境界性人格障害


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境界性人格障害は、境界例ともボーダーライン(Borderline)とも呼ばれています。
日本では、1980年代になってようやく注目を集めるようになりました。


境界例の方は、今までにないタイプの患者さんが多く、 薬物療法が効きにくく、
手首を切る、大量服薬するなどの自殺企図が 多々見られ、
精神科医や看護婦にすがってくるかと思えば、驚く ほどの反発を繰り返します。

また、主治医に対して、「あの先生は、信用できない。」 などと
病院スタッフに言いふらし、 いつのまにか、
医師と看護婦、看護婦とスタッフ間の信頼がなくなり、
入院病棟の緊張が、異様に高まる場合が多々ありました。

こうした今までにない、患者さんが、境界性人格障害という新しい タイプの精神障害であると
医師が気づきはじめたのは、アメリカからの 文献が入ってきてからです。




境界性人格障害のおもな特徴


見捨てられ不安


境界例の方の多くが、愛する人や大事な人に見捨てられるという不安を絶えず抱えています。
人間は誰でも多かれ、少なかれ、愛する人や大事な人に見捨てられるという不安を抱いていますが、
境界例の方の場合は、見捨てられ不安の感情が、非常に強く、
周囲の人には、理解できないほどです。

J・F・マスターソン博士によると、この見捨てられ不安は、
ハイハイを はじめたばかりの赤ちゃんが、母親を探し求め、
泣き叫んでも母親を見つけることができない場合に起こる、
さみしさ(孤独感)や、不安感、怒りの感情のように、心の奥深くから、
わきあがってくるものであるといいます。

このような状態におかれた赤ちゃんが必死に泣き叫ぶ姿を想像して下さい。

境界例の方の見捨てられ不安は、この泣き叫ぶ赤ちゃんと同じような 状態にあるのです。
常にあるさみしさや、怒り。 むなしさや絶望感からくる落ち込んだ気持ち。
一人という孤立感やどうでもいいという自暴自棄の感情などは、
この見捨てられ不安が、原因です。

境界例の方には、この見捨てられ不安が、つねに付きまとっているので、
繰り返し、繰り返し、さみしさや、怒り、 むなしさ、絶望感、孤立感、自暴自棄の感情が襲います。

このような状態では、安定した人間関係を結ぶことなどできません。
いったん相手を信頼できると思いこむと、今度は、見捨てられないように、
しがみつこうとします。 相手が、困り果て、境界例の方を避けようとすると、
今度は、一転して、 激しい怒りをぶつけたり、引き止めるために、自殺しようとさえします。
このように、境界例の方の周囲にいる人たちは、不安定で、
衝動的な人間関係の うずの中に引き込まれていくのです。




良い自分と悪い自分


境界例の方は、良い自分と悪い自分を分けています。
良い自分は、多くの人たちに愛される人間であり、悪い自分は、
多くの人たちに見捨てられる人間というように、本人の中では完全に 分裂しているのです。

自分には、良い面と悪い面があるというようには、受け取ることができず、
良い自分だけで、生きようとします。
両親や周囲の人間の期待を裏切らないためにも、
おとなしい良い子でいようと必死に努力します。
悪いところを持った自分を周囲の人が、愛してくれるとは決して 考えません。

「良い子でなくては、愛されない。 良い子でなくては、見捨てられる。」との思いから、
良い自分であり続けようとします。

しかし、良い子であり続けることは、できません。
人間は、誰でも、悪い部分を持っているのですから。

人間関係が、複雑になる思春期頃になると、
良い子であり続けることがだんだんと困難になってきます。
それでも良い子であり続けようとする境界例の方は、
自分の悪い部分を 切り離し、不都合な点は、他人に押し付けることによって、
問題を乗り切ろうとします。

悪い部分を完全に切り離している境界例の方は、
その部分を他人に、 指摘されても、理解することはできません。

なぜなら、悪い部分を持った自分など、存在しないのですから・・・。


ある境界例の方は、自分の悪い面を全く知らずに、生活しておられました。

家族に、暴言や暴力を振るう場合があっても、すぐにその事実を忘れ、
おとなしく、ガマンすることのできる良い自分が自分自身のすべてであると
思い込んで生きておられました。

家族がどんなに、暴力や暴言の話しをしても、それは自分ではないと思っているので、
話しを聞きません。

それどころが、「あなたこそが、私に暴力をふるったでしょう。」と言い張る始末です。


この境界例の方の場合のように、
悪い部分の指摘を続けることは、結局のところ、 激しい言い争いを
招くことになり、

「悪いのは、自分ではなく、あの人のせいだ。」というように、
自分自身の悪い部分を他人に転換し、この意見を相手が受け入れるまで、
爆発的な感情は、収まりません。

家族や、恋人や、友人にとっては、最初は、戸惑いを覚えながらも、
境界例の方の爆発的な感情に接するうちに、いつのまにか、 同じ考えに至ります。
境界例の方と同じ意見を持つに至る原因は、 このような理由によります。

境界例の方にとって、悪い人は、自分自身の悪い部分を持った人間である分けですから、
とうてい受け入れることなどできません。

その結果、悪い自分から逃げる(悪い自分を切り離す)ためにも、
その人に対する、 攻撃が始まります。

不安定な感情を持つ境界例の方にとって悪い人が、
いつのまにか良い人になっている 場合も多々あり、その逆の場合もあります。

例えば、朝のお母さんは、良い人などで、境界例の方の良い面しかでません。
しかし、昼に、ささいなことで口論になったりすると、
自分の悪い部分を受け入れることができない境界例の方は、お母さんのせいにします。
悪い人にされたお母さんは、批判、中傷などの暴言を受け、
時には、 暴力さえ振るわれる場合があります。

1日に、境界例の方の態度が何度も移り変わるので、
お母さんや周りの人間にとっては、 戸惑いとなすすべの無さだけが残ることになります。

このように、大好きな人が、半日後には、大嫌いな人になるという、
不安定な状態が続くうちに、心の中は、不安や孤独感・むなしさで 覆い尽くされ、

この苦しみから逃れるかのように、家庭内暴力や自殺未遂、
万引きや性的な遺脱行為を繰り返す境界例の方もおられます。




人を操る(対人操作)


先ほどは、境界例の方の爆発的な感情に接するうちに、
いつのまにか、同じ考えを共有することについて 説明を致しました。

今回は、違った形での共有を説明したいと思います。

境界性人格障害の方は、相談の名人です。
いつも悩みを抱え、さみしげで、頼りがない境界例の方は、
信頼できると判断した人に、必死に相談します。

相談を受けた人は、「この人を助けることができるのは、 自分だけだ。」との
感情に支配されます。

また、境界例の方は、この悩みを打ち明けるのはあなただけだと言いながら、
他人を激しく批判します。

悩みを聞く者は、いつのまにか、境界例の方に否定的な人を批判的な目で見ることになります。
このため、境界例の方に否定的な人との間に、いつのまにか争いが起こります。

境界例の方には、人を操っているというような自覚は、 ありません。

自分自身が分からないことで苦しんでいる境界例の方にとって、
自分と同じ意見を持ってくれる人の存在は、それだけで、 安心を覚えることになります。
逆に、自分の意見を否定する人は、不安を増大させる存在なのです。

このように、境界例の方の人間関係のあり方が、必然的に争いを引き起こさせるのです。




自分で自分が分からない。


境界性人格障害の方は、自分で自分が分からない状態にいます。

自分が何を求め、何をしたいのか分からないと言われる境界例の方が、 多くおられます。

「なぜ、万引きしたのか、なぜ、あのような激しい性的遺脱行為に
没頭していたのか分からない、」と言いながらも、
自分が望んでいるものが あやふやで理解できないため、
そのような行為から抜け出すことができない状態におられる方が多々おられます。

自分で自分が理解できない、分からない、

何を望んでいるのか、何が、 したいのか・・・、分からない。

境界例の方は、このような苦しみの中で日々の生活を過ごしておられます。




家族はどうすればよいか。


境界性人格障害について簡単にご説明致しました。

ならば、家族や周囲の人間は、どうすれば良いのでしょうか。

一番良い方法は、治療に結びつけることです。

できましたら、なるべく設備の整った大きい病院での治療をお勧め致します。

境界例の場合、向精神病薬は、あまり効きません。

不眠や、不安、急激な怒りなどを薬によってある程度押さえることはできますが、
あくまでも、精神療法が、治療の柱となってきます。

そのためにも、心理テストや、カウンセリングなどをしっかりと受けることができる、
ある程度大きな病院での治療が適しています。

また、規模の大きな精神科の病院には、ソーシャルワーカーの方がおられるので、
ご家族の相談などにも、個別に乗っていただけます。

希望される場合、入院病棟やデイケアの見学も行うことができます。


大きな問題に直面した家族にとって、

「なんとかしたい」と思うのは、 当然のことです。

しかし、家族だけで、問題を解決するのは、
不可能に近いといっても過言では、ありません。

ご家族には、境界例の方に対する人一倍強い感情があり、
やっかいなことに境界例の場合、この感情が問題を大きくしていきます。


「なぜ、こんなことに・・・」 「なんとかしたい・・・」との
想いばかりが先行するあまり、
ものごとを 冷静に見ることができなくなります。

境界例の特徴の一つである、衝動性がさらに、家族に追い討ちをかけ、
冷静な対処を妨げます。

家庭内暴力や万引き、性的遺脱行為や、自殺未遂など、
目に見える形であらわれている境界例の方の悪い部分だけを
「なんとしたい」と願い、その思いに捕われる結果、
境界例の方の良い部分だけを残そうとします。

結果的に、悪い部分を消し去ろうとするのです。

境界例の方は、もともと、子供の時より、良い自分であり続けようと
必死に努力しています。

親に見捨てられたくない、親の望む良い子になろうと必死になって努力してきたのです。

このような境界例の方に、良い部分だけを残し、
悪い部分を無くして欲しいと望んだとしても、事態を悪化させるだけです。

悪い部分も境界例の方には必要であり、
悪い部分も愛しているという態度で接することが
必要なのですが、追い詰められた家族には、その余裕を持つことができません。


また、境界例の方に、過去の過ちを責められ、

「私を分かって 欲しい」と泣きつかれた場合、「何とかしたい、助けてあげたい」と

更に、強く思うことになります。

境界例の方の望むことを叶えてあげようとすれば、するほど、
問題は、大きくなっていきます。

なぜなら、境界例の方が、求めておられるのは、
何もかも自分の意見に同意する家族の姿であり、
甘えをすべて受け入れてくれる存在なのですから。

自分自身が分からないために苦しんでおられる境界例の方にとって、
甘えを受け入れることは、さらに、苦しみを増すことにつながります。

境界例の方が少しづつ、成長し、良い自分と悪い自分を統合する力をつけることが
境界例の方の苦しみを取り除くことになるのですから。

境界例の方が、家族に甘えている(依存している)限りは、
いつまでたっても、統合する力をつけることができません。

このように、ご家族が自分たちの力だけで、
「何とかしたい」と願っても、 行きつく先は、袋小路であり、
問題の解決どころか、事態の悪化を招くことになります。


大切なのは、過去や今までのできごとに捕われることなく、

「今、どうするか」

「今、どうするのが、最善の道か。」 これが最も大切な考え方です。


境界例の方は、苦しんでおられます。

愛する人の評価がころころと変わり、衝動にかられた逸脱行為、
そして自分自身が分からないことへの戸惑い、
ある一定の周期で湧き上がる不安や孤独感の苦しみは、想像を絶するものがあります。


ぜひ、適切な病院への治療に結びつけて下さい。
そして、主治医や専門家の指導に従って下さい。


これが袋小路から脱出するための、最善の道であり、
境界例の方の苦しみを取り除くことにつながるのですから。




境界例は、治ります。
安心して下さい。



アメリカで境界例の元患者さんの追跡調査が行われました。

その結果、元境界例の多くの方が、カウンセラーなどの
心理関係や精神医療の関係の仕事についておられたのです。

境界例の方は、他人の行動に大変敏感ですし、
心の痛みや、苦しみも知っておられます。

それゆえ、安定した生活を送ることができるようになると、
人一倍、心の痛みの分かる人であり、苦しみを共感できる人になります。

このような人は、心理関係や精神医療、福祉関係の仕事にピッタリです。



イエス・キリストは、多くの病に苦しむ人々を癒されました。


しかし、聖書は、イエス・キリストを癒しの神とは呼びません。
慰めの神であると教えています。


『私たちの主イエス・キリストの父なる神、慈愛の父、
すべての慰めの神がほめたたえられますように。』
(聖書)


なぜ、癒しの神ではなく、慰めの神なのでしょうか。

癒しは、私一人が受けるものですが、
慰めは、他の人に分け与えることができるからです。


『神は、どのような苦しみのときにも、私たちを慰めてくださいます。
こうして、私たちも、自分自身が神から受ける慰めによって、
どのような苦しみの中にいる人をも慰めることができるのです。』
(聖書)


心の痛み、苦しみを知るからこそ、
その苦しみを乗り切るための慰めを知り、
その慰めを同じような苦しみにあえぐ人たちに
分け
与えることができるのです。

絶望することなく、希望を持って下さい。


イエス・キリストの慰めが皆様の上に、
豊かに注がれますように、お祈りしています。


ヨハネ3章16節(聖書)


聖書の語る救いについて知りたい方は、


イエス・キリスト救いをあなたへ をご覧下さい。


聖書の語る慰め(なぐさめ)について知りたい方は、


神が与える真実のなぐさめを受けるには


伝道小説「慰め(なぐさめ)」
  をご覧下さい。



最後に、境界性人格障害のDSM−Wにおける診断基準を掲載しておきます。


対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性の広範な様式で、
成人早期に始まり、種々の状況で明らかになる。  
以下のうち、五つ(またはそれ以上)で示される。

@:現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとする気違じみた努力。  
 注:基準5で取り上げられる自殺行為または自傷行為は含めないこと。

A:理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる
  不安定で激しい対人関係様式。

B:同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像または自己感。

C:自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも二つの領域にわたるもの
  (例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、むちゃ食い)。   
注:基準5で取り上げられる自殺行為または自傷行為は含めないこと。

D:自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰返し。

E:顕著な気分反応性による感情不安定性  
(例:通常は二三時間持続し、二三日以上持続することはまれな、   
エピソード的に起こる強い不快気分、いらいら、または不安)。

F:慢性的な空虚感

G:不適切で激しい怒り、または怒りの制御困難  
(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、  
 取っ組み合いのケンカを繰り返す)。

H:一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離性症状


(DSM−W 精神疾患診断・統計マニュアル:医学書院1996年から抜粋)



(DSM−Wの詳しい説明につきましては、DSM−WとICD−10のページをご覧ください。)









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