暴力としての言語
〜私家版・ポッケトに名言を 毒薬篇〜
安全カミソリがやさしく ぼくの手首を走る
静かに ぼくの命は ふきだして
真夏の淋しい 蒼さの中で ぼくはひとり
真夏の淋しい 蒼さの中で ぼくはひとり やさしく発狂する
森田童子『逆光線』
ひと月に一度 座敷牢の奥で玉姫様の発作がおきる 肌の色は五色 黒髪は蛇に
放射するオーラをおさえきれない 中枢神経 子宮に移り
十万馬力の破壊力 レディヒステリック 玉姫様 乱心
戸川純『玉姫様』
ドリルのスイッチ オンするこの手 お願い誰か私を止めて
闇夜に唸る轟音で 鳥肌が立つのよ身体中 あ駄目
殺意の炎にガソリンそそぐ ああもう我慢ができない
腕や目玉や脳まで 愛しい貴方が食べたい 誰でもいいから私を止めて
ヤプーズ『肉屋のように』
(おはよう!) 冷たく 朽ちてゆく あたしの体 (おやすみ!) ひびわれ はぜてゆく 桃色の肉
その重い扉をあけて 早く抱きしめにきて 屍は蝕まれ続ける 哀れな私を
(愛して!) 喰らいつくして 地獄のラブシーン (すべてを!) 肉のきずなで 一緒になれる
宮村優子『女のGo!』
「これ全部一体どんな国かわかりますか?これらはみーんな、この60年間でアメリカに爆撃を受けた国です。その数、実に22カ国。死者およそ800万人。世界は平等なんてウソです。人の命は平等なんかじゃありませーん!」
*
「大変長らくお待たせしました。BRU!今日は皆さんに、ちょっと戦争してもらいます」
*
「人生には、勝ち組と負け組の二つしかありません。(中略)君たちは勝ち組ですか、負け組ですか?負け組は、用がないので死んでもらいます」
深作欣二『バトル・ロワイアルU 鎮魂歌(レクイエム)』
「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます。最後の一人になるまでです」
深作欣二『バトル・ロワイアル』
きちがい おくさん 三つ子を うんだ
どの子も どの子も きちがいだ
青ひげ 王さま おきのどく
寺山修司『青ひげ公の城』
誰かがおまえに矢を射かけるかと 怯えて怯えて夜も眠れない
誰かがおまえに毒を盛るかもと 怯えて怯えて水も飲めないね
中島みゆき『DIAMOND CAGE』
もう本当に歳を取り、頭の病気も患った私は、今では地球の重力から解放されたように、体も心も軽くなりました。自分の意識が夢か現実か記憶か、生きているのか死んでいるのかさえ、定かでなくなるときがあります。
映画『水の中の八月』
「近代科学」「コンピュータによる急成長テクノロジー」「モダンアート」「製図」「対外政策」「新兵器」「青年」「迷子」「宗教」「流行の説教」「生活水準」「各部屋にTV」「教育」「各部屋にTV」「世界の将来は?」「試験管ベイビー、TV教育、新たな夢、新たな憎悪、戦争、無益な集団自殺への過程」
映画『まごころをきみに』
突然<Yr>の言葉で深い穴から金切り声の叫び声があがった。≪罪はない!罪はない!≫とたんに、自由の世界からデボラ・ブローはまっさかさまに二つの世界のぶつかりあいのまっただなかに落ち込んだ。例によってそれは音もなく、言葉もなく、無気味な崩壊の瞬間だった。彼女がそれまで生きていた世界の太陽は突如として砕け散り、地は噴き上げ、体は粉々に裂け、歯と骨は折れていった。
ハナ・グリーン『デボラの世界』
≪お聞き、小鳥さんよ、お聞き、荒れ馬であるものよ、お前はあいつらの仲間ではない!≫〈Yr〉語には永遠の隠遁の響きがあった。≪私を見てごらん!≫〈アンテラビー〉は墜ちながら叫んだ、≪お前さんは穴とたわむれていればいいのだ、永遠に、だ。お前さんは自分の破滅のまわりを彷徨し、時々破滅のそこここを小指でつついているのだ。封印を破ってしまうだろう。そうすればお前さんはおしまいだ≫
ハナ・グリーン『デボラの世界』
ある日、小川の中で、全身を水に濡らしながら、うまそうに蝶々を食べている美那が巡査に発見された。
「お前、田所さんのとこの美那じゃろう」と恐る恐る尋ねた巡査に、美那はりん粉を口の周りに光らせながら、「ちがう!幽機交流人間七号だ」と、きわめて冷静に答え、あっけにとられた巡査の前で「おてもやん」を踊りはじめたんだそうな……
大槻ケンヂ『くるぐる使い』
目がすわっていて、かなり酔っているようでした。いきなりのことにボクが黙っていると、彼女は再び、
「お前、酒飲んでるのけ?」
と茨城なまりで聞きました。
「いいえ、ファンタです」
と、当時は正直者だったボクは彼女にそう答えました。彼女は「ケッ」と言って、またヨタヨタと歩いていきましたが、門のところでふりむき、
「あたしを見くびるんじゃないよ。神様の白い肌はあたしの電子計算機で血だらけの真っ赤っ赤だっぺよ」
よく覚えてはいませんが、確かそんなような、アングラ劇の台詞のようなことをボクに言ったのです。そしてニヤリと笑い、
「いしけーなー、このガキはよ、でもいつか死ぬ」
と付け加えました。
大槻ケンヂ『リンウッド・テラスの心霊フィルム』
胎児よ 胎児よ 何故躍る 母親の心がわかって おそろしいのか
夢野久作『ドグラ・マグラ』
……そのほか、ストーブが欠伸したの、卵の黄身が皿の中から睨んだの、昨夜帰りがけに、向こうの辻の赤いポストの位置が違っていたの、パン焼き釜が深夜に溜め息をしたの、画像が汗を流したの、机の引き出しから白い手があらわれてオイデオイデしたの、ピストルが自分の方を向いてズドンと言ったの……というような奇怪現象が、科学文明のドマン中にひっきりなしに起こってくるのは、みんな脳髄の疲労から起こる、反射交感事務の間違い……すなわち意識の夢中遊行にほかならないのだ。
夢野久作『ドグラ・マグラ』
白イい目玉は可愛いよ お口の中から飛び出して
お箸の先から逃げ出してコロコロ コロコロ転がって 何処かへ見えなくなっちゃった
アラアラアラアラアポンチキチ 可愛いヨオー 可愛いヨオ
夢野久作『ドグラ・マグラ』
だしぬけに 血みどろの俺にぶつかった あの横路地の暗闇の中で
頭の中でピチンと何か割れた音 イヒヒヒヒヒ ・・・・・・と・・・・・・俺が笑ふ声
白い乳を出させようとして タンポポを引ききる気持ち 彼女の腕を見る
夢野久作『猟奇歌』
「ソムトシヌルゾ、カミヌシニソムクナヨ、ナンジガメテイルゾ」
寺山修司『花嫁化鳥』
「かわいそうに、このおかあさん、ときとぷらずまにおかされたのです。ときとぷらずまにおかされると、どうぶつならば三つ目の化け猫、口が二つの犬などがうまれるのですが、それがもしも人間の胎内にはいりこんでしまったら、どんな異形のものが生まれるのでしょうか?」
寺山修司『花嫁化鳥』
のろひ くろかみ くぎぼさつ はかしょ あかおび さんぜんり
ははなればこそ くぎをうつ まなこつぶれろ ままこしね
しねしねなむあみだぶ しねしねなむあみだぶ
寺山修司『身毒丸』
この子泣ひたら俵につめて 土佐の清水へおくります 土佐の清水は海より深い 底は油で煮へ殺す
母さん 顔なし 呼子鳥 お乳足りない 寝たりない
寺山修司『身毒丸』
金襴緞子で首絞められて 花嫁御寮は何故泣くのだろう
嫁さんごっこの花嫁人形は 荒縄縛りのお仕置きしましょう
この屋の主は花嫁嫌い 着せてあげましょ血まみれ衣装
寺山修司『血の起源』
不正咬合 ジフテリア 花粉ぜんそく 豚コレラ 声帯ポリープ 失語症
ペスト ケロイド 黒死病 発声障害 夜盲症 ポリオ 円型脱毛症
風目 ジストマ 外耳炎 マラリア 高所恐怖症 肝臓ジストマ 百日咳
老人結核 狂犬症 赤痢 黄ダン パラチフス 真珠炎 脱腸 巨人症
ハンセン氏とバセドー氏と メニエル氏とシモンズ氏が ポーカーしている 賭け代は墓石十六トン
手術しろ草の根分けても捜し出せ 徹底的に手術しろ 毒のあざみで拭き清め 出刃包丁で抉り取れ
寺山修司『阿片戦争』
「まるで現実に存在しない何かに中毒しているかのようだ……」
デヴィッド・クローネンバーグ監督『裸のランチ』
何の役にも立たず ベッドでも下手 おまえを好いてる奴などいないから 死んだ方がましさ
みんなでさよならを言いに来た さよなら 挫折の中で生まれ むなしく死ぬ 何という破滅
ブライアン・デ・パルマ監督『ファントム・オブ・パラダイス』
「僕がプールに入ろうとするとね、プールの底に出目金の目玉が五百個ぎょろっと現れるんだ。それで僕に向かって「やめて!ふんづけないで!」って言うんだけどね、僕はわざとゆっくり時間をかけて25メートルを歩いていくんだ。ぶちっ……ぶちっ……ぶちっ……」
吉澤耕一・白井晃 構成・演出『僕の時間の深呼吸』
「僕は今自分の首を抱えてここに腰掛けている……月は顔を隠してはまた現れ出るけれども、別に前より利口そうな顔もしていない……では僕の領分へ帰って行こう。あの気違いにそそっかしく踏み倒された十字架を立て直そう。そうして何もかも片付けた上で、また仰向けになって腐りながら暖まって、笑っていよう……」
フランク・ヴェデキント『春のめざめ』
タイムマシン 過去へ未来へスビキュンシャズズン タイムマシン 可愛い私の子供時代
蓮華の絨毯 人形遊び 不思議なまじないフィーフィー 金米糖
J.A.シーザー『架空過去型《禁忌》まじない』
すべての人が死んでいく時に 私は歌う愛の賛歌
すべての人が死んでいく時に 誰かが歌う子守歌
枯れた木にたむろう黒い鳥が 闇に向かって叫ぶだろう
すべての人が死んでいく時に 闇に向かって叫ぶだろう
J.A.シーザー『すべての人が死んでいく時に』
友達はいないからノートに猫の絵をかく 友達はいないからやせた子猫の絵をかく
同じ会話に夢中で同じ調子で笑って くだらない君たちの中でボクは貝のように黙った
あの人は暗いから話しかけるの止めとこう あいつはあぶないから話しかけるの止めとこう
蜘蛛の糸が降りてきたら ボクは誰よりも早く昇ろう ボクの姿消えたとき みんな初めてボクに気付くのさ
蜘蛛の糸を昇って いつの日にか見おろしてやる 蜘蛛の糸を昇って いつの日にか燃やしてやる
最近どうもみんなが僕を笑ってる気がする
大丈夫 大丈夫 大丈夫 大丈夫 大丈夫 大丈夫 大丈夫だよねぇ
筋肉少女帯『蜘蛛の糸』
メロディ メロディ メロディ そう 夢のように
メロディ メロディ メロディ 何もかもが
メロディ メロディ メロディ そう 消えていく
筋肉少女帯『小さな恋のメロディ』
「やめろー!人生は最後の武器だ、無駄弾を撃つんじゃない」
「しかし、死んでゆきます」
「だから何だというんだ!?逃げるのか?諦めるのか?一生を闇の中で過ごすのか?」
筋肉少女帯『221B戦記』
「神様のために」「私達のために」「プラネタリウムへ」「プラネタリウムを」「作ってください」「助けてください」「死にたくない」「泣きたくない」「私だって幸せになりたい」「プラネタリウムへ」「プラネタリウムを」「しかしエリア51でNASAが盗聴していた」「火をつけられて私は死んだのよ」「死んだのよ」「泣き死んだのよ」「お前のせいだ!」「あなたが責任を取ってください」
筋肉少女帯『サンフランシスコ10イヤーズ・アフター』
唇をこじ開けて焼けた石を入れ 爛れた内臓に煙が上がる
手足を切り落とし皮を剥がされて 煮えたつ釜の中放り込まれても
愛の絆は忘れない 人の道逸れた恋
二人の首にくくりつけたあの世で結ぶ赤い縄 地獄の子守歌
犬神サーカス団『地獄の子守歌』
焼け落ちた校舎から 壁に埋まった髑髏(しゃれこうべ)
資本主義の成れの果て 闇は世界を飲み込んだ
血まみれ内臓ロックンロール 放射能を撒き散らせ
血まみれ内臓ロックンロール 破滅の為の EDUCATION
犬神サーカス団『血まみれ内臓ロックンロール』