…これから掲載する文章は、2002年から2003年にかけて、わたくしbanがch556というサイトに計6回に渡り不定期連載していたものです。現在のch556上ではもうこの記事は読めないのですが、このまま埋もれさせてしまうのも何だかもったいない気がするのう。というわけでch556さんの許可を得てここに再録させていただきます。執筆からもう数年たってますので微妙に情報が古い箇所もあったりしますが、まあそれはご愛嬌ということで。では再録。
【再録】トラウマ洋画劇場(第一回)
■はじめに
えー例えばコドモの頃にですね、日曜の昼下がり、何もすることがなくてボケッとコタツになんか入ってたりすることは誰しも経験することじゃないかと思う訳です。あいにく外は雨だったりしてね。遊びに行くには億劫だし、家で独りで遊ぶのもツマラナイし。
で、そういうときに何をするかというと、まあ十中八九はボケッとTVを眺めることになる訳ですね。でも日曜の昼下がりというと、コドモが見て面白い番組なんてやってるハズもなく、バラバラとチャンネルを回せば、まあ「TVジョッキー」とかやってるんですけれど今一つ見る気が起きない。旅番組はつまんないし、ゴルフ見てもなあ。となると自然にチャンネルは映画枠に落ち着いてしまい、ミカンなんか食べながらダラダラと見続けてしまうという罠。
私が幼かった頃は、当時日曜昼の1時から「日曜洋画劇場」の再放送枠があり、また別の局でも昼の2時に「日曜ロードショー」があって、さらにときどき特番で邦画の放送があったりと、まあ日曜の昼は家にいがちなコドモが無差別に映画の波状攻撃にさらされるというブラボーな状態だったのですね。ことに日曜の昼下がりというアンニュイな時間帯は、映画を白日夢のようにしてしまう独特の雰囲気がありました。ある種の浮遊感覚。まったりと流れる時間。そんなたゆたうような空気の中で、映画は止まらない催眠装置のように流れ続けるのです。
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それから土曜の夜。まあ最近のワカイノはどうか知りませんが、かつてban家にはガキは夜9時に就寝就寝!という鉄のオキテがありました。ゆえに夜の洋画劇場はオトナの時間であり、コドモにはみせちゃイカン何かが夜な夜なブラウン管の中でぴちぴちしているのではないだろうか、とある種のアコガレが生まれるわけであります。布団に入って眠れずにいると、引き戸の向こうからかすかに漏れ聞こえる映画の音声。飛び交う銃声や、誰かの悲鳴。艶っぽい男女の会話。そんな断片を耳にしながら、オトナの時間のテレビは果たしてどんな凄いことになっているのか、想像だけがもりもりと膨らむのでした。
しかしそんな鉄のオキテも土曜の夜だけは免除され、夜更かしを許される事がありました。そんな時コドモはこわごわオトナの世界を覗き見るような気分で、「ゴールデン洋画劇場」を親と一緒に観たりするのです。オトナの時間の番組ですからそれなりにお色気がにじむ場面もあったりして、そういう場面を親と観るという居心地の悪さは感じつつ、目はシッカリと画面を凝視。あるいは興味ないフリをしつつ、耳をソバ立てて音声に集中。いやー何だか書いててあのころはオレ初々しかったなあと思わず目線が遠くなります。今はまあこんなんですが。
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白日夢めいた昼の映画。イケナイモノを観ているような夜の映画。そんな雰囲気のなかで不意に出会ったショッキングなシーンというものは、大体において強烈に幼心に刻みこまれてしまうものであります。コタツ布団かぶって震えながら、薄目でブラウン管をこわごわ見たり、余りの強烈さに固まったまま目が離せなくなったり、というような体験は程度の差こそあれ多くの人が体験しているハズ。次の日学校に行けば、「昨日のアレみた?」とその映画が話題になってたりとか。
そんな、幼心にトラウマとなって残るほどインパクトの強い映画。それはもしかするとシャラ臭い理屈抜きにパワーのある映画なのではないでしょうか…。という訳でこのコラムでは、誰もが一度は襲われた、そんな春先の通り魔のような映画を集めてみることにします。題して「トラウマ洋画劇場」。以下次回。
(2006年02月25日)