えーと4週間ぐらいかけてゆるやかに引っ越し中。仕事のあとは車に荷物をつめて新居と旧居を往復する毎日です。砂時計をひっくり返したときの、上の砂が下へさらさらと時間をかけて流れていってるような、そんな状態であります。
新居は新築物件なんですが、オーナーがセキュリティに異様にこだわったらしく、エントランスのオートロックも暗証番号じゃなくてカギ式。玄関用のカギも2種類。郵便受けはダイヤル式のカギつき。宅配ボックスも暗証番号のカギ。非常階段に出るのにも2枚のドアを解錠しなければ、という徹底ぶり。まあ最近は物騒な話も良く聞きますし、このくらいしとかないと安心できないのかも知れません。しかしこの非常階段、マジ非常時にはカギの前でまごついてパニクる人続出のような気がしないでもない。
とか思ってたら入居2日目にいきなり素性の知れない換気扇フィルターのセールスマンがオートロックを突破して玄関先に突進してきました。だめじゃん。つかこのようにいくらセキュリティを整備しても付け込もうと思えばいくらでも付け込めるわけで、まったく油断なんねぇ。
関係ないですが、主な荷物を引き払ったあとのこまごまとしたものが寂しく転がった部屋というのは、それがたとえつい昨日まで人が住んでいた部屋であっても、まるで即席の廃墟のようにすさんで見えることでした。完全に空っぽになった部屋というのは逆に清潔になってしまい、それはもはや廃墟ではなく新しい住人を待つ空き部屋でしかありません。廃墟というものは建物それ自体ではなく、かつてそこに住んでいた人間の形跡がガランとした部屋に残留思念のようにこびりついている、その状態のことに他ならない。ということをちょっとだけ肌で感じた次第であります。そして引っ越しのときに住んでいた部屋を掃除して出てゆくことは、その残留思念を浄化することの代償行為なのかなあ、と寒々しい部屋の光景を前に思ったことでした。
(2004年03月11日)