権力や大人に反逆する少女を描き続けてきたのだと再認識。
ヤルッツェ・ブラッキン『優曇華の花、待ちえたる心地』(脚色・演出 きだつよし/会場 シアター・サンモール)☆☆☆
宮村優子出演。飛んだり跳ねたりよく動く。