もしかしたら

お盆の怪奇特集ファンとして、日々色々と各メディアへのチェックを忘れないわたくしですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。


さて、最近立て続けに借りて観ているビデオに『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズというのがあります。タイトルだけ聞くと頭を抱えてしまうような安っぽさが炸裂してますが、中身はなかなかツボを押さえた造りで、ついつい食い入るように観てしまいます。


一般の人が撮影したホームビデオの中に映る得体の知れないもの…これを収集したもので、心霊写真集のビデオ版という趣きです。送られて来た映像に追跡調査を加えているあたりなど、往年のTVの怪奇特集を彷佛とさせるものがあります。


まあそこに映っているモノはちょっとマユツバな感じで、このビデオ自体がひとつのフェイク・ドキュメンタリーじゃないかとも思う訳ですが、収録されている映像がどれもこれもホームビデオの臨場感に溢れてて、ひどく生々しいリアリティを感じさせます。例えばある家庭のホーム・パーティの風景を延々と撮ったビデオ。その映像にその場にはいないハズの女の人が映ってたりするわけですが、その映像の撮り方にも被写体の人々にも全く作為が感じられず、そのへんに


「もしかしたらマジかも…」


と考える余地が生まれる訳です。ひょっとしたらマジかもしれない。としたらここに映っているモノは一体…。


怪談においてもそうですけど、この手の心霊ホラーが受け手に本当に恐怖を感じさせるのは、ひとえにこういう「もしかしたら…」と思わせる瞬間じゃないかと思います。どんなに恐ろしいシチュエーションでも、そこに作為があからさまに現れていれば「なーんだ、ツクリモノじゃん」の一言で片付けられてしまう。いわゆる興が冷めるというヤツです。でもそこで少しでも「これってマジかも…」と思わせる事ができるなら、そこを突破口としてジワジワと受け手に恐怖を染み込ませることもできましょう。


ビデオカメラの生々しい映像というのは、特にそうしたリアリティを増幅させる効果を持っているようです。そこを意識的に利用したのが『リング』や『ブレア・ウイッチ・プロジェクト』という秀作ホラーでしたが、その手法を純粋培養し、極めてストレートなかたちで提示したのがこの『呪いのビデオ』シリーズだと言えます。


(2000年05月11日)